○
証人(
五十嵐眞作君) それでは
新潟縣といたしまして持
つております、いわゆる
只見川の
開発に関する
新潟縣の案につきまして
簡單に御説明申上げたいと思います。
只見川の問題につきましては、縣といたしましても、古くからその
資源開発という
意味で関心を持
つてお
つたのであります。と申しますることは、
只見川と隣接いたしまして、
信濃川の
支川であります
魚野川、
魚野川の
支川であります
破間川という川がありますが、これらの
水力開発ということが始終問題にな
つてお
つたのであります。
破間川單独の
開発が
経済的に困難であるという
意味で、
只見川との
結付きということが古くから
新潟縣の
水力開発問題が起きる
度ごとに取上げられてお
つたのであります。もう
一つ、最近は
福島県の
奧会津総合開発というのと軌を一にいたしまして、
新潟縣の
縣境府近のいわゆる
銀山平、昔、
河村端軒の時代でありますが、銀が出まして非常に殷賑を極めた
銀山平地区の
総合開発ということで、
地下資源、
山林資源、
水利資源というものを
中心に
総合開発計画を縣としていろいろ
調査をして取纏めてお
つたのであります。そんなことで
只見川と
新潟縣というものの極めて密接な
関連性は今申上げた
通りであります。
〔
理事原口忠次郎君退席、
委員長着席〕
それで
昭和二十二年の春、
知事選挙によりまして選ばれました現在の知事が、同年の秋に
銀山平地区の踏査をされまして、そうしてその
総合開発の
調査に着出したわけでございます。たまたま越えて二十三年の一月に、当時の
商工省主催の
尾瀬、
只見総合開発委員会というものが開催されまして、我々もそこに出席いたしたのでありまするが、その際に初めて
新潟縣として持
つておりまする
只見川の
開発計画案を提案いたしたのであります。勿論そのときも御説明申上げたと思うのであります。決して
新潟縣の案が一番いいのだ、
新潟縣の案でなければならんのだという
意味ではございませんので、すでに
日発では古くから
調査して立派な案を持
つておられるのでありますけれども、この
只見川の重要な
資源を
開発するには、いろいろな
考え方があると思うのでありますが、
新潟縣としては、こういう案を持
つておりますと、これを是非檢討して頂きたい、そうして
只見川について最良の案を決定して頂きたい、これを決定して頂いた曉には、
新潟縣としては少しも
異議を挾みませんということを、その後も繰返してたびたび機会あるごとに申上げているのでありまして、そういう
趣旨で提案いたしてお
つたのであります。一
應新潟縣の案が表面に出るまでの経緯を
簡單に申上げたつもりであります。
次に、
計画の
考え方と申しますか、根本的な立場の
趣旨につきまして御説明申上げたいと思います。
只見川の
河川としての性格につきましては、先程
井関部長からお話がありましたので省略いたしたいと思います。御
承知の
通り只見川の
水源地区は非常に水が豊富である。雪、雨の
関係上非常に水が豊富である。
水力資源としての最も大切である條件としての
一つを備えているわけであります。それから非常に
落差が大きいというようなわけでございます。それで而もこの
模型を見て頂くと直ぐ分ると思うのでありますが、
只見川の極く近くを
信濃川の
支川が流れております。
上越線の
一つに
小出という駅のあるのを御
承知かと思いますが、
奧只見と
小出の両方を
比較して見ますと、距離が僅かに二十六キロしか離れておらないにも拘わりませず、
落差が実に五百メートル余に達する、
模型を御覽頂けば直ぐそれをお氣付き願えるかと思うのであります。それで
新潟縣といたしましては、この豊富な
水量と、この大きな
落差を利用して一拠に
新潟縣に
流域変更と申しますか、ということが最も有利な、最も合理的なものであろうと、こう
考えておるのであります。これが
新潟縣の立案の第一の
趣旨であります。そうして更に先程申上げましたように、單独では
開発の價値が少い。
魚野川、
破間川というものと結付けて
考えて見ますとき、この
流域変更によ
つて、これらの
河川の利用が更に促進される。從いましてそこに非常に有利な点が生まれて來るのではなかろうかと、こう思うのであります。この際一言附加えて置きたいと思いますのは、
只見川の
開発につきまして、これを階級的に
開発することが、アメリカにおける
テネシーの
開発と同じである。又
