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説明員(木村三男君) それでは
経済安定本部におきまして、
税制改正の問題について現在までどういう作業をして、どういうふうに
司令部の方に接触とてお
つたかという点と、今後どういう問題を掘り下げて行きたいかというようなところを、まだ纏ま
つてはおりませんけれども、
事情の許せる範囲内におきまして申上げたいと存じます。お手許にお配りしました費料でございますが、これは日附がそこに入
つておりますが、五月の七日に
経済安定本部総務長官から使節團の方に提出した
簡單な総論的な
意見書であります。内容は極めて抽象的でありまして、これはお読み下さればお分りになることと思いますので、一々読上げもいたしませんし、細目の点に触れてということもできませんので、この辺は成るべく端折りたいと思います。そこで
税制改革の問題ですが、これはシャウプさんが來る前から、今の
税制というものは時勢に合わないじやないかというような点で、各
方面で研究が進められてお
つたのであります。昨日は
大藏省の方から
説明があ
つたようでありますが、あすこの
税制審議会におきましても、或る
程度の提案をいたしたように聞いております。併しこの度の
予算成立の経過にも明らかなように、とにかく本年は均衡
予算を組み、インフレを極端に止めてしまうというような
方向において、ドツジさんの勧告によりまして、
租税制度の方は暫く後に讓
つて、とにかく
財政面を固めて行くというような
予算案ができたのであります。そこで
税制改革の面につきましては、只今シャウプ使節團なるものが來朝しまして、各
方面と接触をいたしておる次第であります。そこで私の知
つております範囲では、安定本部は勿論のこと、
大藏省、地方
財政委員会、それから
経團連を初め、各種
経済の
團体等におきましても、それぞれの
資料なり
意見書なりを直接に向うに出しております。そこで安本として出しましたものは勿論これが全部で、これ以上出さないという
意味合のものではありませんで、取敢えず現行の
税制というものについて、最も大きな問題と思われるような点を、
簡單に出せという
意味合において要求を受けました
関係で、細目の点には入
つておりません。現在の
税制というものが、一体どういうふうに動かされているのか、どういう欠点が見受けられるかというような点を中心にして書きました
関係で、先程お断りしましたように、極めて抽象的なものができ上
つた次第でありまして、今後これに関連しまして、例えば
法人税の問題をどうするか、
所得税の
軽減の
方向については、どういうふうに考えて行くかというような点につきまして、やはり相変らず作業を続けて行きたい。こういうふうに考えておりますので、ほんのこれらの序の口であるという
意味でお読み下されば結構であると思います。そこでこれは余談でありますが、最近
経済團体方面からも、或いは地方
財政委員会、今度は地方自治聽になりますが、この
方面からも
相当意見書が出ておりますが どうも税を負ける方だけ非常に沢山出て参りまして、均衡
予算の建前から見ますというと、例えば税收を五百億なり、千億なりを削ります場合に、それの見合いになる
歳出の点もやはり落して行かないというと、
予算の均衡というものが取れないわけであります。ただ税を負けて貰いたいという立場からいたしますれば、成るべく
税制を
合理化いたしまして、そうして負けてさえ貰えればいいというようなことになり勝ちでありますが、
大藏省なり、安定本部といたしましては、やはり歳入の面が出て來れば、やはり
歳出の面というものを考えて行かなければならんというようなことになりまして、なかなか問題が
簡單に行かない。
相当の作業もやらなければならんし、
相当思い切
つた政策も盛り込んで貰わないと大幅な税の
軽減はできないかも知れないというような氣持がいたすのであります。そこで問題は、外にそれましたついでに申上げますというと、今年の
歳出予算でどの辺を切るかということを、まあここでは別に政策はそう決ま
つたわけじやありませんけれども、一應切り得るような余地がどこにあるかというような点を申上げるのも
一つ御参考になるかと思います。今年の
