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説明員(一
萬田尚登君) それではお許しを得まして、今後の
金融の
情勢につきまして若干
お話しいたします。昭和二十三年に入りまして、御
承知のように
日本の
経済というものが相当安定の兆を持
つて参りました。それまでというものは大体インフレというので進んで参つたと申して差支えないと思います。そこでこの國内のそういう
情勢と共に、國際
情勢乃至又はアメリカ自体の
経済の
情勢、こういうことからいわゆる
日本の
経済の自立を早める。そこで御存じの九原則、
從來それまでに
日本の
経済をどうするかという
根本の目標というもの、そういうものが必ずしも私自身の
考えでははつきりしていなかつた。言換えれば、それまでというものは、例えば極く分り易い言葉で申上げれば、安定か
復興か、こういうふうなこと、どちらがどうかその辺が十分でなかつた。大体の動き方は中間安定という言葉で表言しておられたのが、当時のこれは主流だと思うのであります。併し今度の、今申上げました
情勢の変化にも
つて來まして、九原則の実施ということになりました。これがもう明らかに安定した、勿論この安定と申しますと、如何にも安定ということで
復興ということは
考えていないように思われますが、そうではない。併し安定を壞さない
範囲で無論
復興する。こういう事柄になるのである。ここで初めて安定か、
復興かというような
考え方に
一つの目標を與えて、安定だ、こういうふうに言うのであります。從いましてこれに基いて取上げられたのが先ず今回の二十四年度の予算であります。從いまして今後における
金融政策もこの線を守
つてやはり行かなくてはなりません。折角財政で安定したにも拘わらず、
金融面からこの安定を壞して行くということでは
意味が何のことか分らなくなる。これは又このために当局が取るべきものではないが、ここで問題になりますのは、然らば安定ということはどういうことを
意味しておるかということを言いますれば、私の見解では、要するに今日の物價水準というものを上げないということにあると思います。更に具体的に言えば今日の價格を下げる必要がある。公定價格ができておりますから、公定價格を下げる必要があります。この價格で安定する。こういうことであります。從いまして
金融政策といたしましても、特に今後デフレにして、そして物價を下げるというところに今日直ぐに行くことは何も必要がない。言換えればデイスインフレという言葉でよく言われますが、今日の
通貨水準というものを維持して行く、
通貨の増発によ
つて物價騰貴を涙來せしめないようにするというふうにも表現ができると思います。こういうことが今後における
金融政策にある。言換れば
金融政策に
一つの大きな轉換がある。
從來はインフレというものが、主として無論これを含めて財政
資金的な
方面から出て來ておる。そこでインフレを抑止する上におきまして、どうしても
金融面でこれを抑制して行くということは余儀ないことなのであります。
金融面においても、赤字もなんでもやるという放漫なことをや
つておりますれば、到底インフレの進行を阻止することが、抑制することが困難である。財政面から來るのは、例えば特別会計で
國債が発行されるとすれば、それは
國会が了解してそういう御承認を與えるのでありますから、これはまあ蓄積資本で、市場で消化せんとすれば
日本銀行で引受けるということはインフレが進んでも止むを得ない。又
復金券というものの引受け、これも國の
生産計画、安本で作成するような
生産計画に基く
資金であります。これもやはりそうせざるを得ない。これは
通貨当局としてどういうものか、こういうところからインフレの……、今回こういう問題があります。ここに
金融政策が轉換すべき大きな基盤がある。併し基本
方針というものは私に言わすれば一貫しておる。何だか非常に違うように言われます。或いは又
從來は大変
金融を締めたから、依然として締めるだろうというような極く素朴な
考え方がありますが、そうじやありません。相手が道樂をしておる。そのときはどうしても女房役は財布をやはり手放しに渡してはおけない。ところが私はそれが今度相手が道樂を止めてぴちつと行儀よくして、もう今後そういうことは一切しません、こういう状況になれば、そこで今度は女房としてはやはり適正な交通費も、適正な小遣いもいろいろ面倒を十分今後において見なくてはならん。これはこの精神は一貫しておる。ただ客観的な事情が違つたためにやり方が違う、こういうことになるのであります。今後におきましては、今のようなそういう状況でありますから、
金融面としては無論面倒を十分見るつもりであります。併しそれは手放しに見るのではない。道樂はせんということだけは
一つきちつとやる。これが財政面では……、企業用では今後合理化というような整備をやる必要がある。そうして来ると必要な
資金は私はどうしても出さなくてはならんのだから、そういうふうになる。特にこういうふうな
考えからして今回の予算を出した。これがこのまま仮に実施……、仮ではありません。段々実施されるのでありますが、実施された場合にどういうふうに
金融一般の影響を與えて行くか、これがもうすでに討論がありましたように、私そのちよつと目算を見ても、千億以上がデフレにな
つて行くものと私は思う。そうして見ると、こういうデフレ的影響というものは
金融面でこれを削減すると言いますか、そういう
程度の
資金は更にこれを
金融から市場に出してやる、こういうふうなこと、併しそうしてデフレにならないようにしなくてはならん、こういうふうに
考えるのであります。これがまあ今後の
