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公述人(吉田秀夫君) 最初に、本
委員会が
公聽会の処置をとられたことに対しまして深く敬意を表する次第であります。
産別
会議は、十五單産百二十万の組織労働者の総意といたしまして、実は四月の下旬にこれを問題にしまして、
衆議院、
参議院或いは
関係大臣等宛に、きつい抗議文を出しております。これは單に労働者ばかりの問題でなしに、この会場に堆く積まれております六十万人の労働組合或いは
患者同盟が中心になりました署名運動にも現われております
ように、恐らくは市民、労働者、或いは全
國民大衆の声ではないかと思うのであります。我々労働者階級は
医療費や
病氣の問題或いは教育問題につきましては、殆んど本能的に近いほど全面的に
國家保障を要求しております。というのは、今までの
お話にもありました
ように、現在の
ような非常に苦しい生活の
状態におきましては、
病氣になるということは、これは労働者におきましては、健康
保險その他のいろいろな
社会保險の一應の恩惠はありますが、それでも尚且つ殆んど日々の生活を徹底的に破滅に導くという、それ程に大きな非常な
負担であります。これは、まして
社会保險の余り恩惠のない農民、市民にとりましては、殆んど致命的に近い打撃だと思うのであります。こうい
つた医療費の問題或いは又教育費の問題、これは飽くまでも全面的に
國家が
保障するという、そうい
つた仕組になる世の中を作る
ために、実は我々労働者は戰
つておると言
つていいと思うのであります。それと関連いたしまして、
日本の医療
制度はやはり
國立医療機関を中心にしまして、全面的に恒久的な医療
制度に切替えて行くという建前でなけれどならないと思うのでありますが、併し最近におきまする非常に深刻な健康
保險その他の
社会保險の危機、又実際に
患者が
病院や
医者の窓口に行けないという
ような
状態、そうい
つた状態を見ますと、大体
日本の医師の、或いは
医療機関の七割を占める数が開業の医である、営利的な医療
制度である。こうい
つた形では、どうにも仕方がないという
状態に今來ておるのじやないかと思います。併しながら私達は現在の
國立病院或いは療養所のあり方、こうい
つたことを中心にして無條件にこの
國立医療を支持するものでありません。それは先程
看護婦さんの梁瀬さんの
お話にありました
ように、あの
ような非常な労働強化で罹患率も高い。又辞める率も高い。自分の仕事以外にいろんな雜務があ
つた、
患者に十分なサービスができないという
ような労働強化の
状態、又昨年の中央労働
委員会のときにも認めておる。今以て低賃金に喘いでおる
ような、そうい
つた國立医療從業員の
状態、又施設が荒廃し、
結核病床も八万病床殖やすことにな
つておるにも拘わらず、それを撤回するという
状態、こういう
國立医療の
状態につきましては、誠に不満であります。從
つてこれは飽くまでも
國立医療の名に値するだけの完備した設備と又十分な待遇と、それから十分な
國民大衆サービスという、そうい
つた点、あらゆる面で最高峰を行くものでなければならんと思うのでありますが、現在の
國立医療、そうい
つた内容の不備、劣惡さにつきましては、非常に不満を持つものであります、これは飽くまでも
國家の
責任であると思うのであります。以上の観点から我々労働者が如何に
國立病院或いは
國立医療機関を要求しているかということを具体的な資料から申したいと思うのであります。これは
東京都の例であります。大金融労働組合の中の日立製作亀有工場には約三千人近い從業員があるのであります。この男女合せて二千六百五十七名、全從業員に対しまして基準法の則りまして昨年集團檢診をや
つたのであります。ところが異状発見者は一三・三%、約三百五十四名でありまして、その結果、
結核性の疾
患者は約半分の百八十五名であります。併しこの当時におきましては
入院している者が二十四名、自宅で療養している者が三十名という数にな
つておりまして、その健康
保險組合或いは労働組合におきましては三百余名の
患者を收容すべき場所がなくて非常に困惑しておるのであります。この日立亀有の工場の
診療所は、足立、葛飾を通じまして最も優秀な医療設備だと言われております設備でありますが、それにいたしましてもこの三百名も即時
入院させなけれどならんという
ようなことに対しましてはどうし
ようもないのであります。ここは一年間に昭和二十年の健康
保險の
予算が一千七百万円であります。そのうち恐らく八割が医療給付になるだろうという
ようなことを言
つたおります。而も
結核病
患者を一人発見すれば先程も
お話がありました
ように、七千円から一万円もかかると労働組合の人達は言
つております。從
つて数十人もの
患者を抱え込んでおりますと、実際その会社と工場の健康
保險組合は潰れるのであります。実際潰したくないといいましても、
東京都内におきましては