一般会計
予算、
歳出予算が、御承知のように七千四十七億であります。七千四十七億のうち大口のものだけ拾
つて見ますと、終戰
関係の経費、終戰処理費、賠償
関係の施設の支出とかいうものが一千三百六十四億円あります。それから公共事業費、事務費を併せて五百十九億であります。それから
價格調整費、
輸入補給金を含めまして二千二十二億円、それから地方配付税五百七十七億、こういうものが主なものでありまして、あと小口なものは
行政整理の面も織込み済みでありますし、
一般行政費についても余り切る余地がないんじやないか、勢い大口なものをどういうふうに切
つて行かれるかという問題になりますが、終戰処理費の方は今年も大分詰めたのでありますが、これ以上詰め得るかどうか余り期待が持てないじやないかという氣がいたします。それから公共事業費、これもいろいろ経過がありましたけれども、現在の五百十九億で以て
相当窮屈でありますが、更に詰めるというようなことはいろんな角度からして問題が多いのじやないかと、こう思われるのであります。それから地方配付税の問題、これもやはり地方
財政といたしまして、
減額どころか殖やして貰いたいという希望が熾烈でありまして、
相当に抵抗が多い。残された面が、お話が出たかも知れませんが
價格調整費、
補給金の問題であります。この点につきましても、
補給金を外せば
財政は確かに樂になるのでありますが、その影響というものが物價の方にどう響くか、賃金の方にどう響くか、問題を國際的に見ますならば、國際
價格と國内
價格とが現在非常に不均衡にな
つております。それを一挙に國際
價格とバランスをとる、
方向としては必要でありましようが、一挙にやるということはなかなか問題が多いのでありまして、これをどこから手を付けて行くか、何を切
つて何を残して物價の方にどのくらい撥ね返らせて、賃金の方にどのくらいゆとりを持たせるかというような問題も出て來まして、問題は
簡單なようでありますが、
相当複雑な問題が残ろうかと思います。この点につきましては、本日も物價廳
方面と会議を
開きまして、とにかく本年度の
補給金をどの
程度まで削減し得るかどうか、これを急速にや
つて貰いたい。結局そういうところと、これから申上げる減税との兼ね合が出て來るということでありますので、私共としましては單に歳入を
軽減するというのみならず、
歳出の面も
相当手を加えまして、両者相俟
つてどの
程度までの税の
軽減の範囲が生れて來るかということに頭を突込まなければなりませんが、この点につきましては遺憾ながらまだお示しする程の案がございません。そこでやや抽象的になりますが、
税制改正の問題につきましては、やはり現在の
税制の
状態がどうな
つておるか、つまり現状の認識から出発しなければならないかと思うのであります。私共の方では
國民所得の計算というものを再年や
つております。
國民所得というものがどの
程度まで信頼が置けるかという点につきましては
相当異論があるかと思いますが、現在與えられた
資料によ
つて妥当と認められる計算
方法によ
つて、毎年々々の
國民所得というものから予測しまして、それに裏付けするために実績
調査というものをや
つておりますが、その
國民所得というものと、
大藏省当局において
税法を施行して取りました税の上り高というものを比べて見ますと、非常にそこに
食違いが出て來るというのであります。これが非常に割切れないところでありまして、極端なことを申しますと、
相当勤労者、農業者
方面には大きな
負担をかけておりながら、逃がすものは
相当逃がしておるのじやないかというような非難が多いのであります。これも的確な数字は出ないと思うのでありますが、少くとも
税務署方面で押えたところの
所得額、税額というものと、私共の方で算定いたしました
國民所得の分配
所得と言いますか、それと突き合わせて見ますと、どうもあるべき姿に対して六割
程度しか思把していないのじやないかという数字が出るのであります。つまり
國民所得が、
課税し得べき
所得というものが一兆億円だけあると、こう算定しました場合に、
課税の面で押えるところのものはその六割、六千億くらいのところに止ま
つておるのじやないか。いわゆる
所得の把握率の問題であります。勿論
所得の内容によ
