○
木下源吾君 それでは
大山議員と私とが先般
東北、
北海道地方における
公務員の
勤務の
状況並びにその他
経済的事情等を
調査に
参つたのでありまして、私から代表いたしまして御
報告を申上げます。二月十六日から三月三日に至る十六日間であります。
調査いたしましたところは、
宮城縣、
青森縣、
岩手縣、
秋田縣及び北海道の函館、札幌、旭川、小樽、以上
縣廳所在地並びに各市八ケ所であります。そうして主として
調査の具体的な事項として掲げましたことは、
國家公務員法の
改正に
伴なつて、その後どういうような
実情にあるか、なかんずくこの
改正に対する
公務員の考えておる
状況、次にはその後
人事院から四十八時間という
勤務を画一的にいたしましたのでありますが、これがいわゆる
寒冷地在勤公務員に及ぼす
影響がどうであるかということ、次には
寒冷地手当の
実情について、その他の
給与及び
厚生面におけるところの
状況、以上五
項目に重きをおいて大体
調査をいたしたのであります。
調査の方法は、各縣におけるところの
理事者則と、他面においては
労組側、
地方出先の
政府機関の
労組並びに
地方自治体の
公務員等の
労組の
首脳部の集ま
つて貰いまして、極めてプライベートに懇談をしたようなわけであります。そうしてまあ
地方に出かけて
公廳会を開くというような氣持で皆やつたわけでありますが、主に集ま
つて來たところの
人々は、
建設省関係の
土木労組、
食糧公団労組、全逓の
労組、全
農林関係の
労組、
國鉄労組、縣廳の
職員組合、
市役所等の
職員組合。その他或るところでは
一般労組の
幹部諸君の集ま
つて來たところがあります。この八ケ所におけるところの動員の数は約四百名に上りました。又場所においては
理事者側だけの会同をも持つたところがあるのであります。そこで
公務員法改正に対する
意見でありますが、概して
公務員法改正については
不満の意を持
つております。殊に
公務員法において
公務員の
活動が制限せられておるにも拘わらず、一方において
給与の面について
実質的に何ら恩恵が今行き渡
つておらないということであります。この点につきましては後で
給与の点で
調査の
実情を申上げたいと思うのでありますが、とにかくにも
給与の
裏付けは全然
改正前よりもよくな
つておらないという、このために
一般の
公務員は
公務員法改正それ自体に対するいわゆる
反対といいますか、そういう考え方よりも、
改正後における
給与の
実情が
伴なつておらない、惡く
なつたということに非常に
不満を持
つておるのであります。なかんずく一部においてはこの
公務員法改正というのは誠に
労働者を奴隷の地位に再び突き落したんである、我々は絶対
反対だという、ただこういう一遂にそういうような
主張をする一部の者もございます。併しながら大
部分は何とかしてこの
國会を通じて
自分たちの待遇の
漸次改善を望むといす、そういう風潮が大
部分を占めておりますことが注目に値すると考えます。なかんずく
公務員法によ
つて公務員の
政治活動が制約されておりまするために、今度こそは
政治の面に、端的にいうならば政党の力によ
つて自分たちのいろいろの
主張を貫徹しなければならないというような
意欲が顕著に現われておることを申上げて置きます。
次に四十八時間の
勤務の
状態でありますが、これは法のいわゆる許されておる
最大限でありまして、
人事院が突如としてこういうような
最大限の
勤務時間を押し付けたというように受取
つておりまして、この点については
人事院に対する
不満を持
つております。殊にこの四十八時間が全國画一的に行われるという点においてはいろいろの
実情について
意見がありまして、我々も又この点は非常に考えなければならんことと思
つて参りました。即ち
東北地方における
冬期間の日の出の遅い、
日沒の早いというような
事情、殊に
北海道のごときは冬季間において最も早く日の暮れる時間は三時半であるというような事実、そういう
関係上
実情に時間ばかり引延ばしてもそれぞれの
仕事においては全くこの
仕事の用をなさない、例えて言うならば、
農産物檢査というような
仕事はこれは暗くてはできないのであるし、又仮に今日のような
電氣事情が惡くなくてもそういうようなことで
