○谷口弥三郎君 先月の末に熊本縣、佐賀縣及び福岡縣の災害救助
状況を視察するようにということで、今月の二日から八日まで各地を順次視察をして参りましたのであります。その
調査要目は、前に示されておりましたように、今回の災害当時におけるところの氣象の
状況とか、次いで被害の
状況、特に人員、家屋の被害或いはその他耕地、土木又は農作物、食糧品の
関係、林野
関係、水産
関係、工場
関係、教育
施設の被害とか、その他の被害
状況を見ますとか、尚被害の概算、復旧事業の
状況とか……併し
厚生委員会といたしましては、特に災害救助に関するところの
状況を視察するようにというので、災害救助法による地方
公共團体、日本赤十字社その他の團体及び
國民協力の
状況でありますとか、連合軍の救援
状況であるとか、或いは救助その他緊急措置に要した労務
施設の
設備でありますとか、或いは物質並びに資金の整備並びに備蓄の
状況とか、災害救助法第二十三條による救助の種類などについて
調査をするようにという項目を示されまして、すでに私が参りました場合には各地にその書類が参
つておりましたときでいろいろと書類を頂きまして、又
状況を視察することができたのであります。先ず参りましたところから行
つた順序によ
つて簡單に御
報告して置きたいと思います。
第一番に熊本縣廳に今月の二日に先ず参りましてそうして一般
状況を調べて見ました。耕地
関係とか、或いは農産
関係というのにおきましては極く
簡單に申上げたいと思いますが、熊本縣における耕地
関係の損害は一億八千万円くらいでございます。及農産
関係におきましては三億一千万円くらい、水産
関係におきましては一千万円くらい、林務
関係におきましては一億一千七百万円、住宅
関係におきましては一億三千六百万円、一般の被害が七億、総被害が二十一億という
程度の被害を受けているのでございます。その中で特に私共が注意をいたして見ましたのは、この区間における死亡者が、熊本縣におきましては十名の死亡者、軽傷者が三十三名、重傷者が四名、計四十七名の今度の災害による人員被害を受けているのであります。又家屋の方におきましては、全壊が四十八戸、流出が十六戸、半壊が四十九戸、床上浸水が千十八戸、床下浸水が三千四十七戸、計四千三百八十三戸というような
程度でございます。
全体に今度の災害に
当りまして救助を受けた、いわゆる救助の他の團体やらが世話をして頂いたというのは、やはり赤十字の團体であるとか、或いは医師会でありますとかいう方面から協力を受けておりますけれども、比較的そう大した協力は受けておりませんでした。主としてこれは青年團、消防團、婦人会などからのお世話が可なり多か
つたように思います。連合軍の方の救援
状況は、熊本縣におきましては連合軍の救援を受ける程の域に達しておりませんでしたせいか余り受けておりません。なぜそういうような
状況に
なつたかと申しますというと、熊本縣におけるジユデイス台風は初め人吉地方に中心点が入
つて來まして、それから球磨川を経て八代から天草郡の方に出ましたために、あの日本三大気流の
一つである球磨川の沿岸並びにその下流の部分に大損害を受けたような
状況でありまして、
從つて区域が熊本と大分離れておりますような
関係からいたしまして、いろいろの救援
状況が悪か
つた。その被害の
状況は、あの大きな川が非常に氾濫をいたしまして、而も或る一部のところにおきましては新たに川ができるくらいに、即ち普通の田畑を全部水流が崩しまして新たに水流ができて、以前架
つてお
つた橋の下には水は私が行きましたときは一滴も流れずに川の方向が変
つてしま
つておるというような
状況を呈しておるのであります。そういうふうな
関係からいたしまして、余り急いであ
つたために連合軍などの救援の來る暇がなか
つたものと見えまして余り受けておりません。ただ病人ができましたとか被害家屋の
方々が外に出ましたためにこれに対する炊出しをしますとか、或いは保健所が急速に働きまして、勿論その附近の開業医も協同いたしまして避難民の健康診断をやりますとか、或いは或る一部の患者にはチアゾールなどを少し與えておるというような
状況であります。
從つてお蔭でその後におきまして別に傳染病なども発生いたしませんで、救護の状態は都合よく進んでおるのであります。極く
簡單に申上げまして、写眞を持
つて参
つておりますからこれを
一つ御覽を願いたいと思います。
それから
