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1949-05-07 第5回国会 参議院 厚生委員会 第19号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十四年五月七日(土曜日) 午前十一時五十三分開会 ――――――――――――― 本日の会議に付した事件 ○
死体解剖保存法案
(
内閣提出
) ○
國立身体障害者更生指導所設置法案
(
内閣提出
) ○
証人喚問
に関する件 ―――――――――――――
塚本重藏
1
○
委員長
(
塚本重藏
君) これより
委員会
を開催いたします。本日は
最初
に
死体解剖保存法案
を
議題
といたします。先ず
提案理由
の
説明
を願います。
浅岡政務次官
。
淺岡信夫
2
○
政府委員
(
淺岡信夫君
) ただいま
議題
となりました
死体解剖保存法案
の
提案
の
理由
を
説明
いたします。
傳染病
、
中毒等
により
死亡
した疑のある
死体
その他
死因
の明らかでない
死体
につきましては、
連合軍
総
司令部
の覚書に基づきまして、
昭和
二十二年
厚生省令
第一
号死因不明死体
の
死因調査
に関する件、が施行せられておりますが、これはいわゆる
ポツダム省令
として制定せられましたものでありまして、新憲法の
趣旨
からいたしましても成るべく速かにこれを
法律
に改めることが必要なのであります。而してこの
省令
を
法律
に改めるに当りましては、これと密接な
関連
を有する「
大学等
へ
死体交付
に関する
法律
」の
内容
をもこれに統合することが適当であると考えられるのであります。 更に又従来
死体
の
解剖
又は
保存
に関しましては、
刑法
中に
死体
の
損壊
又は
遺棄
を
処罰
する
規定
があります外は、法令の
規定
がないのでありまして、そのために例えば
医学
の
教育
又は
研究
のために、
死体
の
解剖
又は
保存
を
なす等
の場合には、それが適法であるか否かにつきまして多少の疑義があるのであります。 かような現状は
医学
の
教育
又は
研究
のためにも望ましくないのでありまして、この際
死体
の
解剖
及び
保存
に関しまして、包括的な
統一的法制
を整備する必要が各
方面
から要望せられておりますことにも鑑みまして、ここにこの
法律
を
提案
いたした次第であります。 次にその
内容
を簡単に申しますと、先ず
最初
にこの
法律
の
目的
は、
死体
の
解剖
及び
保存
の適正を期することによりまして、
医学
の
教育
又は
研究
に資するとともに、
公衆衛生
の向上を図ることにあることを明かにし、次にこの
目的
を達しますために、
死体
の
解剖
をしようとする者は、
原則
として
行政廳
の
許可
を受けなければならぬことといたしました反面、
死体
の
解剖
を特に必要とする場合、例えば
医学
に関する
大学
の
教授
又は
厚生大臣
が特に
認定
した者が
解剖
する場合、その他
刑事訴訟法等他
の
法律
の
規定
に基づいて
解剖
する場合等には、予めの
許可
を要せず、
事後
の
届出
を以て足ることと致しておるのであります。 又
死体
の
解剖
は、
尊嚴
な
人体
の
取扱い
に関することでありますので、
原則
として
遺族
の
承諾
がなければこれをなすべきでないことは、むしろ
刑法
の
解釈
上当然でありますが、この
法律
におきましては、更に進んで
遺族
の
承諾
を要せず
解剖
し得る場合を列拳いたしまして、
刑法
との
関係
におきまして、
違法性
の阻却される場合の
基準
を明かにいたしたいのであります。 更に
解剖
は、
解剖室
において行うべきことを
規定
した外、
死体
の
保存
につきましても、
医学
に関する
大学
又は
総合病院
において
保存
する場合等を除き、
原則
として
都道
府
縣知事
の
許可
を要することとし、その
適正化
を図
つて
いるのであります。 以上がこの
法案
の主な
内容
でありますが、一方において
医学
の
教育
又は
研究等
のために欠くべからざる
死体
の
解剖
は、できるだけこれを容易ならしめるとともに、
他方死体
の
尊厳
に関する
國民
の
宗教的感情
の尊重にも十二分の意を用いているのであります。何とぞ御
審議
の
上速
かに可決せられるようお願い申し上げます。
塚本重藏
3
○
委員長
(
塚本重藏
君) 本案の
内容
についての
説明
を伺いたいと思いますが、如何ですか。 [「異議なし」と呼ぶ者あり]
塚本重藏
4
○
委員長
(
塚本重藏
君) では
久下医務局次長
。
久下勝次
5
○
政府委員
(
久下勝次
君) この
法案
の
内容
につきましては、
只今提案理由
の御
説明
を申上げましたので、大体の
趣旨
は盡きておると思いますが、やや細部に亘りまして御
説明
を申上げたいと存じます。 従来
死体
の
解剖
につきましては、
警察犯処罰令
に
規定
がありまして、
許可
なくして
死体
を
解剖
した者は
処罰
をされることに相成
つて
お
つたの
でございます。この
警察犯処罰令
が廃止になりまして、
軽犯罪法
が制定になりましたときに、この
規定
は
軽犯罪法
に採入れられずに今日に至
つて
おるのでございます。従いまして、
提案理由
の
説明
にもございましたように、現在の
法律
上の建前といたしましては、
刑法
の百九十條に、「
死体
、遺骨、遺髪又
ハ棺
内の二
藏置シタル物
ヲ
損壊
、
遺棄
又
ハ領得シタル者ハ
三月以上五年以下ノ
懲役ニ処ス
」こういう
規定
がございまして、
死体
の
解剖
ということは取も直さず
死体
の
損壊
になりますので、一應はこの
刑法
百九十條の罪に相成ることになるのでございます。併しながら申すまでもなく、
死体
を
解剖
いたしますことは、先ず第一には
医学
の
教育
としては欠くべからざるものでございまして、
解剖学
の
教育
におきましては、人の
死体
を
系統解剖
と称しまして、学生が手を掛けて
人間
の体の
構造
を知るということが
医学
の第一歩とな
つて
いるような
実情
でございます。從いましてそのことが
一つ
と、それから更に又御
承知
の
通り
に、疾病によ
つて
死亡
いたしました者につきましても、必ず
医師
の診断が生前におきまして正確に行われることは限らないのでございます。いわゆる
病理解剖
と称しまして、
死亡
の
原因
を部分的な
解剖
によりまして確かめるということは、
医学
の
