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証人(
難波元由君) 日本建設
工業協会の事務局長をしております
難波元由であります。本日は本院において建設中小企業として、証言の言葉を述べさして頂きますことは、非常に光栄と存じます。
大体私等の
建設業はどういう協会かという、この
内容を申上げたいのであります。実は建設中小企業を中心といたしまして、と申しましてもはつきりいたしませんのですが、大工、左官或いは石工、鳶職或いは土木、こういう職種が多年の
経驗によりまして、企画、技術及び集團設備を作りまして、これによ
つて営業をなしておる者であります。即ち一般の民家、庶民住宅、それから公共
事業、或いは大
業者の下における下請
業者、かような職種の営
業者なのであります。團体といたしましては、縣を單位といたしまして、大体職種專門別に商工協同
組合によりまする協同
組合、又は任意
組合を以て團体を
組織いたしまして、その傘下にはその職種が羅列せられて、十六種或いは二十四種もあるのでありますが、この会員には大体どういう者がな
つておるかと申しますると、常置一人以上使いまして、資本金は二百万円以下を以て、中小企業とみなしておるものでありますが、これを加入の資格としております。かようなわけであります。それから
建設業法案に対しましては、大体
賛成の意を表する者であります。
その経過を大体
一つ述べさして頂きたいのであります。建設中小企業としましては、終戰後は実は幾多の試練を受けておるのであります。最初戰時中は労務報國会に強制的に加入させられました。更に終惻後は独立しまして、技能者だけの職種別の團体を
組織したのでありますが、これも進駐軍によりまして親分子分の
関係上この團体を解散されたのであります。更に昨年の二月この團体は適切でないというので、昨年閉鎖機関にな
つておるのであります。かようなわけで幾多の苦難を経たのでありますが、從來
社会から極めて封建的であり、それからボス的存在である、或いは労務供給
業者であるというようなことによ
つて、終戰後はあらゆる面から解散を食い、或いは苦肉の策を講ぜられて今日まで來たのでありますが、その一方
労働基準法とかその他逐次我々の
経驗のない
法律が沢山施行されて、これに悩まされて今日まで來たのであります。でありまするが、私らの行な
つておりまする行爲も、世間から見て決して適正ではなか
つたのであります。これがために終戰後全國團体を結成いたしまして、逐次この主義主張を根幹といたしまして、先ず我我の
立場の企業の整備、企業の合理化、かような面に向
つて專念したのでありまするが、我々の力では何とも仕方がないので、
昭和二十一年の末におきまして、何とかして我々の
建設業に関する独立の
法律を作
つて貰いたい、我々の健全に
発達し得る、又
育成助長し得る、
社会的地位を向上し得るところの
法律を作
つて貰いたいことを主張して、今日まで続けて参
つたのであります。でありまするので、今回本院に
建設業法案の提案されましたことは、誠に感深いものがあるのであります。本案の成案のできますまでの経過につきましては、
建設省においては常時我々小さい中小企業に対しましても心添えを願いまして、
本法の成案中におきまする公聽会、或いは第二次試案等におきまして、我々の
意見を述べさして頂いたのでありまするが、これは我我幹部だけの
意見ではございません。この
業法ができますと同時に、各県の縣協議会或いは連合会にこれを持ち出しまして、更にその下部
組織でもこれを
審議いたしまして、何とかしてこの
法律はこの際是非通して貰いたい。かような
意見を申上げて参
つて、その
意見をまとめまして公聽会、その他において
意見を具申しましたところ、相当我々の意とするところを反映願いまして、
本法ができ上
つておることは誠に感深いものがあります。
それで本
法案に希望いたしますところは、
賛成の第一点としましては、この
建設業法によりまして、建設
工業の健全なる
発達という言葉がありますが、これには
育成助成が含まれておることを信じておるのであります。又
工事の
完成の
責任を負う、従來我々中小企業は
自分で造
つた建物を安く、而も
自分の技能を発揮いたしまして、そうしてこれを喜んで満足してお
つたのであります。かような面も
工事の
