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説明員(
松元威雄君) それでは
漁業法施行法案につきまして重要
條文の御
説明をいたします。
先ず施行法の
内容を分類いたしますと、第一條から第
五條までは、現在ありまする
漁業権、この現存
漁業権の二年間の繋ぎに関する
規定であります。それから第六條が
許可の繋ぎに関する
規定であります。第
七條は先程一應飛ばして御
説明を進めました指定遠洋
漁業に関する再審査の
規定であります。第
八條は訴願に関する繋ぎの
規定、第九條から第十
七條までが補償に関する
規定であります。それから第十
八條以下が
関係法令の改正に関する
規定、大体このようにな
つております。
從つて内容的に分類いたしますと、大体規存
漁業権の繋ぎに関する二年間の措置の
規定が
一つ、
漁業権の補償に関する
規定が
一つ、
関係法令の改正に関する
規定が
一つ、大体この三つに分類されるわけであります。
先ず第一に現存
漁業権の二年間の繋ぎに関する
規定を御
説明いたします。先ず
漁業法が廃止されますと、現在あります
漁業権はその法的根拠を失いますから同時に消滅するわけでありますが、同時に消滅しましても新
漁業権の
免許が直ちにできませんので、二年間繋げる必要があるわけであります。
從つて漁業法施行の際に、現に存する
漁業権につきましては、
漁業法が施行になりましてから二年間は新法の
規定は適用にならず、
漁業法の
規定が適用になり、
從つて旧法は尚二年間は
効力を有するのだ、こういうふうにいたしております。併しこの二年間と申しますのは、全國を通じまして、旧
漁業権の補償、新
漁業権の
免許、この準備が全部整いまするのは一番遅い時期でありますから、地区によりましてはもつと早く整理を終る地区もあります。例えば北海道は非常に簡單でありまして、一年で整理ができる、こういう地区もございます、或いは又
漁業権の
種類によりましては早くできるところもある、例えば
專用漁業権の整理は面倒であるが、
定置漁業権の整理は簡單で、一年で済むという場合もあります。
從つて二年が
原則でありますが、第二項で、「
漁業権について政令で地区及び
漁業権の
種類を定めて期日を経過したのちに指定したときはその期日以後は
前項の
規定は適用しない」というふうに
規定いたしまして、政令で早く終る地区、或いは早く整理のできる
漁業権を指定すると
規定いたしますと、それにつきましては二年間でも新法が適用になるということにな
つて参ります。
從つて極端になりますと、或る地区は新法が適用になり、或る地区は旧法が適用になる、或いは一地区内でも或る
漁業権では旧法が適用になり、或る
漁業権では新法が適用になり、錯綜する場合もありますが、成るべく早く全部同一に整理いたしたい、こう考えております。それから第一條の第三項から第四條までは、現在
漁業権等臨時措置法で、現状を固定する措置を講じておりますが、それと同じ
條文であります。現状ストップに関する
規定でありますから、
説明は省略いたします。
それから二年間の
漁業権をどうするかという場合に、一應現状ストップという建前を採
つておるのでありますが、現在
漁業権の行使は非常におかしな例があるわけであります。特に現在
漁業会が
漁業権を持
つておりますが、一方には
協同組合ができますが、
漁業権の始末がつかんために前の
漁業会がずつと二年間残
つておる。而も
漁業会を運営しておるのは理事であります。二年も長い間從前の理事に
漁業権の
管理を委しておくということは危ないわけで、新らしい
協同組合が折角できましても、
漁業権というものに旧勢力が温存しておる、旧勢力がずつと維持されて行くということが予想されますので、
漁業会の持
つておる
漁業権の
管理を理事に委せないで、何等かの新しい
管理方法を考えなければならんわけであります。
從つて條文は少し飛びますが、第二十一條におきまして、水産業
協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する
法律、この一部改正をいたしまして、
漁業権管理委員会というものを設けたわけであります。そうして二年間の間
漁業会が持
つております
漁業権の
管理は理事に委せないで、この
漁業権管理委員会が理事に代
つて管理をするのだ、こういうふうにいたしたわけであります。勿論
漁業権の
管理は理事だけがやるのではなくて、
漁業会には会則で決めております、総会とか総代会というものがありますので、理事はその中の單なる執行機関に過ぎないのでありまして、その点は
漁業権管理委員会と同じであります。この
漁業権管理委員会がこう決めたからと
言つて、総会の決定に反するということはできない、理事に関する限りその権限は
管理委員会が行のうのだ、こういうことにしいたしております。現在二年間の