簡單に申上げましてあれですが、次に佐賀縣の方に参りまして佐賀縣の
状況を拜見いたしますと、佐賀縣におきましては八月十五日の午後九時頃に九州南端に上陸いたしましたジユデイス台風が、段々と鹿兒島、熊本を縦断して佐賀縣の方に入り込んで來たわけであります。この佐賀縣におきましては実は昨年度におきましても可なりひどい水害があ
つたのでありますが、その場合の水害に比べまして二倍半乃至三倍の
程度の水害
状況であるし、僅か二日間で年間の三ケ月分からに
相当するくらいの水量の大豪雨があ
つたというような
関係からいたしまして、而も昨年と今年と連続したような場所がありましたので実に悲惨の
状況を呈しておるわけであります。殊に佐賀縣のうちにおきましても或いは小城郡とか或いは小城町でありますとか或いは次には東松浦郡の嚴村でありますとか、佐賀市でありますとかというようなところにおきましては、降雨量が或る所では五百九十七ミリ又或る所では五百九十一ミリというような大量の降雨があ
つたのであります。
從つて人畜の被害が非常に多くございまして、現在私が参りました九月五日の統計でありますが九十一名の死亡者を出しておる、その死亡者の大部分は小城と佐賀であるといわれるくらいに九十一名からの死亡者が出ておるのです。行方不明が六名で重傷が三十四名、軽傷が二百四十七名という多数の人の損害を受けておるのです。
又住宅の方にいたしましても流出の住宅が百二十二軒、非住家が百三十五軒、或いは倒壊が合せて四百七十七、半壊が千四百、侵水が全体が四万八千からあるというような非常な被害を受けておるのであります。土木耕地
関係その他におきましてはこれについてすでに参議院の方からも建設の方とか農林の方などが見えておりましたので、ここでも時間がありませんから私は救護の方面を特に御
報告して置きたいと思います。
一般の
状況からいたしまして、救助対策等といたしましては十五日台風が來ましたと同時に、早速本部におきましてはいろいろとこれが
計画をいたしまして、十六日にはすでに待機さしておりましたところの救助員を
派遣するというような
状況になりまして、而も救護班のごときも全体で縣立病院が十三班、國立病院がら四班、医師会から三十二班、日赤から六班、これに各保健所を加えまして、千七百七十六名というものが治療に当
つておるというような
状況であります。殊に佐賀縣において特によか
つたのは、進駐軍の大なる協力を得まして、そうして或いは濾水器を使うとか給水車を使用するというような方面に力を入れて給水方面に全力を盡した結果、又一部ちよつと下痢患者ができたのでありますけれどもこれに対しても早速チアゾール等を與えました結果は、その後何ら消化器性の傳染病というようなものも起らずに済んでおるのであります。而も同地におきまして、特に蘆刈村などにおきましては二週間に亘る浸水地がありまして、堤防の破壊したところを折角補修工事をやりましても三回もそれが又決壞するというような
状況でありましたために、
土地は極めて汚染しておるように思いますし、又非常に臭氣もあるようなところに拘わらず傳染病患者が発生しておらんということは、これは可なり衞生方面の者が非常に熱心に救護作業に携わ
つたお蔭であります。要望
事項につきましては全部を取まとめて後で申上げることにいたします。
次に福岡縣の
状況を申上げますと、やはりこのジユイス台風のために可なり廣汎な
土地に
方々に被害を受けまして、被害の総額が福岡縣だけで三十二億円余りに達するというようなことを申しております。而も被害地の中でも炭坑の飯塚方面はすでに平素からいたしまして二メートル五十センチという陥落地帶がございましてその方面に水害が來ましたために、ある地方では八日又は十二日という間浸水に見舞われておるというようなところがあるのであります。又一方には到るところ崖崩れがありますとか、或いは橋梁がやられたというような被害も多いようであります。まず福岡縣における全体の死亡者の
状況は、割に少うございまして六名、行方不明が一名重傷者が三名軽傷者が五名というので、主として水害が多いものですから死亡者などは佐賀縣などの比べはない、熊本縣より少いぐらいであります。併し全体の全壞家屋は三十戸であります。人員が百三十六名、半壞が百十四戸、人員が七百三十九名、床上の浸水が五千八百四戸、人員が二万六千名というような被害を受けております。
福岡縣におけるこの災害救助対策は、この方面に対しましては縣でもこのジユデイス台風が來ますとすぐ本部において一定の