進歩
の上からも欠くべからざるものと相成
つて
いるのでございます。このいわゆる
系統解剖
及び
病理解剖
は、
医学校
は勿論のこと各
病院
におきましては相当廣く行われているのでございます。そこでそれに対する
解釈
といたしましては、
刑法総則
第三十五條の「正当ノ
業務ニ因リ爲シタル
行
爲ハ
之
ヲ罰セス
」という
規定
がございます。その
規定
によりまして、現在の
法律
上の
解釈
といたしましては、先程申上げました
刑法
第百九十條の
犯罪
も今申上げましたような場合には、
違法性
が阻却されまして
処罰
されないというような
解釈
に相成
つて
いる
実情
でございます。併しながら実際問題といたしましては、「正当ノ
業務ニ因リ
為
シタル行為
」ということを具体的にどういうふうに判断すべきかということにつきましては、今日何ら決ま
つた
ことはございませんので、実際には必要に迫られて
解剖
が行われているのでございますが、それを積極的に適法化する
法律
上の
根拠
が、今日存在をしていないということに相成
つて
いるのでございます。これがこの
法案
の第一の
内容
に相成
つて
いるのでございます。即ち具体的に申しますとこの
法案
の第一に取上げました
死体
の
解剖
に関する
規定
といたしましては、一應
原則
的には
許可
を受けることにいたしているのでございます。但し
法案
の第二條に但書がございまするように
死体
の
解剖
に関しまして相当の
学識技能
を有する
医師
、
歯科医師
などでございまして、
厚生大臣
が
確定
をした人につきましては、一々の場合に
許可
受けなくても、
事後
において
届出
をすればよろしいという
扱い
をいたしたいと思
つて
おります。更に又
医学
に関する
大学
の
解剖学
、
病理学
又は法
医学
の
教授
又は助
教授
の職にもあります者は、当然只今申上げましました
解剖
に関する
学識技能
を有する者という
確定
が下されまするので、
法律
上当然に一々の場合は
許可
を要せず、
事後
において
届出
をすれば
解剖
をし得るようにいたしているのでございます。
厚生大臣
が
学識技能
を有するかどうかということを
確定
いたしますにつきましては、
法案
第四條にございますするように、
死体解剖資格審査会
というものを
厚生省
に設けまして、斯界の
権威者
に
構成メンバー
にな
つて
頂きまして、十分適切な
基準
を定め、その
基準
に基きまして、具体的な場合の
意見
を聴いて指定するようにいたしたいと思
つて
いるのであります。 尚
死体
の
解剖
はさよう
な積極的に
医学
の
教育
又は
研究
のために必要であるという反面、
死体
の
尊厳
の維持或いは
言葉
を換えて申しますれば、
遺族死体
に対する宗教的な
感情
というものも無視すべきものではないのでございますので、第
七條
に書いてございまするように、
許可
又は
届出
によ
つて解剖
をない得る場合でございましても、必ず
原則
として
遺族
の
承諾
を得なければならないというふうにいたしておるのでございます。これも併しながら特別の場合には、
遺族
の
許可
がなくてもいいという
規定
が第
七條
の各号にございます。この
程度
の
例外
だけを設けまして、
原則
としては一々
遺族
の
承諾
を得ることを要件として、
遺族
の
死体
に対する宗教的な
感情
を満足させるようにいたしたいという考えでございます。 尚
解剖
につきましては特に設けられました
解剖室
において行うことを
原則
にいたしております。これは
解剖
にいたしました場合の
汚物
の
処理等
のためにも、或いは場合によりましては、
傳染病
の
予防等
の考慮を拂う必要がありまするので、
原則
として
はさよう
にいたしてございまするが、ただ特別な場合に
死体
の存在しておりまする個人の
住宅等
で行わざるを得ないような場合があると思いますので、さような場合には
保健所長
の
許可
を受けて、その
解剖室
以外でもなしえるような
例外
を設けてございます。 更に又
死体
をずたずたに
解剖
しますいわゆる
系統解剖
につきましては、これは特に以上申上げました
汚物
の
処理等
いろいろな跡始末の
関係
がございまするので、それと又その
必要性
を考慮いたしまして第十條に
規定
してございまするように、
医学
に関する
大学
以外ではこれをや
つて
はならないようにいたしてございます。 これが
死体
の
解剖
に関するこの
法案
の
規定
の主なものでございまするが、この
法案
の第二点として
規定
してございますることは、
提案理由
の
説明
にもございましたように、
東京外
六
大都市
におきまして現に
ポツダム政令
によ
つて
実施いたしておりまする
死因調査
に関する
根拠規定
をこの
法案
の中に盛り込んでございます。これらは
連合軍司令部
の指令に基きまして七
大都市
におきましては
死因
不明の
死体
を
専門
の
監察医
を置きまして検察又は
解剖
いたしまして、そうしてそれによりまして一方においては
医学
の
進歩
に資し、一方におきましては
公衆衛生
上の発達に資するというような
趣旨
で現に行
つて
おることでございます。これを先程の
提案理由
の御
説明
にございましたようにすでに
ポツダム政令
でや
つて
おることを
法律
によ
つて
御承認を頂きたいというのでございます。 尚
解剖
につきましては特に各
医科大学
におきましては、今日の
実情
といたしまして
死体
の入手に非常に困難を感じております。特に
系統解剖
の
死体
につきましては各
学校
とも入手困難を感じておる
実情
でございます。と言
つて
無制限に何をや
つて
もいいという訳には参りませんので、
原則
として
引取者
のない
死体
につきましては、
所在地
の
市町村
から
大学
又は
医学
に関する
学校
の長の要求に基いてこれを
交付
し得るような
規定
を設けてございます。このことは
大学等
へ
死体交付
に関する
法律
というのをすでにご
審議
を頂きまして、個別の
法律
として出ておるのでございまするが、これを廃止いたしまして本
法案
の中に取り入れることにいたしておるのでございます。 この
法案
の主な第三点といたしましては、
死体
の一部又は全部の
保存
に関する
法律
上の
根拠
を設けましたのでございます。先ず
医学
に関する
大学
又は
総合病院
、これは
医療法
に基きまして百ベット以上の各科を持
つて
おります
病院
をいうのでございます。
医学