テネシーと同じな
ダム式だという話がよく出るのであります。私共も一應そのように考えておるのであります。併し一面よくよく
考えて見ますと、必ずしも
テネシーと
比較することが適当であるかどうかということについて檢討を要するものではなかろうかと、こう思うのであります。と申しますることは、
テネシーは御
承知の
通り河川勾配が約六千五百分の一であります。一番
下流の
ケンタッキーダムから頂上、
上流の
ダムまで約一千キロであります。六千五百分の一の
勾配でありまして、非常に
勾配の緩かな
河川でありまして、その一千キロの間に九ケ所の
ダムが設けられております。ところが
只見川におきましては、
平均勾配が三千二百分の一であります。延長百八十キロの長さに十六ケ所の
ダムを作ろうというのであります。だから
川そのものが本質的に似て非なるものがあろうと、こう思うのであります。從いまして緩
流河川、
勾配の緩漫な
河川におきましては、同じ
ダムを作りましても非常に
水量が多い。キャパシティが非常に多い。例えて申しますならば、
ケンタッキーダムは高さ六十何メートルという
ダムであります。
貯水量は何十億という
程度の
貯水量を持
つたダムであります。
奧只見は高さ百五十メートルの
ダムでありまして、僅かに五億五千万トンの
貯水量しか持
つていない。まるで
比較にならんと思うのであります。從いましてこの流量と
落差を完全利用いたしますれば、そこに若干の無理を伴うのではなかろうか。完全に利用いたしますには、
間隙のないように
ダムを
沢山作る、或いは
ダムが少くなれば、それだけ高さが非常に大きくなる。
日発の案を見ますると、
上流から
下流まで
既設ダム五ケ所を入れまして十六ケ所の
ダムがあるのでありまして、その
計画を拜見させて頂きますと、
上流の
奧只見と
田子倉の
ダムは、これは確かにさつき申上げました極く僅かでありますけれども、
貯水池の役目を持
つたダムであると言い得るのであります。その他の
ダムはどうかと申しますと、その他の
ダムは悉くそう大きな
貯水能力を持
つておりません。むしろ
調整池、即ち一日分だけの水を貯めて、これを朝とか、晩とか
電力の要るときに一遍に出す。つまり一日二十四時間のうち八時間に全部これを
使つて水を調整しなければならん。その調整のための一日分の
貯水能力だけしか持
つていない。いわばむしろ
落差を取るだけの
ダムである。ヘッド・
ダムである。こう言い得るのではないかと思うのであります。特に
田子倉と
奧只見の間にあります
前沢の
ダム、これはその中間に
間隙ができるものでありますから、その
間隙を除くため完全なる
落差を取るための
ダムであると言い得るのではなかろうかと思うのであります。從いまして結論的に申しますならば、
只見川を段階式的に
開発することが必ずしも
ダム式であるとは言い得ない。而も
テネシー・ヴァレーの
開発と同じものだというけれども、似て非なるものであると
考えられるのであります。これに対しまして、
新潟縣の案をよく
水路式であるということを申されるのであります。成る程長大なる
水路を持
つております。
水路の面だけから申しますると、
水路式であるというようにお
考えになるかも知れませんけれども、併し水の
使い方は
奧只見、
田子倉とこの二つの
貯水池と結付いておるのであります。從いまして單なる
水路式ではありませんで、
ダムと
水路式を併用する、いわゆる
両者併用式とでも申していいのではなかろうかと思うのであります。
ダムの問題、それから水の
使い方の問題を申上げたつもりでありますが、次に、それでは
新潟縣の案で行くと、水を
新潟縣の方に取るために、
下流にどういう
影響を及ぼすかということも私共考えて見なければならんと思うのであります。それにつきまして
考えられる問題の
一つは、
下流の
発電所、現在五ケ所ございますが、それにどういう
影響を與えるだろうということであります。それから問題の二つは、
灌漑用水に使われておる面に対しまして、どういう
影響があるか、これが
福島縣は御
承知の
通り溪谷地帶を水が流れますので大した
影響はないと思いますが、これが
阿賀野川沿岸の耕地に
関係するのでありまして、どういう
影響があるだろうかということを
考えなければならんと思うのであります。それで
既設の
発電所につきましては無論
上流から水を取りますわけで、
