○
説明員(平田敬一郎君) 主として
國税の方の関係を申上げさせて頂きたいと思います。
最初に先ず
シヤウプ博士が見えましたときに、討議の材料に供するために
大藏大臣の税制の
現状及び將來改正の方向等に関する極めて大まかな
意見を聞きたいということで、さような
意味におきまして一部分を取纏めまして先方に出しております。ただこれはいわば未定積的なものとして先方に出したのでございまして、その中には責任のある
大藏大臣といたしましては閣議で最終決定を経て出すべきものも、さようなことにならない
程度の
意味におきまして、いろいろな方向等に関しましても或る
程度の示唆を與えるという
意味におきまする案を提出いたしているのでございますが、それはさような
意味でございますので、勿論未だ公表もいたしていないのでございます。ただ私共今主たる問題として取上げておりまする点を本日は申上げさせて頂きまして、具体的には
大臣と……ときどき新聞紙等で漏らしておりますが、まだいずれも本当に決ま
つて確定的な
意見として先方に出しているという
段階には参
つておりませんので、甚だ抽象的に亘るかも知れませんが、問題として取上げている点を御参考までに申上げます。一番大きな問題は
一つは総体としての租税の
負担を減らし得るかどうか、或いはどこまで減すかという問題でございます。これは全体として租税の
負担が非常に過重であるということは今日常識でございまして、多く
説明を要しないことだと思いますけれども、これを如何にしてどの
程度まで下げることができるかという問題になろうかと思います。この点に関しましてはすでに新聞紙等にも出ておりますように、七千億の予算のうち二千億を價格調整費で占めておりますが、まあ價格調整費をどうするかという問題に殆んどかか
つているのじやないかと
考えるわけでございます。從いまして私共の大体の方向といたしましては、この價格調整費をできる限り大きく減らしまして、それによ
つて全体の税の
負担を減らすという方向に持
つて行くべきじやないかというふうに
考えております。目下新聞紙等に出ておりますのは、いずれも具体的に研究しておりますものがちらほら出ているという税の
段階でございまして、勿論
政府としまして方針を決めまして向うに出す
段階にまでは参
つておらないのでございますが、何と申しましても食糧の輸入補給金を來年あたりはどうするか、それから國内におきましても鉄鋼、肥料、それから石炭、これらの補給金が大部分を占めますが、肥料の補給金なんかは例えば補給金を出して米價を安くする方がいいのか、或いは主食の國際價格等の点を
考えますと、むしろ補給金を廃して米價を或る
程度上げた方が、却
つて國際價格とのバランスもとれまするし、いいのじやないかといういろいろな
見方がございますが、私共といたしましては、極力こういう補給金というよりは変態的なものは経済の安定に從
つて成るべく速かに減らして、そうしまして合理的なペースで安定するような方向に持
つて行くべきじやないかという基本的な
考え方からいたしまして、來年度あたりはできる限り減少せしめるという方向がいいのじやないかというふうに
考えまして、まあさような研究をいたしている次第でございます。二千億でございますから、半分削りますと千億くらい出て來る、その他の
歳出におきましてはなかなか減らす余地はむしろ少い面が多うございます。公共事業費等も実は非常に本年は圧縮されておりますので、今後はむしろ失業の状況その他に應じまして、減らないどころか逆に相当殖やさなければならないという点も
考えられるわけでございます。一般の
行政機構も相当削
つておりますのでなかなか困難じやないか。それからもう
一つは、ただ今年の予算では債務の償還費と申しますか、一應
政府及び
政府関係の諸機関の債務の
財源が全体としまして七百億ぐらい出て來る予算にな
つておりますが、來年度におきましてはこれをどう扱うか、これが
一つの問題であろうと思います。本年度はこれに基本を置かないと
考えますが、來年度はこういうものをどういうふうに
考えて行くか、それによりまして又
財源が出て來るという可能性もあろうと思います。要するに
歳出の増大を極力圧縮いたしまして、それによ
つて税の総
負担を減らすということに相成ろうかと思いますが、そういう方向で、第一に
