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1949-06-09 第5回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年六月九日(木曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○租税制度に関する調査の件   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) これより委員会を開会いたします。  租税制度に関する調査の件でありますが、本日は午前に安本の方、午後に経済團体連合会内山さんというふうに御報告をいたして置きましたが、都合によりまして午前午後を取替えまして、只今から日本経済團体連合会内山理財部長のお話を伺うことにいたしたいと、こう考えます。
  3. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 私経團連の内山でございます。先だつて私の方の税制専門委員会が中心になりまして纏めました税制改正基本方針に関する意見というのを発表いたしまして、これは皆様のお手許にお送りしてあると存じますが、尚、六月二日にシヤウプ調査團一行、それに司令部のモスさんを加えまして六名お出でを頂きまして、そうして経團連を構成とております日本産業協議会は勿論でありますが、そり他金融團体、それから中小企業関係金融、それぞれの意見も述べて頂きまして懇談をいたしました。それでそのときの極く大体の記録と、それから各方面から提出されました資料の中の特に重要な点を拾いまして、それを纏めましたので、それを本日お配り申上げた次第であります。このシヤウプ調査團との懇談のときに、他の團体から出ました意見は、経團連として十分に練つた結論というわけではございませんので、各方面のそれぞれの御意見がそのまま出ておる点もございますので、その方は一應参考資料というふうに御解釈頂きまして、経團連としての意見は過日お送り申上げました税制改正基本方針に関する意見の中に盛られておるわけでございますから、本日この方につきまして特に私共経團連として重きを置いております点を拾い出して、少し敷衍して御説明を申上げて見たいと思います。今度の税制改革の一番大体の基本方針でございますが、これにつきまして税制の体系を相当根本的に変える必要があるかどうかということも一應檢討して見たのでありますが、これにつきましては現在日本税制を全面的に檢討する必要があるという一番大きな理由は、インフレーシヨンの結果、すべての方面に非常に大きな変化が起きて、又非常に変態的な現象がインフレーシヨンの発展の上において起つておる。そのために税制関係のいろいろなことが非常な混乱に陷つておりますので、その意味税制全般亘つてこの際振返つて檢討して見ることが必要であるのでありますが、併し現在一番強く必要を感じておるのはそういう点でありまして、何か税制体系そのものに、日本税制体系に非常に大きな欠陷があつて、これを根本的に改めなければならんというような強い理由は今のところ必ずしもないのではなかろうか。むしろインフレーシヨンによる混乱、変態的な状態というものにまだ十分には收まつておりませんので、そういう意味から申しましても、税制の体系を非常にいじくるということは、この際必ずしも適当ではなかろう。今はやはりインフレーシヨンによつて起つた混乱に対する対應の意味を一番強く出し、同時に日本経済の安定のために障害になるような税制を直し、安定復興にできるだけ都合のいいように税制を修正して行くということが大体の方針になるべきである。こういうような考え方で今度の問題を取扱いましたのであります。  そこで第一の問題になりましたことは、一に歳出を整理減少せしめることによつて、國民の租税負担を漸次適正化する方針を取られたい、こういう問題でございますが、どう見ても現在の日本税率は高過ぎるものが非常に多い。高過ぎると申します意味は、税率が高いために却つて税法通りの徴税ができなくなつてつて、そのために非常な不公平な点が起つて來るということが一つ。それからもう一つは、税が高いために貯蓄心をむしろ阻害して、或る意味で消費を奨励するような面がある。これは法人税について申しますれば、折角苦心をして利益を挙げましても、非常に高い税率がかけられるという状況では、むしろそれを使つて、そうして経営が楽に行くような方法を取る方がいいという方にややもすれば向い勝ちである。それから個人の所得税の面から見ましても、これは税制が悪いと言えば悪いのでありますが、家族合算制が取られておりますために、主人が相当のすでに收入を得ておりますということになりますと、その家族が勤めに出て若干の收入を挙げますと、それに対して累進課税で非常な高率な税がかけられる。それならばむしろ勤めに出ないで家でぶらぶらしておる方がいいというような氣分が起る点もある。或いは又そうでありませんでも、一つの仕事だけでは余力がありますので、幾つかの会社に関係し、いろいろな方面で働こうといたしますと、これが又累進課税で非常な税を取られるものでありますから、むしろそういう場合には、給與の形で貰わないで、自動車だけ付けて貰えばいいとか、或いは料理店勘定書拂つて貰つて、それで給料の代りにするといつたようなことで、一方で税金を脱がれると同時に、或る意味で一方消費を奨励するような傾きがなくはない。又税のために、預金なぞに対しましても税を非常に追求されるために、銀行へ預けるよりも箪笥預金にして置いて、税のかからない方法をとつた方がいいというような傾向もあります。又これは小さい一例になりますけれども、養蚕の共同飼育をいたしますと、相当経費を合理化されるのでありますが、共同飼育に参加すれば收入が非常にはつきりして來ますために、まあそういうものに加わらずに、個人々々で能率が悪くても各戸にやつている方が税を余り拂わないで済むというようなことになる、そのために折角合理化方法がはつきり分つているにも拘わらず、税が障碍になつて合理化ができないといつたようなことがある、そんなようなことは、いろいろな方面にその事例が考えられるのでありまして、とにかく戰爭に傷ついて、敗戰後日本のことでありますから、できるだけの税負担をしなければならんことは当然であるけれども、現在の実際を見ますると、どうしてもこれは軽減するという言葉ではこの際必ずしも適当でないかも知れませんが、とにかく適正化して行くという、軽くするという方向で適正化することが是非必要だということを強く実際に皆さんが感じたわけであります。そこで然らば如何にしてそれを適正化するかということでありますが、それについては結局二つの方法しかないわけでありまして、その第一が、歳出を減らすことを極力考えて頂きたい。それにようて租税負担を適正な程度まで軽減する、適正な程度まで軽減することができると、税收総額としては必ずしも減らないという一面もあるわけでありまして、その意味においては、第二に掲げてございますが、秘の捕捉率を高める。税率をむしろ引下げて補足率を高めるという方法をとる、結局この二つが根本の問題になつて來たわけであります。それで第一の方の歳出軽減ということにつきましては、まだ経團連といたしましても十分の檢計を経ているわけではございませんが、先ず大体の方向といたしまして、行政整理の徹底ということと、それから若干の價格改訂が必要でありますが、價格差補給金、それから輸入補給金といつたようなものの相当思い切つた減額方法をとるべきではないか、この二つのことを掲げているわけであります。補給金の減額につきましては、実際の業界としてはいろいろな悩みもあり、問題もあるのでありますが、併し日本の経済をだんだん正常化して行く、殊に國際的な採算を考えて物價政策なり或いは産業政策なりをとつて行くということを考えます場合において、どうしても大きな方向としては補給金を漸次減らして行くということが必要なわけでありますので、ただ現在その補給金を切りつ放しにするということでなしに、必要な部面については價格の改訂も行い、又その他取引の正常化を図る、統制を撤廃すべきものは撤廃するということによつて補給金を減らすことが大きな方法として考えられていいであろう。そういたしますと、現在安定帶物資補給金輸入物資補給金とを併せますと、二千億以上のものが予算に計上されておるのでありますから、これを仮に、まあいつまでという問題はありますが、半分減らすことができるとすれば、そこに一千億の財源が出て來るわけでありますから、まあこの方にいろいろな方法を考えて相当の努力を傾ける必要がある。それから行政整理という言葉でここでは簡單に表現してございますが、先般來行われようとしておりまするいわゆる行政面機構面の局課の数を減らすとか、或いは人員整理をするというだけの狭い意味でなしに、もう少しこれを廣い意味にとつて頂きまして、來年度になりますと、復金に対する復金債償還その他のための政府出資というようなものも数百億のものがやり方によつては必要がなくなるのではないか、その他公團その他に対する政府の国庫の補給金というふうなものも、やり方によつては減らして行く余地が相当にあるであろう、一般の人員整理の外に、そうした意味においての政府の歳出面相当考えて頂きますならば、これはまだ数字を十分檢討しておりませんけれども、來年度においては少くも相当多額の歳出の縮減ということが可能であろうと思われるのであります。そこでその歳出の縮減によつて出て來ます分を……無論一方では又新らしく歳出を殖さなければならない事柄もあると思いますが、併し先程申上げましたように、税の負担が重過ぎるために、いろいろな障碍やら不公平を生じておるということが歴然としておるのでありますから、税の適正化軽減による適正化という方向を是非強く取る必要がある、これがまあ一つの根本の考え方であります。歳出整理縮小の方は、租税と直接関係のない別な大きな問題になりまするので、むつかしい問題ではありまするけれども、やはり今度の税制改正についてはどうしてもこの点に触れなくては、もう解決しないというふうに考えられる次第であります。  それから第二に、税率軽減して所得の捕捉率を高めることによつて税負担の公平を図つて貰いたい、これはまあよく言われておることと同じことを経團連としても考えておるから、特に新らしいことがあるわけではございませんが、ただこの問題の具体的な実行の方法といたしまして、然らばどうしたらそういうことができるかということになるのでありますが、今の税率でも國家予算のバランスを合せるのが相当むつかしい状態にあるので、これを更に税の軽減をするということでは一層赤字になる危險があるのじやないか、今の税率で取れないところが非常にあるというなら、先ずそれを取つて見たらどうか、取つて余裕が出て來たならば、それから税を下げたらいいじやないかという考え方が一方で強く行われておるわけでありまして、これに対して片方では先ず税率を先に減らして貰えば捕捉率が高まるというので、鶏と卵の議論のようなふうに一面ではなつておるのでありますから、従いまして、どうしても税の捕捉率が高まるような方法を一方で相当強く講じつつ、税率軽減するということを考えなくてはならないと思うのであります。この税の捕捉率を高めるためには、徴税機構の強化ということも必要なのでありますが、最後の方に出て参ります第八のところに、「申告納税制度を改善し、所得標準の内規を公表されたいこと。」、この「所得標準の内規を公表されたい」ということが民間團体として特に強調したい一点であるわけであります。申告制度につきましても、今の申告制度は余りにむつかしくできておつて、実際上余程よく研究しておるものでないと正確な申告ができない、これをもつと簡素化して行く。この問題は要するに日本といたしましては、まだ申告制度に非常に慣れておりませんので、十分慣れて來た上は、これは正確にやるのが本当かも知れませんけれども、現在の日本の実情から考えまして、できるだけ簡易なものにして貰いたいということを一方で要望しておるのでありますが、もつと実際に必要なことは税務署が所得の査定をいたしますときの査定の大体の標準があるわけでありますから、それを全部公表ということは無理かも知れませんが、公表して差支えがないと思うものも相当あると考えられますので、そういうものを一つ大体の標準を定めて予め公表して貰いたい。そうすればその標準從つて余り税務署考え方と大きな食違いが生じないように、最初から同業者の申告ができるであろうということであります。これには税務当局の側においても、課税標準というものを公表し得るような相当客観的な根拠を持つた標準を調査研究して頂く必要があると思うのでありますが、是非そういうものを研究して、民間に納得の行くような形でこれを公表して頂きたい。そうすればそれに基いて申告するようにすれば、今のように申告による納税と査定によるものとの間の非常に大きな開きがあるというようなことをものとなくして、そうして実際に合理的な申告制度ができるようになるだろう、こういうことであります。尚、今の点に関連いたしまして、記帳方法の統一或いは帳簿組織の普及というようなことが必要なことはこれは申すまでもないことでありますが、ただ大企業につきましては、この点は殆んど問題にはならないのでありまして、中小の企業において特に帳簿組織によるものが問題になるわけであります。それにつきましては、先日お配りいたしましたシヤウプ会談のときの資料の中に、中小企業方面から若干具体的に研究したものが出ておりますから、御覧頂きたいと思いますが、中小工業方面では相当研究もしておりまして、これはどうも強制的に税法と結び付けて、それに違反した場合は罰則を適用するというような形にまで行くことはやはり非常にむずかしい問題と思うのでありまして、大蔵省もその点で躊躇しておちれるように推察いたしますが、民間としてもそこまで行くことに対しては相当問題があると思うのであります。併し一種の國民運動的な意味において帳簿組織の完備を十分に図ると同時に、そうういふうにして出て來ます優良な記帳の結果に対しましては、税務署も査定の場合にこれを十分に尊重するという何らかの方法を講じて頂きますならば、相当に普及もいたしましようし、成果が上るであろうというふうに我々民間人としては考えておるのでございます。それから尚もう一つ、徴税とそれから査定の問題に関連して主張いたしておりますことは、第九に掲げております「徴税は公正且つ民主的に行われたいこと。」結局これにつきましては、産業別又は地域別に民主的な諮問機関のようなものを設置して頂いて、そうして先程申上げました課税標準調査檢討というようなことにもこれを利用して頂くと同時に、査定そのものについても何か民間でもつと本当に納得の行くような機構を一つ作つて頂きたいというのが、ここで考えております要点であります。そういうような方法をとりまして、税の捕捉率を高める方法を一方で極力講じつつ、税率を適正な程度まで軽減する方法を考えましたならば、歳入は総額は減らないで、而も相当の不合理な税を軽減するということが可能であろうというふうに考えておる次第であります。その程度を非常に具体的に計算して見るということは困難でありますが、大体の財界の経驗者の勘として、相当にできるだろうという考え方をしているわけであります。それから第三の問題といたしましては、「税率軽減は特に直接税について速かに行われたい。」結局結論といたしまして、間接税の方に相当重点がかかつて行くという点になるわけでありますが、どうも現在の日本の実情から見ましては、そういう方向へ進む方が適当ではないかということであります。この点についてはすでにいろいろ論議されておるようでございまして、私共の考え方といたしましては、同じ考え方相当廣まつておると存じますので、特に御説明申上げる程のことはなかろうかと思うのであります。  大体以上申上げましたようなことが骨子になつておるわけでありますが、尚私共経済團体といたしましては、法人税について特別の関心がございまするので、その点を意見書の四と五に述べておるわけであります。四は、「経済の安定に寄與し、且つ税源を涵養するため、特に法人経理健全化に留意せられたい」、これは前に申述べました一般法人の各論の一つにも当ると考え得るわけであります。どうも現在のような課税方法では、無論課税方法だけではなしに、これは経済統制その他のいろいろなものと関連して來るわけであります。とにかく税率の上から見ましても現在のような法人税を課せられておるのでは、経営者の立場から見てできるだけ利益を出して、そうしてこれを社内に蓄積する、蓄積するというと非常に積極的なように聞えますが、現在はむしろ食込をできるだけ防いで行くという、むしろ消極的な蓄積の方が強いのでありますが、とにかくそうした意味においての資本の企業内における蓄積をできるだけできるようにして、そうして企業の基礎を培つて行くことが現在は非常に必要なときである。それを先ず相当に努力して頂きませんと、法人税についての税源そのものがもう枯渇する危險にさえ瀕しておるということであります。この点は事業の種類により、会社により非常にいろいろでございまするから、反対の事例を挙げれば幾らでも挙げられるところであると思いますが、大体基礎的な産業についての態勢として、そういうことが考えられますので、十分余力のあるところを取るということは別途に十分考えるということにして頂きまして、その方面の或る程度甘くなる点がありましても、片方において税が重いためにむしろ消費を奨励するような結果になつたりして、資本の蓄積の意欲を非常に減殺するというようなことにならないようにして頂きたい。こういう意味において法人税軽減がある程度必要である。又このことは外資の導入問題と関連してよく言われておるところでありますが、外國資本が入つて來ます場合においても、日本法人税というものが余りに重いと、それが障碍になつて外國資本が入りにくいという点もありますから、そういう意味において若干の税率軽減をして頂きたいと思う。尤もこの点は外國と比較いたしますと、そう大きな開きがあるとは必ずしも考えられないのでありまして、非常に大きな率ではございませんが、まあ現在の法人普通所得税税率三五%を一〇%ぐらい引下げて貰い、二五%見当にして頂きたいというのが大体民間の希望であります。その程度でまあ大体いいのではないかと思うのであります。五%という案も官廳方面ではおありのようでありますが、五%でも勿論軽減しないよりいいのでありますけれども、もう少し引下げて貰いたいというのが民間の空氣であります。それから法人税に関連して一番大きな問題は、何といたしましても資産の再評價の問題であります。これにつきましては経團連は本年二月十二日付でありますか、一應意見を出しておりますので、ここでは極く簡單に触れておるのでありまするが、大体の考え方といたしましては、二月頃に大藏省税制審議会で立案いたしました資産評價の案の線で大体よろしい。つまり強制的に一律に行くのでなしに、評價する側の選択によつてどの程度評價するか、又いつ評價換えするというようなことは、企業の実体に即して企業側に任して貰う。ただ余り評價が目茶苦茶になつては困りますから、最高限度を決めて頂く、そうしてその評價換えによつて出て來る差益の処分方法を十分合理的に決めて行くということになるのであります。大体大蔵省考え方で、この際はやるのが適当であろう。單一爲替レートも決定したことでありますから、この問題はできるだけ早急に決定をして貰いたいというのが民間側の意向であります。ただこれに関連して、是非民間側として大藏省税制審議会の案の中で、修正して貰いたいと言つて要望しておりますのは課税の点であります。この課税につきましては、理論的に申しますと、これは再評價によつて出て來る差益というのは、便宜上差益という言葉を使いますけれども、実際は利益ではない。それで我々團体の方におきましても、差益という言葉はわざわざ避けまして、評價差増額という言葉で現わしておりますが、これはいずれにしましても本当の利益ではないのであります。何人もそれによつて特に利益を受けるということはないのでありますから、ただ利益を受けるように見えるのは、その結果として減價償却の承認される金額が多くなる、そのために法人税賦課類が結局減つて來る。つまり課税が減るという点において会社が一般的な利益を受ける。又その意味において株式の價格も上る。それによつて株主が若干の利益を受けるということになるのでありまして、それ以外には評價換えをしたからといつて收益力が殖えるわけでもなければ、経営に非常に便宜が起るというわけでもないのであります。勿論経営上から見ますと、税の軽減ということの外に、経理が非常に合理化されて参りますし、いろいろの点で利益を受けますが、それ以外にはない。尚、減價償却公定價格に織り込んで貰うことができるようになれば、それはそれだけ法人として利益を受けるということが言い得るのでありますが、これも併し價格が自由である場合には、全くそれが問題にならないのでありますから、そういうふうに考えますと、法人の税を軽減する必要があつて、そのために一つは再評價を考える。然るにその軽減の結果を利益であると見て、これに又課税して、その大部分を取上げてしまうということでは、折角評價換えをすることの意味がなくなつてしまうのではないか。こういうのが大体企業側考え方であります。理論的に申しますと、全くその線が正しいと言わざるを得ないのであります。ただ併しこの資産評價による税の軽減を、全部減らし放しでいいかどうかということになりますと、現在の財政の事情から考えまして、それでは困るという議論が大藏省あたりからはどうしても出て來ると思う。今日になつて見ますと、來年度ぐらいは先程申上げましたように、相当歳出の縮減もできると思いますので、やや事情が変つて來たと言えば、変つて來たのでありますが、今年の一、二月頃はまだそこまではちよつと考えにくかつたものでありますから、それでまあ財政事情から見て、幾分の課税は止むを得ないということで、民間でも各方面でそういつた表現を用いておつたわけであります。それからもう一つ課税の問題で非常に問題になりますのは、企業再建整備法によつて國家補償打切りの結果生じた損失の穴埋めのために、債権者債権切捨てたもの、又その前に株式資本切捨てたというようなことがございまして、株式資本切捨てに対しては、むしろ再評價によつて或る程度利益を與える方が正しいと言い得るのでありますが、債権切捨てた部分に対しては、結局そういうふうに債権切捨てなくちやならないようになつた理由は、あのときの資産評價帳簿價額以上に評價してはいかんという標準を設けて、新勘定における資産評價、或いは第二会社に出資する場合の資産評價を、帳簿價額でやろうということを強制された、実際には当時においては帳簿價額より遥かに多くの價値のあるものを、わざわざ低い帳簿價額評價した結果として、債権者債権切捨てを受けて來ておると、その評價を今度はそれを今までのやつが間違つておるから、直して評價換えをして評價増しをするのである。それによつて差増額が出て來るのであるということであれば、これを債権者に戻すのが至当ではないかという議論があるわけであります。これは企業再建整備がまだ全部完了しておりません今日としましては、切捨を食つた債権者としては、一應御尤もな要求になるわけでありまして、この点をどう調節するかということが一つの大きな問題になる。それでまあそういつたことを含めまして、企業再建整備が全部終らない間に、この資産の再評價を実行しなくてはならんという事情から考えますと、企業としても、株主としても非常につらいところではあるけれども、まあ幾分かの課税は甘受するより外ないであろうという氣持になつておるわけでございます。併れながらその場合におきましても、税制審議会の案によりますと、評價換によつて出て來た差増額、それは資産の部にそれだけの増加が來るわけでありますが、バランス・シートの上におきましては、これを負債の側に、一應再評價調整勘定として負債勘定を立てまして、そうしてその調整勘定を一定期間に恒久的な勘定に振替える。恒久的な勘定と申しますのは、資本金に振替えて増資をして、株式の形としてこれを一般に賣出すか、又は旧株主に交付するということが一つと、もう一つは積立金として社内に残す。この二つの途が考えられておるわけでございます。でこの評價差増額課税をいたしました場合に、その税金をどこから納めるかということが非常に問題になるのであります。これについては結局資本金に振替えることが或る程度可能でありますからして、その資本に振替えました株式を物納の形で國家に納める。國家がこれを賣り出して現金に換えるというのが一番筋道としては筋が通つておるやり方になるのではないかということは一應考えられたわけであります。ところがそうやりますと、非常に大藏省が賣れるか賣れないか分らない株式を持たなくてはならないことになる悩みがありますが、どの道結局は民間に賣り出すものであるから、それを会社が代つてこれを民間に賣り出して、それによつて得た資金で納税をして貰うのがいいのじやないかというので、これが一種の水増し増資でありますから、本來價格を付けて賣り出すのはおかしいと言えばおかしいのでありますが、それを幾らの價格で賣り出してもよろしい、額面よりも低い價格で旧株主に交付しても差支えない。又一般に賣り出す場合はプレミアム附で額面上りも高い價格で賣り出しても差支えない。ともかくそうやつて株を賣り出せば現金が入つて來るから、それで税を納める。こういう考え方に立つておるわけでございます。併し実際に当つて見ますと、とても評價換によつて出て來ました差増額を全部資本金に振替えるということは、これは到底できないのでありまして、大企業の場合でも相当の部分は積立金にして社内に残さなければならない。それでも税金を納める現金を取得する程度のことには、大会社の場合は少しも困らないのでありますが、これが中小の会社になりますと、とても株式を現金に換えるということは非常にむつかしい。株主といつても大体範囲が限定されておる。それの拂込みの能力ということから考えて見ると非常にむつかしい場合が多いのじやないか。そうすると、特に中小の規模の会社においては積立金に相当沢山振換えなければならん場合が出て來る。そうなると税金を納める現金をどこから得るかということが第一に問題になる。それから尚よく檢討して見ますと、この株式に振替えてこれを民間に出した場合は、これを殊に旧株主に割当てますと、一種の現物配当の形になりますから、まあ配当したのですから、それに或る程度課税をしても止むを得ないとい、う理論も成立ちますし、又株價の上にもそういう形をとつた場合は非常に敏感に反映されるわけでありますから、この分に対しては或る程度税をかけても止むを得ないが、併し積立金として社内に残して置いた場合に、それを普通の利益と同じように考えられては、これはとてもやりきれないし、理論的に考えても非常におかしい。社内に残して置くということになれば、評價換えしなかつたことと、経理の理論から言えば少しも変らないのでありまして、ただ何故それにも拘わらず評價換する必要があるかと言えば、それは減價消却を適正にし、又経理のやり方を適正にするために必要なので、評價換は必要であるけれども、併しその評價換によつて出て來たものを積立金に振替えて置くということは、少しもこれは利益が出たというふうに考えるべき性質のものではなく、そこで殊に又積立金にした場合に、これに課税することになりますと、それは結局企業が一種の財産税を納めるというような形になつて來ます。企業の負担になつて來る。株主が負担するということであれば或る程度止むを得ないが、企業が負担するということは、何としてもこの際全体の法人税も減らさなければならんとか、いろいろな問題があります際に、そういうことは妥当でない。従つて株式に振替えた場合の二割課税というものは、これは評價換によつて起る税額の限度と睨み合わせて彈き出した一種の数字でありますから、まあ二割ということは或いは止むを得ないかも知れません。民間の実際の希望としては、これももつと減らして貰いたいし、無税にして貰いたいのでありますけれども、併しまあ二割程度は止むを得ないという氣持も内心には相当あると私共は感ずるのであります。併し積立金にした部分に対しては、これはどうしても二割では何としても高過ぎる。税の軽減する方を算盤を彈いて取つて見ましても、一律に二割では、相当会社の事情によつて評價換をしない方が得だということになる場合も出て來る可能性があるのでありまして、でありますから、これは少くも一割以下に積立金の場合にはして貰いたい。本当言えばこれは税を無税にするのが一番正しいのであります。無論それを主張するのでありますが、企業再建整健法の関係もありますし、財政上の関係もありますから、どうしても止むを得んというならば、その程度というのが大体の委員会考え方であります。  これで大体最も重要な点は以上申上げた通りでございますが、尚所得税についてちよつと簡單に考え方を申上げますが、この所得税企業に取つてはやや間接の問題でありますけれども、結局やはり会社の負担が増大する形になりますので、会社としても非常に関心を持つところでありますが、これはもう当然インフレーシヨンの結果非常に重くなつておるのでありますから、減らして貰いたいというのがその線でありますが、基本の考え方でありますが、内容としましては家族控除をもつと多くして貰いたいとか、それから合算制を成るべく止めて貰いたい。経團連として前から主張しておりますことは、年末調整というと、少くも勤労所得、或いは勤労所得の中でも全部というわけには行かないかも知れませんけれども、一定額以下の者等につきましては年末調整ということを止めて、そうして月間制にして貰いたいということを主張しております。税率につきましては大体一つの空氣でありますが、最高所得の三割乃至幾ら多くても五割を超えない程度の率にして貰わないと、それ以上の率になりますと、所得を正直に申告して税を納めるという氣持が非常に薄らいで來る。だからそういつたところを大体の目安にして軽減を図つて貰いたいという氣分が相当強いようであります。大体そういうことが民間側としての考え方のように考えられます。地方税につきましては、どうもこれは非常に複雑で、私よく分りませんのですが、要するにいろいろ沢山問題がございますので、これは調整を図つて貰いたいということを主張しております。大分長くなりましたので、私の方から申上げますことは、一應この程度にしまして……
  4. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 尚御質問等がありますれば、この際お願いしたいと思います。
  5. 小川友三