漁業権の措置について一番考えなければならんのは、一般的にはもう
協同組合法は施行にな
つて協同組合はどんどんできておる、
漁業法の改正も議会を通過したということになると、漁民は今直ぐにでも
漁業権の解放が行われると思
つておる、これは二年間は現状のままで、二年後から始まるのだと言いますと、折角盛り上
つた買上の機運、これが二年間先ではということで以て鈍らせる傾向があります。漁民は今直ぐ解決できると思
つてお
つたわけでありまして、それは確かに二年間できるわけでありますが、二年間の間漁民の盛り上
つた買上の機運、これを成るべく覚まさんようにずつと結集させて、必要な場合に発動される措置が必要であります。これは先ず第一に
漁業会の
漁業権に関しては
漁業権管理委員会という形で以て、新らしい漁民の
意思が反映するようにして行こう、こう考えるわけであります。この前提が現在非常に必要なことでありますが、
漁業会に会員である漁民は
法律上当然資格を持
つておるに拘わらず、
漁業会に加入を拒まれておる、こういう例が非常にあるわけであります。そこでこういう例につきましては
漁業権管理委員会は大体資産処理
委員会にならいまして、漁民の選挙でありますが、選挙するためにはまず
自分が
漁業会に加入しなければならん、こういう必要がございますので、先般
水産廳から通牒を出しまして現在不当に加入を拒ばまれている者について、なるべく
漁業会に加入させろというような通牒を出したわけでありますが、この通牒の
趣旨に從いまして当然
漁業会に入る資格のある者は
漁業会に加入する。加入したあとで
漁業権管理委員会の委員を選挙して、民主的な運営方法について決めて行く、こういうふうに考えているわけであります。
漁業権管理委員会は大体資産処理
委員会と同樣でありますが、違います点は選挙権及び被選挙権を嚴重に漁民に
限つております。資産処理
委員会の場合ですと
漁業権だけでなくてその他経済的な資産もありますから、一應非漁民であ
つても全体の四分の一までは委員になれたわけでありますが、これは
漁業権に関する限りは、全部漁民でなければいかんというふうにしたわけであります、その外の
漁業権管理委員会の選任方法等につきましては、大体資産処理
委員会と同樣であるというふうに理解して頂きたいと思います。二年間の間漁民の買上げの意欲を冷まさないように、先ず
漁業会に加入さして
漁業権管理委員会で運営方法を決めて行く。その外に尚この二年の間でも
漁業権の行使方法がおかしいという例が非常にあるわけであります。これは
漁業会の
漁業権に限らず、当然
個人の
漁業権についても同じですが、これに対して二年間口をきけないというようなことは非常におかしいのてありまして、
漁業權の所有自体につきましては、現在の
漁業権等臨時措置法、今度の
漁業法施行法の三條四條によりまして
漁業権の所有自体は動かしませんが、行使方法につきましてはいろいろ不当なものは直さして行く必要があるわけであります。そこで第一條の第一項の但書におきまして、一應旧
漁業権につきましては新法は適用にならないけれども、新法の六十
七條の
規定、先程御
説明いたしました
漁業調整委員会の指示に関する
規定であります。
委員会に必要がある場合には指示できるという
規定、この
規定だかは発動させて若し行使方法がおかしければ
委員会は指示いたしましてこれを直さして行く、
漁業調整委員会に
自分らの代表を送
つてその
委員会で不当な行使方法を
制限して行くというような措置を講じたわけであります。これで二年間の漁民の買上げの意欲を繋いで行く。二年後の再割当のときに買上げの
意思を反映させるようにする、こういうわけであります。これが二年間の
漁業権の
管理に関する
規定であります。
それから第
七條は指定遠洋
漁業に関する
規定でありますが、指定遠洋
漁業で今度はどういう場合に
許可をしてはならないかという場合を
規定してございます。この指定遠洋
漁業は
漁業権と違いまして、全面的に御破算にするということはいたしておりませんが、併し新法で
許可をしないという場合には一應再審査をいたしまして、それに該当するものは取消す必要があるというわけで、一旦御破算という形ではありませんが、一應再審査をするという形を取
つているのであります。こうして不当におかしなものだけを取消して行こうという考えであります。その外の
許可漁業一般につきましては、本來ならば
漁業秩序を全面的に変える、こういう場合には
漁業権だけではなく
許可をも含めまして、全部旧秩序を御破算にして新らしく
委員会を作り直すわけでありますが、何分
許可漁業につきましては、現在
都道府縣知事の権限に属しておりますし、それに実態もなかなか掴みにくいというわけで、
漁業権と同じように一旦御破算にするという方法は採らないで、除除に実態に即して改正して行こう、こういうふうに考えております。これにつきまして実際問題としては