責任を認めて頂く、かような点についても中小企業としては非常な関連を持
つておるのでございます。尚この
契約面におきましても、從來は先程もありましたように、一方的な金持或いは
役所の権威によ
つて我々に押付けて
仕事をして來た、かようなことで
社会から圧迫を受けた感じを持
つてお
つたのでありますが、この
契約におきまして
注文者も発注者も同等の
立場においてこの
工事を実施さして頂くことにおきましては、我々としては絶大なる信任を得た
法律と
考えるのであります。この点を最も重点として、我々が
賛成の意を表するものであります。そうしてこの
建設業界の我々中小企業が、今まで奴隸のごとく取扱われた者が、この
法律の線によりまして、革新的なそうして堂堂と
社会的の存在を明らかにして頂くことが、我々の念願するところでございます。
先程も申しましたこの各職種の團体の人員数は昨年末におきまして、十六万九千四百三名にな
つておるのでございます。この人々は全然的に賛意を表しまして、今回の國会において成立することを絶大なる期待を持
つておるのであります。先程も申しましたように、諮問或いは公聽会において
意味を述べさして頂きましたので、この全文につきましては大体に賛意を表するものでありますが、ここに提案されております案を拜見いたしますと、若干私共のように無能なる者にはつきりしない点がありますので、この点御檢討を願いまして御修正を願いますれば、私共幸いと存じまするが、以下若干述べさして頂きたいと思います。
大体総則の第三條の第一号、第二号でございます。「この
法律は、左の各号の一に該当する者には適当しない。」そこに「政令で定める軽微な
工事のみを
請負うことを
営業する者」こうな
つておりますが、この軽微なる
工事と申しますると、なかなか私等の
業者又大きな
業者に拘わらず、軽微と申しまするとどの
程度かはつきりしないのであります。これで軽微といいますと、例えば百万円の
工事を三つも四つもや
つていても、切
つてしますと軽微な
工事にな
つてしまうのであります。かような曖昧なことでなく、私達の業態ははつきりしておるのでございます。と申しまするのは、
一つの
建築の
工事を
請負いまするには、一人や二人では完全にできないのであります。必ず一人や二人でできるような
仕事は大体修繕とか物置とかで、このようなものはこの
法律に入れて頂きたくないのであります。こういう
請負に対しまして、ここで私達のお願いするのは一、二は削除して頂きたい。その
代り自己の労力のみによ
つて完成し得る軽微な
工事を
請負う者はこれを除く、こうして頂きたいのであります。かようになりますと
自分の力でやりますところの労力と申しますと、十坪の家を建てるには一人では一年も二年も掛らなければ家は建たないのであります。かような
意味で
自分の労力でやると、私らの同僚のもともと育ててお
つた者或いは今まで子分というか、職人は、大体修繕とか物置の
一つくらい、或いは棚を作るとか店の棚を整備する、かような
工事は完全にできるのでありまして、こういうものは除いて頂きたいのであります。それでそういう人が、
自分の力で以て
完成し得る軽微な
工事といいますと、大体その面がはつきりしましてあと少くとも十坪なり二十坪の
工事を
請負うというのは、やはり相当の金をお預りし相当の
責任を以て
工事をしなければならないので、先程元請の方からもお話がありましたが、
範囲の狭い
職別は除くというお話がありましたが、かようなことでは我々中小企業はいつまで経
つてもどん底に置かれなければならない
状態にありますので、中小企業としてどうしてもこの
立場をはつきりして頂きたい。そうして我々と職人のはつきりしない点は、ここにありますのでこの軽微というところを、本当の
自分の力でやるよな軽微な
仕事の
請負工事は除く、この
登録はしないでよろしい、こうして頂きたいのであります。
それから第二の別表十号から二十二号までを削除して頂きたい。
理由はここにあります十四は板金
工事、次にとび
工事、ガラス
工事、塗装
工事、防水
工事、タイル
工事、壁紙
工事、それから機械器具
設置工事、熱絶縁
工事となるのであります。この中で特に先程も申しましたが、とび
工事といいますといかにも火消とび、今までの消防といいましようか、とびという者を軽く
考えまして、又そのことが非常に
社会からも軽く見られておるのでありますが、とび