    ○小川友三君 今のこの固定資産の再評價の問題ですが、現在の、前月までで結構ですが、法人株式総額はどのくらいになりますか。
  6. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 再評價の結果、株式相場がどう変るかという……
  7. 小川友三

    ○小川友三君 現在会社資本金は、拂込資本金は日本中で幾らになりますか。
  8. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 拂込資本金は、これは二十一年末頃の計数でございますが、大体四百……
  9. 小川友三

    ○小川友三君 昔の計数は知つております。今の計数を……
  10. 内山徳次

    説明員内山徳次君) その後は大して変つておりませんですから、大体四百三十億乃至四百五十億程度であると思います。
  11. 小川友三

    ○小川友三君 大分変つておりますね。銀行だけでも百億以上増資しております。富士銀行は十一億、千代田銀行は十億、帝國銀行は十億、第一銀行は十億、大阪銀行は十億です。銀行だけでも百億以上増資し、紡績会社においても五十億以上の増資を、昭和二十一年以降やつております。これを計算に入れないでこの再評價問題を論ぜられて、而もあなたの経済連合会の方では一〇%ぐらいの再評價課税はしようがないということを、ここで軽々しく言つておりますけれども、これは企業全体に対する影響が非常に大きいのです。それで公称資本金は一千億を突破しておるであろうということを言うのであります。一千億に対して、政府は二百億税金を取つておる。法人企業財産税として取つているという形体にも、あなたのおつしやるような会社にも、無論結付かれております。これは一千億に対して再評價はもつと上るのでしよう。もつと厖大に上ります。殊に私鉄だけにおきましても、五百億ぐらいの再評價になるのではないかという見方は当然です。昔は、昭和二十一年前は、枕木一本八円、今は松の枕木でも四百五十円、檜が八百円でありますから、そうすると再評價でやつて行きますと、非常な厖大なものになります。それをあなたの経済連合会では一〇%の課税は、これは止むを得ないというような、今お話を聞きましたが、これは杜撰な話だと思います。私は取引高税と同じ一%を主張しておる。再評價に対する税金一%以上の負担ができるか。それでは政府が五千億万円の評價をしてしまつた場合に、あなたのおつしやる一〇%という五百億万円も、法人が金を持つているわけがない。今紙幣の発行高が三千億の台割れになつておる。こうしたわけですと、あなたは一〇%だから三百億万円から四百億万円の納税、而もこの團体の代表として、経済連合会の代表として國会に見えて、三百億ぐらい、一〇%ぐらい拂うということになつたらこれは重大問題だと思う。そこでこの点につきまして、もう少しこの公称資本金というものを調べて來て貰つて、もつと我々も十分調査して、あなたの方はどう出るかというので、やはり國全体の企業を心配してやつているのですが、その点について、一つ御研究を願いたいと思います。ちよつともう一つ。あなたがやつたことに間違いがあると思いますが、箪笥預金をしてしまつて銀行預金をしない。銀行預金税務署が調べるからということを言われましたが、税務署では……、ここに専門家の先生がいらつしやいますけれども、銀行預金は調べませんよ。調べない筈です。それですからそういうことを、専門家がいらつしやいますから、銀行預金というのは、どんどん奨励して行つて税務署が調べないという形体になつておりますのを、あなたはどうして、これを、そうおつしやられたかちよつと一つ伺いたい。
  12. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 再評價の問題は非常にお説の通り申上げるまでもないと思います。又税率を少くするという点については、全くそういう線で行けるならば、民間としては双手を挙げて賛成だと思います。ただこの再評價方法でございますが、いずれにしましても、税制審議会の案によりましても、莫大な再評價になることはお説の通りでございますので、これの課税は非常に重大問題でありますが、ただまあそこで一つ若干ゆとりがありますのは、再評價するかしないかということは大体民間の自由に任される。從つて大体負担し得る程度で、又將來の配当等もでき得る程度で再評價をして行かなければならんということになりますと、物價指数等で現われ得る程の再評價は実際には行われない。こういうふうに考えておりますので、その点を前提にいたしております結果、相当程度是非必要な再評價ができる程度ならば早くやつて貰いたい、こういうのが大体民間の方の氣持なのであるわけでございます。それから銀行預金に対する問題でございますが、これは私先程ちよつと説明が非常に不十分だつたわけでございまして、今拜聽いたしました通り、銀行預金については秘密性を尊重するという建前になつておりまして、大体そういう方針で行われておるわけでございますが、実際問題といたしましては、特に預金を調べるというわけでもないのでありますけれども、やはりこの所得が幾らあつたかということを追究して参りますと、或る程度そこに触れざるを得ない面が現在の徴税においてはやはりあると私存じます。それで今の税率で脱税の絶対に起らないように調査を進めて行くということになりますと、やはり或る程度そこに触れて來ることは止むを得ないわけで、多少触れておる面があるように私共実情において伺つておるのであります。従いましてその点は一つ御了解を願いたいと思います。
  13. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 経團で大変この税制改正について詳しい御調査を下すつたことに対しては敬意を表するものでありますが、最近輸出の振興について企業合理化を叫ばれており、集中生産がやかましく言われておる。併し先程あなたがおつしやつたように、養蚕関係共同飼育の例をお挙げになりましたが、これと同じように、集中生産によつて企業合理化して、折角輸出の振興を図ろうと思つても、税制の改革がなつていなければ、結局一つ一つの元の企業体で以て経営した方が経営が成立つというようなことも起ると思うのですが、これにつきまして、何か御研究になられたことがおありですか。
  14. 内山徳次

