○草葉隆圓君 実は
未亡人の問題につきましては、片山内閣のときに、成立後間もなく、総理
大臣をこの
委員会に引張り出して、当時私からもその他の委員からも強く要望し、殊に片山さんが在野時分に「
國民に訴うる」という中に、
未亡人の問題は最も早く國費の多数を費して解決すべきものである、ということを書いておりましたので、我々大いに期待しておりましたが、それが殆んどできずに済んだのであります。当時におきましても耐乏
生活であるから國家が立ち直
つてからこういう
処置をつける、こういう
答弁でありましたが、これに対して私共は、そうじやなしに、こういう問題を解決をしながら國家の立直りをや
つて行かなければならぬ。國家の財政ができてしま
つてからこういうものに手をつけるというような
考え方ではいかんじやないかというようなことを強く我々は当時から申して参りましたが、今日までこの問題が殆んど未解決に終
つておりますことは、誠に遺憾でありまして、今回本
委員会におきまして強くこの
未亡人の問題が取上げられましたので、私ども現在の
厚生大臣及び現
政府に対して大いなる期待を持
つております。同時に
未亡人の問題ということにつきましても、私がここで言わんとする
未亡人というものは、こういう意味であります。夫を失つた妻であ
つてみずからの力によ
つて子女を養育すべき責任の地位にある者、これを私が問題に取上げる
未亡人である、いわゆる
寡婦である、自分の力で
子供を養育して行かなければならない地位にある
未亡人です。從
つて未亡人にも種々樣々あるが、その他の
未亡人は私共の敢て論ずる必要はないのである。これが私の
未亡人に対する問題の
一つの
中心であります。夫を失つた妻でありますが、夫を失つた形におきましては、病氣の場合もありませうし、戰災、空襲の場合もありませうし、或いは戰爭で遺族に
なつた場合もありませうし、或いは終戰後のドサクサで夫が亡く
なつた、或いは引揚途中で亡く
なつた
ための
未亡人がありませう。然るに
未亡人の問題というのはむしろ戰犯的な
考えを持
つていて、数の多い戰爭犠牲者が他に多くあるので、
未亡人というと、いかにもそういうふうな
取扱いを今までの
政府が
考えて來たのではないか。私はこれは大変な間違いである、むしろ
未亡人というのはその中の多少は或いはそうかも知れませんけれども、全般的な意味から
一つこれを
考えて頂きたい。從
つてその中に今申上げたような種類の人達は当然ありませうけれども、全体の
未亡人としての立場から我々は
一つ考えて行かなければならぬと存じます。自分の力でやる以外に
方法がないという
未亡人でありますから、自分の力というのは主として労働力であろうと思います。そうして今後の日本の
経済を
考えて参りました場合に、私共が第一次欧洲大戰数年後における欧洲の
状態を
考えてみると、そういう
状態が日本にも出現して來るのじやないかということを憂うるような
状態を今
考えるのでありまするから、現実の
未亡人の最も悲惨な問題が
一つの大きな社会問題とし、又次に起らんとしている
経済情勢の変化における
未亡人の悲惨を我々は
考えるときに、今のうちに
政府が十分な手を打
つておかねば將來大変な社会問題が、現在よりももつと逼迫した
状態が來るのではないか、こういうことを憂うる次第であります。從
つて最後にどうしてもいけない場合が起
つて來る問題はたつた
一つのことである、
未亡人の持
つております肉の資産というところに入
つて來る。これはこの前の欧洲戰爭における悲惨な事実であります。從
つて私共がその前にあらゆる観点からこれを
考えて参りましたときに、第一は
生活の立場、
生活の立場からは
從來、これも
山下委員から、
生活保護法の
運用の問題、或いは改正の問題、私はその
生活保護法の
運用だけではなく、運営問題から
考えて、
生活保護法を
未亡人の現実の、数百万の
未亡人の立場から
生活保護法の現在の在り方を変える、いわゆる改正する、法律自身を
相当改正する必要がありはしないか、こういう点について
政府はお
考えにな
つているかどうか。これは
生活保護法全体を
相当改正せなければならん最も古い法律とな
つておると存じまするが、それはそれとして、
未亡人の問題の立場から
生活保護法を改正すべき点が多々ありはしないか、これが第一点であります。
それからもう
一つは、
職業の立場からの
未亡人の問題、これは
労働省関係にも
相当あろうかと思いますが、
只今の
山下委員の
質問に対して、
労働基準法等の積極的な実施というようなことを
お話になりましたが、この
未亡人の立場から現在の
労働基準法を御改正になるお
考えはないか、いわゆる
子供を持
つて働いている
未亡人に対して、現在では、ただ一種のやわらかい
指導というような
程度でその人達の労働を守
つている、むしろ時間的とか、そういう点からい
つているだけであるが、もつと積極的に行けるような
労働基準法を改正すべきである。それからもう
一つは、先程
政務次官からの
お話にありましたが、
職業補導所というのを今度は三百数ケ所予算に計上している、併しこの中で
未亡人專門の
職業補導所というものをお作りになるお
考えはないか、むしろ私共はそれが必要じやないか、尤も
職業補導というものは、
失業救済の対象から來ているのでございますから、一般も勿論ありましようが、
未亡人專門のを
一つお作りになり、現在
授産所におきましては、
生活保護法で
職業補導費を受けている者が沢山あります。これは一方、
生活保護法で六ケ月
保護を受けておりますが、一方
労働省等におきましても、
職業補導所というものを作る場合に、そういうことを