許可の方が経済的價値はむしろ
漁業権より多いものが大部あるのであります。例えば以東の底曳とか揚繰網とか、こういうものはむしろ定置
漁業の價値より経済的價値が多いのでありまして、而も
許可漁業のウエイトは、旧法施行当時は大体
免許漁業でありますが、現在では、
許可漁業の方がウエイトが多いので、而もその傾向は今後ますます甚だしくなります。こういう重要なものに
漁業法で何か触れておらないのはおかしいじやないかという
意見もありまして、非常に尤もと思いますが、現在のところでは
漁業権のように一挙の御破算にするという方法は採らないで、漸次実体を明らかにして、順次買上げの措置を講じて行くというふうにしております。
第九條から第十
七條までは補償に関する
規定であります。この補償すべきか否かという点につきましては、いろいろ議論もございまして、事務当局としまして最初は無補償ということも考えたことがございますが、憲法の
趣旨に鑑みまして、一應補償をするということにいたしたわけであります。この補償金の算定方法は、第十條の第三項各号に
規定してございますが、何故このような補償金の算定方法にしたかということは、お手許に配付いたしました
資料の中に
説明してございます
考え方は、
漁業権の補償は
原則として賃貸料の十一倍であるというふうにしております。何故賃貸料の十一倍というふうにしたかと申しますと、
漁業権の價値というものは、つまり平均利潤を超えまする超過利潤であり、平均利潤というものは資本主義社会におきましては何をしても得られるわけでありまして、それを超過する利潤、この超過利潤が
漁業権の價値である。超過利潤は現実的には賃貸料という形で拂われる。例えばAという
人間が
漁業権を持
つて、BがAから借りて経営します場合は、平均利潤を得られるようにする。でAは平均利潤をオーバーする部分は、賃貸料として取るというふうになるわけでありますから、賃貸料はまあ超過利潤である、こう考えております。毎年々々賃貸料が入
つて來る。それが
漁業権の價値であ
つて、
漁業権の存続
期間は一應十五年と見まして、この賃貸料の十五倍、これが
漁業権の價値であり、その
漁業権の價値たる賃貸料の十五倍を、本來ならば一年づつ十五年間にわた
つて入
つて來るのを一時に拂うわけでありますから、利子分を差引かなければならん、利子分を控除しなければならん。この利子分を控除しますと賃貸料の十一倍、こうなるわけであります。これが賃貸料の十一倍といたした理由であります。これに対して賃借権を持
つておりまして経営しておる者につきましては、その
漁業権を借りておる賃借権自体からは超過利潤というものは生まんわけであります。
経営者は平均利潤をオーバーする部分は、
漁業権者に賃貸料として拂う。
從つてその
意味で賃貸権の價値がない。併しながら賃借権を持
つておりますために中均利潤を得られる。この平均利潤は資本主義社会におきましてはどこでも得られる筈でありますが、現実問題としては、その経営ができなくな
つて、他に轉換する場合は、轉換資金が要るのであり、或いは他に全然轉換できない場合もあるので、そこで轉換資金乃至作離れ料として、大体この
漁業権の補償金の二割を補償しようというふうにしたわけであります。そうして
漁業権を持
つて自営しております場合には、
漁業権自体の價値とこの轉換資金と両方が必要なわけであります。そこで両者を合計しまして賃貸料の十三倍と、こうしたわけであります。
それから
專用漁業権の場合でありますと、これは賃貸しております者は賃貸料がございますからこれによりますが、賃貸していない場合には賃貸料というものはないわけであります。そうして存続
期間が定置漁獲におきましては、十五年としたわけであります。
專用漁業権は大体漁民の永久権である。こういう思想に立ちまして、倍ぐらいにいたしております。そこで賃貸しております場合には賃貸料の三十年分、これを利率で換算いたしますと、賃貸料の十六倍とこうなるわけであります。そして普通は賃貸しないで
組合に構成さしておるわけでありますが、この場合には賃貸料はない、併し賃貸料は全國平均で見ますと大体水揚げの六分というのが平均でございます。賃貸しております十六倍でありますから、六分の十六倍といたしますと大体一年分の水揚高ということになります。そこで
專用漁業権の補償金額は一年分の水揚げと、こうしたわけであります。この賃貸料及び水揚高は丁度去年の七月一日付で
漁業権の調査をいたしております。これは統計法に基きました指定統計でありまして、これは事実を申告いたしたわけでありますから、この
漁業権調査規則に
從つて各人が報告した金額、これを取ることにいたしております。併しこれは
原則でございまして、実際問題としましては賃貸料乃至水揚げはその年一年だけの事情によりますと非常におかしい、そこでそういう場合には類似の