    説明員内山徳次君) ちよつと用意がございませんで、集中生産の結果、税にどう響くかは十分考えておりませんので、ちよつとお答え申上げかねますが、併し可能性はあると思います。
  15. 天田勝正

    ○天田勝正君 昨日も申上げた通り、これは今後の税法に関する立法上の調査をやつておるのでありまして、あなたと揚足取りをやりつこするということではありませんので、そういうつもりで一つ打明け話を願いたいと思います。先ず第一に、この資料を頂戴いたしましたが、この第一の中の括弧の四であります。「國税、地方税を併せた主要税目の課税率を比較すれば、わが國は英米に比し相当高率と称することができる。」、この相当高率とは、あなたの方の御研究ではどういう比率になつておりましようか、これを先ず伺います。それから一般企業におきまして、生産高でもよろしい、或いは資本金額でもよろしい、或いは利益を基準としてでもよろしいのですが、そういうものから導き出されたところの自分の所得というものが、この限界を超えると税金によつてむしろ減つてしまう、或いはこの所得以上には幾ら殖やしても実際の收入というものは殖えない、こういう限界を御研究になつておるかと思いますが、このことは個人を例にとつて見ますと分るのですが、私の調べでは昭和二十一年の勤労所得からいたしますると、千円以上の所得を貰つても永久にこれは千円以上の手取りにはならない。それは無限大に千円に近よつて行くということだけであつて、月に百円殖えても実際には一銭ぐらいしか殖えない、こういうことになる。現在はどうかというと、私は正確な計算はしておりませんが、恐らく二万円が限界ではなかろうか、それ以上になると、むしろ逆に減つて來る、どうして減つて來るかと言うと、これはよく議論になるのですが、現在は税金と称せないところの税金と何ら変りない支出がある。例えば自治体警察に対するところの納付金というか、寄附金というか、こういうもの、六・三制の支出、こういうものは税金とは言つておらないけれども、住民から見ればはつきり税金なんです。これを出さなければその町に、その村に住んでおられない、こういう筋合のものです。こういうものを勘定に入れますと、殖えたことが減つて來る、税金面でありますれば、御承知の通り一方の、例えば收益税が課税されれば、それだけを引いた残りに税金がかかつて來る、こういう筋道でありますけれども、ところが一般のそうした税金にあらざる税金にひとしい支出というものは、これは殖えた総額の方にかかつて來ます。例えば私共が一万八千円の歳費から二万八千円の歳費になつた。ところがその寄附は二万八千円……総額に対して幾らという比率で寄附がかかつて來る、こういうことがマイナスになつて來る、ところで私は現在の勤労所得の面からいたしまればす、もう二万円が限界であつて、これ以上は何ぼ働いても実質的には殖えて來ないものだと、こう計算しておる、計算面の方では……。それと同様に、企業面でこうした限界というものを御研究になつておりましたらお知らせ願いたいと思います。
  16. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 外國との比較でございますが、これは税制そのものがいろいろ違う点がございますので、比較が非常に困難でありますけれども、アメリカでは法人税等は大体国税の方では最高が三万ドルを超過する分について三八%というのが最高であります。それから地方税はアメリカでは州によつて非常に違うのでありますが、ニユーヨークが比較的高い方で、一番これが最高だと思うのでありますが、七%であります。從つてこれを合せまして四五%というものが大体アメリカの法人税の最高の税率になつております、それと日本の場合を御比較になつて頂きますれば、日本の場合がどの程度高いかということがお分り頂けると思います。尚大体の此較した資料が私の方に作つたものがあるのですが、本日ちよつと持参いたしませんので、あとで差上げます。それからこれは日本の方では法人税は普通所得税が國税三五%でありまして、その外に利益率が資本金に対する十割を超えますと二〇%かかるようになつております。これが最高で合計五五%、これが國税であります。それから地方税としての事業税でございますが、この事業税と國税と合せてでありますが、計算は正確に申しますと、ややこしくなるが、事業税が大体一八%になつております。地方によりますと若干の差がございますが、大体一八%であります。從つてこれを一全部一八%のままで合せますと、五五%に一八%でありますから七三%になつております。ただ日本の場合國税と地方税と合せて計算する場合には、地方税の方が損金算入を認められておりますので、損金算入と申しますのは、御承知と思いますが、前年度の課税額を今期の損失金として認めて、利益の中からそれだけを差引いて呉れるわけでありまして、差引かれました残りに対して國税としての法人税が普通所得で三・五、その上に超過所得税がかかつて行くということになります。ですからその間の差額が少しございますが、いずれにしても相当高い、イギリスは非常に税制が違つておりまして、個人法人と合せて所得税の絶対額の段階に應じてかけることになつております。日本と大分組織が違つておりますが、併しこれを最高をとつて見ますと、四五%ぐらいが大体最高のようでありますから、日本よりは低いのであります。それから超過累進になりますために、或る限度を超えると却つてつて行くという問題でありますが、これにつきましては只今お話のように、税金でないものを税金と同じように寄附金その他の形で取られる、或いは地方で住民税であるとか、その外いろいろ所得標準にして取られるものがあるというのを全部加えた計算になりますと、ちよつと只今正確な見当が私の方でも付き兼ねるのでありますが、ただ古い話では、去年か一昨年か法人税を改正いたしましたときに、戰時中から國税だけで見て累進率が非常に高くなつておりましたために、或る程度利益率を超えますと、その超えた利益よりも課税額の方が大きくなるという非常に不合理な点が戰時中あつたのであります。これは昨年か一昨年か私覚えておりませんが、法人税の大改正をやりましたときに非常に改正いたしまして、超過累進を非常に軽くいたしましたから、現在では表向きの数字ではそういうことはないようになつております。ただやはり所得標準にしてかける。若し全部寄せることになりますと、地方によつてはかつかつになるところも或いはあるかと思うのでありますが、いずれにしても超過累進というものは、殊に法人税の場合には非常によくないものだというふうに私共は考えておりますが、現在は財政も非常に困難でありますから、止むを得ませんけれども、將來は一つ超過累進ということは段々法人税については止めて頂くのが穏当ではないか、外國事例でも超過累進という制度はあつても非常に少ないのであります。
  17. 天田勝正

    ○天田勝正君 もう一うお伺いしますが、利潤を上げることによつて超過累進をして行く。これも私から言わせれば、その累進して行くところの内容によつて違えていいのじやないか。どうしてそういうことを言うかというと、いわば極端に申せば、暴利的なことによつて利潤をどんどん上げて行くという空氣一つありますけれども、非常に技術が改善された。特にその一番いい例は、一つのことを発明した、こういうことによつて利潤が上つて來る。これは大きな会社でなくても、私は個人経営企業でもあると思うのであります。一つの発明したことによつて利益が上るのだ、こういうことはまあ出版の方から言えば、一体漱石文学というものは、漱石という人が出なければ、あの文学は世の中に生れて來なかつた。こういうものに対して同じように利益が上つたのだというところでかけて行くということについては、私は將來の税制において非常に考えなければならんのじやないか。そこであなたにお伺いするのは、企業面では要するに発明発見の場合です。このことはその人が出なければ、その機械が発明もされなければ、発見もされない。これをやはり普通の資本の利潤と同じように扱うということは、私ら非常に疑問を持つております。これらについて何か特段に税の面で研究されたことがありますか。どういう考えを持つておられますか。
  18. 内山徳次

    説明員内山徳次君) おつしやるように、所得の内容によつて変える、或いは又生じた所得をどう使うかということによつて課税方法を変えた方がいいのじやないかというような、考え方としてはかような場合なども時々出るのでありますが、ただ実際問題としてそれを分けて考えることが非常にむつかしいものでありますから、はつきりした形を今まで考えたことはございませんが、併し使い方についてだけは、例えば法人の場合でありますると、所得を社内に保留する場合と、株主に配当する場合とでは、今のように殊に資本蓄積を奨励しなければならん場合には、税率を変えるのが妥当ではないかという意見が非常に有力に出ておりまして、これも通り得る形ならば、そういうことを考慮するということを主税局長も言つているのでありますが、その收益の殖えた理由の方からも区別し得るものがあれば、確かに区別するのが妥当だと思うのであります。殊に超過累進の場合に特にそういうことが感じられるのでありますが、私はどういうふうに修正するというはつきりした具体的な方針は、今のところございませんが……
  19. 木内四郎

    ○木内四郎君 先程資産の再評價を認められた場合についても、会社においてはその再評價をすることについて、又その程度について自由であるというお話でありましたが、これは新聞にも書いてありますし、方々でもそういうことが言われておりますが、恐らくそんなことになるのじやないかと思いますが、もともと資産の再評價を認めようというのは、バランス・シートが余りに不自然で、通貨價値が非常に変動した今日、実情に合わないから、実情に合つたものにしようというのが、その制度を設ける趣旨だろうと思いますが、にも拘らず、各会社が税金その他の関係でこれを一体やらないでしようか。又やらないで、やらないというか、全然やらないのじやないが、非常に低い程度においてやるとか何とかということで、実情に合つたところまでこれをやらないでありましようか。或いはそれをやらないままでずつと行つて会社としてもいいものでしようか、その点について一つ伺いたい。
  20. 内山徳次

    説明員内山徳次君) これは再評價の場合の課税の仕方に非常に関連があると思うのでありますが、どうも一律に二割の課税ということになりますと、まあ見合わして置こうというところが相当多くなるのじやないかという感じがいたします。勿論税の上ではプラスになるところが全然ないとしても、経理合理化等で必要のある点は十分感ぜられるのでありますけれども、折角評價換をして、それに基く帳簿を作りましても、課税上それが少しも認められないということになりますと、帳簿が二重になつて、却つて非常な厄介になるというような面もあるのでありますから、そういう点、民間としては税の問題に関連した再評價というふうな措置が國家的にとられるのを待つているという状況でございます。尚、又税の方が仮に無税若しくは非常に低い税率になつた課税がされないということであれば、減價償却を認めて貰う限りにおいて非常に有利になると思いますから、或いは又公定價格にもそれが若干織込まれて來る可能性があるということにおいて、相当評價が行われることになると思いますが、併しこの場合にも現在利益が殆んど出ておらないという会社の場合には、或いは赤字になつているという会社の場合には、多少この減價償却を殖やして貰つても、まだ納税の方にはそう響かないというような事情のところも中にはありますから、そういうふうなところは再評價に対して少しでも課税されるということであると、ちよつと逡巡するのではないかというふうな感じがいたします。併し大体において、これが是非必要だということはみんな感じているところでありますし、又増資をする場合にも、殊に古い資産評價が適当になつておりませんと、増資計画を立てて、これを増資株を旧株主に割当てるにしても、新らしく賣出すにしても、標準がなくて困るというような場合も相当ありますので、そういう面から多少の課税等があつても早くやりたいというところもあるのでありますが、とにかく現在の商法では評價増しをすることが一應許されない建前になつておりますから、少くともそこは直して頂かないとできないのでありますから……
  21. 木内四郎

    ○木内四郎君 それを直した場合の話ですが。
  22. 内山徳次

    説明員内山徳次君) はあ、それがやつていいということであれば非常に特例的になりますけれども、税の方に全然とれなくても、評價換をして見ようということが出て來ると思いますが、その程度ではないかと思います。
  23. 木内四郎

    ○木内四郎君 税金の問題が非常に軽微であるとして、一体その場合会社としてはやらないでいいかどうか、評價換を……
  24. 内山徳次

    説明員内山徳次君) それはもう殆んど再評價という特別な措置が取られないのだということであれば、これは何とかしなければならんと思うのでありますが、再評價はしてもよろしい、併し税の関係はこうなんだということがはつきりすれば、税の関係では有利でないけれども、やるということは、これは相当ある問題だと思いますが、併しその場合には非常に会社側の選択がまちまちになりますから、或るものは相当必要を感じて評價換をするところもあるけれども、全然評價換をしないというところも沢山出て來るので、非常に不揃いになるという欠陥はあるのじやないかと思います。そうして評價換をするに、何か評價換をした方がいいという氣持を会社側に起させるような若干の措置は取つて頂く方が、民間経理合理化を促進する意味においても、又これを余り不均衡にならないように、この措置を運ぶ上においても是非必要だというふうに考えられます。
  25. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうすると、言葉を変えると、評價換はその程度で、会社の自由に任さない方がいいということになりますか。
  26. 内山徳次

    説明員内山徳次君) そうなるのでございます。評價換を必要とするということだけから理論的に押して行きますと、或る程度標準を決めて、一律に実行する方がいいという考え方が確かに成立つのでございます。そういう主眼をする者もあるのでございます。併し実際問題になつて來まして、一律に標準を決めてやらせるということになると、又それに伴う非常にいろいろな弊害と言いますか、負担の不均衡とか、いろいろなことが考えられ、困難な点が考えられますので、そうした点をいろいろ比較檢討しました結果、或る程度の何と言いますか、誘惑になるような種を與えてやつて、そうして実情に即した評價換をさせる。これは評價換程度ということが非常にいろいろなファクターを計算に入れて考えなければなりませんので、これを國家の手で一律にやるということになると、その標準がとても立たないので、それを無理に立てると今度は実情に即さないという点があるのでありますから、それでその点は民間の自由に任す。任すが、併し相当程度やはり評價換が行われるような方法でこの措置をやるというのが一番適当な策ではないかと考えております。
  27. 木内四郎