つて違います。私共のような勤労者、これに対しましては御承知のように源泉
課税をや
つておりますから、大体殆んど例外なしに掴ま
つてしまいますが、それでも、やはり九割
程度までしか捕捉していないのじやないか。あと一割は徴收義務者の方でどつかへ取
つて流しておるか、或いは温情主義で以て取らないかどいうような数字も出て來るのであります。これなどはまあ極端によく掴まえる例であります。それから農業
所得、これは常識でも分りますように不動産、田とか、畑というものは隠そうと思
つても隠せません。大体の生産の数量とか、
價格の
関係などで、これもぎゆうぎゆう詰められてしまう。從
つてこの面におきましても
相当良好に把握しておるのじやないか。それ以外のいわゆる
個人の事業、
中小商工業と言いますか、又それ以下の者などにつきましては、どうも非常に実態が掴めない、そういう
関係で
相当漏れておるというようなことは常識上肯けるのでありまして、それを考えますと、今の
税制というものは現実と非常に遊離しておる。そうして
税率を上げなくても、適正に取
つて行くならば、今以上の税收が上がる。或いは
税率を下げても取り方をうまくやれば、却
つて増收になる。そういうことも期待できるのではないかということが、
國民所得なり、
課税上の把握
所得なりの
関係から出て参るわけであります。そこで最近各税につきまして、主に
所得税、
法人税等でありますが、非常に
税務署によ
つて取り工合が違う。或いは季節的に
相当寛嚴の差があると申しますか、そういうことでなかなか
納得できない。とにかく
日本の
税法というものは、紙の上だけの問題であ
つて、実際は
税法があ
つて、税を取るのではなくて、
税務署というものがあるので税を取るのだというような極端な非難もないわけではございません。それにつきましては、
関係当局であるところの
大藏省あたりでも
相当認識をいたしておるようであります。それにつきまして、どうしてそうなるかというような点につきましても、いろいろと
説明の付け方があるようでありますが、私はその辺につきましては、ここでは殊更に申上げたくないのであります。それからもう
一つは、ただ
國民の
租税負担が非常に重い。こういうことを言われております。どのぐらい重いかということの計算もやはり必要であると思うのでありますが、これは縦に見る
方法と、横に見る
方法と、
言葉がやや抽象的でありますが、例えば昭和五年から最近の時期までに至る
租税負担の割合がどういうふうにな
つているか、これも或いは前のやつと重複するかも存じませんが、私共を
経済安定五ケ年計画を作成いたします場合に、目標をどこに置くか、少くともこの昭和五年から九年までの期間の
経済情勢というものに持
つて行く。つまり五年から九年というのが基準年度でありますが、その当時の
國民所得に対する税の
負担、勿論地方税も含みます。それから専賣益金につきましても、やはり税のうちに含めたのでありますが、大体その当時におきましては、一四%とちよつとぐらいのところが
國民所得に対する税の
負担率であります。それから戰時中になりましてから、
相当これが上
つておりますのは、昭和十一年から後の方ですが、戰時中におきましては大体二割
程度、最近昨年あたりが大体二割です、二十四年度におきまして二六、四%、二割六分、戰爭中において
相当税の
負担が重か
つたことは御承知の通りでありますが、ただ國債を
相当出しておりますので、パーセンテージが余りはつきり現われておりません。ただ昨年と今年を比べて見ますと、
予算の金額が膨脹いたしまして、公債借入金はや
つてはいけない、むしろ逆に國家
財政で以て、どんどん金を吸上げて
民間の方に流してやるというような
考え方でありますので、税收が非常に殖えております。そういう
関係で民
所得に対しまして、二六・四%というような数字が出て來たわけであります。ただここで御注意願いたいと思いますのは、昭和三年から九年までと言いましても、その当時の國内情勢なり、國際環境、更に具体的に申しますと、その当時の
政府というものは、どういうところにまで関與していたか、
統制経済の度合がどの辺であ
つたか、それから軍備があるなしとかいうような点から考えまして、去年は今年でないと同樣に、毎年々々