一つできるだけのことをやりたいという方向で、研究をや
つておるのでございます。
それから第二の問題は、これは税の総
負担と非常に似通
つております。ちよつと違
つた角度になりまして、むしろ税率は下げましても総
收入はそれ程減らんのじやないかという要素でございますね。具体的に申しますと
一つは税率が下りましても間接的でございますと、物資の供給が殖えるとか、或いは需要が増大して減らないという面もございますが、或いは直接税の場合でございますと、現在承知の
通り相当やはり課税漏れ、悪質の脱税だとは申しにくいと思いますが、全体としても課税漏れは相当あると思いますが、こういうものが税率が下
つて來ると申告状況も或る
程度自然によくな
つて來る。又事実税務署の
調査能力も増して來るということによ
つてカバーする。從いましてそういう見地から申しますと税の
負担はそう減らなくても税の内部における不合理の是正と申しますか、結局税率は下げてまじめに
負担しておる人の
負担は下げて、脱けておる
方面の
負担を極力加重しまして、それによ
つて全体としての税源を極力確保して改正を加える。こういう方向が
一つ考えられるだろう
考えます。こういう趣旨で
所得税或いは間接税等につきましても非常に高率のものにつきましては極力改正を加える方向で行こう、こういうふうに
考えております。
それからその次はインフレの問題でございますが、
法人税につきましては御承知の
通り今までのインフレに應じた税制にな
つておる。つまり
一つは減價償却が非常に帳簿價格を元にしておりますので、実際の資産を取換える場合に價格としいようなものに比べますと、非常に過小にな
つておるので、これをやはり是正する必要があるとい
つたような問題、それに関連しまして超過
所得税の計算の基礎にな
つておりますところの資本金の計算が非常に不合理にな
つておる。これを是正する必要がある。そういうことに関連しまして
政府の資産の再評價をどういう方法でどの
程度にやるかという問題でございますが、これは先般大藏省におきまする
税制審議会の案として発表されました。大体基本的にあのラインでや
つた方がいいのじやないか。ただ問題は最後において株主に帰属せしめ又は積立てたとき二〇%
程度の課税をするということにな
つております。これをそれでいいか、或いはどの位の税金を取るべきかという
議論も大分あるようでありますが、そういう問題に関連して最終的に確定しなくちやならんと
考えております。基本的にあのラインで改正案を作
つたらどうかというふうに
考えております。
それから間接税におきましてはいろいろ問題がございますが、これも私共租税の全体といたしましては、どうも
所得税が非常に重過ぎると申しますか、多過ぎるというふうに感じておりまして、戰前は
個人の
所得税は約一億円ぐらいだ
つたのですが、それが本年度予算では三千百億円、即ち三千倍以上にな
つておる。仮に貨幣價値の下落したと申しますか、物價の騰貴率を三百倍と見まして還元しましても、昔で十億の
所得を、とにかく
所得税だけで今徴收しておるということになりまして、
所得税としましては非常なものであります。そこにいろいろのトラブルな問題を起す最大の点があるのじやないかと
考えまして、
所得税につきましては基礎控除、税率等につきましても極力合理的なベースに下げるというような方向を研究しまして、この額が総体として
歳出が減
つたならば、極力
所得税を減らすという方向に持
つて行
つた方がいいのじやないか。間接税の方はその次にすべきではないか。ただ取引高税だれはこれは特殊な別問題でありますので、政治的に問題にな
つておりまして、
歳出を減らしまして、この税をできるだけ止めるという方向に持
つて行きたい。その外の間接税おきましては、これは全体として
余り大きな
歳出の源を立てるということはなかなか困難ではなかろうかと思いまして、現在におきましては税率は下げますが、それによりまして、供給の、需要の増加によ
つて、或いは取締の徹底とい
つたような方向に持
つて行つて、税收を
余り減らさない限度において間接税の合理化を図るという方向で、いろいろ研究をいたしておる次第でございます。そういう点が主な点でございます。
