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矢野酉雄君 私の質問はこの問題に関する限りは本日は打切りたいと思いますが、実は冒頭にお願いを申上げたい。殊に政務次官がおいでにな
つておりますので、併く
関係者として、私は田中資材課長の出席を
要望して置きましたが、
関係方面に出向いておられるそうでありますから、主として政務次官並びに特に初めてお目見えする次長に私は御
要望申上げます。それはもうすでに六百三十万人の引揚者を迎えたわけであります。これに
関係する家族等を加えますというと、常に私が申上げますように三千万に垂んとする國民の実に驚くような数を示しておるのであります。この人々を本当に自力更生させる。その環境を整えて行くことが生きた行政であり、生きた政治であると、こう信じております。刻々に引揚の諸君も帰
つて参りますが、いろいろな私達の想像のできないような行動を取
つておられますけれども、若しこれらの人々が職を得、業を安んじ、又居を與えられ、必要なる資材資金等のその整備ができたならば、私は決して今までのような引揚者の諸君が動靜を示したからとい
つて何ら同じ日本人としては心配はいたしません。この
水産問題に限定いたしまして考えて見ましても、私は
水産当局が引揚者の中に命を賭けて
水産業のために奮鬪をしたその諸君に、或る
程度の、國家の現状に即した或る
程度の資材等或いは金融の便等を開いて呉れることによ
つて、私は所を得て欣然として日本の民主的建設のために協力して呉れると思うのであります。然るに
水産業に携わらんとする引揚者等に、何らかのそこに金融或いは資材の特殊的手当をすることを、何か一般の國民の水準よりも以上高く引上げるかの
ごとき錯覚に陷
つて、そうして何ら資材も與えない、或いは金融の便も開いてやらないというような、むしろ平等の原則に反した数々の事態を私は憂うるものであります。ここに淺岡
委員も、ついこの前の
参議院における在外同胞引揚問題に関する特別
委員会において、満場一致を以て引揚者の
水産資材について、特別の行政的処置をして呉れるように、具体的に言うならば、漁網その他の資材を引揚者の枠として考えて呉れるように当局に
要望するということの結論に達したのであります。幸い
水産委員長と同行しましたので、
水産当局の
意向をやや探
つて見ると、我々の
要望と非常な違つた考えを持
つておる向きもあるやに私は推測いたしました。今までの中に二回に亘
つて引揚者の枠を特別に作
つて、そうして各縣に
割当てたのでございます。その中に一二の不心得者があ
つて、その漁網等を横流しをした者があることを私は知
つておる。併しそれは既存
業者の諸君がや
つておるのに比べれば、むしろ非常な僅少であ
つて、信用を失い、家を失い、地所を失い、何らの起つべきその根拠を失
つておるところの諸君が、而も資材を頂戴したが、折角開いて頂いておつた復金の特別融資も杜絶し、その他の金融の途も、農林中央金庫等から借受けようとしても、実に荏苒日を空しうして、四ケ月も六ケ月もかかる。十日に一割の利子を拂
つて借りるというようなその窮状にある者が、実にもう止むを得ずしてその資材を流さざるを得ないというような場合、或いは百人に一人か二人の
程度であつたから、それを理由として、私は平等の原則に副うための引揚者の資材の枠を設けるというような、この温かい方法をこれも放棄するということは、私はこれらをして恐るべき政治的の革命手段に訴えるような、これらの人々を押込んで行くことになると私は思いますので、是非政務次官は
水産当局を鞭撻して頂きまして、次の四半期における漁業資材等の或る
程度の枠を設けて、引揚者の諸君がその当局の親心に感激して、その業に親しむことができるような措置をして頂きたいことを、心からお願いする次第であります。殊に引揚者の中でも、さて舞鶴に帰つたが沖繩の諸君はどこに
行つていいか分らない。日本の國に籍がない。敗戰に
なつた。そうして欣然として戰地に赴いた沖繩の諸君が帰
つて見れば、國がどこに行つたか分らない、舞鶴には誰一人も沖繩の諸君を迎えるための特殊的の取扱いをして呉れるものがない、これらの諸君はどういう憤激を感ずるかは想像に余りあるものがあると思いますので、私は厚生政務次官としての特別の措置をするように、その管轄の者に指示をいたしておるような次第でございますが、沖繩の諸君に対しても同樣に
一つお考えを願
つて、各縣の
割当の中に沖繩の諸君も含まれておるということを示して頂きたい。殊に次の実際問題は、長崎縣の五島の小値賀漁業会の問題でありますが、そこに沖繩漁業團の東江清次君と五十名の方が陸地から十海里の沖で漁業をや
つておる。然るに契約保証金として二十五万円取られ、而も水揚総額の三割を漁業会が收得して、その三割の收得した上に余りの当然の支拂うべきところの金は漁期の終了まで全部漁業会がこれを押えて、漁期が済んでから金を支拂う。過般四月一日でありましたか、別に船を雇
つてそうして後、漁場に乘込んだところが、その漁業会の船でなければ、他のチャージした船では使用を禁止するというために、同君は二十五万円以上の損害をしておる。日本が敗戰のために沖繩自体がどうなるか分らないという運命に押込まれ、命からがら逃げて來たこれらの諸君が、やつと而も
許可を受けないでいい公海において漁業をしておるのに、二十五万円の契約金を取られ、水揚額の三割を取られる、而もその金を漁期の終りまでに拂われないという不平等の不当な、こうした境遇に追込まれておるときに、これらの諸君が國家革命に走らないのが不思議であると思うのでありますので、
水産当局は直ちに実情を調査されまして、いわゆる良民が泣かない、良民が一人でも餓えないというような適切公正な処置をして頂きまするように、私は心をこめてお願いするような次第でございます。以上二点について政務次官並びに次長の格段の御覚悟を切にお願いする次第でございます。