財政の規模なり、或いは基盤というものが変
つて参りますので、ただ單純に比較しましてこれだけ上
つたから、これだけ辛いのだというような
簡單な
結論も出て來ないと思うのでありますが、少くとも去年と比べますと、そこに
相当の
租税負担の増額というものが見受けられるのであります。
それからもう
一つは、地方税と國税とをこの中に含めまして、
國民の
負担を全体の立場から見たのでありますが、更にここで落ちておると思われますことは、私共の家庭生活におきまして
相当に寄附が多いのであります。学校の
関係にしましても、警察
方面にしましても、現われざるところの公租公課というものが、
相当含まれております。そういう点からいたしますと、可なりひどくな
つております。特に名目的には金は殖えておるようでありますけれども、実際は生活費の大半というものを、衣食住の中の食の方に向けておる。いわゆるエンゲル系数が
相当大きいというような、最近の
國民生活から見まして、非常にこれは
負担が重いということが
簡單な数字からも窺われるということであります。御承知のように、
國民の各階層におきましてはもはや
租税の
負担に限度がある。これ以上税金が來てはかなわんというような声もあるくらいでありますから、確かに税は限度まで、或いは限度近くまで來ておるということが肯ずかれるわけであります。これは主として
個人の場合、
所得税の場合についての見方でありますが、更にこれを
日本経済を建直して、そうして
経済再建をや
つて行くという場合には、又違
つた意味から問題を考えて見なければならんと思うのであります。それが即ち最近の
法人税の趨勢なんでありますが、
法人税の問題につきましては可なり問題が急がれております。その
一つが
企業再建整備と申しますか、一刻も早く再建復興の基盤を作る、そのためには今のような
企業経理では駄目だから、固定
資産などにつきましても思い切
つた償却ができるような仕組と、余り税金で持
つて行かれないような仕組を考えないというと、
企業が立直れないと、こういう問題であります。それからもう
一つは、國際
関係、特に外資導入の問題などから考えまして、どうも
日本の
法人税というものは高い、だからこれを安くしなければ思うように外資が入らん。それから現在の
企業というものは古い
價格で固定
資産を表示しておる、つまり
資本は、現われておる
資本というものには
相当含みがあ
つて、名目上は小さな金額にな
つておる。そういう
関係で外資が入
つて來る場合に、向うは少い金を持
つて來て、
相当の内地の事業の支配権が握れる。それらはこつちで安くして置くからいけないのであ
つて、直せばいいじやないかという問題が出て來るのでありまして、これと同じような問題が古い
企業なり、新らしい
企業なりの間に起るのでありまして、古い
企業というものは
相当資産が充実しております。固定
資産も
相当償却しておりまして、余裕がある。新らしい
企業につきましては、最近の物價情勢なりその他からして、基礎が健実でないというようないろんな点があるようでありますけれども、とにかく
法人税の問題につきましては
相当突込んで考えなければならない、そこでこれも現在の固定財産の償却はどのくらいにな
つておるかという調べなんでありますが、これも調べる方選によりましていろいろ違
つて参ります。
企業研究会という
團体があるのでありますが、ここでサンプル
調査をしたここがあります。
日本鋼管であるとか、その外日鉄であるとか、
相当な
企業につきまして標本的に調べた数字ができておりますが、大体平均いたしまして、あるべき姿の二十分の一乃至三十分の一ぐらいしか償却ができておらない、つまり固定
資産の
價格というものが古い
價格でや
つておりますから、それを
標準にして耐用命数でや
つて行きますというと、このくらいしか償却ができない、償却しようとしましても、それだけ物價の方で見て呉れないというような
関係がありまして、非常に
資本の喰潰しをしておるというような数字が出るのであります。又
大藏省方面で今度種々業種につきまして、この
資料は決して完備したわけではありませんが、
課税の
資料等から拾いまして大体や
つて参りますと、十二分の一ぐらいじやないかというような数字も出ております。これはどちらが正しいか、前の方はサンプル