國立病院も療養所も満員でありますが、まともに手続きを取れば三日も掛るという
状態ではどうし
ようもないというので、会社側に要求しまして、非常に多額のお金を掛ける自分達のそうい
つた施設を作ろうという動きさえもあるのであります。それからもう一つは大体
入院や、或いはその発見された
患者の後の処置でありますが、こうい
つた場合に全然生活
保險の裏付けがないということで、殊に健康
保險の規定によりますと、標準報酬の六〇%の傷病手当はあるのでありますが、これではどうし
ようもないというのが、現在の労働者の現情であります。更に
結核予防会の統計によりますと、大体工場労働者におきましては四%から七%、こうい
つた結核の罹
患者があります。その中三分の一或いは半分近くは即刻
入院させなければならん労働者なのであります。
これが事務系統の労働者になりますと更に上廻りまして、その八%から一二%、最高では一五%、最近商工省の電氣試驗所には二〇%というふうな、べらぼうな
結核の罹患率を示しておりますが、そのうちの三分の二はやはり直ぐ
治療しなければならんという人達であります。こうい
つた意味合からいいまして、例えば労働者の
ためにあります最低の線と言われております基準法の実施の点からいいましても、集團檢診一つすら満足に実行できないというのが現情であります。基準法によりますと、年に一回乃至二回程度の檢診をしなければならないのでありますが、大工場は一應や
つておりますが、併し中小企業では殆んどや
つていないか、或いはや
つても近くの開業医を呼んで形ばかりやるということであります。問題は集團檢診をした後で、その事後の対策が何ら講ぜられていないし、又それが伴
つて國家保障がないというのですけれども、集團檢診は最近非常に殖えた未曾有の工場閉鎖や大量首切りや、こうい
つた状態の下におきましては、何か胸に
病氣があればその首切りの対象になるという模樣で、労働者の当然の要求として実施された集團檢診の実施する拒否し
ようという
ような非常にみじめな
状態である。この
ような
状態は基準法や、或いは集團檢診や、或いは工場の労働者のそうい
つたいろいろの
病氣の
状態から見ましても、それに十分対應するだけの
國営的な施設が欲しいというのが労働者の本当の叫びでありまして、例えば川崎市におきましては、大体百五十人から七千人の工場が百五十四ありまして、川崎市には約十一万人の労働者がおりますが、この川崎市内におきまして集團檢診をする
レントゲンの施設を持
つておりますのは、保健所に二台、それから東芝という会社と、
日本鋼管に一台づつある。こういう
状態で、実際に十一万の労働者が集團檢診をしたり、或いは自分達の
利益を守る
ために、いろいろの措置をする綜合
病院もなければ、或いはそうい
つた療養所がないという
ようなことの
ために、実際には保健所あたりでもこうい
つた仕事を全然できないので、実際にはどこにどうしておるか分らないと、あすこの所長から私自身聞いたことがあります。この
ように大体労働階級は綜合
病院や、或いは末端の
診療所、その他の医療網を
國営の形で十分に整備される
ようにという要求を熾烈に言
つておるものであります。更に健康
保險で今まで度々問題にな
つておるのでありますが、
社会保險は全面的に危機にあると我々は見ておるのであります。労働者の生活は非常にみじめでありますから、健康
保險とか或いは労働者災害
保障保險、こうい
つたもののみが唯一の健康を守り、疾病を予防する手段でありますが。その健康
保險が今回改惡されて、
赤字補填の
ためにいわゆる一部
負担金といわれる
制度が新しく復活した、そのことがもうすでに具体的に地方におきまして、或いは
東京におきましても、
保險医達の差別扱いを助長し、それから制限
診療をもたらしております。今朝の新聞を見ますと、千葉のどこかの町の
保險医は健康
保險は断るという
ような決議をしたという話であります。こうい
つた健康
保險という一應の
制度はあるのでありますが、現在のところ労働者の待遇からいいますと、十二月からまだ給料を貰
つていない、貰
つていたとしても、それは非常に分割されて非常に低いという
ような形におきましては、半額健康
保險で補助されておりますその半額の
家族負担も拂えないというのが
実情であります。又労働者災害
保險の業務上の疾病も、一應一部
負担金で三百円というものを労働者が窓口で拂わなければならないのでありますが、その金も都合が付かないという
実情、こうい
つたことの
ために、例えば金属
関係のいろいろな工場労働者組合におきましては、疾病を治す
ために、
保險のいろいろな諸掛りを拂う
ために、融資機関をなんとか設けて欲しいということを言
つておるのであります。況してや非常に長い期間を要します傷病の場合に、六〇%という
ような傷病手当金におきましては、これは
本人の療養は勿論、
家族の生活も維持できないという
実情でありまして、その点、具体的な直接の問題として、こういう問題があるのでありますが、更に健康