    ○木内四郎君 御意見もあるようですけれども、今國家が一ドル三百六十円と決めまして、間接にドルに結び付けて決めた。そのときに或るものは三百六十円の物差で計り、成るものは昔のままの物差で計つて行くということじや、余りにちぐはぐになつて実情に合わないのではないかと思います。
  28. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 御尤もなのです。それでそこを結局その会社の方では算盤を彈いて見て、資産評價ということが、大体價値をどういう標準で決めるかということなのですが、これが再建設價格と言うのでは非常に不合理な場合があるので、現在ある資産を実際それを有効に活用して、收益を上げる收益性がどの程度あるかということが非常に大きな標準にならなければならない。再取得價格ということと、收益性ということと二つの面をどちらにも片寄らないように行く必要があります。それで標準を決めます場合に、一應再取得價格的な考え方をせざるを得ないから、審議会の案では、物價指数によつて取得價格にその後における物債の騰貴率をかける。そうして法定償却費を差引いた償却の残存率というものを出して行く、それを評價の基準にするようになつておりますが、併しこれは收益力というものはその考え方標準の中には全然織込まれて來ない。一方会社の方ではどうしても收益力がどの程度あるかということを考えて、その自分の資産が幾らになるかということを考えませんと、会社経営実情に即しないものになると思うから、收益力を考えて、收益力標準というものをこれを国家の手で一律に決めるということは、ちよつと今のところ不可能に近いように思います。その方を会社に任せる。こういうふうに大体今考えております。
  29. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この固定資産の再評價の問題について一つ見通し、この問題の基礎になつている物價の点ですが、これについての経團連のよく集まりがあつていろいろ意見が出ると思うのですが、將來の物價の見通しということに関連して、この再評價の問題というものは取上げなければならんと思うので、現在でも固定資産の再評價を早くやるべきだという意見の方が強いのですが、経團連では……。私から言うと、そういう意見はだんだん減つているのじやないかという氣がするのです。そこで特に問題は、固定資産減價償却の問題だと思うのですが、帳簿價格の問題も勿論ありましようけれども、これはもうそう大したもんじやないのです。実際は減價償却の問題が中心である。である以上は、將來の物價の見通しというものに関連して、この再評價の問題を取上げて考えればいいのであつて、全体の再評價というようなことまでもやるべきであるかどうかという点について経済團体の間にどんなように意見があるでしようか。それをちよつとお聞きしたいのです。
  30. 内山徳次

    説明員内山徳次君) おつしやる意味は、減價償却の方で認めてやるならば、再評價しなくともいいのじやないかという、その意見はまあ最初からございまして、今も勿論ある意見でございますが、併しこの減價償却を認めるためには、資産評價を幾らに見るかということを少くも税務署が認めて呉れなくてはできないわけでございます。基礎になる資産評價額が決まりませんと、それに対して幾らの償却に対して税法上税金化するという問題になりますから、どうしてもそれは出て出るわけでございます。それを認めるくらいならば、それを基礎にして資本の修正をやつたらいいじやないかということになつて來るわけでありますので、償却だけを認めて、そこで再評價をしない。從つて評價課税という問題は問題にならん。そういうことがあれば、これは民間として一番都合のいいととなんでありますか、丁度それは今の減價償却を認める場合の基礎の問題それから資本の修正の問題になつて來るのでありますから、まあ現在私共が團体で財界人に接触して見ている感じとしては、だんだん再評價の必要ということの認識が徹底して参りまして、やはり早くやつた方がいいという空氣が強くなつているというふうに私共感じております。
  31. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そこで私又別の見地から思うのだが、財界の方でむしろ再評價を急ぐというような気持があるということに問題があると思うのですが、実際は……。というのは大藏省でこの間、税制審議会で立案したのでは大体時値の七〇%ですかね。七〇%ぐらいのところで再評價するというふうに、再評價の基準を決めたわけなんでございますが、現在の世界的な物價情勢から見て、どうもこの程度のものが維持できるかどうか。七〇%程度のものがもうすでに問題が起きておるわけです。企業家側は七〇%を最高限度にして再評價をして、これで資本の水増しをするということになつて來ますと、あとで今度資本切捨てか何かの事態が起るのじやないか。そういう情勢がちよつと目に見えているような氣がするのですが、今のところは資本の水増をやらせて、そのあとで資本切捨てをやつてしまうというようなことになつては、むしろこれは逆になると思うのですが、どうなんですか。その辺は……
  32. 内山徳次

    説明員内山徳次君) その点は非常に一つの重要な問題でございまして、評價増しの最高限をどの程度まで認めるかということは、可なり議論が分れて來る。一應率直に申上げますと、大阪の紡績関係の方は非常に高くしろという主張が強くございまして、一應前には最初の五〇%というのを七〇%に引上げたのでございますが、とても五〇%なんかでは問題にならん。殊に償却残存率というものを計算しました場合の償却率が、あれは今のは定率法によれということになつておりますのを、定額法にすべしというようなことを主張したのでありますが、併しこれに対しては財界の中でも一方に愼重論が非常にありまして、そうは言つてもとても收益力の点から考えて、物價の騰貴に併せたような評價は、これはとてもできるべきものでない。実際常識的に考えても、そう今ある帳簿價格の五十倍とか、百倍とかに評價増をするということは、これは経営上から見て考えられないことで、せいぜい相当内容のいい会社で十倍見当の増資というか、評價増というのが一應の実際に当嵌まる数字になるので、普通は五、六倍くらいで止めて置かないと行過ぎになる。從つて余り評價基準というものを高くすべきでないという議論相当つたのであります。ただ併し税制審議会としましてはいろいろ研究しました結果、あの評價基準に使う物價指数が、これが闇價格を含めた物價指数を使うわけにいかん、これは公定價格による外ないということが一つと、そこでこれを公定價格で行くか、闇を含めた実効値格で行くかによつて相当の差が出て來る、これが、一つ、もう一つは今もちよつと申しました減價償却方法でありますが、定額法によるか、定率法によるかによつて、償却残存の資産額の高さが大分違つて來る。定率法によると低くなる。その点を考えまして、民間の一部から標準はもう少し高くして呉れ、実際はやるべきでないところはやりはしないから、それでいいじやないかということで、七〇%くらい引上げてもそう弊害の起ることはあるまいという考え方で、七〇%に引上げたと私は考えておりますが、まあ財界人としては七〇%を是非必要だと思つているところは比較的少い、最高標準としては……、そう思つているのでございますが、前の五〇%でも、大体の態勢とすればそう大きな不満はなかつたぐらいに私共思つております。で実は問題は、今おつしやるようにこれが非常な水増的な評價になつて、あとで又縮小する必要が起りはしないかという懸念でありますが、これについてはこの評價基準を上げることを主張する側では、情勢の変化に感じて変える方がむしろ本当じやないか、高くなつたら高くすればいいので、そうして情勢が変つて非常に物價の水準が下つたというならば、それはそのために減資の必要があるならば減資する方がむしろ自然じやないかというような考え方もありまして、資産内容の堅実性を確保するという意味から言うと、余り高くしてはいかんということは、財界でも愼重な態度を取つている人はそういうような意見を持つております。ただ標準として、そんなようなことで別に水増をやりたいという空氣が強いのではないのですが、紡績のように相当國際競争に自信があり、相当利益が出るというところは、これは償却を多くしたいし、又それもいつまで続くか分らないから、早く社内留保をしたいという意欲が強い。こういうところはやはりできるだけ評價基準を高くしたいということが、その業態から出て來ているのです。又そういう業態にあるところは、必ずしも水増しとも見られないことになるわけであります。そうでない非常に利益の薄いようなところは、それはとてもあの評價基準までやつては大変になつてしまう。もつと遙かに低いところにしなければならない。我々経團連としましては、そういう点もありますので、或る程度業種別の評價基準のようなものを自然に決めてやつたらどうかという案もありましたが、税制審議会では、これを一應問題にしたようでありますけれども、そこまで行くと非常にむずかしいからというので引つ込めたわけであります。
  33. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 二月頃の世界経済日本経済の情勢と今日ではもう根本的に変つていると思うのですが、あの頃の意見がそのまま今でも支持されていることは、先程私が言つたように、今のうちに水増株式を発行して置いてあとで切る、もう切る時期が近付いているように私共思つているんですが、そうして株主相当の損失を負わせるということにしてしまえば……ということを経團連で考えて頂きたいと思います。
  34. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 尚研究したいと思います。今の評價基準で行きましても、物價が半分に下つても、あの評價基準には達しないと思いますから、その点は割合に幅があると思つておりますが、その点情勢が変つているということは承知いたしました。
  35. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 経團連の方で御調査になつていると思いますが、企業関係でも商業関係の方におきましては、資本金というものは、或る商事会社は昔から殆んど今でも余り変つておりません。而もその途中において利益が出れば、殆んどこれは税金に持つて行かれるというのが実例であります。物價面は百倍になつているが、今日資本金は五倍か十倍である。そういう場合には今後の税制においても、積立金というものに対して、いわゆる社内保留金というものに対しては、或る程度普通の利益処分とは違つた税率を設けなければならないと思うのであります。今日お出しになつた意見の中になそういうことが含まれておりますが、そこで若し社内保留というものが相当尊重されて、低率な税金をかけられるということになれば、今まででも思い切つて発表して、いわゆる正当な税金を出しても差支えないという経営方法を行われたと思うのであります。そういう点について経團連の方でどの程度お考になつておりますか。
  36. 内山徳次

    説明員内山徳次君) 商事部門の場合は御承知の通り非常に事情が違いますので、資産評價というようなことも問題になりませんし、特別な考え方が必要なわけでありますから、ただこれについて一つだけ最近具体的な問題が出て研究しておりますのは、今日お配りしました資料の中に、貿易團体から出したのがちよつと入つておりますが、賣掛金でございますね、これはここに出しましたのは貿易の方でございますから、クレイム或いは契約の取消等に具える準備金のようなものが必要だということを言つているのでありますが、別に銀行の方からは、この貸付金の回收困難になるものに対して、貸付総額の五%までの準備金を認めて貰いたい、その準備金については課税なしに積立ができるようなふうにして貰いたいということを出とておりますが、金融以外の方におきましても、國内の商業でも、商業部門の場合の資産というのは、今の賣掛金的なものが非常に大きな部分を占めると思いますが、この部門に対して何らかの措置を考えることは、是非必要なんじやないかというふうに考えておりますが、まだそれを具体的にパーセンテージを出して見たり何かするところまで行つておりませんが、その部門だけは研究しております。
  37. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは非常に重大な問題でありまして、今までは利益処分が全部殆んど税金に取られるから、利益を隠すということが商事会社の方から言われている。それから無駄な費用が使われるということも先程お話がございまして、実際その通りであります。そうすると今の賣掛金に対してはというような姑息な手段でなくて、積立金、自己の社内保留分に対しては相当軽減するという、はつきりした制度を作れば、商事会社も安心して、例えば今まで百万円の会社が二百万円利益があつた、こんな会社はざらにあります。それに対して百七十万円も税金を取られたのでは、その次の営業というものは成立たん。結局表向きは金融機関の借入金によつて仕事を継続して行くより外ない。そうすると金融資本により事業というのもは押えられて、いわゆる共産党方面の目標とするように、もう何のことはない、金融機関によつて事業が押えられて、國有國営的のような形と変らないような状態になる。若し金融機関の方で一つの措置をすれば企業は止まつてしまう、金詰まりの事情で……。そういう点から見ましても、現在の事業を発展させて行くということについて、経團連として眞劍に考えて頂きたい。今度の税制改革に当つては積立金に対しては成るべく軽い税金をかけるということを具体的に現わして頂くのがいいいじやないかと思います。先程資産の再評價も出ていましたが、これはもつと早くからこういうことを日本経済界に取入れておれば、今日のような経済界の混乱を來しそうな形態はなかつたのじやないか、こんな工合に考えられます。一つお考え置きを願います。
  38. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 外に御質疑はございませんか。外に御質疑がござまいせんければ、この程度で午前中の会議を終りまして、午後一時半から再開いたしたいと存じます。    午後零時十一分休憩    —————・—————    午後一時五十三分開会
  39. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) それでは、これより休憩前に引続き委員会を開会いたします。租税制度に関する調査について、これより安本財務課長の木村三男さんに、安本からシャウプ調査團へ御提出になつた租税制度改革に関する意見書について、腹藏なくお話し願いたいと、こう考えます。
  40. 木村三男