調査でやりますから、対象が非常に狭い、
大藏省の方の対象は非常に廣いようでありますけれども、
相当な推定が入
つておる、そういう
関係で、どちらがどういうふうに間違
つておるかということは、ここでは申上げかねるのでありますが、大体の趨勢といたしましては、そうい
つた僅かの償却によ
つて企業は泳いでおる、これに
資本を充実させ、維持させる。そして再建の基盤を作るという理想を持
つて参りますというと、どうしても固定
資産について再
評價を許すと同時に、償却につきましても、それに基くところの償却を認めて行かなければならないということになるわけであります。それから
税率の問題につきましても、
外國の例等では
相当混み入
つておりますが、まあやや高いという数字が出ておるのでありますけれども、これは私はつきりいたしません。今の普通
所得に対して百分の三十五、それに地方税を加えますというと、百分の十五乃至十八でありますから、
相当重くなる、こういうことにもなるわけでありますが、その
税率等につきましても
相当動かさなければならんのではないかという要求が熾烈であります。それから
資本を是正しませんと、超過
所得税の
関係で超過
所得が非常に沢山出て來てしまう 実際は名目的な低い
價格に抑えてありますから、
利益というものが非常に歩合が多いように出て來ますので、その点で余計に税金を取られるということにも相成りますので、やはりこの点につきましては、今度手を入れるとすれば、やらなければならん問題じやないかというふうに考えております。そこでそれではこれによ
つて税收の方にどう響くか、つまり償却を
相当思い切
つたところまでやる、そうしてそれによ
つて物價の方も或る
程度勘案して行くということから見まして、どのくらい税收に響くかということも必要な
資料であると思いますが、これはまだはつきりした確定的な
資料はございません。ただ本年度
法人税の
收入として上げております金額が二百七十二億円であります。それで全然物價の方に響かせないで、税金だけでこの償却なり超過
所得なりというものを呑んでしまう、自腹を切るという
考え方で参りますと、九十億
程度の税が減ると、こういう一應の数字が出たようでありますけれど、もその後又数字をいじ
つておりますので、大体大局から見て余り影響しないようにも思われます。
それから物價の方につきましては、品目によ
つて相当違うのでありますが、
相当響くのじやないか、
價格の計算になりますと、
相当技術的な計算
方法がありまして、第一次の撥ね返りをどう見る、第二次の撥ね返りをどう見る、第三次、第四次と、こういう複雑な計算
方法があるわけでありますが、先ず第一次だけで見ますと、ひどいのになると
相当ありますが、銑鉄
方面では一割二分ぐらい生産者
價格が上るのじやないか、それから石油では二割二分ぐらい上るのじやないか、鋼材なんか殆んど影響なし、綿糸あたりが一%ぐらいというような数字もあ
つたようでありますが、これもやはりそこまで発表と言いますか、檢討を要する程の数字でございませんので、ただそういう彈き方をしておるものもあるという
程度に御了解願えば結構であろうと思います。これに第三次、第四次と撥ね返りを見て参りますと、いろいろな要素を取り込んで参りますと、あに銑鉄、石油、綿糸、鋼材というばかりでなく、あらゆる面に響きますので、この作業というものはやるとしましても
相当骨が折れるというふうに思われます。そこで問題いの焦点が大分具体的になりまして、
國民の
税負担というものが
相当重い現状である。それから
法人税につきましても今のような
資本の
蓄積なり、或いは外資導入という見地から見まして
相当行詰るところまで來ておる、何とか手を著けなければならん、こういうところまで話が進んで來たわけでありますが、私共の方では一体それでは
所得税の場合、これはどうしても
所得税は
軽減しなければ
相当無理が來るのじやないかという氣がいたしますので、これについて
相当突つ込んだ作業をして見たいというつもりで実は三、四月頃手を掛けたことがあ
つたのであります。その場合の前提條件は只今の基礎控除、これが一万五千円であります。これが最低生活費という
意味から見ますと、
相当ナンセンスである。最近の生計費はどのくらいになるか、場所によ