出力の減少することはこれは免れ得ないと思うのであります。併し現在の五ケ所の
水力発電所も
從來阿賀野川の水を完全に消化してお
つたわけではないのでありまして、それがために
奧只見、
田子倉は今度の全体
計画ができたわけでありまして、これは
既設五ケ所の
発電所も
從來の
豊水期におきましては
相当の水を捨ててお
つたのであります。從いまして計算いたして見ますると、約二億キロワット・
アワー程度の減少になると言われておりますけれども、或いは
從來捨ててお
つたということを考えの中に入れますると、もう少し少くなるのじやないかと
考えられるのであります。それから折角ある
既設発電所を成るべく殺したくないと考えますので、それに対してどうしたらいいだろうかと我々も一應
考えて見たのであります。その
一つといたしまして、
只見川の
支川に
伊南川という川があります。
伊南川の
水力開発ということを
計画いたしまして、これによ
つて電氣を出すと共に、その調節された水で
下流の五ケ所の
既設発電所の被害を成るべく少くするようにしたい、こういうふうに
考えておるのであります。これによりますると、先程申しました二億二千万が大体一億四千万
程度になる、非常に弊害が少くなるのであります。尚
阿賀野川の
下流の
水量の問題につきましては、一面において
阿賀野川沿線に
猪苗代湖がございます。これの操作によりまして、
下流の水の調節が或る
程度できるのじやなかろうかと期待しておるのであります。もう
一つは、沼沢沼の
発電計画があるのであります。これも
既設発電所の問題に
相当役立つのではなかろうかと期待しておるのであります。いずれにいたしましても
相当の
出力の減少は免れ得ないと思
つておるのであります。
次に、
灌漑用水に対してはどういう
影響があるだろうかということにつきまして申述べて見たいと思います。現在
阿賀野川の
集水面積は大体七千キロと言われておるのであります。
新潟縣の方へ
流域を変更しようという
部分の面積は大体その一割
程度であろうと思うのであります。それで元の
逓信省の
調査資料によるのでありますが、
上流の水を取ろうという区域の
渇水時における
平方キロ当りの量を大体〇・〇二三トンとし、それから
下流に水を使うところの
渇水量は、これも
逓信省の
調査でありますが、〇・〇一八トン、
上流の方を余計にしてあります。取る方を余計にして使う方を少なくしております。これで計算いたしますると、
阿賀野川流域における年間の一番の
渇水は約一二六トンにな
つております。それが
上流流域変更によ
つて水がどのくらい減るかと申しますと、十六トンであります。一番水の少ないときであります。一二六トンの中から一六トンの水を取ることになるわけであります。だから残りますものが約一一〇トンであります。
阿賀野川の
灌漑用水は大体どのくらい使うかと申しますと、五五トンであります。でありまするから、
上流で
流域変更によ
つて水を取
つたら
阿賀野川の
灌漑用水が不足になるということはないと、こう私共考えているのであります。ただ水位の低下ということが考えられているのであります。量の不足というよりも、むしろ水位の低下ということが心配だと
考えているのであります。これにつきましては、現在すでに
阿賀野川は水位が毎年低下しつつあるのでありまして、
只見川の
開発と否とに拘わらず
阿賀野川の水位は順次毎年低下しつつある、こう申上げていいと思うのであります。從いましてこの水位低下の問題は別途に何らかの解決
方策を
考えなければならん、こう思
つているのであります。
只見川の水を
上流で取
つたから特に水位が下るということはないのであります。量の問題は大したことはないが、水位の下ることが心配である。その水位の問題は、これは別途な
考え方で解決いたしたいと
考えているのであります。
それから次に、私共は
流域変更した場合に二重
設備になりはせんかということを私共もいろいろ
考えて見たのであります。二重
設備になることについていろいろ
考えましたけれども、二重
設備になりはせんじやないか、こう私共
考えているのであります。ということは、奥
只見、
前沢、
田子倉、あの三ヶ所の
発電所を設ける
代りに、そこに
作つて、こちらに又作るなら二重
設備であるということになるかも知れませんが、その
発電所を止めて、そうしてその
発電所を
新潟縣側に持
つて來るというだけの相違でありますので、つまり奥