に関する
大学
又は
総合病院
の長は
医学
の
研究
又は
教育
のために必要がありますときは、
遺族
の
承諾
を得て、
死体
の全部又は一部を
標本
として
保存
し得るような
規定
を設けました。これも御
承知
の
通り
各
大学
におきましては、
解剖
いたしました後におきまして、
死体
の全部又は一部、全部というのは殆んどございません。
例外
的には、ミイラなどが
保存
されておる
学校
がございます。そういうものを考慮して全部と書いたので、後は骨格でございますとか、或いは内臓の一部でございますとか、そうしたものを
保存
し得るようにいたしておるのでございます。更に又その外の
医療
に要請され、或いは
許可
を得られました
医師
が
解剖
いたしまし場合に、
病理標本
として
保存
したいという場合が相当多いのであります。そういう場合には
死体
の一部を
標本
として
保存
のできるようにいたしておるのであります。以上のように一應、
法律
におきまして
死体
の
解剖
を認めておりまする者以外、その他の者が
死体
の
保存
をいたそうとする場合には、
遺族
の
承諾
を得て更にその地の
都道
府
縣知事
の
許可
を受けなければならないことにいたしておるのでございます。 以上がこの
法案
の
内容
の代要でございます。即ち繰返して申しますれば、
死体
の
解剖
に関する
規定
、
死因調査
に関する
規定
、それに
関連
をして、
大学等
に対する
死体
の
交付
に関する
規定
、最後に
死体
の
保存
に関する
規定等
を一括してこの
法案
に織り込みまして、結論といたしましては、
提案理由
の御
説明
にもございましたように、
医学
の
教育
又は
研究
の
進歩
に資し、更に又
公衆衛生
の改善を図るようにいたしたいというのでございます。簡単でございますが、 ―――――――――――――
塚本重藏
6
○
委員長
(
塚本重藏
君) お諮りいたしますが、この
死体解剖保存法
についての
質疑
をいたしますか、それとも次の
國立身体障害者更生指導所設置法案
の
説明
を一緒に聞くことにしましようか。 [「聞きましよう」とと呼ぶ者あり]
塚本重藏
7
○
委員長
(
塚本重藏
君) それでは
國立身体障害者更生指導所設置法案
を
議題
に供します。
淺岡信夫
8
○
政府委員
(
淺岡信夫君
)
只今議題
となりました
國立身体障害者更生指導所設置法案
につき、
提案
の
理由
を御
説明
申上げます。 現在戦禍、
交通事故
その他不慮の
原因
によ
つて
、
傷痍
の身とな
つた者
は相当の数に上
つて
いるのでありまして、これ
等身体障害者
に対しましては、
國立病院
、
療養所
、
國立光明寮
、
收容授産施設
、
職業補導施設
などの
各種施設
を利用して極力その
保護更生
に努めているのであります。 併し、
身体障害者
の
保護更生
につきましては、
傷痍
の種類、
程度
、年齢、
生活環境
、
残存能力等
を総合的に観察いたしましたうえ、その各々に應じた適切な
指導
をすることが是非必要とされるばかりでなく、かかる
総合的判定
に基き決定された適職が、
医療管理
の下において補導されることが最も望ましいことと存ずるのでありまして、
身体障害者自身
からもかかる
條件
を備えた
施設
の
設置
が強く要望されるに
至つたの
であります。 よ
つて政府
はこれらの要望に應えて
医学
的に、心理学的に、又職能的に、
綜合判定
を行い、生活問題、
医療
問題、
職業問題等
に関するあらゆる相談に應じ、助言を與え、又直ちに
講師救済援護機関等
へ
連絡斡施
を行うと共に、必要あるものにつきましては直ちに
施設
に收容し、
職能判定
より
作業訓練
、
職業補導
に至る迄の過程を一貫して
医療管理
の下、強力に実施し、
身体障害者
をして、その精神的、
肉体的傷痍
を速かに克服せしめ、再び積極的に
社会活動
に参加するに必要な
指導
及び
訓練
を行う
國立身体障害者更生指導所
を
設置
せんとするものであります。 今回提出いたしました
法案
は、かかる
國立身体障害者更生指導所
を
設置
せんとする
法案
であります。 何とぞよろしく御
審議
下さるようお願いいたします。
塚本重藏
9
○
委員長
(
塚本重藏
君) 続いて
法案
の
内容
についての
説明
を……
木村忠二郎
10
○
政府委員
(
木村忠二郎
君) 本
法案
はこの
指導所設置
の
根拠
になる
規定
を設けたのでありまして、
設置
の
趣旨
並びに
指導所
の
目的等
につきましては、
只今提案理由
に御
説明申げた通り
でございます。あとの
内容
は、この
指導所
を
設置
しますること、この
指導所
の行いまする
業務
、
指導所
の
内容
というものにつきましての
規定
を設けてある次第であります。 ―――――――――――――
塚本重藏
11
○
委員長
(
塚本重藏
君) 先ず
最初
に
死体解剖保存法案
についての御
質疑
を……
中平常太郎
12
○
中平常太郎
君
死体解剖
の方の御
質問
を申上げますが、迂遠なようですが、
死体
と言うたら直ちに
人体
と解してよろしいと通念ではおもいますが、それには「
死体
」で
人間
の体の
死体
ということに
解釈
してよろしいのでありますか、文字から來るところの根本の何はそれでよろしいのですか、
死体
ということは
人間
を指して言う以外に用いない
言葉
ですか。
久下勝次
13
○
政府委員
(
久下勝次
君) その点は私共
從來死体
といえばもう
人間
の
死体
ということに
限定
をして
解釈
をいたしております。先程申しましたように、
刑法
第百九十條の
規定
から申しましても、この場合の「
死体
」は人の
死体
であるというように考えております。
刑法
上の
取扱い
からいたしますと、
人間
以外の動物の
死体
は物という
扱い
にな
つて
おるようであります。
中平常太郎
14
○
中平常太郎
君 次に
お尋ね
いたしたいのですが、第
七條
の「
死亡確認
後三十日を経過しても、なおその
死体
について
引取者
のない場合」ということがありますが、
死亡確認
ということはよく分りますけれども、三十日ということが、
解剖
の場合には多分役立たんような日経ちにな
つて
しまいますし、又三十日は経過しても
一つ
もわからないもんかとい
つた
ら、そうでない、実際は分らすような
広告
或いはこれを分らしめる積極的な手段をとらずにおいて、そこに死んだ死骸を放置するなれば或いは数丁先の
家庭
の者が死んでお
つて
