○森下政一君 私は本案に反対したします。先刻天田委員が
指摘せられましたが、
政府が本案を提出いたしました当時におきまして、一般会計からこの会計に繰入れることのできるものは、看護婦養成の経費に充てる必要な経費に止ま
つてお
つたのであります。そうして当分の間、併しながらそれ以外のものを一般会計から繰入れなければや
つていけんだろうという予想の下に、その点が附則に決められている。これが
政府の当初の意思であります。即ち
政府の
考え方は、いろいろ
質疑に対して答えられましたけれども、できる限り早い時期において、この特別会計にすることによ
つて、独立採算ができるという状態に持
つて行きたいというのが
政府の
考え方であ
つた。而もその
政府というのは大藏当局の
考え方である。金を出す方の面を担当しております
大藏省としてはさもあるべきことなんでありまして、恐らくさような事柄を
大藏省の発議を受けたときに、厚生省はびつくりされて、これを阻止することに努めたに違いないということが察知されるのであります。ところが強引に
大藏省から諸般の財政上の事情等を
説明されて、よんどころなく、いやいやながらよんどころなく厚生省はこれに頭を下げざるを得なか
つた。屈服せざるを得なか
つた。屈服するには併しながら、今直ぐ一般会計から繰入れが止められたら困るからというので、少くとも当分の間二割五分は一般会計の経費からの繰入れが貰いたいということを折衝したに違いない。而してそれが容れられて漸くこの
法案が出て來たと、こういうことにな
つたのが私は眞相だと思うのであります。でありますから、何故特別会計にする必要があるかということを、どれくらい厚生省当局に質して見ましても、厚生省から満足な答弁が得られないというのは当然の事柄である。彼らの欲せざる事柄をここに
法律案として提案しておる。而も何故特別会計にしなければならんかということを聞かれて、厚生省の当局がお互いに満足するような
説明ができないということは彼らみずからが欲していないことなのである。特別会計にすることを願
つていません。特別会計にすることを欲していない。だからこれに対して大臣を引張
つて來ましても、医務局長を引張
つて來ましても、その他の厚生省当局が出て参りましても、到底腑に落ちる
説明のできなか
つたというのは、全くこのためだと私は考えるのであります。ここに医務局長その他がおられますが、私共これに反対する者の言論をお聽きに
なつて、内心は有難涙に暮れておられるに違いない。これ程厚生省の仕事に対して了解を持
つて呉れるかということを
思つておるのが眞相だと私は思うのであります。從いましてこの案というものは、先刻私が申しますように、恐らくはこの
大藏省の発議に基いておる。でありますから辛うじて厚生省が申しますことは、独立会計にすることによ
つていろいろな各病院それぞれについての無駄が省ける
機会が多かろう。経理が明確になるだろうというようなことを答弁するのでありますが、これは特別会計にしなければ、さような成果を收めることができない事柄であるかということになりますと、そうではない。現状のままでも、一般会計で賄う場合におきましても、さような事柄は、運営の
如何によりまして、
監督の
如何によりまして、巧みにその成果を挙げることができる事柄でありまして、特別会計にしなければ、それができないなどというのでは、これは厚生当局の威信にかかわることだと申しましても過言ではないと思うのであります。殊に現状は一体どうであるかというと、現状でも一般國民は満足していない。國立病院の今日の状態で決して満足していない。もつと國が多くを負担して、みずからの経済力で、みずからの病氣を癒す力のないところの氣の毒な人々に、國の負担において完璧な医療を加えるということに進んで貰いたいというのが國民大衆の望みである。これは明らかな事柄であります。先般私は療養所はどういうわけで然らば特別会計で経理をされないかということを質問しましたときに、これは多くの
收入を伴わないからである。
收入は皆無ではない。伴うておるけれども、多く
國家の経費によ
つて賄
つておるからであるということを厚生当局は答えましたが、これは図らずも
大藏省が國立病院の方は療養所に比較すると
收入が多いと、從
つて何とか鞭を打
つて鞭撻することによ
つて收入の
増加を図らしめて、そうして收支のバランスがとれるようなところまで近づけたい。こう考えておるとはつきり厚生省当局が答弁しましたことが、その大藏当局の狙うておる事柄を暴露しておると私は思うのであります。ところが現状におきまして、療養所は
國家が大部分の経費を賄うておると言うが、それでさえ一般の國民は満足していないというのが
実情なのであります。大阪に刀根山病院という結核療養所があります。これは市が莫大な経費を投じまして、堂々たる病院を建設し、みずから
経営して参
つたものであります。それを戰時中医療團ができるときに、戰時統制の名の下に、
出資せよということを命令されて、何らの代償を受けることなしに、單なる一枚の
出資証券という紙切れのようなものを貰うただけで、市民の税金によ
つて作りまして、市が幾多の苦心を重ねて
経営して参りました堂々たる療養所を國が取上げてしまい今日に至
つておるのであります。そうして國が大部分の経費を賄
つておると言うが、その状態に大阪の市民が満足していない、曾て大阪市みずからが
経営して呉れたときの方がどんなに市民に親しみがあ
つたか、どんなに行届いた療養をして呉れたか、その日が忘れられないので、今日大阪の市会は決議をされまして、殆んど年中行事のように
政府当局に向
つてこの病院を大阪市に返して貰いたい、一文の代償なしに取上げられた病院を返して貰いたい、我々の手によ
つて完全な療養を続けて行きたいということを念願しております。療養所を市に回收することによ
つて市の厖大なる経費の負担でありましよう。療養所は赤字に決ま
つておる。その赤字を覚悟の上で今日地方財政の窮乏しておるときに、尚且つこれを返して貰いたいというのが大阪市民の念願である。療養所が國立に
なつたことによ
つて、曾て市立として
経営した当時に比較して見るに遥かに患者の処遇が劣る。市民が親しみを感じない、そこに悩みがあ
つて、大阪市会は市民の意思を尊重してさような決議をいたしまして、今日厚尚生当局に向
つて返して貰いたいということを折衝しておるというのが
実情であります。私がたまたま大阪の実例を申上げましたが、全國到るところこういう事例があるのでないかということを考えるのであります。大部分の経費を國が負担しておる、療養所を一般会計で賄うと言う、
如何にも一般会計が潤沢に金を出して完全な療養が行われておるかのごとくに響きますが、実状は今
一つ私が
指摘いたしました大阪の実例に徴して見ましても、療養を受ける側は満足していない。曾ての市が
経営した当時より劣
つておるというのが実状なんであります。然らばこのときに今まで一般会計で経理しておりました沢山の國立病院を特別会計に移すいとうことになれば、どうしても満足な処遇が大衆に完全に與えられるということを期待することができないということを考えますると、大体
只今高橋さんが御
指摘になりましたように、かような経済の現状、かような失業者の続出することを予想されるとき、生活の困難が予想されますときに、何を好んで経理の明確などという取るに足らないことを
理由にいたしまして、進んで特別会計にするという根拠があるか、必要があるかと誠に疑わざるを得ないのでありまして、必ずやこれを特別会計に移しました結果は、庶民の大衆に取
つては医療の完璧を期するどころでない、今日までの待遇より劣
つて來るということは火を見るよりも明らかに感じられるのであります。さような意味で私は断乎これに反対するものであります。
尚呉々もお願いして置きますが、他の
只今本会議その他の私用にあらざる要件で席を外して帰
つて來る人に十分
意見を述べる
機会を與えて頂きたい。それで討論は打切らずに討論を進められるよう善処方を要望いたして討論を終ります。