金融政策というものの基本になる。更に先程からもいろいろ議論がありましたが、
設備資金というものも、非常に今
金融で一番問題にな
つているのは
設備資金でありますか、これも先程申しましたように
調達をするつもりでありますが、問題は私は
金融の基調が……、基調と言いますか、基本が、先程申したようにあすこにあるのであります。從いまして今後の最も注意を要しますことは、
資金の回轉をよくするということを
考える。今日では御
承知のように未拂
関係というのがあります。いわゆる牽連
産業の人から物を、原料、資材を買小れても代金を拂
つておらん、次次にそれがある。こういう状態、こういう状況では到底
資金の流通を円滑にするということは困難であります。これをやはり私共はなくして、言換えればこういうものをなくする、なくすると申しますが、これもはやり手放しになくするわけには行かない。そういう未拂いというような状況を今後再びしない。又する必要もないというだけの
一つしつかりしたことを
産業の
方面にお互いにしなければならない。そういうふうな事情の下では未拂いを、
從來の手拂はなくして、そうして信用取引というものが確立して行くという方向に向けて行かなければならん。かように
考えるわけであります。信用取引というものが確立しなくては、
金融の円滑というものはなかなか行えません。幸い今後におきましては
通貨の安定、信用取引を確立するのに、やはり法的なこれに十分な施策、努力をいたして行きたいと、かように
考えておる次第であります。これがまあ当面の具体的の
金融ということになれば、これは自然具体的になりますが、例えば先程申した
設備資金の問題、これもまあこういうものをやる場合におきましては、私の
考えではやはり國の
生産計画というものが、しつかりしたものがなくてはならん。勝手にただ整備するとい
つても、他
産業の関連において面白くない点もある。総合
計画がどうしても必要である。而もそれが九原則実施の下でなし得べき
生産計画、こういうふうな、まあ見地から、例えばもう來月まででありますが、第一四半期には
設備資金としてやはり六、七十億くらいの金はどうしても出さなければならない。どうしても六、七十億は必要なので、これも
調達をいたしたい。これも
市中金融で今やらしておるが、この中に或るものは今後において見仮し
資金の繁ぎになり得るものもあります。そうでないものもあるかも知れません。いずれにしてもこれは
必要資金であるから
市中金融に出して行く、そうして今後におきましては、どうしても
從來、大体日体の
産業というものはまあこれは戰時中、或いは戰前からの傾向でありますが、借入金に依存することが多過ぎる。これは当時戰爭というような
関係から
資金調達が急であつた
関係もあります。又、それが割合に容易であつた。こういうことから借入金はなかなか多くて自己
資金が小さい。これは或る
意味において、事業の経営を安易にする。こういう虞れが多分にある。それで、今後はそういうふうな見地からしても事業に自己
資金、いわゆる株式並びに社債の、特に私共としては社債の発行ということに力をいたしたい。これは
一つには、
國債というものが償還をされる可能性が今後において多いのであります。これは見返
資金の
運用がどうなりますかによ
つて、無論今日何とも言えませんが、併しこの
資金のうちから
國債の償還に当てられる見込もあるようであります。そうして見ますと、今後
國債というものが、新らしい発行は無論当分の間、こういう財源によることは困難でありましよう。從いまして、国債が非常に減
つて來る。そうして
金融機関としてはこれに代る有價証券も必要だ。そうすると、社債というものが非常に役立つ、社債の発行を今後促進いたしまして、
一つには有價証券市場の育成、
一つは事業の安定、
資金の確保、他面、
金融機関の資産の
運用を公正に、適正にする。こういうような見地から、これにつきまして田、
日本銀行としましても、社債について優遇
措置を講じよう、こういうふうにしまして、今日の
資金について臨機の
措置を必要といたしまするが、窮極においては、それぞれの長期
資金に肩代りして行く、こういうふうな方向に向
つて行けるのだろうと思います。今後長期
資金については非常に困難がありましても、これはや
つて行ける見通しが私はあると思
つております。今後における
金融の一番の
根本は、
資金の蓄積はどうかということであると思います。二十四年度は私の聞くとところでは、約二千億近い税金の増徴にな
つているようであります。これだけでは或る
意味においてはいけない本年度は強制的の預金と申しますか、インフレの時には実際は本当の蓄積でないのでありますが、
從來は
日本銀行から札を出して、それが預貯金になる。本当に或る
意味においてインフレによる資本の強制的な蓄積であ
つたのでありますが、そういう形の預貯金であ
つたのが、今後においては、本当に働いて、本当の節約という、こういう預金になります。だから預金に増というものはながなができない。要するに問題は國民が如何に働いて、而も他方で節約をするかという点に預貯金、いわゆる
資金の蓄積が繁がるのであります。そうでありますから、今後においてはやはり國民全体の協力がなくてはなかなか困難だ。それで十分に私共は預貯金を増加する、いわゆる資本の蓄積を大いに促進するという見地から、今日
日本が置かれておる状態を十分みんなが認識して、そうして今日におけるいわゆるお互いに働いて節約するということが我々
日本國民の
立場と相成るわけであります。將來如何なることを
意味し、約束するかということをよく納得して、そうしてみんなが力を合すということが一番必要であろうと、かように
考えます。大変簡單なことでありますが、御
質問にお答えいたします。