も分らない場合がないとも限らない、この
広告
その他の問題は何ら書いてありませんが、消極的にただ「
死体確認
後三十日」と書いてありますけれども、豈図らんや同じ町の人の
旅行友達
が死んでお
つた
という場合もある、同じ村でもどつかへ出張したと
家庭
では思うてお
つて
もその行きがけに死んだのかも知れない、而してこれは十分に
死亡者
の
確認
が、死んだということは
確認
はできるが、自由に
死体
を処理してよろしいという、いわゆる
遺族
の
承諾
を受けるという問題からは、そこに大きな不完全なところがあるように思いますが、これに対する御
質問
を申上げます。それから続いて申上げますから…… 第十一條の「
死体
を
解剖
した者は、その
死体
について
犯罪
と
関係
のある
異状
があると認めたときは、」とありますが、
犯罪
と
関係
のあるのを認めるのは
医師
ということでありますが、又
犯罪
と
関係
のあるのは
警察当局
でなければなりませんが、これで見るというと「
死体
を
解剖
した者は」というのがありますが、すでに
死体
の
解剖
は済んでおる、それから二十四時間以内ということになると
死体
にも
変化
が來ますし、一番
最初
からみなければならない大事な人物も、遂に
死体
は
解剖
してしま
つて
おることになりますから……「
犯罪
と
関係
のある
異状
があると認めたときは」というのは
死体解剖
後二十四時間以内に
警察署長
に届けるということは
條文
においてそのずれをどういうふうに考えておりますか、この点
お尋ね
したい。 それから第六條に
知事
に届け出なければならないという
処置
の
方法
がありますが、「遅滞なくその
所在地
又は
解剖地
の
都道
府
縣知事
に
届出
なければならない。」とありますが、
解剖
したというのは何の某の
解剖
ということだけでありまして、それには
解剖
の
目的
、
処置
並びに
遺族
との
関係
、
承諾
の
有無
ということは、一切のことは
知事
に報ぜられるのでありますか、
処置
の
内容
はどの
程度
が
行政面
にこれが反映して行くものでありますか、これをお伺いしたい。 それから第四條の
審査委員会
は
死体解剖資格審査会
というのは
厚生大臣
が決められるのでありますが、どうゆう
内容
をお持ちにな
つて
おりますか、
審査会
の
構成
はどうな
つて
おりますか、
定員等
、その点をお伺いいたします。 それからもう
一つ
、逆になりますが、第三條の
認定
を受けた
医者
は五ヵ年間は勝手にやれるということにな
つて
おりますが、お
医者
も
人間
でありますからその間いろいろな、お
医者
も軽い中風になる場合もあるし、その外いろいろ生理的な
変化
もあるし、
身体
にもありますし、境遇的な
変化
もあ
つた
りいろいろでありますが、
認定
したならば五ヵ年の間勝手にやれるということは
割合悪用
の途ができはしないかと思われますが、それに命令を加える
一つ
の
方法
は、五ヵ年以内に
審査委員会
はそういうものを審査して、五ヵ年以内の任期中の
医者
という
資格
まで審査するのかどうか、この点を
お尋ね
いたします。先ずそれだけのことを
お尋ね
いたします。
久下勝次
15
○
政府委員
(
久下勝次
君) 先ず第一の
お尋ね
でございますが、三十日間という
限定
がございます。この
規定
はこの
法律
上の
言葉
でもうしますると
身体
の生理上の
構造
を明かにする
解剖
、即ち私共は逆にこれを
系統解剖
の対象になる
死体
について大体考えておる
程度
であります。
普通病理解剖
でありますと、三十日くらいはかかうことにな
つて
おります。で、三十日くらいは待
つて
貰
つて解剖
するということになります。少なくとも
遺族
の分らない、
引取者
のない
死体
に対しては三十日間くらい待
つて
貰いたいという
規定
でもあります。この場合におきましてはこの
法案
の第十六條に
規定
がありまして、
行施病人
及び
死亡人取扱法
に基きまして
引取者
のない
死体
の存在いたした地の
市町村
はその
死体
について必ず
公告
をいたさなければならないことに相成
つて
おります。
從つて
この種の
死体
につきましては
行旅病人及行旅死亡人取扱法
に基く所定の手続をなさなければならないという第十六條の
規定
がありまして、ここで考えておることが主として
行旅病人
及び
行旅死亡人取扱法
第
七條
の
規定
にこういう
規定
があります。「
行旅死亡人アルトキハソノ所在地市町村長ハソノ状況相貌遺留物件ソノ
他
本人
ノ
認識ニ必要ナル事項
ヲ
記録シソ
ノ
死体
ヲ仮
土葬トスヘシ
」とあり、更に第九條には「
行旅病人
ノ住所、居所若
クハ氏名知レサルトキハ市町村長状況相貌遺留物件ソノ
他
本人
ノ
認識ニ必要ナル事項
ヲ
公署
ノ
掲示場ニ告示シ且ツ官報
若
クハ新聞紙ニ公示スベシ
」という
規定
があります。これによりまして
公告
を一方において
所在地市町村長
はすることにな
つて
おりますので、
遺族
はそれによ
つて
知り得るものと考えるのであります。 それから順序が少し違うかも知れませんが、
届出
に関する御
質問
がありましたが
届出
の
内容
は大体御
趣旨
の單に
解剖
したということだけでは……
解剖
の
目的処理
というようなことも
届出
させる、勿論
遺族
の
承諾
の
有無
ということも
届出
の中に欠かせるようにいたしたいと思
つて
おります。 それからしたい
解剖資格審査会
というものの
構成
について
お尋ね
でありましたが、これはまだ
確定
的に私共といたしましては
構成
を決めておるのではありませんが、大体考えておることは十五、六名くらいの
委員
をお願いすればよろしいのではないかと思
つて
おります。先程も
法案
の御
説明
を申上げましたように、大体
病理学解剖学等
の
専門家
と更に臨床の
医師等
を加えてその
程度
の人員は
委員
として必要ではないかと思
つて
おります。 それから
認定
を受けた日から五年間経過したときは
認定
を取消すことができるという
規定
の
お尋ね
でありますが、実は
趣旨
から申上げますと
医師免許
と同様に別に期限を定めずに或いは一定の
欠格條件
が起こるまではそのまま
認定
の効力を続けて行くのがいいという、むしろ
お尋ね
とは逆の
意見
さえあるのであります。併しながらこの
解剖
につきましては私共として考えましたことは
医学
は日々
進歩
しておりますので、或るときの
認定