保險全体の問題としましては、先程の昭和二十三年に八億という
ような
赤字もございます。この
赤字補填の
ために一應健康
保險を改惡し、労働者の犠牲による
費用を強いて來たのであります。その点でも恐らく解決が付かないと思うのであります。例えば五百人以上の從業員を持ちます健康
保險組合におきましては、最近事業主によります
保險料の滯納によりまして、三月に一組合、四月に九組合、五月に二つの健康
保險組合が
政府によりまして解散を命ぜられております。こうい
つた状態が恐らく九原則の強化によりまして、今後ますます熾烈に激化するであろうということは明らかだろうと思います。從
つて我々労働者に取りましては、健康
保險、労災
保險、その他の
保險、これを十分に活用し、なお且ついろいろな形で、少しでも生活の
赤字を埋めるという
ような形で、いろいろ要求すると思うのでありますが、併し一度目に
なつた場合は、これはどうしても
生活保護法の適用を受けざるを得ないと思います。この
生活保護法適用自体が昨
年度八十七億、今年百十八億で、これは昨
年度に比べますと、要
保護者の増加或いは生活の昂騰から非常に増加しております。殊に昨
年度は、この額の三十八%が医療
保護であ
つたという
ようなことを見ますと、この生活
保護のうちに占める
医療費は非常に大きくなると思います。併し恐らく
政府は医療券の発行に対して
相当制限するのでありまし
よう。例えば
生活保護法を実際に適用しておるもののみに医療券を発行するという
ような形で、或いはなるべく
入院させないという
ようなそういう方針を取りつつあるやに聞いております。こういう
状態では恐らく失業者や貧乏人に対しましては、死ねという以外には道がないという
ような、非常に悲惨な
状態が來ると思うのであります。
又一方農民の
國民健康
保險につきましては、これは現在七千の組合と、それから人口にしまして二千八百万人の人たちが、農民や市民の健康
保險の組合員にな
つておりますが、併しこれに対しまして僅かに九億一千万円、そうして一戸当り平均千六百円という
ような
保險料だそうであります。併しこれ自体が大体半分ぐらいが漸くその日その日、毎月々々をやつと送らして行けるという
ようなものだけで、非常に不振を極めておるという
ようなことは、これは
厚生省自体が言
つております。この問題は、
國民健康
保險を作る問題に関連しまして、例えば最近村長を辞めたとか、或いは村会で問題にな
つて、リコールに
なつたとかいう
ような問題すらもありますので、実際に労働者と比べますと、市民や農民の
状態はもつともつとみじめであるだろうと思うのであります。以上によりまして、大体我々労働者階級は
國立病院特会制になれば、これはもう一体労働者の本能的な希望であり、期待でありますところの
日本で最高峯を行く
医療機関であります
國立病院が、一應非常に営利的な一つの企業体になる。先程も
お話がありました
ように、金を持
つておるやつだけがかかれる。金を持たない、殊に
生活保護法や、失業
保險関係の
患者は
相当制約されるという
ような形、こうい
つた形には絶対我々は不満なのであります。殊に大体公共的な
医療機関と雖も、最近におきましては殆んど独立採算を取り、その
ために非常に四苦八苦して、
人件費もなかなか満足に拂えないという
ような
状態を我々聞いておりますが、併しこうい
つた状態が強化されれば、
日本の
國立、或いは公共的な
医療機関は、金を持
つておる特権階級のみに利用されまして、
國民に取
つては殆んど緑のない
ような、そうい
つた存在になるのではないかということを心配するのであります。
〔
理事波多野鼎君退席、
委員長著席〕
それから今までの
國立病院の統計によりますと、十六%の
入院料の全免
患者があ
つた。そうい
つた問題が恐らく今後廃止の憂目を見るでありまし
ようし、或いは減免
患者の削減、そうい
つたこと、或いは
医療費がいろいろな形で値上げにな
つて、それが
日本全体のいろいろな医療
制度の中に含まれて、
医療費の値上げに響くという
ようなこと、それから
患者は恐らく院内でもはつきりした
差別待遇を受けるのではないかという
ようなことを
考えられると思うのであります。以上の觀点から我々はやはり
一般会計の中に含まして
收入と
支出を別にして、そうして
國立病院は
國立病院らしく、飽くまで
國家の
責任において運営して欲しいという問題が一つと、飽くまでも特会制を強行し、そうして営利的な企業的に方向に断行するならば、
日本が当面
考えております
社会保障というふうなそうい
つたものは
政府はよろしく撤回し、全然出直して貰いたいと思うのであります。そう思うのであります。それは現在の
國民建健
保險や、その他の
社会保險の危機に対しまして、何らの具体的な対策がないという点から見ましてもはつきりします。以上特会制につきましては全面的に
反対を表明するものであります。(拍手)