○羽仁五郎君 そういう御質問に対して、そういうことをいわなければならんのは甚だ残念なんですが、我々が立法して行くときに、起り得るいろいろな場合を考えて立法をして行くというのはいわゆる官僚主義というもので、これは法律としては國民の幸福を護るという上にこういう場合が非常に多いのか、それとも極く僅かに過ぎないかということは十分に考えて行かなければいかん。これは例が少し違いますが、人権蹂躪に対して最近日本の警察官なり檢察当局なりが考えておる
考え方にもやはり司令部の法務局のマイア君などによ
つて指摘されなければならないような点があるので、新刑訴法というものが邪魔になるというような
考え方が依然として日本には残
つておるんです。それで或いは殺人とか、或いは非常に恐るべき犯罪人ですらこれは國民の中にそういう人が多数におるわけじやあない。極く少数にしかないのです。ところが人権を蹂躪するということにな
つて來ると、國民のすべての人に
関係がある。だから昔の考えでは國民というものは惡いことをするものだ、だから惡いことができないような法律を作
つて行くという
考え方があ
つたのですが、現在まさか國民というものはとかく惡いことをするものだという
考え方は民主主義ですからもうありやしない。その人民の主権、又その人民の善意というものを信じて立法して行くのが我々の民主主義立法の唯一の
方法です。その
場所その
場所において、その責任を持
つておる人が最も賢明な
措置をすることが、これはその場合いろいろな場合がありますから、そういう判断を十分に與えておくことがいいことなんです。これは昔上海の工部局に日本の警察が入
つて行つたときに、まだイギリスがや
つていた時代ですが、日本の警察官というものは、一々つまらないことでも本署に持
つて行く、日本の警察官というものは、常識がないのじやないか、イギリスの警察官は現場で事を処理することが名誉であ
つて、日本の場合には何か喧嘩みたい
なつまらない事件まで持
つて來るということが多いのじやないかということが國際的に指摘されて、非常に恥かしい思いをしたことがあるのです。この
参議院の
選挙法、第一回の
参議院議員のお作りに
なつた
選挙法はいろいろ間然することもおありになるだろうが、これは
選挙管理委員会に出して見て恥しくないというものを是非作
つて頂きたい。そういう
意味では余り小さなことにまで一々細かい
規定をお作りになるという御
趣旨には、私はどうも甚だ遺憾でありますが、又利害得失いろいろ考えて見ましたが、成るべく法律として簡單の方がいいというふうに考えます。