只見の
ダムを
作つてその水を
只見川に移すか、
信濃川に移すか、
発電所を
只見川へ作るか、
信濃川に作るかということでありまして、決して二重にはならない、こう
考えているのであります。又現に
発電所の数を
比較いたして見ましても、
只見川を階段的に
開発いたしますれば、
既設発電所を除きまして大体十二ヶ所の
発電所になるから、
新潟縣の方に
流域変更いたしましても、
発電所の数は同じく十二ヶ所ということで、決して二重
設備にはならん、こう
考えているのであります。ただ
水路だけが余計になる、こう
考えているのであります。これは階段的に
開発いたしましても若干の
水路は免かれません。併し
新潟縣の方は
水路が非常に長くありますので、
相当の延長になるのであります。この分だけが多くなるわけであります。併し
田子倉と奥
只見の間の
前沢の
ダムが、
新潟縣としてはそれだけ要らなくなるわけであります。
前沢の
ダムは御
承知の
通り約百四十メートルの大
堰堤であります。その
ダム一ヶ所だけ
新潟縣として要らなくなる、その
代りに
水路の
相当の延長が必要になる、こういうことであります。要するに必らずしも二重
設備となるのではない。こう私共
考えておるのであります。
それから、それじや
新潟縣の
ダムの
出力が
流域変更のために多くなるが少くなるかということでございます。この問題につきましては、先程も少し申上げたかと思うのでありますが、第一に流量が殖えるかと申しますことは、
破間川と
魚野川の流量が入
つて参りますので、これが殖えるのであります。それでこれは流量の点についてだけでありますが、
流域変更のために
既設の五ヶ所の
発電所が減ると申しましたが、これは減る。それからその他
流域変更によ
つて若干
出力が減る
部分もあります。そういう
部分を差引きいたしましても、尚且つ年間五億キロワット
アワー程度の
出力が殖える勘定になるのであります。それから
落差につきましても階段的に
開発をさせるよりも、
流域変更いたしますことによ
つて、利用
落差は階段的にするよりも
流域変更の方が利用
落差が大きいこう申上げ得ると思うのであります。いろいろな計計の方法はあるかと思いますが、私共の計算では少なくとも一番
下流におきまして、揚川の
発電所で
標高四一メートルあります。長岡の妙見
発電所が三五メートルあります。その間六メートル違います。それらを合算いたしまして、少くとも二十メートルか、三十メートル、或いは場合により細かに計算いたしますれば、四五メートルの
落差の相違が、利用水進でありますが、違
つて來るのではなかろうか、こう
考えております。このようにいたしまして流量が殖えるということと、利用水深が大きいということで、
電力の
出力、
出力は
流域変向の方が多くなるものと私共
考えておるのであります。
それから次に、私共が
流域変更を
考えました理由の
一つは、実際工事をやるのに便利であるという点であります。これは
模型なり、地図なりを御覧頂けばどなたにも直ぐお分り願えると思うのであります。私共の方で
考えておりまする四ヶ所の大
発電所のうち三ヶ所は鉄道に隣接しております。あとの一ヶ所の湯ノ谷の
発電所は
勾配七五分の一の縣道に接続しております。この延長約一五キロであります。從いまして
発電所の建設には非常に便利であるということは直ぐお分りになると思うのであります。奥
只見といたしましても、
田子倉といたしましても御存じの
通り非常に不便な所であります。そこに
発電所を作らずに便利な方に作
つた方がよくはないかと、こう私共は
考えておるわけであります。從いまして鉄道の建設ということが時節柄なかなか容易でありませんので、奥
只見、
田子倉といたしましても、最惡の場合は鉄道を建設しないで、何とか
ダムの建設をしたいものだということを我々
考えておるのであります。
発電所を作るということになると、どうしても鉄道を作らなければできないのであります。
発電所をあそこへ作らないとなると、何とか
ダムは、鉄道を建設できれば無論これに越したことはありませんが、いろんな事情でどうしてもできないということになれば、鉄道はなしに
ダムの建設をやりたいと、こういうふうに我々は
考えておるのであります。そういう鉄道建設のできない、それから
発電所の位置という点から私共
流域変更を
考えたのが
一つにあるのであります。殊にああいう雪の多い不便な土地でありますので、