檢査はなかなかできないのであるというような
事情、又港湾における
現場等において、
從來は普通の
勤務者が出て來るまでの間に
蒸氣の温度を数時間前から少数の者で上げて、そうして皆んなが出て來たときに直ぐいろいろ
仕事ができる、
つまり船などの場合、それが画一的にそういうように決まつたために、皆んなが出て來てもその
蒸氣が上るまでは何も
仕事がないというような
実例、いろいろ
現地においては
却つて能率が下
つているような場合がしばしば実際にあるということであります。殊にこの四十八時間のいろいろの
規定は、一分でも遅れれば給料の差引になるというこの面でありますが、
從來の慣例によりまして、概ね各
都市の
汽車の発着時間というものが決められてお
つたのでありますが、この
改正によ
つてこの
汽車時間等が同時に直
つておりません。そのために
汽車通勤しておる者などの困難が非常なものであります。殊に戰災を受けた
都市などでは、例えば
青森のごときは二時間以上も先から
相当数の者が通
つているのでありますが、この
人々の苦しみは誠に想像以上であります。凡そこういうような時間
改正をせられる場合には、特殊的の
地域を十分に
調査をし且ついろいろの
條件をできるだけ勘案してやらないというと、末端においては
却つてそのために非常に
勤務の
意欲が低下して、逆に
政府当局を恨むというような感情が非常に強くなり、この点は我々も
十分政府当局に対して
考慮を促さなければならんことと考えて参りました。何せ四十八時間のために、殆んど
寒地帶における
公務員の
実情は家庭の、つまり主婦にまで
相当の、朝早く起きるとかそういう面では非常に
負担を掛け、更にもつと寒い所になりますというと
燃料の
費用等が
相当に余計掛かるのであります、というような
経済的面の
影響も
相当考慮しなければならんものと考えて参つた次第であります。いずれにいたしましても
東北、
北海道地方における
勤務時間は全國画一的であ
つてはならんということを痛切に考えて参りました。次に
寒冷地の
手当の問題でありますが、
寒冷地手当は別に制度化しておるわけではありません。併しながら実際には
北海道における
石炭手当その他内地の担当の各縣においての
寒冷地手当の支給は一昨年來実際には支給されておるのであります。即ち
北海道においては、一昨年は
一世帶に三千円、昨年は
政府の
予算が約
一世帶五千八百円、
独身者には千八百円というような予めの案を立ててお
つたのでありますが、これが遂に実行に移されなかつたけれども、
実質には十数億の
國費がこの
石炭手当と
寒冷地手当に支給されておるのであります。この点につきましては、この
寒冷地に
勤務しておる者はただ
燃料ばかりでなく衣料においても更に又
食糧等の点においてもいろいろ
寒冷地なるが故に経済的の
負担、又は
労務負担、例えば屋根の雪降しとかいうような些末な点にまでいろいろ
負担が重いのであ
つて、これはどうしても制度化して貰いたい、年々いろいろ懇願し
要請をしておりまするが、非常に不定期であり、そして不安を感じておるのであるからして制度化して貰いたいということの
要請は全部の声であります。このことについて
公務員側の方では
統計資料をも蒐集し更に
法案等の準備もしておるやに聞いておりました。いずれにしても
國会がこのことを採り上げて一日も早くこの
公務員に安心をさせるということが急務であると考えられるのであります。
次に
給与の問題でありますが、先程
法改正後におけるところの
給与の
裏付が
実質には
伴なつておらんと申上げましたことは実は六千三百七円
ベースに相成りまして、
皆さんは十二月一日からこの
ベースがそのまま完全にその
公務員の手に入
つておることとお考えにな
つておると思うのでありますが、実際においてはそうではありません。例えば全逓信労働組合、いわゆる
逓信省関係の
労働者等はいわゆる
闇昇給等の再
計算、並びに年末
調整等の
影響を受けまして一月の上期におけるところの
俸給袋が
却つて赤字にな
つておるというような
実例を我々が各地でこれを聞き、且つそれが実際であることを見て参りました。
闇昇給の再
計算というようなことが今回の私共の
視察調査において驚くべ事実として見て
参つたのでありまして、このことはすでに先般新聞にもございましたようなフーバー氏から