    説明員(木村三男君) それでは経済安定本部におきまして、税制改正の問題について現在までどういう作業をして、どういうふうに司令部の方に接触とておつたかという点と、今後どういう問題を掘り下げて行きたいかというようなところを、まだ纏まつてはおりませんけれども、事情の許せる範囲内におきまして申上げたいと存じます。お手許にお配りしました費料でございますが、これは日附がそこに入つておりますが、五月の七日に経済安定本部総務長官から使節團の方に提出した簡單な総論的な意見書であります。内容は極めて抽象的でありまして、これはお読み下さればお分りになることと思いますので、一々読上げもいたしませんし、細目の点に触れてということもできませんので、この辺は成るべく端折りたいと思います。そこで税制改革の問題ですが、これはシャウプさんが來る前から、今の税制というものは時勢に合わないじやないかというような点で、各方面で研究が進められておつたのであります。昨日は大藏省の方から説明があつたようでありますが、あすこの税制審議会におきましても、或る程度の提案をいたしたように聞いております。併しこの度の予算成立の経過にも明らかなように、とにかく本年は均衡予算を組み、インフレを極端に止めてしまうというような方向において、ドツジさんの勧告によりまして、租税制度の方は暫く後に讓つて、とにかく財政面を固めて行くというような予算案ができたのであります。そこで税制改革の面につきましては、只今シャウプ使節團なるものが來朝しまして、各方面と接触をいたしておる次第であります。そこで私の知つております範囲では、安定本部は勿論のこと、大藏省、地方財政委員会、それから経團連を初め、各種経済團体等におきましても、それぞれの資料なり意見書なりを直接に向うに出しております。そこで安本として出しましたものは勿論これが全部で、これ以上出さないという意味合のものではありませんで、取敢えず現行の税制というものについて、最も大きな問題と思われるような点を、簡單に出せという意味合において要求を受けました関係で、細目の点には入つておりません。現在の税制というものが、一体どういうふうに動かされているのか、どういう欠点が見受けられるかというような点を中心にして書きました関係で、先程お断りしましたように、極めて抽象的なものができ上つた次第でありまして、今後これに関連しまして、例えば法人税の問題をどうするか、所得税軽減方向については、どういうふうに考えて行くかというような点につきまして、やはり相変らず作業を続けて行きたい。こういうふうに考えておりますので、ほんのこれらの序の口であるという意味でお読み下されば結構であると思います。そこでこれは余談でありますが、最近経済團体方面からも、或いは地方財政委員会、今度は地方自治聽になりますが、この方面からも相当意見書が出ておりますが どうも税を負ける方だけ非常に沢山出て参りまして、均衡予算の建前から見ますというと、例えば税收を五百億なり、千億なりを削ります場合に、それの見合いになる歳出の点もやはり落して行かないというと、予算の均衡というものが取れないわけであります。ただ税を負けて貰いたいという立場からいたしますれば、成るべく税制合理化いたしまして、そうして負けてさえ貰えればいいというようなことになり勝ちでありますが、大藏省なり、安定本部といたしましては、やはり歳入の面が出て來れば、やはり歳出の面というものを考えて行かなければならんというようなことになりまして、なかなか問題が簡單に行かない。相当の作業もやらなければならんし、相当思い切つた政策も盛り込んで貰わないと大幅な税の軽減はできないかも知れないというような氣持がいたすのであります。そこで問題は、外にそれましたついでに申上げますというと、今年の歳出予算でどの辺を切るかということを、まあここでは別に政策はそう決まつたわけじやありませんけれども、一應切り得るような余地がどこにあるかというような点を申上げるのも一つ御参考になるかと思います。今年の一般会計予算歳出予算が、御承知のように七千四十七億であります。七千四十七億のうち大口のものだけ拾つて見ますと、終戰関係の経費、終戰処理費、賠償関係の施設の支出とかいうものが一千三百六十四億円あります。それから公共事業費、事務費を併せて五百十九億であります。それから價格調整費、輸入補給金を含めまして二千二十二億円、それから地方配付税五百七十七億、こういうものが主なものでありまして、あと小口なものは行政整理の面も織込み済みでありますし、一般行政費についても余り切る余地がないんじやないか、勢い大口なものをどういうふうに切つて行かれるかという問題になりますが、終戰処理費の方は今年も大分詰めたのでありますが、これ以上詰め得るかどうか余り期待が持てないじやないかという氣がいたします。それから公共事業費、これもいろいろ経過がありましたけれども、現在の五百十九億で以て相当窮屈でありますが、更に詰めるというようなことはいろんな角度からして問題が多いのじやないかと、こう思われるのであります。それから地方配付税の問題、これもやはり地方財政といたしまして、減額どころか殖やして貰いたいという希望が熾烈でありまして、相当に抵抗が多い。残された面が、お話が出たかも知れませんが價格調整費、補給金の問題であります。この点につきましても、補給金を外せば財政は確かに樂になるのでありますが、その影響というものが物價の方にどう響くか、賃金の方にどう響くか、問題を國際的に見ますならば、國際價格と國内價格とが現在非常に不均衡になつております。それを一挙に國際價格とバランスをとる、方向としては必要でありましようが、一挙にやるということはなかなか問題が多いのでありまして、これをどこから手を付けて行くか、何を切つて何を残して物價の方にどのくらい撥ね返らせて、賃金の方にどのくらいゆとりを持たせるかというような問題も出て來まして、問題は簡單なようでありますが、相当複雑な問題が残ろうかと思います。この点につきましては、本日も物價廳方面と会議を開きまして、とにかく本年度の補給金をどの程度まで削減し得るかどうか、これを急速にやつて貰いたい。結局そういうところと、これから申上げる減税との兼ね合が出て來るということでありますので、私共としましては單に歳入を軽減するというのみならず、歳出の面も相当手を加えまして、両者相俟つてどの程度までの税の軽減の範囲が生れて來るかということに頭を突込まなければなりませんが、この点につきましては遺憾ながらまだお示しする程の案がございません。そこでやや抽象的になりますが、税制改正の問題につきましては、やはり現在の税制状態がどうなつておるか、つまり現状の認識から出発しなければならないかと思うのであります。私共の方では國民所得の計算というものを再年やつております。國民所得というものがどの程度まで信頼が置けるかという点につきましては相当異論があるかと思いますが、現在與えられた資料によつて妥当と認められる計算方法によつて、毎年々々の國民所得というものから予測しまして、それに裏付けするために実績調査というものをやつておりますが、その國民所得というものと、大藏省当局において税法を施行して取りました税の上り高というものを比べて見ますと、非常にそこに食違いが出て來るというのであります。これが非常に割切れないところでありまして、極端なことを申しますと、相当勤労者、農業者方面には大きな負担をかけておりながら、逃がすものは相当逃がしておるのじやないかというような非難が多いのであります。これも的確な数字は出ないと思うのでありますが、少くとも税務署方面で押えたところの所得額、税額というものと、私共の方で算定いたしました國民所得の分配所得と言いますか、それと突き合わせて見ますと、どうもあるべき姿に対して六割程度しか思把していないのじやないかという数字が出るのであります。つまり國民所得が、課税し得べき所得というものが一兆億円だけあると、こう算定しました場合に、課税の面で押えるところのものはその六割、六千億くらいのところに止まつておるのじやないか。いわゆる所得の把握率の問題であります。勿論所得の内容によつて違います。私共のような勤労者、これに対しましては御承知のように源泉課税をやつておりますから、大体殆んど例外なしに掴まつてしまいますが、それでも、やはり九割程度までしか捕捉していないのじやないか。あと一割は徴收義務者の方でどつかへ取つて流しておるか、或いは温情主義で以て取らないかどいうような数字も出て來るのであります。これなどはまあ極端によく掴まえる例であります。それから農業所得、これは常識でも分りますように不動産、田とか、畑というものは隠そうと思つても隠せません。大体の生産の数量とか、價格関係などで、これもぎゆうぎゆう詰められてしまう。從つてこの面におきましても相当良好に把握しておるのじやないか。それ以外のいわゆる個人の事業、中小商工業と言いますか、又それ以下の者などにつきましては、どうも非常に実態が掴めない、そういう関係相当漏れておるというようなことは常識上肯けるのでありまして、それを考えますと、今の税制というものは現実と非常に遊離しておる。そうして税率を上げなくても、適正に取つて行くならば、今以上の税收が上がる。或いは税率を下げても取り方をうまくやれば、却つて増收になる。そういうことも期待できるのではないかということが、國民所得なり、課税上の把握所得なりの関係から出て参るわけであります。そこで最近各税につきまして、主に所得税法人税等でありますが、非常に税務署によつて取り工合が違う。或いは季節的に相当寛嚴の差があると申しますか、そういうことでなかなか納得できない。とにかく日本税法というものは、紙の上だけの問題であつて、実際は税法があつて、税を取るのではなくて、税務署というものがあるので税を取るのだというような極端な非難もないわけではございません。それにつきましては、関係当局であるところの大藏省あたりでも相当認識をいたしておるようであります。それにつきまして、どうしてそうなるかというような点につきましても、いろいろと説明の付け方があるようでありますが、私はその辺につきましては、ここでは殊更に申上げたくないのであります。それからもう一つは、ただ國民租税負担が非常に重い。こういうことを言われております。どのぐらい重いかということの計算もやはり必要であると思うのでありますが、これは縦に見る方法と、横に見る方法と、言葉がやや抽象的でありますが、例えば昭和五年から最近の時期までに至る租税負担の割合がどういうふうになつているか、これも或いは前のやつと重複するかも存じませんが、私共を経済安定五ケ年計画を作成いたします場合に、目標をどこに置くか、少くともこの昭和五年から九年までの期間の経済情勢というものに持つて行く。つまり五年から九年というのが基準年度でありますが、その当時の國民所得に対する税の負担、勿論地方税も含みます。それから専賣益金につきましても、やはり税のうちに含めたのでありますが、大体その当時におきましては、一四%とちよつとぐらいのところが國民所得に対する税の負担率であります。それから戰時中になりましてから、相当これが上つておりますのは、昭和十一年から後の方ですが、戰時中におきましては大体二割程度、最近昨年あたりが大体二割です、二十四年度におきまして二六、四%、二割六分、戰爭中において相当税の負担が重かつたことは御承知の通りでありますが、ただ國債を相当出しておりますので、パーセンテージが余りはつきり現われておりません。ただ昨年と今年を比べて見ますと、予算の金額が膨脹いたしまして、公債借入金はやつてはいけない、むしろ逆に國家財政で以て、どんどん金を吸上げて民間の方に流してやるというような考え方でありますので、税收が非常に殖えております。そういう関係で民所得に対しまして、二六・四%というような数字が出て來たわけであります。ただここで御注意願いたいと思いますのは、昭和三年から九年までと言いましても、その当時の國内情勢なり、國際環境、更に具体的に申しますと、その当時の政府というものは、どういうところにまで関與していたか、統制経済の度合がどの辺であつたか、それから軍備があるなしとかいうような点から考えまして、去年は今年でないと同樣に、毎年々々財政の規模なり、或いは基盤というものが変つて参りますので、ただ單純に比較しましてこれだけ上つたから、これだけ辛いのだというような簡單結論も出て來ないと思うのでありますが、少くとも去年と比べますと、そこに相当租税負担の増額というものが見受けられるのであります。  それからもう一つは、地方税と國税とをこの中に含めまして、國民負担を全体の立場から見たのでありますが、更にここで落ちておると思われますことは、私共の家庭生活におきまして相当に寄附が多いのであります。学校の関係にしましても、警察方面にしましても、現われざるところの公租公課というものが、相当含まれております。そういう点からいたしますと、可なりひどくなつております。特に名目的には金は殖えておるようでありますけれども、実際は生活費の大半というものを、衣食住の中の食の方に向けておる。いわゆるエンゲル系数が相当大きいというような、最近の國民生活から見まして、非常にこれは負担が重いということが簡單な数字からも窺われるということであります。御承知のように、國民の各階層におきましてはもはや租税負担に限度がある。これ以上税金が來てはかなわんというような声もあるくらいでありますから、確かに税は限度まで、或いは限度近くまで來ておるということが肯ずかれるわけであります。これは主として個人の場合、所得税の場合についての見方でありますが、更にこれを日本経済を建直して、そうして経済再建をやつて行くという場合には、又違つた意味から問題を考えて見なければならんと思うのであります。それが即ち最近の法人税の趨勢なんでありますが、法人税の問題につきましては可なり問題が急がれております。その一つ企業再建整備と申しますか、一刻も早く再建復興の基盤を作る、そのためには今のような企業経理では駄目だから、固定資産などにつきましても思い切つた償却ができるような仕組と、余り税金で持つて行かれないような仕組を考えないというと、企業が立直れないと、こういう問題であります。それからもう一つは、國際関係、特に外資導入の問題などから考えまして、どうも日本法人税というものは高い、だからこれを安くしなければ思うように外資が入らん。それから現在の企業というものは古い價格で固定資産を表示しておる、つまり資本は、現われておる資本というものには相当含みがあつて、名目上は小さな金額になつておる。そういう関係で外資が入つて來る場合に、向うは少い金を持つて來て、相当の内地の事業の支配権が握れる。それらはこつちで安くして置くからいけないのであつて、直せばいいじやないかという問題が出て來るのでありまして、これと同じような問題が古い企業なり、新らしい企業なりの間に起るのでありまして、古い企業というものは相当資産が充実しております。固定資産相当償却しておりまして、余裕がある。新らしい企業につきましては、最近の物價情勢なりその他からして、基礎が健実でないというようないろんな点があるようでありますけれども、とにかく法人税の問題につきましては相当突込んで考えなければならない、そこでこれも現在の固定財産の償却はどのくらいになつておるかという調べなんでありますが、これも調べる方選によりましていろいろ違つて参ります。企業研究会という團体があるのでありますが、ここでサンプル調査をしたここがあります。日本鋼管であるとか、その外日鉄であるとか、相当企業につきまして標本的に調べた数字ができておりますが、大体平均いたしまして、あるべき姿の二十分の一乃至三十分の一ぐらいしか償却ができておらない、つまり固定資産價格というものが古い價格でやつておりますから、それを標準にして耐用命数でやつて行きますというと、このくらいしか償却ができない、償却しようとしましても、それだけ物價の方で見て呉れないというような関係がありまして、非常に資本の喰潰しをしておるというような数字が出るのであります。又大藏省方面で今度種々業種につきまして、この資料は決して完備したわけではありませんが、課税資料等から拾いまして大体やつて参りますと、十二分の一ぐらいじやないかというような数字も出ております。これはどちらが正しいか、前の方はサンプル調査でやりますから、対象が非常に狭い、大藏省の方の対象は非常に廣いようでありますけれども、相当な推定が入つておる、そういう関係で、どちらがどういうふうに間違つておるかということは、ここでは申上げかねるのでありますが、大体の趨勢といたしましては、そういつた僅かの償却によつて企業は泳いでおる、これに資本を充実させ、維持させる。そして再建の基盤を作るという理想を持つて参りますというと、どうしても固定資産について再評價を許すと同時に、償却につきましても、それに基くところの償却を認めて行かなければならないということになるわけであります。それから税率の問題につきましても、外國の例等では相当混み入つておりますが、まあやや高いという数字が出ておるのでありますけれども、これは私はつきりいたしません。今の普通所得に対して百分の三十五、それに地方税を加えますというと、百分の十五乃至十八でありますから、相当重くなる、こういうことにもなるわけでありますが、その税率等につきましても相当動かさなければならんのではないかという要求が熾烈であります。それから資本を是正しませんと、超過所得税関係で超過所得が非常に沢山出て來てしまう 実際は名目的な低い價格に抑えてありますから、利益というものが非常に歩合が多いように出て來ますので、その点で余計に税金を取られるということにも相成りますので、やはりこの点につきましては、今度手を入れるとすれば、やらなければならん問題じやないかというふうに考えております。そこでそれではこれによつて税收の方にどう響くか、つまり償却を相当思い切つたところまでやる、そうしてそれによつて物價の方も或る程度勘案して行くということから見まして、どのくらい税收に響くかということも必要な資料であると思いますが、これはまだはつきりした確定的な資料はございません。ただ本年度法人税收入として上げております金額が二百七十二億円であります。それで全然物價の方に響かせないで、税金だけでこの償却なり超過所得なりというものを呑んでしまう、自腹を切るという考え方で参りますと、九十億程度の税が減ると、こういう一應の数字が出たようでありますけれど、もその後又数字をいじつておりますので、大体大局から見て余り影響しないようにも思われます。  それから物價の方につきましては、品目によつて相当違うのでありますが、相当響くのじやないか、價格の計算になりますと、相当技術的な計算方法がありまして、第一次の撥ね返りをどう見る、第二次の撥ね返りをどう見る、第三次、第四次と、こういう複雑な計算方法があるわけでありますが、先ず第一次だけで見ますと、ひどいのになると相当ありますが、銑鉄方面では一割二分ぐらい生産者價格が上るのじやないか、それから石油では二割二分ぐらい上るのじやないか、鋼材なんか殆んど影響なし、綿糸あたりが一%ぐらいというような数字もあつたようでありますが、これもやはりそこまで発表と言いますか、檢討を要する程の数字でございませんので、ただそういう彈き方をしておるものもあるという程度に御了解願えば結構であろうと思います。これに第三次、第四次と撥ね返りを見て参りますと、いろいろな要素を取り込んで参りますと、あに銑鉄、石油、綿糸、鋼材というばかりでなく、あらゆる面に響きますので、この作業というものはやるとしましても相当骨が折れるというふうに思われます。そこで問題いの焦点が大分具体的になりまして、國民税負担というものが相当重い現状である。それから法人税につきましても今のような資本蓄積なり、或いは外資導入という見地から見まして相当行詰るところまで來ておる、何とか手を著けなければならん、こういうところまで話が進んで來たわけでありますが、私共の方では一体それでは所得税の場合、これはどうしても所得税軽減しなければ相当無理が來るのじやないかという氣がいたしますので、これについて相当突つ込んだ作業をして見たいというつもりで実は三、四月頃手を掛けたことがあつたのであります。その場合の前提條件は只今の基礎控除、これが一万五千円であります。これが最低生活費という意味から見ますと、相当ナンセンスである。最近の生計費はどのくらいになるか、場所によつても、その月によつても違うと思いますが、少くともこれは低過ぎる。例えば基礎差除を一万五千円のを二万円に引上げる、それから扶養控除、これは年額税額につきまして千八百円となつておりますが、これも同じ率で二千四百円まで上げる、これによつてどのくらい税收が違つて來るかという数字を出したことがあります。これは余り使いものになりませんので、その後追つ駈けて作業いたしておりません。と申しますのは、大分所得税の構成なり、物價なりが違つて参りましたので、生計費と申しましても、最近主要食糧の値上であるとか、輸入の三百六十円レートの影響であるとか、鉄道運賃、旅客運費の値上などによりまして、相当又基礎が変つて参りましたので、それと併せてやりたいという意味で、これも余り突つ込んでやりませんが大体、今の程度の一万五千円を二万円にする、千八百円の扶養控除というものを二千四百円にするくらいの程度で以て、どのくらい税收に響くかと申しますと、大体六百億から八百億程度税收が引つ込んでしまうという計算になるのであります。つまりちよつと動かしただけでも、非常に税收に響いて参ります。法人税などと申しますのは、税額という点から申しますと、全廃しても所得には余り影響がない。尤も租税体系の方から言えば、そう簡單には行かないのでありますが、所得税につきましては、何しろ日本の現在の所得階級というものが、大金持がいない。大体において零細な所得階級でありますので、ちよつと線を上の方まで、限度というものを上の方まで上げると、大体波間に没し去る階級というものが非常に多いのでありまして、ちよつと動かすというと、幅が非常に廣いということになるのであります。この辺につきましては更に又與えられた條件でやつて行きたいと思いますけれども、なかなか税收がどのくらい減るかというところまで考えて参りますと、一万五千円の基礎控除を二万円から三万円というふうにやつて行きたいのは山々でありますけれども、そういうように税收全体という問題から見ますと、そこにいろいろな問題があるように考えられるのであります。つまり現在の税体系というものは、非常に理論的には合理的にできておりますけれども、所得の階層別というものが戰前のようにラバイエテイーに富んでいない。大体原則として貧乏人でありますから、一つ負けるとなると、類は友を呼ぶで、相当波及するというなことに相成りますので、ちよつと動かすだけでも相当財政的には影響を及ぼすというふうな数字が出るのであります。だからやらない、或いはそれを押し切つてもやるということは、これは政策の面でありまして、私共といたしましては、どうとも申上げ切れないのでありまして、その辺は事務的にいろいろ数字を集めたり、調査を進めたいというようなつもりで仕事をいたしております。  以上申上げましたように、安定本部といたしましては、この問題については非常に熱心を示しております。又そうしなければならないのであります。つまり國全体の総合施策という見地からいたしまして、捨て置きがたい問題でありますので、非常に重大な関心を拂つております。ただ、今シやウプ・ミッションとの接触の度合は、御承知のように相当あちらさんでも現場というものを見たい、徴税機構の方も相当突つ込んで見たい、つまり資料集めに奔走しておられる段階でありますので、まだ向うからどういう点についてどう、どういう点についてどう考えるかというような細目の点においては、はつきりした指示がありませんので、成るべくこちらでもいろいろな角度から物を考えまして、今後、より接触を密にして参りたい、同時に又國内官廳方面におきましても、大藏省と私の方に、大体これは殆んど親戚同士でありまして、緊密にやつておりますが、経済團体方面からの陳情書というものも相当私共の方では纏めております。相当研究いたしております。何とかもう少し利用し得る資料にまで持つて行きたいというふうに考えているのが、現状であります。  大体要領を得ませんで誠に恐縮でありますけれども、ただ問題のデリケートな点が相当ありますので、ただ安本として今までどういうことをやつた、どういうふうな角度から物を考えているか、それにつきまして大体の御説明を申上げた次第であります。
  41. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御質問がありましたら……
  42. 天田勝正