発電所の維持、管理というような点を
考えますると、どうしても自信が持てないのであります。それからもう
一つ、私共が
新潟縣の
流域変更を
考えました
一つとしては、階段的に
開発して行く場合、
流域変更をした場合、
経済的な
関係、特に企業として考えた場合にどちらが有利であろうかということをいろいろ
考えて見たのであります。その場合に無論全部の
ダムなり、
発電所なりが完成いたしましたものについての
比較も、無論これは大事であるのであります。無論これはやらなければならないのでありますが、同時にその建設過程におきまする
経済、採算の
関係はどうであろうかということについていろいろ
考えて見たのであります。その場合に奥
只見、
田子倉の両発天所は
下流の
発電所全部を養
つておるのであります。
計画書を見て頂けば直ぐ分ります。從いまして奥
只見、
田子倉両
発電所ができてから
下流の
計画が全部できてしまうまでの間の不
経済と申しますか、金利負担と申しますか、これは非常に大きなものでありまして、全体としての採算が極めて困難になるのであります。無論奥
只見、
田子倉の
発電所もやる、
下流の
発電所も同所に実施する、そうして同時に完成するということになれば無論問題は違うのであります。そういうことが現在のこの情勢下にあ
つて、資金の点、資材の点、或いは特に輸送の点に、或いは技術の点にできるかできないかということをよくお
考え願いたいと、こう思うのであります。それで
流域変更によりますると、奥
只見、
田子倉の
発電所を止めまして、
新潟縣の方へ持
つて参りますと、これは直ちに
経済的な採算の取れる
電力が而も非常に
沢山出て参ると、こういうことが言えるのであります。ここに
一つの
比較を申上げますと、奥
只見、
田子倉の二つの
発電所を作りますと、最大の
出力が約六十一万キロであります。それから年間発生
電力量が九億八千万であります。これに要する工事費が二百八十八億であります。從いまして一キロワット当りの建設單價が二十九円三十銭であります。これに対しまして
流域変更をいたしますると、どうなるかと申しますると、奥
只見の
ダムと、それから私共のこつちに持
つて來て湯ノ谷の
発電所を作る。それから
田子倉の
ダムと我々の新潟の方の
発電所を作る。それを両方集めまして
小出まで持
つて來まして、
小出の
発電所を作る。その場合に最大
出力が八十三万キロであります。年間発生
電力量が三十億七千万キロワットアワーであります。これに要する建設工事費が四百四億円であります。
從つてキロワットアワー当りの建設單價は十三円二十銭にな
つております。これは
簡單な計算でありまして、無論これにはいろいろの調整を行わなければならんので、この
通りだとは申しませんけれども、即ち
新潟縣の方は
出力を
既設発電所の減少量、その他多少これを差引かなければなりませんが、少くとも
新潟縣に
流域変更をいたしますれば、半分
程度の建設單價になるということを申上げ得ると思うのであります。こういう
比較が絶体無二のものであるかどうかということは別問題であります。
一つの
比較案としてお聞取り願いたい。こう思うのであります。この
開発に関し、
水力の技術の点から、その他の点からいろいろ述べましたわけでありますが、こういう問題はいろいろな細かい、いろいろ多くの種類の問題がございますので、この
程度に止めまして、極く主なる点だけを述べまして、この
程度に止めたいと思います。
次に、
只見川の
開発につきましては、
河川の総合利用と申しますか、完全利用と申しますか、そういうふうな面からも十分
考えて見なければならん点もあるのであります。ただ出來さえすればよいというような
從來の
考え方では困ると思うのであります。と申しますることは、現在私共の方でや
つておる
信濃川の第三期発電大工事、これなども
下流の
灌漑用水にいろいろのよい面もあり惡い面もあるのでありますが、
影響を與えております。從いまして
河川の完全利用という立場から、電氣さえ出さればいいという
從來の
考え方をここで捨てなければならん。こう私共
考えておるのであります。そこでこの
流域変更によ
つて放水される水は、
新潟縣にと
つてどういう
影響を與えるだろうかということをいろいろ
考えて見ております。そういたしますると、
信濃川の沿岸の耕地の灌漑に非常に大きな
影響があるということが分
つたのであります。
