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委員長(
塚本重藏君) この機会に、私からも
草葉委員が
報告になりました点で、私暫時の間席を外しておりましたので、十分拜承しておりませんが、
草葉委員が大阪の調査中暫く調査の一行から行動を別にせられた
期間がありましたので、その間における事柄を少しく
報告に附加えて置きたいと思います。
先ず第一番は社会
事業團体の整理統合並びにその
施設の
運営状況に関する調査目的に関してでありますが、日赤並びに済生会
病院、或いは社会
事業協会、民生委員連盟、それぞれの團体の事柄については
草葉委員から
報告に相成つた通りであります。ただ大阪におきましては、これらの團体が、本
委員会が目途といたしておりまするような事柄に早くから氣を留められまして、何とか新らしい時代に即應する社会
事業の
施設の整理統合をしなければならんということが、それぞれ
関係者の間において話題に上り、研究が進められ、相当な結論にまで達しておるとの
報告を受けました。そうしてその結果といたしまして、中央團体との繋がりについては愛知縣における事情と大体大差はないのでありますが、大阪府下におきまする各社会
事業團体
施設等の統合につきましては、
一つの成案をすでに立てられておるのであります。即ち大阪社会
福祉協議会というものを設立し、そうして最後に述べます大阪社会
事業協会、大阪府民生委員連盟、大阪市民生委員連盟、衞生都市民生委員連盟、大阪同胞
援護会、大阪市市民
援護会、大阪府
兒童福祉協会、大阪府海外引揚
援護会等は、この社会
福祉協議会の設立によ
つてそれぞれ円満に自然解消に持
つて行
つて統合すべきであると、こういう結論に到達せられておるとのことであります。これは社会
福祉は一般住民の問題であ
つて、特に
関係者が民主的に協力する新らしい
機関が必要である。それから社会
福祉に関する計画は、これは民主的の協力
機関において廣く各
方面の要求を調整して作成する必要がある。更に又社会
福祉に関する計画は共同募金の分配にも反映する必要がある。今日の民生委員並びに兒童委員と社会
福祉施設の連絡を強化する必要がある。こういう必要性からこの社会
福祉協会なるものを設立しよう、こういうことの結論のようであります。そうして社会
福祉協議会の組織といたしましては、この中に協議会と、專門
委員会と、理事会と、事務局というものを設けて、そうしてそれぞれ所要の運用を図
つて行こう。こういうようにすることがよいのではないかということに大体各
関係者の間のすでに了解が或る
程度まで進んでおるようであります。たただ愼重を期してこの問題を本当に良きものに仕上げるために、適当なる人と適当なる時期とを今考慮している状態であるという
報告を受けたのであります。これは私共といたしましても、日本の今後の社会
事業團体並びにその
施設のあり方について非常に示唆を與えるものと考えた次第であります。
それからもう
一つは人口問題に関してでありますが、大阪府におきまして、大阪府の議事堂でこの問題について懇談会を開きまして、各
方面の
関係者、今村阪大総長を始めといたしまして、約三十名の方の出席を求めまして、いろいろ懇談をいたしたのであります。人口問題については、詳しい
報告は省略いたしますが、我々非常に嬉しく感じましたことは、大阪府におきましては、すでに我が國の人口問題が非常に大事な問題であ
つて等閑に附することができない。從
つて大阪府自身においても大阪府の人口問題
対策を樹立する必要があるというので、大阪府並びに
関係者の間に人口問題懇談会というものが今年になりまして早々に開かれたのであります。その人口問題懇談会というものが発展いたしまして、今日では大阪府人口問題
対策審議会なるものができ上
つておるのであります。これは今村阪大総長を会長にいたしまして、非常な活?なる活動を始められております。そうして大阪府下に四十箇所の優生結婚
相談所というものを設け、府立の保健所二十ケ所の外に大阪市立の保健所十二ケ所、堺市立の保健所その他旧來産兒調節優生
相談所が七ケ所ありました。これらのものを加えまして、四十ケ所の優生結婚
相談所というものを設けて、そうして受胎調節、人工妊娠中絶を含めるところのいわゆる優生問題を積極的に取上げて行こうということで、五月一杯を準備
期間といたしまして、五月中にそれぞれ所要の準備を整え、
予算を以ちまして六月から実行運動に入るということにな
つて着々その準備が進められておる、こういう
報告を受けました。そうして大阪におきましては、中央においてもこの問題をできるだけ早い機会において適当なる
対策を國として持
つて貰いたいという、こういう強い要望があ
つたのであります。
それからその次に今度の視察の中の一
事項でありまする社会
事業施設の不正事件の
内容調査でありますが、私共の班の仕事といたしましては、堺の脳
病院における不正事件を調査することが使命の
一つであ
つたので、そこで堺脳
病院の事件の経過について一應御
報告申上げて置きたいと思いますが、堺脳
病院は浮浪者を收容いたしておりまして、その浮浪者の收容に絡んでいろいろの面白くない問題が起
つたのであります。何故堺の脳
病院に浮浪者を收容したかといういきさつでありますが、これは