一つ頭に置いて、そうして
未亡人專門の
職業補導所を、少くとも
相当な都市にはお作りにならないと、この問題は解決しないのじやないか。これは時間がかかりますから内容は詳しく申上げませんでも大体御了解は願えるのではないか。この
職業の場合におきましては、当然
生業資金という問題が起る、これも先般もちよつと問題に出ておりましたが、この
生業資金の問題も十分
考えて行かなければならないと思います。これに対して今回
國民金融公社というものができましたが、この
國民金融公社というものを、
未亡人の
職業の確保の立場から、強くこれを利用するという
方向にお
考えにな
つておるか、この点を
一つ伺いたいと思います。
それから次は、
未亡人の問題の
中心の
一つは、育兒、育英、保育の問題、いわゆる育英の問題、これは一方育英会というのがありますけれども、又一方
生活保護法による育英費の支給というのがありまするが、これは
從來の
生活保護法よりも一歩前進していると思います。一歩前進していると思いますが、全体の國家の立場から
考えますると、
未亡人の
子供に対する育英、この問題は殆んど
考えられずにいるとすら言い得る
状態であります。この問題がもう少し具体的に解決しましたならば、もつと本質的に解決しましたら、
未亡人の肩の凝りは約半分以上はこれで解決すると思います。この問題は、一方は文部省の文教
関係にな
つて参りまするが、同時に廣い意味の
未亡人対策の根幹をなすものである。
もう
一つ第四には、
未亡人に対する課税と申しまするか、國家負担と申しますか、地方税も含めた課税の問題、これは現在地方によりましては、
相当考へて呉れているところがあります。現に或る大都市のごときは、
未亡人である
ために、市民税を三割引くというようなやり方をしております。或いは或る所のごときは、
未亡人である場合は、決定した額の次の、一段低めてやるというようなやり方もしております。從
つて課税の問題というものは、
相当考究する必要がある。
それからもう
一つは、これは主として農林行政になりまするが、農村におきまする
未亡人の大きな問題としては、供出の問題、私ども愛知縣におきましては、この
未亡人の供出の問題について随分力を注いで参
つております。そうして大体了解を得まして、供出の約二割そこそこは、
未亡人なるが故に減じてくれという
委員会の了解を得て、大体や
つてくれるというような行き方にして参りましたが、これはもういろいろな意味から、
子供を持
つて働いておる
未亡人が、朝暗いうちから晩遅くまで働いても、尚普通の人のようにはできない。從
つてそこに何とかしてやらなければならんという問題が起
つて参ります。これは現実の問題である。さつき配給の問題は
山下委員から御
質問がありました。
最後に私は結婚の問題、この結婚も普通の人は、
未亡人の問題は結婚で解消するじやないかという、極く軽い
意見がよくいろいろな方面に見えますが、併し私は結婚問題で
未亡人の問題は解決しない。結婚の問題で解決するのは、これは結構だ。どうしても解決しない大多数の
未亡人の問題というものは残
つておる。併し結婚の問題で解決する問題については、結婚の問題で解決するやうに、やはり施策を講じてやる必要がありはしないか、正しい結婚を求めて正しく行くようにする必要がありはしないか。併し結婚問題だけでは解決しない外の問題については、今申上げたようになる。だから結婚の問題について正しく結婚のできるように
一つの方策を講じてやる必要がありはしないか。先に
山下委員の
質問に対して
厚生大臣は、現在各省にまたが
つておる
未亡人の行政についての、或いは
労働省、或いは
厚生省、その他の省……、別に課を特定なものを設けんでも、
連絡を密にしたらいいという
お話がございましたが、併しその場合において、どこが
中心にな
つて今後
連絡をなさるということになるか。実は大変この問題は大きい、又必要であると言われながら、殆んど、どこでもや
つておらないのであります。そうして眞劍に
考えましたら、現在私ども二、三のところを強く調べて廻りまして、実際
調査をと
つておると、
未亡人ではないと言
つております。例えば特殊飲食店、併し本当に調べて見るというと、自分の身分を隠しておる人達が
相当あります。從
つてこれは眞劍に
考えて行かなければならないので、現在においては、或いは
厚生省、或いは
労働省おのおのがおのおのの
範囲においての
仕事しかできておりませんので、これを一課或いは一行政廳を作らなければならんということも、必ずしもこういう時代ではありますまいが、併しそうなるというと、これを
中心に今後取纏めて行
つて、本当に
未亡人の問題というものをあらゆる観点からや
つて行くというのは、一体どこがや
つて行くのか、これを
一つはつきりしておかないと、いつまで経
つても進まない問題に陷
つて來るのではないかと存じます。そういう意味において、私は先にこれも御
質問がありましたが、
授産所の問題も同樣であります。実は
授産所の問題につきましては商工省、安本或いは
厚生省、あらゆるものが少し引つ掛
つて、むしろ
厚生省の物資課でどうやらこうやらということにな
つておる。從
つてどうも二進も三進もや
つていけない。金はない。資材もない。そこで働いておるものは先程山下君の言われる
通り、四十円くらいのものを貰うのがいいくらいです。実際本当の行政面に立入
つて見ると、これが実際日本の
授産所の問題かと
考える。これは何とか
一つ一本の行政機構ができなんだら、も
つて物になるような
方法を採
つて行かなければならぬ。これについても
一つお
考えを願いたい。又御
答弁がありましたら……以上であります。