信濃川流域の今申上げる灌漑の面積は約五万二千町歩ございます、このうちに現在水が不足で困る水さえ十分になれば非常に増産ができるという面が
相当ございます。それから現在濕田である。何で濕田であるかというと灌漑用方が絶えないものだから止むを得ず濕田である。こういうわけであります。水さえ何すれば乾田ができる。而も
從來全然できなか
つた二毛作、裏作ができるという所も
相当あるのであります。これによ
つてどのくらいの米が増産されるかと申しますると、大体四十三万石の米の増産ができる。こう申上げ得るのであります。而もこの外裏作によ
つて「じやがいも」が約二十八万トン。厖大な数字でありますが、二十八万トン
程度の「じやがいも」の増産ができる。又これはどこでや
つても同じでありますけれども、灌漑に関しまする排水機或いは用水機というような
電力が十分になればそういうものが十分フルに動ける、或いは誘蛾燈、御存じかと思いますが、誘蛾燈というのをこの頃盛んにや
つておりますが、誘蛾燈などにも
電力の供給ができれば、この点においても
相当できる。盛んに農業電化、農業改良というようなことでも、我々の計算によりますと、五十万石とか、百万石とか言
つておりますけれども、最も確実な計算は二十六万石の増産が期待できるであろう、こう
考えておるのであります。
ここで申上げたいと思いますのは、
只見川の水を階段的に
開発いたします場合に、水は今まで
通り流れておるわけでありますが、これを
流域変更したらどうなるかということにつきまして、
流域変更いたしましても、
下流にはさしたる大きな
影響がないと若しするならば、その
影響のない水が
新潟縣へ参りますと非常に大きな
影響があるということは、これは是非
考えて見なければならん問題だと、こう申上げたいのであります。
流域変更しても
福島縣並びに
新潟縣下流の方には大した
影響がない。その
影響のない方が
新潟縣の方に参りますと、四十三万石の増産になるということは、ただ
電力の問題だけを
考えて行けばよいというわけにはいかん、
電力と食糧ということを同時に考えて見る方がよいのではなかろうか、こう私共
考えるのであります。それで四十三万石の米を金に換算いたしますと、どのぐらいになるかと申しますと、十二億五千万円
程度の金であります。
電力は御
承知の
通り新らしくできるのが約五十億キロワット
アワー程度でありますが、これを金に換算いたしますると、約五十何億、これはいろいろの計算方法がありましようから、しつかりしたことは申上げられませんけれども、約五十八億か、九億
程度の金になると思うのであります。併しこの米の方だけを取上げて見ましても、十二億五千万円の生産が殖えるということを特に御記憶願いたいと、こう思うのであります。
それから最後に
一つ述べさして頂きたいと思いますのは、起きた電氣をどうするかという問題であります。これは無論國全体の
電力の需給政策から
考えて決定される問題だと思います。併し又一面そんなに遠くまで持
つて行
つて使うことはないじやないか、そんなに高い電氣は困るじやないか。それよりも近くで工業を起して使
つた方がいいじやないかということも一應は
考え得ると思うのであります。そういう面で私共産業の
開発計画というようなものを
考えて見ておるのであります。
一つは、現在
新潟縣には、施設は全部あるけれども、電氣がないために遊んでおるという大
工場が
相当あります。例えて申しますれば、
昭和電工、或いは
日本軽金、或いは信越化学、
日本曹達、
日本セルロイド、
日本鋼管というような重要
工場が
相当ありますが、これらがいずれも
電力が不足なために遊んでおる、遊休
状態にある。こういうことを申上げ得るのであります。これらの
工場がどれだけの電氣を消化し得るかということを調べて見ますと、大体現在は昨年の
調査によりますと、約十億
程度の
電力しか供給されておらんのでありますが、これは主なる十五
工場、その他の中小の
程度のものは除外してありますが、大きな十五
工場について
調査をいたして見ますと、昨年度の実績が約十五億
程度の
電力供給にな
つておりますが、どのくらい不足であるかと申しますと、十五億キロワットアワーというものが不足ということが一應
考えられるのであります。從いまして十五億キロワットアワーの
電力を供給いたしますと、何ら施設を増すことなく非常な生産量が増す、これを是非取上げて行かなければならんのじやないか、こう私共
