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法制局参事(
菊井三郎君)
選挙方法の
制度につきまして御
説明いたします。ここの掲げてありますものは、多数
代表法によるか、
少数代表法によるか、
比例代表法によるか、この三つの
方法を大別いたして掲げております。それで大体多数
代表法というものは、
通常学者の
説明いたすところによりますと、すでに御承知のように大
選挙区別をと
つて速記投票の
制度を採用いたしますれば、少しでも
政党が対立しておる場合に、
党派の有力な方が必ずその
選挙において票を余分に穫得する。又小
選挙区制を採用いたしまして、
單記投票の
方法を採用いたしますれば、必ず一票でも
支持者が多ければ、そこの
政党は一票の差によ
つて議席を獲得する。こういう結果になるということを
学者が言われておるのであります。それで多数
代表法と通常申しますと、大
選挙区制を採用した場合、
速記投票を
とつたらそうなる。小
選挙区制をと
つて單記投票の
制度を採用いたしますと、少しでも多数派を占めるものが
議席を獲得するというようなことになるのでありまして、この点では多数
代表法によるかという問題は、その下に書いてありまいように、大
選挙区
速記投票、小
選挙区
單記速票、こういう
制度を併用いたしますと、こういう結果になるわけであります。その次の
少数代表法によるか。この
事項の中に
制限速記法、
累積投票法、
逓級投票法、
單純單記投票法、
得点公示單記投票法、こういうような
方法を掲げておりますが、これは
学者によりましていろいろ
分類方法を異にしておりますし、又独特の名称を付けておるのでありますが、これは多数
代表法に比べまして、多数
代表法が一票でも多ければ、結局
議席を獲得するという
弊害をなくするためには、
少数派でも
議席を獲得する
機会を持たなければならない。
比率が六対四の場合に、その
比率のままそれに近い
程度のものがやはり
議席を獲得するというような
方法に近いのでありまして、その
方法の中に今掲げましたホまでの
方法が一應あるわけであります。尚これ以外にも欧米各國で採用しておるものは沢山あるのでありまするけれども、これが大体典型的なものでありまして、そのイの
制限連記法というのは、お手元の資料として配付してあります一の四十八頁の表に一應載せてあるのでありまして、これを御覽願えれば、その
方法と採用している國、その利点、欠点というものが一應御了承願えるのではなかろうかと考えます。
制限連記法を採用いたしますと、ここに
説明しておりますように、大
選挙区において
選挙人をして
議員定数より一人又は数人を減じた数の
候補者を
連記投票する
方法で、三人の
議員を
選挙する場合に三人というように、或る
程度制限いたしまして投票いたすという
方法であります。この
方法をとりますと、大
選挙区
連記投票の場合には一票の差で大
政党が必ず勝を占めるのでありますが、投票の数が少くな
つておりますので必ずそういうふうに結果が出て参らない。
少数派でも
議席を獲得するように反映することができるということになるわけであります。その次の
累積投票法は、普通の
連記投票法において投挙人をして必ずしも別人に投票することを要件としないで、同一の
候補者を重複して記載することができるという
方法であります。この
方法を採用いたしますと、当選に関して過半数主義から出発して、少数者も又場合によ
つては過半数の得票に達し得るということになるのであります。これも從いまして少数の
政党でも進出する
機会を持ち得る。こういうことになるわけであります。あとは大体この資料に掲載されてありますので、重複いたしますので省略いたさせて頂きます。
現行選挙法におきましては、四の
單純單記投票法に該当するわけでありまして、
衆議院におきましても
参議院におきましてもこれに入るわけであります。それでこの
單純單記投票法というものは、各國の採用している
選挙制度の中から申しますと非常に例が少いのでありまして、これは
日本式とすら
学者は言
つておるのでありまして、
日本以外に採用している國はないようであります。ただこの
方法と
比例代表法と比較いたしますと、
比例代表法は必ず数が合理的に出て参るわけでありますが、
少数代表法を採用いたしますと、
選挙戰術の巧拙によりまして偶然が支配した結果、少数党でも場合によ
つては
議席を多く獲得するという
例外がないとは言えないというところに欠点があるようであります。
比例代表法を採用いたしますと、必ず数的に正確な合理的な
議席が獲得できるという結果になるのであります。現在のところ
日本の
選挙法につきましては
單純單記投票法を採用いたしまして、世界にも例がないと言われておるのであります。