    ○天田勝正君 七つばかりありますので、続いて一問一答式にお許し願いたいと思つております。先ず國民所得に対する國民税負担の比率のことでありますが、これは一般的に日本税負担というものは英國よりも安い、アメリカよりも高い、こう言われております。ところが一体この國民所得の見方というものが、これはしよつ中議論になることなんですが、極めて酸昧模糊として、議会でも幾度かこれについては質問を繰返しましたけれども、どうも納得の行くようなお答えを得ておりません。そこで現在安本といたしましては、この國民所得の立て方について、將來このようにやつたならば正確なる所得が出て來る或いは現在このような考えを持つているというような研究がありましたら御説明を願いたい。尚これは度々言うことでありますが、今日のこの研究会は、決して政府の揚足をとるということでなくて、税制をどうするかということにあるのでありますから、打明け話を一つ願いたいと思うのであります。幾つもありますから、一つ一つ願います。
  43. 木村三男

    説明員(木村三男君) 只今國民所得に対する御批判がございました。これもおつしやる通りでありまして、実は日本には余り正確なる資料というものがございませんで、特に國民所得、歴年の所得を見ました場合にも、昭和二十一年ですが、二年ですか、二十年でしたか、全然ブランクなときもありまして、その繋りがどうなるか非常に疑問があるのであります。それから國民所得の算定方式、私もこれは全然専門家でありませんので、そう技術的なことはどうも申し上げられないのでありますが、これに対してどうもこれはちよつと彈き方、それから得られた結論、一應出て参りましたけれども、どうもこれはおかしいような氣もするからというので、今度シャウプ・ミッションの方にその方の係がおりますので、相当詳細な資料を出すつもりであります。そうして大体こういうようになるけれども、こういう算式でよいのかどうか、そこで一つ教えを請うて、一應数字は歴年のやつを出しましたが、算定の方法と、それからこれはこういう方法でやつたので自信がない、いい案があつたら教えて貰いたいというので出してありますが、司令部方面ともう少しディスカッションしたいというような段階でありまして、それ以外のいい案もございませんので、大体昨年度を踏襲しましだ数字が向うの方に出ております。
  44. 天田勝正

    ○天田勝正君 関連いたしまして……。何故私がこういう質問をするかというと、農業関係におきまして、大体昭和二十二年の五、六月頃がもうこの所得の頂点である。御承知の通りあとは下る一方であろうと思う。特に農業所得で惠まれた地番というものは、これは何と言つても蔬菜地帶である。この蔬菜を例にとつて見ましても、去年五十円していたものが今年は十五円、こういう工合に明らかに所得が減つているにも拘わらず、國全般といたしますると、所得が上つているという観点に立つて、税が上つている。勿論これは税率の変化もありますけれども、税率の変化ばかりでなしに、そうした國民所得が幾らであるから幾らとつても大丈夫なんである、こういう点が相当ある。でありまするから、これは私要望して置くのであります。そういうことでは到底これは一般國民生活は成立たないのでありまして、安本においても、この点については再檢討を一つして頂きたい。これは要望であります。次には、農業課税の問題ですが、私は日本農業の形態というものが相当先進資本國と違つておる。アメリカのごとく七十町歩もあるところ、トマト、キャベツばかり作るという農業の行き方と、日本のような零細農業と言いますか、これは所得の内容も違つて來ますし、いろいろな面で違つています。ところがこれをやはり他の営業所得と同じような考え方によつて課税されて、農業所得という別な見方をされてはおりますが、その根本考え方企業であつて、営業である。こういう考え方は私共から言わせると、丁度一般企業というものと、勤労所得というものとの中間を行くものである。これが日本農業の実体はなかろうか、こう考えておるのですが、特に農業課税に対するところの特別な施策をお考えになつておるかどうか。この点をお伺いいたします。
  45. 木村三男

    説明員(木村三男君) 只今農業課税方法なり、或いは施策の問題についての御質問でありますが、今後私共が消費計画、つま。経済復興五ケ年計画というものを立てて参ります場合に、いつも問題になるのは、この農業所得関係、或いは農業生産がどういうふうに向うかという点でありまして、例えば基準年度を取ります場合に、必ずしもこの五、九年による必要はないのではないか。話は少しはずれるようでありますけれども、農村の一番不況の時を目安にして、それを段々引延ばして行くというあれはいけないから、もう少しこの辺だけずらそうという案もできております。従つて五ケ年計画の方の要請からいたしますというと、まあ相当農村方面所得が殖えるようなプランということにはなつておりますが、具体的に現在租税をどういうふうにするか。諸税の方法をどうするかということは、今のところ具体案はございません。どういうふうにこれを考えて行くかという段階に達していないのでありまして、どう持つて行くかということは今後の研究問題ということになつております。
  46. 天田勝正

    ○天田勝正君 質問の第三は、先程も経團連の人に申上げたのでありますが、特許所得の問題であります。特許所得と申しまするのは、発明とか、発見とか、つまりその人が発明、発見をいたさなければこの世の中に生れ出なかつたという、そうしたものに対する課税の問題、これはこの電燈を例にとりましても、エジソンがいなければ電燈というものはこの世の中に出て來なかつた。これを製造したところの工場資本家というものは相当利益があつたでありましようが、現在これを私共が買う金を全部エジソンにやつても、実はこの利用價値というものはもつと値打があつたのではなかろうかと私共はこう考える。然るにそれらの特許所得というものが、特に現在の日本課税制度からすると言うと、何ら特別な措置を講ぜられておらない。こういう特に特許をやらなければならないという時期においては、特にこういう特別な課税ということが必要ではなかろうか。私はまあこう実は考えるのであります。これは同じように出版方面でも同樣であります。この露伴文学、或いは漱石文学がこういろ金字塔を打ち立てたのは、一体あれらの人がいなければこの世の中に出て來なかつた。こういうものに対して特別な施策を考えなければいけないのじやないかと思いまするが、安本としてはどのようなお考えをしておりますか。
  47. 木村三男

    説明員(木村三男君) 問題が意表なところへ出まとて、準備がございませんけれども、大体考え方を申上げますと、租税というものにいろいろなこの要請を織込むということになりますというと、或いは社会政策的な、或いはその他の政策を織込んで参りますというと、相当これは議論の分れるところでありまして、只今おつしやつたような特許発明についての尊重すべきゆえんというのもよく分りますけれども、これはあに税の問題だけじやなくて、そういう発明が生れるようなものに対して報奨を考えるなり、或いは外に精神的な優遇を考えるとかという措置の方が却つて本則のような氣もいたしまして、ただ所得税体系の中にどういうふうに盛り込んで行くかということになりますと、相当まあ一概には他との振り合いなどもございまして、盛り込めないのじやないかというような氣もいたしますけれども、これも大藏省方面はどう考えるか私存じませんけれども、ただ大きな流れなり、又は社会施策的な面、或いはその他政策的な面を租税の中に、租税所得そのものの中に織り込みたいという要請もあながち無視するわけじやございませんけれども、全部が全部盛り込み得るかどうかというような個人的な考え方がいたしますので、その点安本の方策というよりも私の氣持を申上げた次第です。
  48. 天田勝正

    ○天田勝正君 次は税種目の整理の問題ですが、これは過日私共が地方税務調査に出張を命ぜられましたときにも、この税種目を整理しなければならないというのは、民間側からも、これを扱つておりまする税務署、財務局からも皆言われている。地方税は勿論であります。それから法定の地方税、これも勿論であります。更に法定外の税金に至つてはこれは現在先ず論外で、私共の手許にある資料を以てしてもどういうものにかけるのか、一体見当が付かないようなもの、例えば場所によつてはモァー税というもの、レーキ税というものがある。何のことか分らない。まあ意味は分るけれども、こんなものをというようなものがある。例えば立竹伐採税というのがある。立つている竹を伐つたら税金がかかるという話。それから牛馬出産税というのがある。馬や牛が仔を産んだら税金をかける。そうかと思うと、噴霧器税、これは私は殆んど百姓の方だと思うが、噴霧器で一旦薬品をかけなければ或る果樹によつては取れなくなつてしまう。或いは取れても虫喰いだらけになる。この噴霧器に税金をかけるというのは、これはまあ……。これに類似の果樹園税、これなんかも今度は土地利用税というようなものを止めましたけれども、これと全くこれは同じような筋合のものである。或いは茶栽培税、これももう明らかに事業税と重複しているものなんです。そうかと思うと、今度は生産関係からしますと、現在國家が非常に應援しなければならない場面、特に石炭とか、それに対して選炭機悦とか、或いは又炭窯税なんていうものもある。こういうことで、まだ外にも名前を言うのもどうも言いにくいのですが、黄しよく蔡作付反別税というのがある。(笑声)何のことか僕らにも実は分らない。或いは農家が副業にどうしてもああいうものをやらなければやつて行かれないような繩綯いの機械に税金がかかる製繩機税、以下並べれば(「簡單々々」と呼ぶ者あり)何百もあります。こういうものに対するところの中央税もそれから地方の法定税も整理しなければならないし、それから特に法定外の税というものを、もつとこれを許可するところの強力なる審議会か何かを作らなければならんのじやないかと思うのですが、これに対する安本のお考えはどうでしようか。
  49. 木村三男

    説明員(木村三男君) 只今税種目に対して相当詳細な御質問がございましたけれども、大体今後税制改革の問題で大きな山になりますのは、只今御質問の中にも現われておりました通り中央地方の税の負担区分と申しますか、どういうふうに分けるかという点が相当大きな研究課題になると思います。これにつきましては自治鹿の方でも考えておるようでありますが、安本といたしましては中央地方の税制の調和ということを是非ともやつて行かなければならんと考えております。私も最近地方の課税当局を勤めていたことがございまして、先ず最初にダンサーから税を取つて大分怒られた経驗もありますが、(笑声)とてもそれだけではやりきれませんで、犬猫なんかにまでかけてもまだかけ足りない。(笑声)そういうことはどこから出て來るかと申しますと、犬を持つておるからどうとか、猫を持つておるからどうという意味ではなくて、何とか口実を付けなければ税が取れないというのは、いわゆる財源が取れないからであります。そういうことから見ますと、中央の方はきちんと税制ができている。地方の方は生産の阻害になるような税もかけなければならんような現状になつておる。こういうこともありますので、この点につきましては税目の整理ということと同時に、相当の財源を地方に移讓しなければならんというふうに方向を見極めまして、その点今後の研究課題として研究したいと思つております。
  50. 天田勝正

    ○天田勝正君 それでは大分外の委員から急かせられてむずむずしておりますから、(笑声)二つ一緒に質問します。一つは、織物消費税の問題であります。このことは軽減ということで幾度か請願を採択しております。私共が考えるのに、どうもこの頃の絹、人絹というものを贅沢品と思われては誠に迷惑至極なのであつて、私自身の経驗からしましても、皆燒け出されてしまつて、配給だけ受けておつたのでは、今頃私は裸で登院しなければならんような始末です。そういうような場合に買えるものは仕方がない、何でも買うのです。現在恐らく日本中の人がそうであろううと思うので、綿物をとるか、絹物をとるか、どつちをとるかと言えば、誰だつて例外なしに私は綿物をとるだろうと思う。それを絹をとつたから贅沢で、これに余計税金をかけられるというのは誠に迷惑至極の話なので、こういうことはそのときの実態に併せて考えて貰わなければならないのであつて、さつきあなたのお話にも負けるという話ばかりすると言いますけれども、こういう面は負けて貰つて、外の面で増徴して貰うのが、課税の公正であつて、そういうものに対してこれは一つの例でありますが、どのような御計画でありますか伺いたい。  次は、贈與税の問題です。これはさつきお話にもありましたように、今日は税金という名前の付かないところの而も実体は税金である、例えば六三制の経費、或いは自治体警察の負担金、こういうようなものは、それを納めなければ一体その町に居られないというような筋合のものなんです。これは税という名前は付かなくても、実質的には税と何ら変らないものです。こういうものがあつて、而もそれらを寄付で賄う。で寄付する場合には今度は少し余裕のある人に頼んで余計寄付して貰うと贈與税で取られてしまう、こういうことになる。御承知の通り新聞にも出ているところの永井隆博士が、今度は印税が五百万円入るので、これを全部寄付する、こういうのだけれども、ところが四百万円は税金に取られて、そうして残りの百万円のうち、今度は更に税金に取られて、四十万円しか寄付したことにならない、こういうことが出ております。勿論この場合も公共に寄付するのと、それぞれ違つておりますけれども、特に今日地方財政においては寄付という形に仰がなければならないという実情に鑑みますれば、そうした贈與というようなことについては特殊な考えで臨まなければならないのではなかろうかと思うのですが、これらの点に関してどのようなお考えでありますか、お伺いいたします。
  51. 木村三男