考えるのであります。
第二の問題といたしまして、御
承知の
通り新潟縣は米産縣でございます。從いまして肥料工業の振興ということに格別の関心を持
つておるわけであります、從いましてこれらの
電力の一部を今後の新らしい肥料工業に使わして貰えるならば非常にいいじやなかろうか、こう
考えるのであります。これも非常に大きな問題でありまして、特に肥料工業におきましては、御
承知の
通り硫酸が
相当大きな役割を果しておる。その硫酸が
日本では非常に少い。從いましてこの硫酸に置換えて
電力をいろいろな途中の操作の過程はありますけれども、電氣に置換えて行くということが若しできるならば、これは一石二鳥と申してもいいのではなかろうか、こう思うのであります。そういうふうな考慮も加えまして、肥料工業の振興ということを私共
考えておるのであります。又御
承知の
通りに、
新潟縣には石灰石が
相当良質のものが多量に出るのであります。從いましてこの
電力と石灰岩によりまして、カーバイド工業並びに誘導工業を振興いたすことが最も適当な
考え方でなかろうか。こう
考えておるのであります。それによりまして最近はやりのビニロン工業とい
つたようなものが当然考えられて参る。無論この場合炭素原といたしまして、石炭ということが当然
考えられるのであります。石炭のことにつきましては
皆さんよく御
承知の
通り、佛印のホンゲイ炭というようなものが、これは東洋市場におきまして
日本を最大の顧客としておる
関係上、
日本に持
つて來ることを向うも希望しておるのではないか。非常に豊富な良質なものであります。この
只見川の豊富な、低廉な
電力と、そうして良質の多量にある石灰岩、そうして佛印のホンゲイの石炭というものを結付けて見た場合のカーバイド工業の有望なことは想像に余りある、こう思うのであります。從いまして
資源の少い
日本におきまして、輸出の振興というようなことにつきましても形を変えて輸出をすることができる。つまり電氣と石灰岩からできたものを輸出するということは、結局電氣を輸出することにもなるわけであります。或いは又石灰岩を輸出するということにもなるわけであります。或いは又、更に乱暴な表現でありますけれども、電氣の元になります雨を輸出する、而も非常に災害に招いております洪水を輸出するというようなことにも、まあ乱暴に言えば言えると思うのであります。まあそうい
つた意味合におきまして、是非この
電力と工業とい
つたものの
関連性を強く取上げたい、取上げることが大切であると私共信じておるのであります。時間が長くなりますので、あとはいろいろ御
質問があればお答え申上げたいと思いますが、一番最後に
調査経過について報告するようにということでありましたから、
調査のことを一言附加えまして私の説明を終りたいと思うのであります。
調査につきましては、非常に不十分であると申上げる外ないのであります。と申しますことは、大体これに着手いたしましたのが二十二年度でありまして、從いまして二十二年度、三年度、本年度と非常に日が浅いのであります。又
調査予算の点につきましても、國費予算が
相当計上されてお
つた模樣でありまするけれども、不幸にして
新潟縣には
調査予算を頂けなか
つた。從いまして全部純縣費、縣費だけを以て処理しなければならなか
つたというようなことで、
調査が甚だ不十分であ
つたということを申上げなければならんことを大変遺憾に思うのであります。然らばどういう
程度の
調査をしたかと申しますると、基本的な面について、例えば平面にいたしますると、
ダムの予定箇所でありますとか、或いは
発電所の予定箇所でありまするとかいうような面につきまして、平面測量を必要な分だけや
つております。それから縦断、横断につきましても、
水路の、或いは隊道の、或いは
発電所の鉄管等重要な基本的な面の、それが違えば全体の
計画が崩れるとい
つた面の縦断、横断の測量は全部や
つております。又地質
調査につきましても、
発電所の箇所、或いは隊道になりまする
水路のルート、或いは
ダムの箇所とい
つたような、どうしてもここだけは必要だという面の地質
調査は全部や
つております。從いまして
調査は不完全、不十分ではありまするけれども、基本的な、どうしてもこれだけは必要だという最小限度の
調査だけは全部いたしておるつもりでおります。その点を附加えさして頂きたいと思います。以上を以ちまして……