終戰後大阪府の駅前に沢山な浮浪者が蝟集しておりまして、その数が夥しいものに達したのであります。府及び市及び警察は軍政部の指揮の下に收容に努めましたが、浮浪者は激増する一方で、軍政部からは大阪市内から浮浪者を一掃するようにという嚴命がありましたが、戰災を免れたそれら社会
事業施設内はすでに満員の状況でありました。ところで
生活保護法による保護
機関であるところの大阪市は、そこで止むなく臨時的な應急の
措置といたしまして、軍政部の了解の下に且つ大阪府衞生部の承諾を得まして、病人の浮浪者を府下各代用精神
病院の空病室に收容することになりましたが、このときに堺脳
病院にも
昭和二十二年一月から收容を開始いたしまして、
昭和二十三年九月までの間に延八千五百五十名の浮浪者を收容いたしたのであります。即ち月平均いたしまして四百七名であります。この中で二百九十九名というものが死亡いたしております。月平均三十人の死亡者を出しております。その後大阪府におきましては、
施設の充実に努めました結果、
昭和二十二年の一月に一部收容者の收容替えを行な
つたのでありますが、尚
施設が足らなかつた状況からいたしまして、残余の者のうち、病人でありました者を軍政部及び衞生部の了解の下に継続して收容してお
つたのであります。その後発生いたしました発疹チフスの
死体処理の不始末事件がありました。これは
病院の監督は大都市のみに任すべきでないと考えまして、大阪市を督励の上、大阪府、市交互にその後十数回に亘
つて保護の状況を監査いたしているのでありまして、その後いろいろ改善をし、その保護の万全を期したと大阪府は言
つているのでありますが、
昭和二十三年の九月、残余の者につきましては、衞生部立会の下に、精神病
患者だけを衞生部に引継ぎまして、そうしてその他の者はそれぞれこの
施設に收容替えをいたしまして、ここで初めて堺脳
病院は
病院本來の
患者のみを收容することにな
つたのであります。ところがここに不正事件が発生いたしたのは、堺脳
病院の不正事件については、直接堺市警察署及び大阪
地方檢察廳堺支部がこれを担当して取調べを今行な
つているのであります。私共は堺脳
病院を実地に視察し、
病院長から事情を聽取し、尚大阪府衞生部、大阪
地方檢察廳、堺市警察署側から取調べの経過を詳細に聽取いたしたのであります。この事件が起ります端緒は、今年の三月の二日に脳
病院長の高橋幸雄の夫人宛に一通の脅迫状が差出され、その脅迫状がたまたま進駐軍の檢閲にかか
つて、これが端緒に
なつたものであります。そこで進駐軍は、大阪の地檢を通じて堺警察署に家宅捜索を
指示いたしましたのであります。堺警察署におきましては、この進駐軍の
指示のありまする以前に、今
姫井委員から
報告いたしましたような岡山縣の岡田厚生館の問題、或いは先に起つた豊中脳神経
病院の問題等がありましたので、堺脳
病院にもかくのごとき事実があるのではないかとすでに内偵を進めてお
つたのであります。そこで事件は非常に早く進捗いたしたのでありまして、地檢において早急にこの問題の調査を進められました。その脅迫状の
内容というのは、二十万円を浜田という脅迫者がよこせというのであります。そうしてそのうちの七万五千円は、これは社会
事業に寄附するのである、そこで堺市内浅香山のこれこれの所へこの二十万円を持
つて來いという脅迫状であります。この脅迫状を出しました浜田光雄というのは、元は堺の脳
病院に收容せられておつた
患者であ
つたのであります。それがいろいろのことから
病院の内情をよく知
つておりまして、知り拔いておりました結果といたしまして、こういう脅迫状を出したらしいのであります。不正の事実といたしましては、堺脳
病院が曖昧なカルテを作成していること、即ち凶惡犯人である浜田光雄は、
昭和二十一年の四月に麻藥中毒
患者としてこの堺脳
病院に入院したが、その後二十日間で麻藥中毒は全治いたしましたにも拘わらず、その後引続いて治處後も浮浪者の病人として取扱われてここに收容されてお
つたのであります。そういうカルテの作成という不正事実が現われて参りました。
更に先程申しました
死体の不始末事件でありますが、ここで預りました
死体は二百五十二
死体でありまして、この
死体の始末につきまして、その経緯といたしまして、十五万七千円を受取
つておるのでありますけれども、これも亦浜田光雄という者を葬儀屋に仕立てまして、つまりその架空の葬儀屋にしたわけであります。そうしてこれには火葬費といたしまして五十円、チップ三十円、人夫費十円という僅かの金をこれに與え、この支拂高は六万二千八百七十円、從
つて差引九万四千五百八十円という
死体の始末につきまして横領をしておるわけであります。
更に又
医療費の詐取でありますが、大阪府においては
医療費支拂いについては
患者を三段階に分けまして、即ち
生活保護費のみを支給する者、それから通院治療
程度の者には
生活保護費と少額の
医療費を支給する。それから重症
患者には入院治療費を支給するという三つの段階に分けて
指示してお
つたのであります。ところが堺の脳
病院はすべての
患者を重症
患者として所要経費を請求いたしておるのであります。そういたしまして、これによりまして、浮浪者二千二百九十六名、これは
昭和二十二年一月から