工事は最近におきましては家の建組ばかりでなく、いわゆる鉄骨、鉄筋、こういう
工事の組立もやるのであります。相当に技術も要すれば、又これに対する技能も必要にな
つて來るのであります。又河川等におきまする浚渫、こういうような
工事におきましても相当の技能技術を要する
工事の
業者でありますので、相当に又設備も必要とするのであります。とび
工事がこの中へ入ることはかようなわけで、
一つ一つ説明しますと長くなりますが、大体十二号から二十二号までの
工事業者はやはり
建設工事を全面的に纒めますのに、特に
工事業者といえども必要でない
工事はないのであります。でありますからかような面はやはり削除して、どれでもその
工事をする者は自由にこれが
登録できるのでありまして、
自分が
営業の資格がないとすればしないのであります。かような点をよく御了承の上でこういう文句は、差別的の
待遇のようなことはないようにして頂きたいのであります。どこまでも中小企業はのびのびと伸びて來る方向にこの
法案をや
つて頂きたいのであります。
そういうわけで今の第三條の「左の各号の一に該当する者」云々は全部削除して、先程申しましたような方向に御修正を願いますれば幸いと存じます。
それから第六條中の
営業の
登録の申請でありますが、これはここにありますように二以上の
都道府縣に
営業所を持つ者は
建設大臣、その他は
都道府
縣知事とありまするが、これはいわゆる都市におきまする者は便利でありますが、その他の若し
営業所ができてそうして
建設大臣に組替えるということになると手続上不便でないか。それから尚この
二つに分けるということは、何か特権を與えるように感ずるのでございます。これは私らのひがみ根性から來ているかも知れませんが、かような点は從來は封建的である、或いはボスであるといわれて來た点から
考えまして、かような言葉は成るべく
法律の上に残して頂きたくない。大小共に同一に
都道府縣において
登録するようにお願いしたいのであります。趣旨はさような精神からも出て來ておることを御了承を願いたいのであります。
それから次に二十二條と二十三條の問題でありますが、二十二條は一括
請負を禁止しておるのであります。これは誠に私らとしては、中小企業としては重大なる
條文でありまして、一括でなく、これは結構なのでありますが、その二号におきまして「前項の規定は、建設法者があらかじめ
注文者の書面による承諾を得た場合には、適用しない。」こうなりますと元請
業者のカモフラージをする嫌いがありはしないかという私らの猜疑心があるのであります。こういうものはなくても一括はしてはいかんということになればいいじやないか。若し必要があれば二十三條において運用し得られるものじやないか。こう
考えておるのであります。
あと
審議会の問題でありまするが、その前にもう
一つ私らの意図が含まれておりますので、
契約におきましては私らの願
つてお
つた事柄が総合の資格をつけて頂くこと或いは天災その他によ
つて、その損害のあ
つた場合の補償
方法、或いは公定の変
つた場合における
方法、やり方につきましての事柄等ははつきりと示されておりますので、これらにつきましては私らは大なる賛意を表しておる者なんであります。
審議会におきましてもいろいろな問題もあると思いまするが、公聽会或いはこれの内示のありましたときにも、我々
業者を入れなくてはうまくないから是非入れてくれとい
つたら、これも三分の二とかはつきり出ておりますので、多分決定したときには中央におきましても亦
都道府縣におきましても、この意図を汲んで
審議ができると思います。我々の
考えてお
つたところの一歩前進した
法律、革命的な
法律として私らは絶大なる賛意を表することをここに附け加えてお願いする次第でございます。
そうして而もこの
建設業法が通りまして、この産業の基盤を作り上げるこの
業者をして、はつきりと
社会的の存在を明らかに知らして頂きたいことを念願するのであります。でありまするが、この
法律を見まして、我々中小企業に加えられまするところの
負担が非常に大きいのでありますが、その設備等におきましては全く自己の腕と力によ
つて今日まで來たのでございますが、着々とこれからや
つて行かなければなりません。尚これについて先程申しましたように、着々と協同
組合なり商工
組合なりによ