が永久に続いて行くというようなことも適当でないと思いまして、大体の達観から五ヵ年という期間を重ねたのでございます。これも併しながら必ず取消すと言う場合はその間に五年経ちまして
医学
の
進歩等
も
状況
に應じて
認定
をやり直す必要があるという場合にはその場合に初めて取消をして、新たなる
認定
を受け入れるというようにしたいと思
つて
おります。その間に
悪用
をされる慮れがないかという御心配でございますが、これは
認定
を受けましても先程
お尋ね
に中にございましたように、必ず
解剖
した後に必要な
事項
の
届出
を命じてございますので、その点からこの
認定
を
悪用
しておるかどうかということは
十分取締
がなし得るものと考えておる次第でございます。
中平常太郎
16
○
中平常太郎
君
死体解剖
と時間との
関係
……
久下勝次
17
○
政府委員
(
久下勝次
君) この
規定
は実は從來から
医師法
などの中にある
規定
でございまして、
法務廳あたり
の
犯罪捜査
の責任を負うております
方面
から是非このことはや
つて
貰いたいという注文もございましたので、
法案
の
規定
の中に入れたのでございます。結局
死体
を
解剖
して見ませんと具体的に申しまして、これは他殺であるとか或いはその他の何か、とにかく変
つた
死に方をしておる、で汎愛にどうも
関係
がありそうだというような疑いが起
つた
時の
届出
でございますから、
從つて解剖
をみないことには分らないのでございます。そこでまあ
解剖
した者というふうに書いたのでございますから、
解剖
してそういうふうな
異状
があ
つた
ということを
認定
したならばその時から二十四時間という時間の制限がございます。これは一應ここでできるだけ早い時間に
届出
をいたさして、
犯罪捜査
の上の手配がとれるようにいたしたいと思
つて
おります。御
質問
の
趣旨
は十分了解いたしかねたかも知れませんが、私共といたしましては、この種の
規定
は
犯罪捜査
の面から必要な
規定
であり、二十四時間という、時間はできるだけ短くと考えたのでありますが、この
程度
の余裕は置いた方が適当であろうと、從來の例もございまするので定めたのでございます。
中山壽彦
18
○中山壽彦君 この第二條の第一号の「相当の
学識技能
を有する
医師
、
歯科医師
その他の者」ということはどういう意味なんでございましようか。もう
一つ
は第四條にこの
死体解剖
の
認定
の取消は
資格
審査会
の
意見
によ
つて
取消すということでありますが、そうすると余め全國の
医者
を、その
資格
を審査をして、これはよろしい、これは悪いということを初めからお決めにな
つて
置くことは、これは煩瑣なことじやないかと思いますが、実際おういうふうに実行なさる御予定なんでありますか。
久下勝次
19
○
政府委員
(
久下勝次
君) 先ず第二條の「その他の者」についての
お尋ね
でございますが、実は実際の例ございますので「その他の者」という
規定
を加えたのでございます。或る
医科大学
の
解剖学
の
教授
に
医師
でもない、
歯科医師
でもない人が
死体解剖
学の
教授
として立派にや
つて
おられる例がある、そういうふうに永年の経験を持ち、十分
解剖学
の
教授
としての
資格
があるというふうな人につきましてはこういうことが起り得ると考えまして、一應ここへ入れて置いたのでございますが、具体的な事例はあようなところから出発した
規定
でありまするが、その他の場合におきましても將來起り得る可能性があるという意味で、極めて
例外
的だと思いますが
規定
をして置いたのでございます。 それからこの
認定
を全國的にやるのは大変ではないかという
お尋ね
でございまするが、この
法案
は附則の第一項にございまするように公布の日から起算して六ヶ月経過してから施行をするようにいたしたいと思
つて
おります。私共といたしましては、その間に御決定を頂きましたならば至急に先程の
資格
審査会
を
構成
をいたしまして
基準
を定め、同時に又そういう希望のありまする人々には呼び掛けをいたしまして、そうして六ヶ月間の中にできるだけの準備を整えまして、施行後支障のないようにいたしたいと考えております。そういたしませんと、相当の学識経験のある人が一々
許可
を受けなければできないというのではこの
法案
の
趣旨
も達せられませんので、さような準備機関を以ちましてできるだけ一々の
許可
を受けずにやれるような、人を多くして
解剖
の円滑なる運営を図りたいと思います。
中山壽彦
20
○中山壽彦君 そうしますと、
死体解剖
をしたいという
医者
を予め当局の方で申入れて、その申入れた中でこの
資格
審査会
が御決定なさる、こういうことになるのですか。
久下勝次
21
○
政府委員
(
久下勝次
君) さようでございます。
谷口弥三郎
22
○谷口弥三郎君 午後にまだ沢山あるようでございますからこの辺で休憩を願いたいと思います。 [「賛成」と呼ぶ者あり]
塚本重藏
23
○
委員長
(
塚本重藏
君) 時間も零時四十分にな
つて
おりますので、一應休憩いたしたいと思います。 [「異議なし」と呼ぶ者あり]
塚本重藏
24
○
委員長
(
塚本重藏
君) 午後一時半まで休憩いたします。 午後零時三十六分休憩 ―――――・――――― 午後一時五十二分開会
塚本重藏
25
○
委員長
(
塚本重藏
君) これより
委員会
を開会いたします。 この際御報告を申上げて御
承知
を得たいと考えます。前回、優生保護法の一部を改正する
法律
案の
審議
の必要上、承認として五、六名喚問の手続をとるように
委員長
に御一任下さいましたが、日時を五月九日月曜日、午前十時といたしまして、東京都千代田区霞ヶ関一番地最高檢察廳檢事岡本梅次郎、東京都港区麻布盛岡町一の五、母子愛育会母性保健部長森山豊、東京都台東区浅草北松山町一山田悦世、東京都世田ヶ谷区上北沢ニの六百三香川豊彦、以上四人を喚問することにいたしました。尚勤労婦人代表といたしまして一人喚問することにいたしましたが、時間の
関係
で適当な人を得ることができませんでしたことを、遺憾でありますけれども、御
承知
願いまして、以上四人を喚問するということにいたしましたから、御了承願いたいと思います。御異議ございませんか。 [「異議なし」と呼ぶ者あり]
塚本重藏
26
○
委員長
(
塚本重藏
君) さように決定いたします。 ―――――――――――――
塚本重藏
27
○
委員長
(
塚本重藏
君) 午前に引続きまして、
死体解剖保存法案
の
審議
を続行いたします。
谷口弥三郎