國税と
地方税との関係におきましては、私共も一應の研究案もいろいろございますが、いずれ
政府の案としましては
内閣におきまして調整を図りました、最終的に決めますということに相成るだろうと思うのでございます。問題として取上げております点は、第一に
地方財政が相当苦しいということは、これはもう事実のようでございまして、
國税の場合におきましては、國の
歳出の中に價格調整費とか、その他の特別の費用が大分ございます。そういう費用が要らなく
なつた場合におきましては、除々にやはり
地方團体の方に
財源は移して行くという、方向としては正しいのではないかというふうに
考えております。ただ実現の時期
程度ということが具体的には問題だろうと思うのでございますが、基本的にそういう
考え方からいたしまして、極力
地方團体にも権限の活動の基盤を與える
意味におきまして、適当な
財源を認めて行くという方向に持
つて行くべきじやないかと
考えております。ただ先程もいろいろ話が出たようでありますが、結局政治的な
地方の
自治、或いは以下若干私の
個人的な
見解になるかも知れませんが、その辺御了承願いたいと思いますが、政治的なこの
地方自治と申しますか、
地方團体の独立という問題が
一つと、いま
一つは、
地方團体の経済力が現在はどうか、或いは今後どうなるだろうかという問題、つまり農村と都市との関係はどうなるだろう。或いは同じ
地方團体の中におきましても、
市町村と
府縣とはどういう関係に置かれるであろうか。この経済力に関連してなかなか独立の税源を與えるとしましても、貧弱な
町村はいろいろな独立税源を貰いましても大した
收入は挙げ得ない。反対に裕福
町村におきましては僅かな税源を與えますれば相当な
財源を得る、こうい
つたような点が今までよりも今後はやはり
傾向としましては少し激しくなりはしないか。これは終戰後非常にインフレの特別な事情のたるに農村も大分よか
つたようですが、今後恐らく安定して参りますと、相当反対の方向に行くのじやないかということも
考えられますし、その辺を見計ら
つて、経済力との
調査をどういうふうに図
つて行くかということも
一つの大きな問題だろうと思います。これが結局
配付税をどういう
程度において帰さないかという問題と関連して來ると思いますが、そういう点が、
一つの大きな問題じやなかろうかと思います。
いま
一つは、先程
お話が出ましたように、実際問題としましていろいろ
法律案によりまして、各
地方團体に画一的にいろいろな仕事をやらせておる面がある。その仕事が國の事務であるか、
地方團体の事務か、これはいろいろ
見解の差がございますが、いずれにしましても全國画一的にいろいろな仕事をせざるを得ない、そういうのが相当殖えて來る、或いは現在はむしろ多過ぎて減らすべきだという
意見もあるかも知れませんが、そういうものが実際問題として相当多いということになりますと、そういう種類の所要
財源を独立
財源、殊に経済力の違う
地方團体におきまして独立の税源で賄
つてうまく行くかどうか、これは余程やはり檢討を要する問題じやなかろうかというふうに
考えるのでございます。さような点をいろいろ
考えまして具体的にどうするかということを決めなければならないと
考えているのでございますが、まあ現在のところは率直に申上げまして実際と観念となかなか
はつきりしない点、私共これはと思うことがなくて実はいろいろ檢討中でございますが、
一つの
考え方といたしましては、
所得税の
附加税を認めるか、認めないか、その場合におきまして、
所得税の
附加税は
府縣だけに認めて
市町村には認めないということにした方がいいかどうか、或いはむしろ
所得税の
附加税は全然認めないで、
配付税で行
つた方がいいか、まあこれは非常にいろいろ計算して見ますと團体によ
つて違いがあるようでございまして、俄かに最終
結論を出しかねてうるのでございますが、併し方向といたしましては、極力
配付税によらないで
財源を調達できる場合におきましては、独立の
財源を與めた方がいいのじやないかということも
考えられますし、目下そういう点につきましても檢討いたしている次第でございます。
それから收益税のシステムの上におきましては、どうも
事業税が