    説明員(木村三男君) 簡單に申上げます。繊維関係でありますが、お話に出ました織物消費税、絹と綿とのアンバランス、これは非常に歴史が古いのでありまして、只今現状に合わないようになつておりますことは御指摘の通りであります。絹の方が四割、綿の方が一割、こういう課税率になつております。お話のように綿の方が実は贅沢なんで、絹の方が余り利用價値がないという現状は特に承知いたしておりまして、今度、今度と申しますか、この前に関係各省、物價廳あたりからもその問題が出まして、主税局の方でもそれを取上げまして、絹、麻関係を減税すれば穴が明きそうだが、綿の方を少し上げたらどうやらバランスがとれるのじやないかというような考えでおつたのでありますが、根本的な税制改革はあとの機会に讓るというので現在立消えになつております。そういう関係で、只今輸出不適格品の絹物など処分に非常に困つております。  それから寄付の関係、それは先程私がちよつと触れたのでありますが、どういうふうな統制をやつて行くかということになりますと、いろいろ憲法の関係、法制上の関係、どういう機関でどういうふうにやるか、それで地方自治廳あたりにお話を持ちかけたのでありますが、なかなかこれは著想いいけれども、どういう法制で、どういう仕組で押えて行つたらいいのか、今のところ研究している、それじや仕方がないから最近のサンプルでいいから、例えば〇〇縣、〇〇縣あたりの実情というものを一つ出して見て呉れんか、それによつて話のしようもあるというのでお願いしている最中でございます。
  52. 天田勝正

    ○天田勝正君 贈與税のことはなかつたように思いますけれども……。次に贈與税のことをお聞きしておつたのですが、永井隆博士の例を引いて……。ちよつともう一遍言います。さつきお話ししましたように、現在は税金というような名を付けずして、その実体は税金であるというのが沢山ある。そういうものを賄うために地方自治團体におきましては寄付という形をとつている。ところがそうなるというと、少し資力のある人に沢山寄付をして貰おうと思えば贈與税がかかつてしまつて、やはり駄目だということになる。新聞に出ている永井博士の例を見ましても、五百万円寄付しようと思つたのだけれども、実は四十万円しか寄付したことにならない、こういう始末です。そこで永井博士の弟さんが今上京して、いろいろの方面に折衝しているという始末ですね。こういう実際には地方財政を賄うために、このような措置をしなければならないのであるから、それらに対する課税を特別に考えなければならないのではなかろうかと思うが、これに対してお考えはどうか、こういうことであります。
  53. 木村三男

    説明員(木村三男君) ちよつと私の方で聞き違いをしておりましたが、今お話のような事実があることは私の方のみならず、大藏省の方でもよく存じているわけなのであります。そこで今どうするか。先程からお断わりいたしております通り、非常に細かい点まで行けば私の方も大藏省も実は細目の点まで入つておりませんので、今お話のような点も、それからそれ以外の点も、いろいろとデーターが集まりまして、それによつて全体の体系を見ながら考えて行くという段階になりますので、そういう意見は随分大藏省の方にも反映されていることと思いますが、どうするかという点につきましては、今お答えできる段階でないのを非常に残念に存じます。
  54. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 このシャウプ調査團へ提出のための租税制度改革に関する意見書、これを拜見しまして、この意見書に盛られておる重点は二つだと思うのです。一つ税法が文字通り施行されておらんということ、もう一つ減價償却の問題ですが、この前の問題ですね、ここの第一頁の初めから六行目ばかりのところに「税法が必ずしも規定通りに適用できていないことである。このため、政府予算收入として期待できる金額は、國会が定めた税法を文字通りそのまま施行した場合に收入し得ると思われる額に比べて遥かに少く、」こういう非常に重要なことが断定されておる。同じ意味のことがずつとあとにも述べてあるわけなんですが」、こういう断定をされるについては相当確実な資料を持つてお出でになると思います。これは私共非常に重要な点だと思うので、その資料一つ見せて頂きたい。同じ趣旨のことはあとの三頁にも、これは誠にそういうふうに税務行政が弛緩しておるために、今度は租税負担税法に規定するものよりももつともつと加重される方向に向けられる、こういう工合にも言われておるし、最後に結論として五頁の眞ん中頃に「税法の規定する租税負担を、税法が文字通り施行された場合において現在必要とする租税収入を確保できる程度にまで引き直すことである」、これが一番大事な点だというふうに結論が出ております。これは非常に重大な点だと思うので、こういう断定を下される一には相当資料があつて下されたと思うので、その資料を我々に配付して頂けないものでしようか。
  55. 木村三男

    説明員(木村三男君) この断定の方法について証拠固めしなければならん、誠にその通りであります。ただ私の方で使い得る資料といたしましては、形式的なノーマルなものとしては、分配國民所得と、それから課税の率というやつの比較であります。それからこれは表には相成りませんけれども、これはどういうふうにして表に現わそうとしても現わせない、うまり達観というやつがございますが、税務の経験のある者、或いは実際税をかけられる立場にある者、そういう者について或る程度ざつくばらんに話を聞いたこともございます。つまり税法通りやるというと、まあこのくらいだろうけれも、実際は六割か七割ぐらいしか税務署の方はかけて來ません。というような例も或る方面で出たわけでありますが、これは数字にどう現わせと言いましても——ちよつとそこのところに不確定な要素がありますので、大体の作文を作りました段階におきましては、そういつたいわゆる聞込みと、もう一つ國民所得というような見地からした資料でありますが、御希望ということでありますので、何とか整理して見たいと思います。
  56. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは是非整理して貰わんと、これは非常に重要な意見書なのですが、こういう意見書を出された根拠を考えなくちやならんと思うから、是非出して頂きたい。それから第四頁を見ますと、四頁の初めから五行目、四行目の括弧の中に書いてあるところを見ますと、「所得の源泉において課税している勤労所得が最も税法の規定に近い負担をしており、田畑等外形的標準で時々所得の大きさを推定できる農業所得がこれに次ぎ、営業所得が最も捕捉困難であるだけに税法の規定に比して最も軽い負担しかしていないと推定される。」と言つたようなことも、これは当然常識的に言つて、こうだろうと思うけれども、こういうようなことを観察團、調査團にはつきり出されますと、いろいろ問題が起きはせんかという氣もするし、若しこういうようなことを確実な根拠に基いて言われるならば、これは我々としても考えなければならん、こう思うわけなのですが、是非一つできるだけの、あなた方がこういう推定を下されたできるだけの根拠を是非我々に示して頂きたい。  もう一つ言いたいのは、今日時事新報、六月九日附の時事新報に、「安本では勤労者の賃金と所得税の推移について調査を行なつていたが、作業を終えたので、税制改正の参考資料として近くシヤウプ博士に提出するはずである」として、調査報告の内容を相当書いております。結論は勤労者の生活が戦前の水準を維持するためには、名目賃金は月三万六千三百四十一円でなければならん、こういう結論が出ておるようであります。この資料是非我々委員会に配つて頂きたい。これは重大な点なのですから、是非一つお願いしたい。
  57. 木村三男

    説明員(木村三男君) あとの時事新報の件は、私の方でも随分、さつきおつしやつたこともあるので考えて見たのですが、私の存じます限りでは、ちよつと心当りないのでありますが、眞偽の程を確めて見たいと思います。今シャゥプ博士のいろいろな意見書などは、各局なり、各課でばらばらに出してはいけませんのでへ特に財政金融局が窓口になりまして、そうして大蔵省と絶えず連絡をとりながら、相互に資料の交換を行うということになつております建前から申しましても、ちよつと心当りでないのでありますが、確めてから御返事申上げたいと思います。
  58. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 こういういい資料があつて、そうして我々の方に隠されておるのでは、國会議員として非常に困るので、なければ、ないのならいいのだが、新聞にここまで具体的数字が出ておると安本のどこかにある筈なのだから、是非これは政府委員で分らなければ、安本長官に来て貰つて説明を聞きたいと思います。どうぞ一つお含み置きを願いたいと思います。
  59. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 先ず第一にお伺いをしたいことは、どうも税制関係や何かについて、大藏省関係と安本関係の業務上の分担がどういうふうになつているかということなんですが、大蔵省関係税制のいろいろ、例えば苛斂誅求じやないかというようなことで、國民所得の問題がどうであるかということを置くと、これは併し安本で立案して、私の方では取り立てるだけでありますというようなここを言う。又安本の方の御説明を聞くと、すべて税金の取立ては大蔵省の方で勝手にやつているのだというようなことで、その関連がはつきりしないのですが、ぞの関係はどういうふうに連絡をとつておや。になつているかということ一か先ず第一番にお伺いしたい。その次には、もう一つは、國民所得の算定でありますが、先程天田委員からも例が出ましたけれども、國民所得の算定に矛盾がありはしないかと思うのは、例えば贈與の問題です。甲が百万円を例えば或る人から贈與を受けた、そうするとその百万円は甲の所得になつて税金を取られる、ところがその甲が更にそのうち二十万円取つて八十万円を丙に今度は贈與した、そうしてそれが又丙の所得八十万円でそこで相当の税金を坂られる、そこから又二十万円を取つて六十一万円にして丁に渡ナ、又税金を坂られる、結局どうも税金の方が、元が百万円だつたが百五十万円にもなつてしまつたという例があるのですが、それと同じような例が國民所得の算定の上に外の方でも行われていやしないか、こういう点については何か是正の方法をお考えになつていますか、どうですか。
  60. 木村三男

    説明員(木村三男君) 最初の御質問ですが、安本と大蔵省は一体こういう問題になると、どこで仕事のけじめを付けているかという御質問でありますが、実はここのところは非常にデリヶートでありまして、私も大藏省から安定本部に送られたのでありますけれども、安本に来たからには安本らしく仕事をしなければならん、併し基本政策というものは経済安定本部でやる。そうしてその下のやつは大蔵省でやるというふうに一應安本の官制には出ているのでありますけれども、大体仕事と言いますものが、技術を伴わずして空理空論だけではいかん、資料を持つている方が勝だというような関係もございますので、総合調整すべき事項も或いは大蔵省の智慧を借りて何とか纏めを付けるそういう例も正直にあるのでありまして、ただ問題はそういつた安定本部というものがあり、大蔵省というものがある、そうしてそれそ、お互いに間隙、空間ができそうなところを埋め合つてつて行く、政府は総合的見地、特に大蔵省としては税の面だけではいけないのでありまして、これが生産の方にどう響くか。或いは五ケ年計画というものを文字通り考ますならば、國民消費水準というものはどういうふうに動いていくか、そういうところの檢討というものが、これは安本ならではできないところでありまして、個々の税金そのものにつきまして、何から何までやつておりますというとそこに仕事がダブる、大きな意味の生産、物價、賃金、通貨といつたような全体の姿というものと睨み合せて考えて行く立場に私共は立ちたいと思うし、又そういうふうに仕事を進めているわけであります。抽象的な言葉ではちよつと完全な説明になりませんと思いますけれども、氣持はそういつたところであります。それから國民所得関係、今例を挙げられましたところなども、同じ金がぐるぐる廻つて、それが幾段階において所得を構成して、そこで税を取られる、所得がだんだん廻つて行くのであるということでありましたが、私もここのところ算定方式なり、考え方なりお話しするだけの知識もございませんけれども、大体國民所得の立て方から申しますと、一つじやないのでありまして、先ず物の生産の面から生産國民所得というものを弾きます。産業別にどのくらいの生産、どのくらいの價値の変動があつたかというような生産國民所得というものを彈きます。それと同時にそれじや農業部門に幾ら、工業部門に幾らか、どれくらい税を取つていいか分らない、そういうことになりますので、これを今度は分配國民所得と申しますか、勤労方面にどれだけ、業種方面にどれだけというふうに、又別の角度から見て参ります。それから國民の総消費という面からもやはり見て参りまして、結局三つ乃至四つの方面から所得というものの立て方をするのでありまして、重複勘定は今許された範囲内において除去しておるという方式がとられていると思います。何かサンプルでもあつて説明できれば非常に分り易いと思いますが、用意してございませんし、その先生も連れて参つておりませんので、ただそういつた面において税務との繋りが、私の方でもよく大藏省議論するのでありますが、今お話のように、安本の國民所得という点から行くと、どうも俺の方が怠けておるように見えてしようがないから、そこのところを何とかうまい工合に繋げて呉れないかという要求もありますけれども、一つはこの生産國民所得という面から見ますと、どうもこれだけのものができてしまうということから見ますと、なかなか調整のしようがむつかしいとしますと、分配の段階においてどういうふうに分れて行くのかと、その見地に可なりメスを入れますと、或いは業種別の税の均衡というやつも、今考えているものと違つたようになりはしないかというふうに考えられますので、その点は最初から繰返して申上げます通り、今度のシヤウプ使節團に対する報告に対する報告のときにも余り自信を持つて出しておりません。又いい智慧があつたら諸外國の例によつて教えて貰いたい、ただこうして折角出たやつを遊ばして置くのはいかんから、それと税の負担の割合などを勘案しますと、先程ちよつとお話が出たように、イギリスよりは軽いが、アメリカよりは重いという、こういうようなことになるのだが、実際の國民の生活なり企業というものは相当破産するような間際まで來ておる。この辺について、我々も研究するけれども、一ついいお智慧を拜借したいと跡を追駆けておるような例もありますので、何とか改善される糸口を見付けたいと思います。
  61. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 只今の重複課税の点は非常にむつかしい問題でありますから、尚御檢討願いまして、先程のお話の中で、安本で國民所得を決められて当然だと思われるべき税金よりも、実際に把握しておるのは大藏省では六割くらいしかとつていないというお話なんですか、そうすると、初めから予算の立て方において二兆九千億という安本で立てられた國民所得の算定として五千百億のあの税金というものは、六割くらいしか見ていないのですか、それともあれはフルに見て言つているものですか、それはちよつと辻褄が合わないと思いますが、それを明白にして貰いたい。それからもう一つは、國民の生活ですが、よく外國の例をおとりになるのでありますが、イギリスあたりでは確か食糧費が一九四六年において二九%、税の負担が約三九%、併せて七〇%となります。それで残つた三〇%をその外の費用に使う、ところが日本では平均しますと、食糧生活に六五%使つて、税金の面においては二五%、合計九〇%、そうすると、成る程税の負担はパーセンテージから行けば日本の方が低いのですが、いわゆる日本人に残された他の面に使用できるものが平均して一〇%、これではどうも日本人の生活は余り幾ら敗戰國でもみじめ過ぎやしないかという点ですが、これについては安本あたりのお考えはどうなつておりますか。
  62. 木村三男

    説明員(木村三男君) 本年度の國民所得と二十四年度に組んだ予算との何が六割程度しか見てなかつたがというようなお話でありますが、これは從來からそうなんでありますが、國民所得がこうだから、税はこれだけにしろというだけの確信と言いますか、それだけ資料に頼り得るものがありますならば、我々としては勿論そういうふうにやりますが、今お話し申上げましたような状態でありますから、現状というものに立脚いたしまして、積み重ね式に税金をやつて頂きまして、もう少し能率よく取ろうじやないか。もう少し落ちておる面を拾つて行こうじやないかということで、課税当局として睨んだ数字というのが税の方に出ております。そこで初めから六割でいいのだというようなことはないのでありまして、実は國民所得の方が後から出たようなわけで、如何に説明を付けるかという点も一つでありますが、今年の予算は御承知のように特殊の経路を辿りました関係で、それを以て全般を律せられましてはちよつと困るというような氣がするのであります。そういう國民所得がこうだから税はこれだけにするのだというようなところまで安本の押しがききませんので、そこの点も御了承願いたいと思います。それから次の國民生活と税金の問題ですが、それは先程波田野委員からも御指摘がありましたように、これは相当調査しなければならんし、調査した数字があるならばそれを勉強しなければなりませんけれども、御質問の方向はよく承知しておりますが、それ程勉強いたしておりませんので、御了承願います。
  63. 小川友三