28
○谷口弥三郎君 ちよつと
お尋ね
したいのでございますが、今回できます
死体解剖保存法案
の中、この
保存
の方につきまして、
大学
又は
総合病院
ということにな
つて
おるようでありますが、これは單科の
病院
ではできんことになるのですか、それとも單科の
病院
は府
縣知事
の
許可
を得てやらせるというよう
なつ
もりでございましようか、その点を
一つ
お伺いしたいと思います。
東龍太郎
29
○
政府委員
(東龍太郎君) 單科
病院
は
総合病院
でございませんので、只今お話のように、
許可
を受けて單科
病院
と雖も
保存
はできるという考えであります。
谷口弥三郎
30
○谷口弥三郎君 次に
お尋ね
したいと思いますのは、胎兒の方の
保存
でございますが、今回は四ヵ月後の胎兒もやはり同様に
保存
され、或いは
解剖
などにも手続をとるようにはつきりとな
つて
來たことは、非常に結構なことだと思いますが、時に胎兒を
保存
いたします場合に、かいぼうという程ではありませんけれども
保存
液を体内に浸み込ませますために、
保存
上必要な
関係
からいたしまして、或いは腹部辺りをちよつと切開いたしますとか、腹部を切開して
保存
液が浸透するような措置をよくとるのでありますが、尚又脳水腫とかいうような場合には、余り大きい
関係
上、その一部の液を出して、そうして
保存
するというようなことがこれまでの普通のやり方でございますが、そういうような場合には、ちよつと切開、或いは穿刺くらいのやつは、特に
解剖
の
届出
をせんでも許して貰えるようになるのでありましようか、それともやはり
解剖
という正式の手續きをせんければならんのでございましようか、その点を
一つ
お伺いいたしたいと思います。
東龍太郎
31
○
政府委員
(東龍太郎君) 只今の
お尋ね
のような範囲若しくは
程度
のものは、
解剖
とは認めなくてよろしいと思います。
山下義信
32
○山下義信君 第三條の一項の三号ですが、罰金以上の刑に処せられたる者を除外した
理由
はどういう
理由
でございましようか。
東龍太郎
33
○
政府委員
(東龍太郎君) 罰金以上の刑に処せられた場合には、罰金以上の刑と申しましてもその刑の
内容
情状等いろいろあると存じますが、その情状によりましては取消すことができるというつもりでおります。
山下義信
34
○山下義信君 それでは、もう一概にというわけではないのですね。
東龍太郎
35
○
政府委員
(東龍太郎君) そうではないのでございます。
山下義信
36
○山下義信君 次はこの
解剖
の
届出
の
規定
について、第二條第一項の者が
解剖
したときには、
保健所長
に
届出
させて、
総合病院
というような場合には
知事
に
届出
る、
届出
先を区別した
理由
はどういう
理由
ですか。
東龍太郎
37
○
政府委員
(東龍太郎君) これは後の
知事
に
届出
ます場合にも、
保健所長
を経由して
届出
させるつもりでありますが、ただそれは
届出
の対象が違
つて
おるというだけで、深い意味ないのであります。
山下義信
38
○山下義信君 成るべく
届出
は私は一本にする方がよいと思うのであります。もとより、
保健所長
に届けるということも、
知事
に届けるということも、保健所法の建前では同じという考えも方もできますが、これは立法の体裁からい
つて
も、これは一本にした方がよいのじやないかと思うのですが、そういう
趣旨
ならば了承します。 それから第
七條
の
遺族
の承認を求むるという点でありまするが、その
本人
が生存中に
死体
の
解剖
を
承諾
して頼むというような場合は、尚
遺族
の
承諾
を要しますか、どうですか。
東龍太郎
39
○
政府委員
(東龍太郎君) その
本人
の希望というものの意思表示の仕方でございますが、只今お話のような場合でありますれば、それがございましても、尚一應
遺族
の
承諾
を求むるというふうな手続をとりたいという考えでございます。
山下義信
40
○山下義信君 私は
法律
的に伺うのですが、
本人
がちやんと意思表示しておる、性格に有効な手続を遺言でもして置く、そうすれば当然その
通り
にいたさなければならん。
遺族
が不
承諾
であるということになれば
解剖
できませんか。
東龍太郎
41
○
政府委員
(東龍太郎君)
本人
の意思表示が、何と申しますか、
法律
上有効なような形の場合でも
遺族
が反対したらどうだろうという
お尋ね
であろうと考えますが、その場合は、
遺族
の反対の
程度
でありますが、私の方としましては、そういうふうな場合には、
遺族
に事を分けて話せば
承諾
を得られるものと思
つて
おりますが、場合によりますれば、何としてでも
解剖
することを拒んで
遺族
が泣き叫ぶという愁嘆場を見ることも稀にあります。それまで押切
つて
やることがどうであろうかという心遣いを持
つて
おるのであります。
山下義信
42
○山下義信君 これは実際問題としてあろうかと思うのです。いろいろ病氣に罹
つた
人が、自分
死体
を、せめて学術の
研究
にして貰いたいというようなことは、常に我々見聞するところなんです。そういう場合についても、
遺族
の
承諾
を絶対必要
條件
とすれば、この
法律
によればできないということになるので、この点法の不備ではないかと思うのですが、御
研究
を願いたい。 それから第
七條
の一項のニ号ですね。二人以上の
医師
が診療中であ
つた
場合には
遺族
の
承諾
について特別の除外例が
規定
されてありますが、私ちよつと素人で了解し難いのですが、どういうわけで二人以上の
医師
の場合は、こういうふな特別
規定
を設けましたか、御
説明
願いたいと思います。
東龍太郎
43
○
政府委員
(東龍太郎君) この点は相当問題になるところだと存じます。要するにこの狙いは、病氣の
死因
が、生存中にはつきりしなか
つた
、そうして
死亡
してしま
つた
その
死因
を明らかにすることが、結局
医学
の
進歩
なり、或いは
医療
の進展のために非常に貢献するところがあると思うような場合に、
医師
といたしましては、何とかして
死因
の究明のために
解剖
さして貰いたい、これはしばしば起ることであリますがその場合には
遺族
の
承諾
を求めてやるのが、現状でございます。たださような場合に、一人の
医師
が診てお
つて
、そうしてその
死因
を究明したいというふうな場合でありますと、その
医師
一人のこれは主観的のものである、或いはその
医師