昭和二十三年九月までの間にこれだけの浮浪者の重症
患者として請求いたしました金、八十五万六千七百七十九円という
医療費を詐取いたしておるのであります。それから更にここで働いております者の症状の非常に軽い者、こういう者を進駐軍の事務に就労せしめておるのであります。労働に就かしめておるのであります。そうしてそういうことにために受取つた金は百五十三万二千円に達しております。即ち一日一人百二十円ずつ請求しております。然るにそこに働きました人に対しましては、一日二十円乃至四十円しか支拂
つておりません。その額が七十万円でありまして、差引八十三万二千円という巨額の金を横領いたしておるのであります。
その他物資の配給につきましては、主食の二重配給を受けておる。事務長の大久保という者が
病院からも受け、自分の自宅からも受けておる、こういう二重配給を受けておる。それから主食の代替といたしまして、輸入罐詰を一千ポンドを受領して、主食の二重配給によるものは大体七百八十日分であります。なかなか沢山事件の
内容があるのですが、その他清酒であるとか、ビールであるとか、小麦であるとか、砂糖であるといつたものは相当多額に横領し、且つこれを
病院の通勤者であるとか、その他の者にこれを横流しいたしております。更に又退院いたしました者も退院していないようなふうにいたしまして、即ち幽霊人口を作
つて四百五十日分の主食を詐取する、こういつたような相当重複した不正を行な
つておるのであります。これ以上細かいことは申上げませんが、まだなかなかあるのですけれども、時間の
関係で省略いたします。実際私共は驚いたのであります。こういうような事件がなぜこの
病院に起つたかということについては、
原因を我々は明らかにしなければなりませんが、これも極めて簡單にいたして置きましよう。ここで我我が問題にしたいのは、この代用脳
病院に対しまする経費の支拂であります。これが大阪府では、この精神
病院法によ
つて経費が拂われているのであります。大体それは今日非常に上りましたけれども、一日百二十円であります。ところが問題になるのは、大阪府を除きました、京都府におきましても、兵庫県におきましても、この代用精神
病院に
委託收容せられておりまする者は、
生活保護費から経費が支給せられている。そうすると、二百円以上の費用が拂われておるわけであります。大阪府だけは嚴密に、精神
病院法によ
つて、一日僅か百二十円の経費しか支拂われていない。そこで大阪府下の精神
病院というものの経営が立ち行かなくな
つておる。その事実は大阪府下には私立の精神
病院が十五ありましたのが、今日では十一まで閉鎖されておる事実であります。残存しておるのは僅か四つの精神
病院しかないのであります。いづれも皆経費償わずいたしまして閉鎖されておるという事実、從いまして残存しておりますこれらの
病院も、止むを得ずいろいろな形において不正を行わなければ
病院の経営が持続できないような状態に置かれてお
つたのであろうということが想像せられるのであります。これは
政府におきましても、我々においても考えなければならん問題であ
つて、この精神
病院法という特別法があれば、一般法に優先する
建前から、大阪府がや
つておりますように、精神
病院法によ
つてや
つて行くということが正当であろうと思います。
生活保護法を適用するということは、これは妥当ではないと考えられます。併し事実上この経営が成立たないということでありますならば、精神
病院法による
内容を
改正する必要があるのではないか。或いは又一方には
生活保護法を正式にこれらの
病院にも適用せられるように
改正される必要があるのではないか。大阪府がや
つておることが正しいのか、他の
府縣がや
つておることが正しいのか、これは一應批判の対象になると思います。
それからもう
一つは、大阪府の監督の責任でありますが、先に申しましたように、しばしば監督はいたしておりますが、ここに收容せられておる多数の
患者が、大部分これは重症
患者であるという経費の請求を受けて、そこに何らの疑を差挾まずに大阪府がこれを支給しておつたというところに、監督上の不十分な点、不注意な点があつたろうということが想像せられるのであります。そういう長い年月に亘
つて請求せられておりまする
内容について、何故不審を持たなかつたかということが、私共は考えられると思うのであります。これは堺脳
病院ばかりでなく、大阪におきましては、初島学園の不正事件、それから大阪府厚生
病院の不正事件、その他松柏寮の不正事件等々、枚挙に遑がないように不正事件が発生しておる。これはいつかの
委員会におきまして、
山下委員が指摘せられましたように、この社会
事業團体の
運営等につきまして、
厚生省の責任も重大であるということを考えなければならん。厚生
行政というものが弛緩しておるのではないかということが、いつかの
委員会で指摘せられましたが、私はそれを非常に痛感するのであります。今日の読賣新聞にも、
厚生省の予防衞生研究所ですか、ここの庶務課長並びに会計係長が、それぞれ收賄によ
つて送局せられておるという事実、下にこういう事件があれば、上の方まで同じような似たような事件があるというところに、我々は深い関心を持たなければならんと考えておる次第であります。
時間の
関係で、以上を以て
報告を終ります。