    ○小川友三君 簡單に、どうも心臓が弱いものですから……今天田先生と波多野先生と油井先生の質問がありましたが、あなたが安本長官なら相当お伺いするのですけれども、安本の理財課長さんですからやんわりと一つ。(笑声)この地方税の問題で、妾に税金をかけるようなものがありますが、これはモァー税と言いますか、これは二号にかけるということですが、レーキ税と片仮名で書いてありますが、私は仕方がありませんので三号にかけるものだと思つておりますが、その解釈を御説明願いたいと思います。
  64. 木村三男

    説明員(木村三男君) 地方税は各地方によりまして制限……、法定外独立税は大体その縣限りでできるようになつておりますので、言葉をどうふうに使つて、どういう趣旨でありますか、別に理由なり、その定義なんというものは私共の方には直接の関係がありませんので、大体お伺いした程度ですと、どういう解釈になりますか、字もまだ読んでおりませんけれども、相当意味を持つた税であると思います。
  65. 小川友三

    ○小川友三君 そこで、このシ博士に対しまして出しました安本の方の極秘のものなんですが、こういうことが書いてありますが、五行目、六行目を見まして、國会で決めた税法により文字通りそのまま施行した場合に收入し得ると思われる額に比べて遙かに少いがということがここに暫定的に書いてあります。いわゆるこの心臓の強さに驚くのでありますが、遙かに少いということを言われておりますが、これは安本でどういうエフセンシー的な調査をなされましたか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  66. 木村三男

    説明員(木村三男君) 同じようなお答えで恐縮なのでございますけれども、私の方の頼り得る資料といたしましては、國民所得の観測と、それから実績調査、これを足場にいたしまして、財政経済の方に何らかの有意義な足場を築きたいという見地でおりますので、相当経驗者も置きまして、相当な陣容で以て所得につきましては非常に眞劍な態度で臨んでおります。それから税関係課税資料というものと睨み合せて見ますと、そこに大きな違いが出て來る。それから又同じようなことでありますけれども、大体裏口の方からと申しましても、私がいつたわけではありませんが、いろいろな機関がございますけれども、そういうところから見ますというと、全額を納めたならばとてもやれ切れない、或いはその辺が申告なり何かについてまあ適当な見地で以て申告しておる。うまく行けばそのまま行くし、ひどい目に遭うときは沢山取られるというような例もあるようですけれども、体系的ではありませんけれども、そういつた例を総合いたしますというと、ここに書いてあるような結論が出て参るというふうに説明する以外にないのであります。  それから資料の点につきましては、先程御要求がありましたから、でき得る限りのものは準備したいと思つております。
  67. 小川友三

    ○小川友三君 そこでこの税金は國会で決めた額よりも遙かに少いということを安本で言われておりますので、それではシ博士はお前の方ではこの対策を立てるためにいろいろな案があるか、税のバランスを合わすために材料があるかと言つた場合に、例えばロングスカートをはいた者にも税をかける、或いは背が高いのでかける、或いは特別に街を歩いておる女の手が大きいから、又足が大きいから税をかけられては困ると言つても、税源がないのでかける。或いは鼠にも税をかける。鼠と言つても白鼠ですが、方々で飼つてつておる、あの車を廻すやつですが、そうしたものにもかける。しまいには狸にも狐にも全部かける。人間はお産してもかける、馬にかけるので人間もかける。片方だけかけるのでは財源が合わないといつて、安本ではそうした変つた方面に税をかけて行くというような、そういうような腹案でもあつたならば一つ
  68. 木村三男

    説明員(木村三男君) 私が申上げましたのは、今の税法が文字通り行われていないので、これは怪しからんというような意味ではなくて、そこにはいろいろの事情がございます。如何にして各個人所得を掴えて行くかという方法は非常にむつかしいし、又與えられた税務機構におきましては、なかなか理想的な点までは近付き得ないのが現状であります。そこで対策なしということじやないのでありまして、これはやはり各方面で考えなければならないが、例えば税務の現場方面を拡充するとか、研修を非常にやるとか、或いは私の方で今手掛けておりますところの商業簿記の簡素化、統一化、標準財務書表というものも普及徹底して、その帳簿というものによつて見るならば、すべてが分る。それ以外のものは税務署の方でも余りほじくらんというような、会計準則というものを普及させて行くとか、いろいろ打つべき手はあるのでありまして、ただ一挙に税制は或る程度とらないと、これはとらないのは、大藏省が悪いとか、税務官吏が怠けておるとか、そういう意味合ではなくて、理想に向けるために、できるだけそつちの方に近付くようにやつて行きたい。今お話のように歳入歳出が合わないので、鼠にまでかけるとか、何とかいうようなことは考えていないのでありまして、その点はつきりと申上げて置きます。
  69. 小川友三

    ○小川友三君 あなたが先程税金問題で、農業所得というものが非常に公平に行つておるというお説がありましたのですが、それは耕地整理せられたところの農地の農業所得が公平に打つておるのであつて、一反歩というけれども、実際は二反歩も三反歩もあるというところ、いわゆる三十年も五十年も山林になつてつたものを開拓して、すでに立派な美田になつておる。それから取つたものに対する供出というものは非常に胡麻化されておるところが相当にあると見て間違いはありません。それから耕地整理せられてないところは、一反といつても、一反三畝も五畝もあつて、数割も面積が廣いのですが、そうしたところの農業所得というものが公平に行つていないのですが、そこをどういう工合にしておりますか。
  70. 木村三男

    説明員(木村三男君) 先程のは言い廻しが悪かつたかと思いますが、農業所得に対する課税が、公平に確実に行つておるという意味でなくて、所得を類別して見ますというと、税務署方面課税する立場から見て、捉え易い所得として、この勤労所得とか、農業所得とかいうものがあると申上げたのでありまして、だから農業所得は適正にやつておるかどうかということになりますと、そこまで言い切るだけの心臓はございません。
  71. 小川友三

    ○小川友三君 それから先程の、あなたの初めの口述で、税法による取立てでなく、税務署があつて初めて税金が取れておる観を呈しておるというような意味のことを言われましたが、これに飽くまでも税法による取立てであつて税務署がその税法によつて運行しておるという見方でございます。安本の方では税務署があつて税金が取れるのであるから、税法などというものは、まあほこり見たいな存在であるという解釈をされておりますけれども、その解釈は大きな間違いだと思います。それを一つ所見を述べて下さい。
  72. 木村三男

    説明員(木村三男君) 誤解も甚だしきと申しますか、私が申上げましたのは、又言葉のあれになるかも知れませんが、今のような現状では、まるで税法あれども無きがごとき観があると言われても仕方がないじやないかと思うのであります。現にそういう場合があるのでありますが、併し勿論日本は現在法治國でありまして、法律によつて國の経済が成立ち、行政が成立つ、この精神を否定するという意思は私如何にずぼらな人間でありましても絶対に認めないのでありまして、この点一つ誤解のないようにお願いいたします。
  73. 小川友三

    ○小川友三君 安本の見方は、税は限度まで達しておる感じがするということがありましたが、限度を突破しておるところも相当ありますが、拂えなくて親父さんが死んじやつたり、自殺しておるというのは、限度を突破したから負担力がなくて非常に悲観して死んじまつたのでありますが、又一面においては限度に達しだ部分もありますが、大体申告所得税という面において、相当の量において限度を突破しておるものがある。無理な課税をせられておるものがあると思いますけれども、安本の方では限度を突破したものはどのくらいなパーセンテージになつておりますか、或いはあるかと思いますが、一つそれを……
  74. 木村三男

    説明員(木村三男君) 限度の問題でありますが、どこまで行つたら限度で、どこを越したら限度以上かという点につきましては、相当見方もあると思います。立場によつて……。ただ個個の課税資料というものは、先程どなたからか御質問がありましたように、そこに安本と大藏省の仕事の分野がございまして、各財務局なり、税務署というもの、又各方面に要求いたしましても、これだけ限度をオーバーして税を取つておるという資料は到底出てこないのであります。この辺はいろいろな陳情なり、或いは意見書の形になつて現に出ておるものの中に、そういう苦衷が訴えられておるというふうに考えております。
  75. 小川友三

    ○小川友三君 そうすると、固定資産減價償却という面で、あなたのお説は償却は非常に少いと、こう言われましたが、その固定資産の償却は少いという見方は、昭和五年から九年までの償却のパーセントと價格で算定した場合であつて、現在の物價から算定した場合には、償却は少いというのは、現在の状態から見た場合は正しいのじやないかと思いますが、この点一つどういう工合に解釈なされますか。
  76. 木村三男

    説明員(木村三男君) 固定資産の償却の問題ですが、これは歴史的に、年次的に見る場合、大体の趨勢といたしましては、從前戰後までに獲得した固定資産というものは、その間に相当償却が行われておるのではないか、ただ償却未済になつておる分につきましては、その後の物價の騰貴によつて、百万円の機械を今度取換える場合に千万円かかるかも知れない。そういう見地からいたしますと、そこに償却の不足の問題が出て來ると思う。それから今申上げましたような点で、或いは相当部分償却したけれども、最近の物價情勢から見るというと、実は足りないんだという結論になります。それから最近とり入れました固定資産は、物價の事情というものを大体反映しておりますから、取得價格というものも最近の事情に合うようにできておりますし、それによつて償却をして行くのでありますから、固定資産評價換え、乃至は償却を認めて行く場合に、年次的に区分しまして最近のもの程倍率のかけ方が少い。古いもの程そうした倍率が高くなつておる。従つて償却も余計やらなければならん、こういうふうな大体の趨勢になるということを申上げましたのですが、時間を端折りました関係で、ちよつと混線したようでありますので、その点はつきり申上げて置きます。
  77. 小川友三

    ○小川友三君 安本の資料は余り自信がないということを言われましたが、少くとも安本はもつと能率的に、もつと科学的に突つ込んだ研究をして頂いて、シャウプ博士でも感歎するような安本でありたい、かように思うのでありますが、どうも自信がない、まあそういう程度の御説明と承わるのでありますけれども、今年はこう、來年はこうと、きちつと出る筈なんです。そうした実に原理的な、万有不滅の原理的なような計算が直ぐ出て來ると思いますが、それを勉強なさらないで、附けたり的な資料であるというふうな感じがします。特に國民所得の問題で、自信を失つておられるという言葉がありましたけれども、大体國民所得を算定するのに、五万人とか三万人の所得標準にして政府はやつておる。國民の少くとも過半数以上の國民所得を、すつかり資料をとつてやれば、もう動かない資料になるのです。ところが五万か三万の人の所得資料にしておる、いわゆる勉強が足りないから、資料が不完全だからごだごだしてしまつておる、かように私は思うのです。ここにこれを出すに当りましてどのくらいの國民所得を、何百万人の資料をお集めになつて算定なさいましたか、ちよつと伺いたい。
  78. 木村三男

    説明員(木村三男君) この資料につきましては、ここに書いてあるだけでありまして、いろんな経驗なり、今までの資料というものを、頭に置きつつ書いたのでありまして、これは向うの注文にもございましたが、何しろ五月初旬にシャウプ使節團というものが見える。それまでに長官個人意見でもよろしいから、大体どう考えておるかというものを非公式に出して貰いたい。追つて資料はお前の方でもやつておるだろうけれども、こちらでも注文があるから、そのつもりでおれという意味資料でございまして、これを中心にしていろいろ縦から横からいろいろなことを突かれましても、ちよつとこの資料自体には成立ちの経過もございまして、その意味におきまして完全ではない。而も余り自信がないと言いますのは、國民所得の方でありますが、そういうような次第であります。それからいろいろと安定本部に対しまして、もう少し確信を持つて、そうして勇氣を振い起して大いにばりばりやるべきであるというような意味の御鞭撻がありましたが非常に感謝に堪えません。
  79. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私は最後に一つお願いがあるのですが、それは國民所得の算定は、この前の昭和二十四年度の予算のときでも、安本長官自身が確信のあるような返答がなかつたのです。大体青木安本長官は民自党の政調会長として檢討しておつたときに、その当時の民主、社会両党の内閣当時における國民所得、二十三年度の一兆九千億に対してこれは過大見積りである。一兆二千億でなくてはならないのだというようなことを言つてつたのです。ところが自分が長官になるというと、一兆九千億よりもつと多かつたのだといつて二兆四千億に直す。結局政党の政調会などの調査ではとてもこれだけの厖大なものは調査でき得ないということを、これは甚だ残念ながら言わざるを得ないのです。そこで安本で一切調査したものが結局は日本標準になつて來るというのは、これは否定し得ないところなのであります。そこでまあたとえ自信がおありにならなくても、國民所得の算定の基礎というものは、どういう業種に対してはどういうふうな算定方針でこうなつたのだというようなところを國会にもお示しになる、それが國会から國民に行き渡つて、こういうふうな理屈で以て税制というものの基礎ができておるのだというふうになつておれば、徒らに苛斂誅求というような声ばかりが起きないかと思うのです。その一番の元たる國民所得というものの算定基礎を一つはつきりさして頂いて、國民も亦官廳方面もお互いに了解し合つて税金を出し、國家の財政というものを確立して行く。こういうふうなことを今回一つ是非ともこの際決めて頂きたいと思います。この点について委員長から正式に安定本部に対して資料の御要求を願いたいのでございます。
  80. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 それに関係して、私も油井君の御質問に同感なんでございますが、安本のお調べになつておる國民所得というものは、どういうふうになつておるか、実はよく内容を詳細知らないものですから、何とも申上げられませんが、大体國民所得という計算の中には、課税の目的にならない所得相当あるものではないかと思うのです。そうであれば課税の目的になり得る國民所得が、そのうちどれくらいあるかということ、つまり課税の対象たる國民所得、それが分れば私は非常に税制関係しては有益でないかと思うのですが、どうも國民所得の中に、或いは法人にしても、所得になつてもこれは減價消却に充てられて課税目的にならんとか或、いは勤労所得のようなものにしても、本当は勤労所得は全部課税されておるというものの、随分これをくぐつて、いろいろな名目で所得しておるけれども、課税の形になつていないものが相当あることは、これは実際事実であるのですから、全体の國民所得という中には、課税所得というものは恐らくはそれより少いものだろうと私は思うのですが、一兆九千億と言えば、それよりはずつと少いものでないかと思うのですが、そういうものが調べられて、そういうものを知り得れば非常に仕合せだと思います。
  81. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) それでは今の油井さんの問題ですね。國民所得の基礎資料を御提出願うようにお願いしました。
  82. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私が先程お願いしたのも正式に、二つ……
  83. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 外に御質問はございませんか。御質疑がございませんければ、本日はこの程度で散会したいと存じます。    午後三時四十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            波多野 鼎君            黒田 英雄君            伊藤 保平君    委員            天田 勝正君            木内 四郎君            油井賢太郎君            高橋龍太郎君            川上  嘉君            小川 友三君   説明員    総理府事務官    (経済安定本部    財政金融局財務    課長)     木村 三男君    日本経済團体連    合会理財部長  内山 徳次君