一人の興味、好奇心というふなものと間違われ易い場合もありますし、或いは万々一さようなこともないとは言えないのでありますが、若しその場合にその患者を診ている
医師
が一人でない場合もありますれば、そのような一人の
医師
だけの特定の興味からするところの仕事ではなく、実際上さような
死因
の究明が必要であるということを証拠立てる人があるわけで、二人以上の
医師
が診ている場合にはそのいずれもがそういうふうな
死因
の究明を必要であると認めた場合には、
遺族
の
承諾
がなくてもできるというふうに、それだけ
死因
の究明のための
解剖
の行われる可能性を多くしたつもりでおるのであります。理想的に申しますれば一人の
医師
であ
つて
も私はそういう場合にはこういう
承諾
がなくてもやり得る
程度
にまで一般の人人の理解なりに了解ができるような
程度
に進みたいものとは存じておりますが、現状においては、一足跳びにそこまで参る
状況
とは考えられませんので、先ず一方から言いますと甚だ不徹底なようでありますが、この
程度
のところで今回は現状にも当嵌まるのではなかろうかということでございます。
山下義信
44
○山下義信君 そうするとこの二号の
規定
は、そうすると二人以上の
医師
の場合でも、
解剖
の必要を認める者が二人以上でなければならない、こういうわけですね。だから二名の場合は二人共そう認めなければならないということにな
つて
おりますね、ここは素人でもちよつと疑問に思うのでありますが、まあ
専門家
がおいでになりますから
専門家
の御
意見
もあろうかと思いますので措いて置きまして、その次に伺いたいと思いますのは、
遺族
が
解剖
に立会いたいという希望を申出られたらどういうふうに
取扱い
ますか。
東龍太郎
45
○
政府委員
(東龍太郎君) これは当然
遺族
の御希望は只今でも適えられております。又將來も当然それは適えられるものと存じます。
山下義信
46
○山下義信君 それを認めるという
規定
はどこでそれを見ることができますか。
東龍太郎
47
○
政府委員
(東龍太郎君) その
規定
はこの法文の中にはございません。ただ在來と雖もさようにいたしておりますので、当然その希望は適えられるべきものと存じます。比較は当りませんが、手術の立会いの場合においては、或る場合には
医者
がこれを拒むことがあるかも知れませんが、
解剖
の場合に、
遺族
の方が立会いを希望せられて拒まれたという例は私は今まで知
つて
おりません。ですから將來もそれは全部適えられるものと思
つて
おります。
山下義信
48
○山下義信君 これを拒否する場合がないとも言えないでしようが、拒否することはだきないことに
規定
をしましたらどうですか、
規定
しなくても何かそれをはつきりさせる
方法
が、本法の施行規則から何かの上に置くことができますか、私は
規定
して置く必要があるのじやないかと思うのですが、重大なる
理由
がない限りには拒否できないようにして置く
理由
があるのじやないかと思うのですが、当局の
意見
はどうですか。
東龍太郎
49
○
政府委員
(東龍太郎君) 只今の点につきましては、この
法案
の立案中にも実は考えたことがないのであります。それほど当然のことと実は思
つて
お
つたの
でありますが、若しもさようなことが是非共必委であるというふうなお考えが一般的なお考えでありますれば、この
法案
に対しさような修正を將來加えられることにいたしまして、私共は何ら異存は持
つて
おりませんが、実は考えてもいなか
つた
程の当然なことという意味でこの中に入
つて
いないのだということを御了承願いたいと思います。
山下義信
50
○山下義信君 本案の参考資料を配布して頂きましたものを見ますると、いろいろ
死体
の出所が記載されてあります。その中に養老院でありますとか養育院でありますとかいう
施設
から出ておるしたいがいろいろあるのであります。そういう
施設
から
死体
が出まするときの取扱方はどういうふうにな
つて
ありますか、
施設
にはやはり監督官廳があると思う、例えば養老院から
死体
を
病院
とか
学校
とかというふうなところへ
解剖
用に引渡すというような場合には、
解剖
する者が
保健所長
の
許可
を受けるとか
届出
るとかいうことは、本法に
規定
してあるのでありますが、養老院の院長はその病死した者の
死体
をそこへ持
つて
行くのにはどういう手続でや
つて
おりますか、脳
病院
などの
死体
が出ておるものも少からんものが出ておる。
東龍太郎
51
○
政府委員
(東龍太郎君) 養老院、或いは養育院、これらの
施設
の
死体
、申すまでもなくそれは引取人のない
死体
ということでありますが、この
法律
によりますれば、
市町村
長からその
死体
をそれらの
大学等
へ引渡すね
交付
するという形になるのでりまする在來はどうしてお
つた
かということも
お尋ね
の中に入
つて
おるかと思います。在來は養育院院長、養育院の責任者とねそれぞれの
教育
機関の当該の責任者との間に、
死体
の引渡し
交付
の契約と申しますかを持
つて
おりまして、そうして行な
つて
お
つた
ことと存じます。例えば東京
大学
の
医学
部におきましては、元東京市の養育院から殆んど大部分の
死体
の
交付
を受けておりましたが、その場合は東京市当局と話合いをつけまして、そうして養育院の引取人のない
死体
はこれを東京
大学
の
解剖
教室に
交付
するという手続によ
つて
いたしてお
つた
と存じます。
山下義信
52
○山下義信君 そうすると、今後は第十二條によりまして、
市町村
長から
交付
という手続によろうというお考えですか。
東龍太郎
53
○
政府委員
(東龍太郎君) さようでございます。
山下義信
54
○山下義信君
施設
の長には親権が附興されておる場合もある、そうするとその面においては引取人がない
死体
とはいえないのであ
つて
、つまり
遺族
ということに該当る場合になると、
市町村
長ではなくてもよいというふうに思われる面がありますが、そういう場合はどう考えますか、尚親権の附興は生存中だけに限るようにお考えになりますか。
死体
につきまして親権の行使は認めないといふお考えでありますか、それらの点はどう考えられますか。
東龍太郎
55
○
政府委員
(東龍太郎君) 私は
法律
のことに暗いものですから、或いはお答えが的確でないかも知れませんが、私が今伺いましたところでは、
死体
となりましても
遺族
に該当する親権と申しますかを持
つて
おる場合にはやはり
遺族
と同様に考えまして、その場合にはその方が、
死体
の
解剖