つても、その月によ
つても違うと思いますが、少くともこれは低過ぎる。例えば基礎差除を一万五千円のを二万円に引上げる、それから扶養控除、これは年額税額につきまして千八百円とな
つておりますが、これも同じ率で二千四百円まで上げる、これによ
つてどのくらい税收が違
つて來るかという数字を出したことがあります。これは余り使いものになりませんので、その後追つ駈けて作業いたしておりません。と申しますのは、大分
所得税の構成なり、物價なりが違
つて参りましたので、生計費と申しましても、最近主要食糧の値上であるとか、輸入の三百六十円レートの影響であるとか、鉄道運賃、旅客運費の値上などによりまして、
相当又基礎が変
つて参りましたので、それと併せてやりたいという
意味で、これも余り突つ込んでやりませんが大体、今の
程度の一万五千円を二万円にする、千八百円の扶養控除というものを二千四百円にするくらいの
程度で以て、どのくらい税收に響くかと申しますと、大体六百億から八百億
程度税收が引つ込んでしまうという計算になるのであります。つまりちよつと動かしただけでも、非常に税收に響いて参ります。
法人税などと申しますのは、税額という点から申しますと、全廃しても
所得には余り影響がない。尤も
租税体系の方から言えば、そう
簡單には行かないのでありますが、
所得税につきましては、何しろ
日本の現在の
所得階級というものが、大金持がいない。大体において零細な
所得階級でありますので、ちよつと線を上の方まで、限度というものを上の方まで上げると、大体波間に没し去る階級というものが非常に多いのでありまして、ちよつと動かすというと、幅が非常に廣いということになるのであります。この辺につきましては更に又與えられた條件でや
つて行きたいと思いますけれども、なかなか税收がどのくらい減るかというところまで考えて参りますと、一万五千円の基礎控除を二万円から三万円というふうにや
つて行きたいのは山々でありますけれども、そういうように税收全体という問題から見ますと、そこにいろいろな問題があるように考えられるのであります。つまり現在の税
体系というものは、非常に理論的には合理的にできておりますけれども、
所得の階層別というものが戰前のようにラバイエテイーに富んでいない。大体原則として貧乏人でありますから、
一つ負けるとなると、類は友を呼ぶで、
相当波及するというなことに相成りますので、ちよつと動かすだけでも
相当財政的には影響を及ぼすというふうな数字が出るのであります。だからやらない、或いはそれを押し切
つてもやるということは、これは政策の面でありまして、私共といたしましては、どうとも申上げ切れないのでありまして、その辺は事務的にいろいろ数字を集めたり、
調査を進めたいというよう
なつもりで仕事をいたしております。
以上申上げましたように、安定本部といたしましては、この問題については非常に熱心を示しております。又そうしなければならないのであります。つまり國全体の総合施策という見地からいたしまして、捨て置きがたい問題でありますので、非常に重大な関心を拂
つております。ただ、今シやウプ・ミッションとの接触の度合は、御承知のように
相当あちらさんでも現場というものを見たい、
徴税機構の方も
相当突つ込んで見たい、つまり
資料集めに奔走しておられる段階でありますので、まだ向うからどういう点についてどう、どういう点についてどう考えるかというような細目の点においては、はつきりした指示がありませんので、成るべくこちらでもいろいろな角度から物を考えまして、今後、より接触を密にして参りたい、同時に又國内
官廳方面におきましても、
大藏省と私の方に、大体これは殆んど親戚同士でありまして、緊密にや
つておりますが、
経済團体方面からの陳情書というものも
相当私共の方では纏めております。
相当研究いたしております。何とかもう少し利用し得る
資料にまで持
つて行きたいというふうに考えているのが、現状であります。
大体要領を得ませんで誠に恐縮でありますけれども、ただ問題のデリケートな点が
相当ありますので、ただ安本として今までどういうことをや
つた、どういうふうな角度から物を考えているか、それにつきまして大体の御
説明を申上げた次第であります。