計画を立てまして、早速衞生部などにおきましては衞生部長を初め各地に出張いたしまして、そうして主としてここは保健所を大体において動かしまして、保健所が主とな
つて附近の医師会等と協力したしまして、先ず浸水地等を消毒をいたしますとか、或いは濾水器を使
つておりませんから生水を飲まんように、又煮沸器を配るとかお湯を配るとかいうようなことをいたしまして、又
土地の消毒方面に特別の注意をし、或いはチアゾールを飲ませたというような
関係で、幸いにして福岡縣でも傳染病が一人もなか
つたというような
状況であります。今度の台風でも三縣の
状況から考えて見ますと、又方のの希望なども聞いて見ますと、実は我々はこの第二國会におきまして災害救護法の成案に一緒に参加することができたのでありますが、あの当時の
状況から申しますと、今後災害があ
つた場合には、赤十字社が主にな
つていろいろのものを備蓄して、早速それに対して大いに対処するというようなことにな
つてお
つたと思いますに拘わらず、案外赤十字社の働いたところはあまり見ませんでした。又赤十字社の備蓄があるということも縣も知らなか
つた、かくのごとくあまり関心を持
つておらんような縣があるのであります。それで今後の対策の
当りまして実際にあの災害救護法によるものとすれば、今少し赤十字社を活動させるという方面に、大いに力を盡すようにしておかなければならんのではないかというようなことが先ず第一に考えられます。
第二に今度の
状況を見ますと、可なり浸水、これは今後もあることでございましようが、浸水が非常に長続きしました
関係上衞生
施設或いは衞生方面を非常に啓蒙せねばならん。それにはお湯を飲ますとか沸かした方を飲ませると言
つても実は薪が濡れておる、薪がなかなか手に入らんというような
状況ですから、煮沸水を作るということはあまりうまく行かんという
状況です。これには以前からよくありましたが、今でも現に進駐軍が持
つておられるあの濾水器お各地に少しづつ備蓄させるか持たせておく方式を講じておく必要がある。或いはそれは災害救護法により、赤十字社に持たせても或いは縣に持たせてもどこに持たせても結構でありますが、濾水器を持たせる。又給水車を当てがうというような準備をしておかなければ、今後の災害の場合には非常に困るだろうというようなことが考えられております。
その次に第三といたしまして是非
一つ注意しておかなければならんのは、今回の災害の場合に各地方で困
つたのは、
方々からいろいろの人が参りましてその
土地の人じやない方が沢山見えますために、炊き出しに当
つてこれに與えるのに非常に困るということを言
つておられる。尚又それを炊いて食べさせるということはなかなかできないのでありますから、平素から或いは乾パンというような食料品を少しは準備さしておく必要がありはせんか。又これは少し問題が專門的にな
つて失礼でございますけれども、チアゾール等を飲ませておくと早速病状はよくなるけれども実際はまだ保菌者が可なりおるのでありますので、チアゾールを飲ませたらこれは健康だというように考えずにその後で檢便さしておかんというと、保菌者が各地を廻りまして
從つて病毒を全般に傳播させる危險があるだろうと思います。これはその地方でもお話をしたのでありますが、今後
厚生省あたりでもいろいろと指示をされる場合に、水害の場合にチアゾール等を飲ませて一時よく
なつたからとい
つて安心せずに、必ず保菌患者でありはせんかということで檢便を後でするようにということを、十分に指示をして頂いた方がいいのではないかということを考えたのであります。
要するに今回の災害は僅かの期間ではありましたが思
つたより非常に激しい被害を各地共に受けております。それに対する復旧を急いでや
つて貰うように盡力をして頂きたい。尚復旧だけじやなしに
状況を見ますと、先刻も申しましたように水流の変化をします
関係上、或る地方ではこのまま置いて置けば次の災害のときにはどこか必ずやられるだろう、どこの市が浸水されるだろうということが大抵分
つたようでありますから、予防的にそういう方面にもいわゆる復旧のみでなく予防対策も是非講じて頂くように指示して頂かんというと、今後は不安でその
土地に永住することもなかなか心配でたまらんというようなことを住民の
方々が申しておりますから、そういう点も
一つ十分に御考慮を願いたいと思います。私からの
報告は極く
簡單にそれだけにして置きます。