について或いは
死体
の
交付
についての権利と申しますか
資格
もそのまま持
つて
おられるものと考えます。
山下義信
56
○山下義信君 これは今後もあることでありまして、実際問題としては、そういう收容
施設
におきまして
死亡
した者の
死体
を
交付
いたしますることが粗畧に相成りますると、ややもすると問題が発生いたしまするので、十分にこの責任といいますか、筋道の立つような
扱い
方をすることが、必要であると思います。それで
施設
の長に親権が付不興されてあります場合の
扱い
方、実際の運営の上について十分御
研究
を願わんというと、この法の上では少し不備なように思われますので、御
研究
を願
つて
置きたいと思うのです。 それからいま
一つ
は、
死体
の賣買ということを許しますか、
解剖
のための
死体
の賣買ということを認めますか。
東龍太郎
57
○
政府委員
(東龍太郎君)
死体
の賣買は認めない考えでございます。
山下義信
58
○山下義信君 当然そうと思うのでありますが、次は第二十條の、これは從來
規定
があ
つたの
でありますが、特に礼意を失わないように注意しなければならんということがある、これは漠然たる
規定
でありまして、どの
程度
が礼意であるかということは、これは常識によらねばならんことであろうと思うのでありますが、
解剖
のときももとよりでありますが、それが本法によりまして
保存
されてあるものに対し手、
学校
における
標本
になりましても何になりましても、それらが
保存
されてある場合もこの第二十條が要求されてある、そういう
死体
に対して礼を失し冒涜の行爲があ
つた
場合は、罰則がございませんが、それにつきましてはどういうふうに考えられますか。
東龍太郎
59
○
政府委員
(東龍太郎君) 二十條に対する罰則はございませんが、当然
死体
の
解剖
をする
資格
のある人々は、十分な
教育
を受けた方々であり、
死体
の
取扱い
については、かような條項がなくとも、礼意を失わないようにその
死体
に対して又それのあとの
処置
についても行うものと、私共は信頼はいたしておるのであります。併しながら多数の人のうちでありますから、或いは誤
つて
礼意を失するようなことがないとも限らないというので、特に
死体
の
尊厳
についての注意を喚起する意味でかような條項を入れた次第でありますが、万一さような著しい例がありました場合には、この
條文
には罰則はございませんが、
條文
による罰則以外の
方法
でその人の良識に訴えまして、そうしてその誤
つた
行爲に対して反省を促すというふうなことは、当然やらなければならんことであります。併しながら、さようなことのないことを私共はより多く望んでおる次第であります。
山下義信
60
○山下義信君 これは道徳
規定
でありますが、私は御監督の上で御注意を十分願いたいということを希望いたしておきます。 最後に伺いたいと思うのは、これも資料で
承知
いたしたのでございますが、いろいろ
死体
に対して祭粢料とか謝礼とかいうものが
病院
や
学校
あたりから贈られてある、或いは祭粢料が百円とかいうのがある、百五十円というのがある。或いは謝礼が二百円というのがある、中には周旋料が三十円というのもある、それらの意味がどういう意味でありまするかは詳かにいたしませんが、祭粢料というようなものも
一つ
の礼儀であろうと思います。
死体
に対して直接の礼でなくても、やはりそれらの
扱い
方も十分鄭重にいたさなくちやならん、又引取人のない
死体
のような場合にはその祭粢料や謝礼はどこへ行くのか、何人の手に入るのか、小さいことでありますけれども、これらも注意しておかなくちやならん、そういうことに対しまして監督官廳といたしましては、何らか御
研究
になり御注意になりまするお考えがありますかどうか伺いたいと思います。
東龍太郎
61
○
政府委員
(東龍太郎君) 只今お話の祭粢料その他のことにつきましては、現在のところでは各
学校
、
病院
等によりまして非常に個々別々であります。いろいろな形でいろいろな金額の金が出ておりまして、その金の行方等につきましても御指摘のような懸念がないとは申されません。この点につきましては今回かような我が國といたしましては一種の画期的な
法律
ができました機会に、このことにつきましても十分当局におきましても
研究
もいたしますし、又適当な
方法
についての指示もいたす所存でおります。
山下義信
62
○山下義信君 いまの医務局長の答弁で了承いたしました。
死体
であるからと言
つて
、引取人のない
死体
であるからと言
つて
、或いは刑余者である、收容者であ
つた者
の
死体
であるとかいう心持で百円とか、百五十円とかいうようなことで、金額の多少を言うのではありませんが、粗畧の
扱い
があるということは私十分注意しなくちやならんと思いますので、どうかそういう点に関しましても、適正にそれを行いまするような、又手厚くそれらが取計られますよう十分御留意下さることを重ねてお願いいたして置きます。
小杉イ子
63
○小杉イ子君 私は第
七條
の一、二を予算面からお伺いしたいと思います。三十日以後を経過したものは
解剖
ができますかどうか。それから夏などでございますと防腐剤をお使いになるでしようが、大したこれは金額だろうと思います。 それからもう
一つ
、或る村に行倒れがありますと、村長は村の掲示板に掲示いたします。併しの
本人
の家が遠くて分らなか
つた
ら、その他に新聞、ラジオでも今ならお知らせになるでしようが、こういう費用は樂に政府から出るものでございましようか、私は大したこれは金額になりはせんかと、こういうことを思うのですが……
塚本重藏
64
○
委員長
(
塚本重藏
君) ちよつと皆さんにその前に御了観を得たいことが…… 速記を二時までと言われたのですが、もう二時を過ぎましたので他の
委員会
から是非廻して呉れというので外したい思います。御了解を願います。速記を止めて下さい。 午後二時二十四分速記中止 ―――――・――――― 午後二時四十六分速記開始
塚本重藏
65
○
委員長
(
塚本重藏
君) 速記を始めて。本日はこれにて散会いたします。 午後二時四十七分散会 出席者は左の
通り
。
委員長
塚本 重藏君 理事 谷口弥三郎君 姫井 伊介君
委員
中平常太郎
君 山下 義信君 中山 壽彦君 黒川 武雄君 井上
なつ
ゑ君 小杉 イ子君
政府委員
厚生政務次官 淺岡 信夫君 厚生事務官 (医務局次長) 久下 勝次君 厚生事務官 (社会局長)
木村忠二郎
君 厚 生 技 官 (医務局長) 東 龍太郎君