○森下政一君 故意に脱税を企図するとか、非常に納税上横着をきめておるというふうなものに対して、
税務署が極めて峻嚴であるということは、これは私は一向差支えないことだと思いますが、たまたま正直な
申告をしておる
納税者が、その
申告による
徴税を
税務署によ
つて納得されない。まあ近頃の世相の
関係で、詐
つて申告をするものが多いというふうなことから、
税務署が一々全部を正直なものとして得心するというようなわけにいかんというような
税務署の立場もあろうと思いますけれども、正直な
申告をしたものが、それをそのまま素直に受けてもらえないということになりますと、結局却
つてそれらのものは脱税を企図するとか、或いはごまかしたりしようがないというふうな氣持を起さすことになりはしないかと思うのであります。そうい
つた……、殊に
大藏省の方から出しておられる
努力目標なんか、單なる
一つの
努力の
目標にすぎんとすれば、
主税局長の
説明される
通りのものだと思いますけれども、これを受けとります財務局によりまして、更に財務局から出る各管内の
税務署にして見ますると、その與えられたものの、
目標に達する額の
徴税が完了しないことには、いかにも自分の怠慢を責められるような虞れがあるのじやないか、というような氣持で、遂には正直な
申告をしておるものにまで、峻嚴な納税を與えておるということが、今日非常に問題を起しておるのではないかということを私は思うのであります。どうでしよう。今どうしようかということをお考えにな
つておる最中であるならば、
努力目標を與えておる各末端の
税務署にいたしましても、もうすでに主税局の方で十分御案内の
通りに、管内の
事情が
税務署によ
つて非常に違う。例えば、管内に酒を造
つておるものが非常に多い。從
つてその
税務署の收納する税額の大部分が、酒の
税金であるというようなときには、比較的
努力目標に対する成績が挙げ易いということになりますが、これに反して管内にサラリーマンばかり住んでおるというふうなときには、これはもう源泉
課税で大体……。或いは中小商人等が非常に多いということであれば、
申告納税によるところの事業所得に対する
課税というようなことで、
努力目標に対する何といいますか、
努力にも、非常にその
税務署々々々によ
つて違いがあるだろうと思います。そういうふうな違
つた状況にあるものが、たまたま比較的
簡單に容易に
税收を挙げ易いような
事情にあるものが、すでに
目標を突破しておる。どこそこは
目標を突破したが、どこそこは突破しないというようなことで、非常に細かいものが数多いというような所では、
税務署の職員の
努力というものは容易ならんものが多いのでありますが、而も與えられた
目標に達しない。而も
目標に達するだけの
徴税をするためには、
目標に対して、みすみす無理な
徴税をするということは分
つておりながら、先刻どなたかおつしや
つたように、非常によく分るけれども、あなたの
申告は非常に正しいと思うけれども、協力する
意味で
税務署の方に納めて貰いたい。
税務署を助けて貰いたいというようなことを、第一線ではしばしば繰返して言われておる。又そうい
つたことのために、心にもなく、
余りにやかましく
税務署が言うので、税務職員が來れば煙草をやるとか、或いは酒を飲ますとか、或いは變應するというような手を使
つてでも、何とか正直な自分の
申告をそのまま受入れて貰うというように
努力するところに
納税者側の
努力がある。というところに今度は反対に税務職員の涜職とか、何とかいう問題が起
つて來るということにな
つて來ると思います。そこで第一線の
税務署は、管内の
事情がよく分
つておる。又或いは管内の営業者についても、どこの誰は近頃営業が不振であるとか、これに反して他の何の其は営業が振
つておるというようなことが、手に取るように分り勝ちだと思いますので、大体この
税務署は管内から本年度どれくらいの
税收を挙げ得る見込があるかという、向うから却
つて努力目標をお取りにな
つて、それを総合して御覧にな
つて、尚
國家財政の見地から、これでは足らんということであるなら、更に何とか再考して、
実情に即した
徴税をすることによ
つて、ほぼ
大藏省の所期する税額を挙げることができるがというふうに、こつちから
目標を頭割に持
つて行くのでなくして、分
つておる
税務署の方から
目標を
申告させ、それを精査されて、そうしてそれによ
つて税收を挙げるということに、
大藏省が
方針をお変えに
なつたならば、
大藏省が口癖のように言われるところの、
税法に適した適正な
課税が行われ、どこにも不平を
言つて税を納める者がないということはなくなると私は思うのでありますが、如何でございましようか。殊にこの二十四年度においては、しばしば國会においても問題になりましたが、
余りに所得を水増しされておるような嫌いがある。どう考えてみても國民所得がこんなに殖えておるとは考えられない。ところがそれに
國家の
收入の大部分が依存しようというこの
税法、これには
税率が引上げられたということがなくても、一種の増税が行われ得るということを予期しておるときに、
税金攻勢などというような言葉はあまり感心しない言葉でありますけれども、二十四年度の
税金攻勢というものは、一層拍車をかけると思うのでありますが、私はこの際に國民に協力せしめて、そうして國の財政を堅持することに協力せしめるというところで、むしろ第一線の方から
目標を忠実に
申告せしめ、そうして、更にそれを
政府が精査して、過少に
申告しておるものがあるならば、そうでないだろうというようなことを鞭撻されるのはいいが、多少その点の何というか、
方針をお変えになるということは、國民に得心をさせられる所以ではないかと思いますが、そういうことをお考えになる考えはございませんのでしようか。