漁業権これを参酌いたしまして、適当な賃貸料乃至水揚げ高を決める、それを基準にして補償金を決めて行く、こういうふうにいたしております。実際の方法といたしましては大体
漁業権ごとに点数をつけまして、点数制で決めて行く、この
漁業権を百点とすれば、これは九十点、これは八十点というふうに実現されるわけであります。そこでそのうち代表的なものを
一つ選びまして、それを補償金額はその基準に從いまして、幾らか決める。それをあとは点数によ
つて配分して行く実際問題としてはこのようにして
漁業権相互間の公平をとりたい、こう思
つております。これが大体
漁業権の補償金額の算定方法であります。こうしました結果が大体先程も触れました沿岸の
漁業権の補償金額が大体百六十億、利子が百二十四億、合計して二百八十四億になる見当であります。この外に内
水面の補償金額があるわけでありまして、この金額は利子も含めまして、大体十八億というふうに推定されます。第十條の第五項から第十
五條まではこの補償を決めまする手続でございます。これは大体において農地の場合の買收の
規定になら
つております。
第十六條は
漁業権に関する
規定で、こうして決まりました補償金は現金で一時に拂わないで、三十年以内に償還すべき
條件で交付する、こういうわけであります。この償還期限は三十年以内でございまして、一應
只今は二十五年というふうにいたしておりますが、これは漁民の補償能力を考えまして、なるべく縮めたい、こう思
つております。二十五年償還でありますれば、一年分の償還金額は大体十一億四千万円程度になるというわけであります。第十
七條はこの補償を決めます
都道府縣
委員会に関する
規定でございます。これは
都道府縣ごとに設置いたしまして、委員として十名
知事の選任でありまして、漁民代表が七名、学識経驗者が三名ということにいたしております。以上が補償に関する
規定であります。
次に第十
八條から第二十二條までが
関係法令の改正であります。先ず第十
八條で
水産廳設置法の一部改正をいたしましたのは、瀬戸内海に出先機関といたしまして、瀬戸内海におきましては、非常に縣対縣の
関係が複雜である。これを縣ごとに分割して調整していたんでは、瀬戸内海の全体のものはできない。岡山縣は非常に海が狹うございます。目の前の海が香川縣で、香川縣の海は相当廣い、併しながら香川縣は岡山にぐつと喰込んでいる。廣島縣は狹くて愛媛縣は廣いというような、縣によ
つて非常に面積が違う。これを單位として
漁業をや
つていたんでは、生産も上りませんし、漁民にと
つても不公平である。むしろ瀬戸内海一單位と考えて調整を図らなければ、本当の瀬戸内海全体の
漁業はできない、こういうふうに考えまして、特に瀬戸内海に限りまして出先機関を置いたわけであります。この瀬戸内海の
漁業調整の事務局の権限といたしましては、一々の細かな
免許まではいたさず、大体
免許方針は全体に亘る入会
関係の調整、場合によ
つては瀬戸内海全般に亘りまする
漁業、例えば動力を使
つてやります
漁業、瀬戸内海全般に亘
つて操業する
漁業とか、取締、こういうことをいたしたいと思
つております。なるべくは一々
縣知事の権限に干與せずに
縣知事限りで
処分できるものは
縣知事でや
つていく、全般で調整しなければならんものだけを調整して行くという精神であります。具体的に如何なる
許可を事務局で
許可するかということまではまだ決ま
つておりません。事務局は一應公平に行くことにいたしておりまして、これにつきましても、或いは廣島、或いは岡山とか、いろいろ異論もあるようであります。
次に第十九條であります。
漁業財團抵当法の一部を改正いたしましたのは、新らしい
漁業権は現在の
漁業法と違いまして、
担保性を非常に
制限いたしております。これは本法第二十三條以下で御
説明したかと思いますが、これに照應いたしまして、
漁業財團抵当法の
規定を改正したわけであります。それから第二十條で水産業
協同組合の一部を改正をいたしておりますが、これにつきましては、先程
説明いたしましたので省略いたします。
第二十一條では、水産業
協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する
法律の一部改正をいたしておりまするが、これも先程
説明いたしましたので省略いたします。第二十二條は農林中央金庫法を改正いたしております。これは農林中央金庫に加入できるのは
漁業協同組合でありまするが、今度新らしく生産
組合も直したわけであります。今までは生産
組合は
協同組合の傘下にありまして、
協同組合が中金に入
つてお
つて、代金から融資を受ける、或いは
協同組合が生産
組合から融資を受けるということにな
つておりましたのを、中金と直結さしたわけであります。その方が
金融が円滑につく、こういうわけであります。
二十三條以下は罰則につきまして
規定してございますが、それ程重要な
規定でございませんので、省略いたします。