所得税と同じようにウエイトが少し大き過ぎやしないか、十五%それから制限外課税の十八%、この
負担は今までのように経済が尻上りのときは前年実績でや
つておりましたから大した問題がないと思いますが、安定して参りますと、一五%とか一八%とかいう
事業税の
負担というものは、收益税のシステムとして少し高過ぎやしないかということを初頭から痛切に感じております。これは或る
程度今後むしろ引下げて行くのが妥当ではなかろうか、これに反しまして地租と家屋税の
負担、これは本年も二倍或いは二倍半に増徴に相成りましたが、こりで尚実勢に應じた課税にな
つておるかどうかということにな
つて來ますと、この辺は実際問題としまして尚今後檢討の余地があるのではないかと
考えられるのでございます。家屋税と地租がそれぞれ
附加税によりまして七十億、
事業税五百億という状況にな
つておりますが、昭和十五年に税制改正をやりましたときにおきましては、大体三つの税はそれぞれ同額くらいの税
收入を挙げていたのでございまして、最近の土地の状況、それから事業の状況からいたしまして、或る
程度の差がつくのは当然だと思いますが、どうも少しギヤツプが大き過ぎるのじやないか、そういう点から
考えまして、この際相当不動産の
負担と
事業税の均衡という問題は、
眞劍に
考えて見る必要があるのじやないかということでいろいろ檢討いたしております。ただこの問題は一方におきましては小作料の統制の問題、農地
改革の問題に関連して來るし、他方におきましては、家賃の問題に関連して参りますので、相当な檢討を要するかと思いますが、その辺に不均衡を是正すべき相当な要素が残
つているのじやないかと
考えるのであります。それからその他につきましては、すでに地財から
お話があ
つたかも知れませんが、
地方税におきましても相当税率の高いものがございますので、これは
國税、
地方税を通じまして
財源の許す範囲内で極力調整を図
つて行くという方向に來るのが
傾向としましては正しいのじやなかろうか、なかんずく
地方税におきましていろいろ雜種税、雜多な独立税で歳入は僅かで税全体の評判を非常に悪くするとい
つたものが大分あるようでございますが、これは一にかか
つて地方團体の
財源が貧弱だからということから來るのかも知れませんが、こういうものにつきましては、極力整理しましてもや
つて行けるようなシステムに持
つて行
つたらどうかというふうに
考えておりまして、その辺につきましてもよく地財なんかと
意見の交換をいたしまして、適切な結果が得られるように努めたいと、かように
考えておる次第であります。尚最後に
所得税の納税
制度でございますが、申告
所得税の問題、これが実際には非常に大きな問題にな
つておりますが、この
制度を根本的に又昔のように変えたらどうかというような
意見も相当ございます。これはどうもなかなかどうであろうか、又税の
制度をたびたび変えますのは少し行き過ぎではなかろうか。從いまして申告納税
制度につきましては、私はやはり税率の過重と言いますか、控除が少い、そういうところが非常に運用を妨げておる、
所得税自体がそういう面におきまして合理化されたならば、運用も余程改善し得るのじやなかろうかということも
考えられますし、根本法は変えるというような強い
意見は現在のところ持
つていないのでございます。ただ実際問題としまして
所得税の更正決定が極めて短期間に行われる、いわゆるその間非常に徹底した
調査ができなくて或る
程度の
調査をして更正決定をやる、又その結果非常に課税のトラブルが起
つて來ると思いますので、審査請求に対しまする紛爭の処理機関と申しますか、そういうものにつきましては民間の
委員の方々を入れまして、税務署ごとにそういう機関を設けて、一應そこにかけた上で処理をするというような行き方で、余程摩擦を少くして而も不当に減額をしたり、或いは高い決定がいつまでも直らないでおるというようなことも少くするような方向に持
つて行
つたらどうであろうか、そういうことにつきましては、よく檢討して具体案ができ上るようにいたして見たいとかように
考えておる次第であります。甚だどうも抽象的でございますが、一應問題の所在を御了解願う
意味におきまして、尚御
質問がございますればお答え申上げたいと
考える次第であります。