つて來たのでありますが、その商工、協同
組合法すら私らの中小企業にはこれはぴ
つたりと來ない
法律なのであります。併しながら時代に遅れてはなりませんので、各自の資金を集中しまして、これによ
つて必要な資材を購入すべく念願して参
つたのでありまするが、残念ながら、いろいろ
法律があ
つて制限されておりました。それでこの
法律施行と同時に念願いたし、
審議の御参考にして頂きたいことは、この
法律にもありますように
建設業法には「健全な
発達」とありますが、これは必ずや
育成、助成がこの中に含まれておることを
考えますときに、我々
建設業者は、從前は先程も
ちよつと申しましたが、
自分で注文主から注文を受けた場合には、その使うところの資材その他は
注文者の氣にいるような資材を探し求めまして、
自分で物を買い求める、そうして
自分の技術をそれに加えまして、今日まで造り上げて、いわゆる
注文者から喜ばれることを誇りとして來たのでありますが、終戰後におきまして全くこれを取上げられまして、いわゆる
注文者にその材料が來まして、そうしてこれをよくても惡くても使いこなさなければならんのであります。非常にこれに無理があるのであります。これは各会議におきましてもいつでも文句の出るところであります。我々のこの築造
業者に資材がなくて何ができるか、当てがわれた資材は殆んど使えないものが多いじやないか、非常に無駄である、かようなことを言
つておるのであります。かような面からい
つて是非
建築資材等は全面的に統制の枠から外して頂きたいのであります。併しながら経済原則によりましてどうしてもそれができないと、こういうのでありますれば、少くとも他の産業方面の工場なり加工
業者、かようなものには、指定生産資材なり或は主要なる補充物資が支給されておるのであります。私らの築造
業者には、一本の木、釘も堂々と配給はされていないのであります。殆んど闇その他によ
つて注文者の希望するところの
工事を
完成するというわけで、
社会的の存在から見まして、又先程ボスとか何とかの
非難を受けますのも、ここから來ておるのであります。併しながら
請負つた面はこれはどうしてもやらなければならんのであります。かようなわけで中小企業の本当の氣持を率直に申上げますれば、この
建設業法を持ちますと同時に、この裏ずけとしましてはこの加工
業者には少くとも指定生産資材、
建築用の資材を堂々と配給して頂くような方向に行くことをとくに念願する者であります。
尚お願いしたい点は、先程から皆樣が非常に御心配にな
つておる点は、我我のような一人二人を使
つておる
業者は、この
法律によ
つて届出なくてはならないとかいろいろな規定があります。これは非常に私らの小さい企業としては困難なのであります。併しながら困難だ々々々とい
つておりますと、いつまで経
つても
業界は進まんのでありまして、絶大なる決意を以ちましてこの
建設業法を通して頂かなければならん、何とかして通過さして頂きたいのでありますが、私共の
業者は知能におきましては、全く
社会から遅れておる点もあるのであります、又智力も相当に低下しておりますので、是非
登録の窓口或は
育成、助成の窓口、
行政廳の窓口は一本にして頂きたいのであります。
只今のところは
労働基準
監督署或は
建設省或は商工省に行かなければならん、或は水道局に行かなければならん、あらゆる面に向
つて奔走しなければものが纏らん、そうや
つて一人や二人使
つておる者が、一日、二日費したら、一ケ月の生活に千円なり五百円なりが減るのであります。そうすると、そういうのが無理を生じまして、
工事にも影響する、かようになりますので、是非願いたいことは、こういう窓口は必ず一本にして頂きたい。都市計画を見ましても、道路
関係とかそういう面におきましては皆我々
業者が含まれておるのが多いのでありますが、窓口が廣くてはなかなかこれができないのであります。勢い馬鹿に見られるのもこの点から來ておるのではないかと、つねづね感じておるのでありまして、是非とも中小企業の
育成、助成を國家がや
つて頂くためには、又將來日本の復興の根本はそこにあるのではないかという自信を持
つているのであります。
かようなわけで、この
法律に対しましては、全國中小企
業者は絶大なる賛意を表しているのであります。でありますから重ねてお願いする次第であります。甚だ長く喋りまして御請聽有難うございました。