人事院宛の書簡の内容にも一端を伺われるのでありますが、
公務員のこの再
調整その他再
計算等における結果としての
俸給袋が空にな
つておる、少くな
つておるということについては
政府はいつの間にか、こういうようなことをや
つたのだというように、非常に
政府に対する
一つの不信といいますか、そういう
項目を我々が見るのでありますが、私共
國会でもこの点については
政府から
ペテンにかけられたというような感じを私共未だにこれを拂拭するわけには参らない、このような
事情にあ
つて数十万の
政府職員が、誠に私共、
公務員法改正の結果、
公務員の
給与、福利、
厚生というものが完全によくなるのであると考えましたが、逆の結果を
現地においてまざまざと見せつけられて
参つたのでありまして、これは取りもなおさずこのような
條件が
公務員法改正は人権の極端な束縛であり、その結果としてこのような
給与状態というものがある以上、
公務員が
國家に対する
不平不満の度合は察するに余りあるのでありまして、
從つて公務員の今日の
勤務の
状況は時間は或る程四十八時間に
延長いたしましたけれども、
勤務の
能率、その他
精神的原因による
一つのサボとでも申しますか、そのために
能率は上
つておりません。逆に時間
延長をいたしておりますけれども、
能率が逆に低下しておるような
状態は各所において見られたのであります。
次にこの
厚生の部門でありますが、これは最早、私は申上げるまでもなく誠に不完全、不備というよりも、全くこれは
関心が持たれておらない、
政府によ
つてこの点は
関心が持たれておらないということであります。
以上概括申上げましたが、特に
地方公務員の
諸君に対する
注意は住宅の問題、それから
給与の問題については、
只今申上げたような外に
超過勤務の場合におけるところの
手当、つまりオーバー、タイムの
手当、こういうものは
地方未端に行けば行く程
予算が
廻つて行
つておりません、この点については十分に我々は
関心を持
つて中央におけるいろいろな特権と申しますか、そういうものを排除いたしまして、こういう
超過勤務に対する
手当等は、ともかくにも働いたならばこれはやるという建前にな
つておることを実行しない限りにおいては、いかに口先ばかりで善導をいたしましても、
公務員の
勤労意欲は挙がらないということを痛切に感ずるのであります。今回の
調査の結果といたしましては、以上申上げるような
実情であり、決してこれは
公務員の代弁をしておるのではなくて、私共実際の具体的な
実例をしばしば見せつけられて非常に驚いたような次第であります。詳細に亘りましては、別に
報告書を印刷いたしまして皆樣にお渡しすることに相成
つておりまするので、御高覧をお願いしたいと存じまするが、大体において、この六千三百七円というこの
ベースが
公務員の
生活を支えるには不十分である、今月の
実情において
公務員の
生活を支えるには不十分である。そればかりでなく、今申上げるような非常に
地域的の、
特殊地域の
関係方面においてはもう一段と十分な
注意を
拂つて考慮をしなければならないということであります。尚これは
教員の場合の問題でありますが、
教員の方では、御案内の
通り一月中に
國家公務員から
地方公務員に移されたのでありますが、現在いまだにこの
ベースの
切替が行われておらないということであります。そのために
地方の、つまり多くの
從來からの
教員、
公務員の
諸君もやはり
切替が行われないような
実情にありますので、この点はやはり我々としても
人事院をして早くこのことを行わせるように勧告しなければならないとかように考えております。尚
教員の場合におけるところの
職階制でありますが、現在のような
級別では、
教員には適しておらないように見受けて
参つたのであります。例えば三級という面では、大体小使とか
掃除婦とかというような者でありますが、
地方における
実情は助教などが三級にな
つておるというような
実情でありまして、これはやはり
教員に対するところの
俸給の別表というものを作り、
教員の
実情に即するようにしなければならないのではないかというようなことが痛切に考えられるのであります。以上簡單でありますが、我々の
視察の概要を御
報告申上げる次第であります。