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1949-09-07 第5回国会 参議院 建設委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年九月七日(水曜日)    午前十時二十分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○建設事業一般並びに國土その他諸計  面に関する調査の件(只見川水系開  発に関する件につき証人証言あ  り)   —————————————
  2. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) 只今より委員会を開会いたします。  先ず、議員派遣につきまして、事後承認をお願いたしたいと思います。それは、島津忠彦君が八月二十七日からジュデイス台風被害視察のため鹿兒島縣へ出張いたしております。この点について御承認を願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   —————————————
  3. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) それでは次に、本日出頭を求めておりました証人が変更いたしましたので、改めて御承認をお願いいたします。それは新潟縣知事岡田正平氏の代りに同縣土木部長五十嵐眞作氏、福島縣知事石原幹一郎氏の代りに、同縣土木部長井関正雄氏をそれぞれ証人として出頭を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) 御異議ないと認めます。それではそのように手続をいたさせます。   —————————————
  5. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) 次に、当委員会の今後の日程表をお手許に配付させてありますが、これにつき何か御意見はございませんか。
  6. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 災害対策の件につきまして、政府側として中央氣象台予報部長天氣相談所長及びキティ台風当番技師をそれぞれ追加して呼んで頂きたいのですが……
  7. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) 只今の兼岩さんの御要求につきまして、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) 御異議ないものと認めます。
  9. 赤木正雄

    赤木正雄君 私はやはり災害対策の件について、安本から公共事業課長に來て頂きたいと思います。
  10. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) それでは赤木さんの方要求のように、安本側からも來て頂くことにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   —————————————
  11. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) それでは成規手続により宣誓をして頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 五十嵐眞作    宣 誓 書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 井関 正雄
  12. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) 本日の議題は、尾瀬川の資源只見川開発問題に関することでございます。河川開発は非常に重要性がございますので、特に只見川関係のある両縣の土木部長の出席を求めまして、そうして只見川開発に関しまして、縣としての計画及びその方策又或いは企業計画、若しくは行政上の処理、状況、それから沿岸居住者のいろいろな状態、そういうふうな問題について、できるだけ縣の考えておられる状態、それから今までにどういう調査をし、どういう方式を進めておられるか、そういうことについて証言を求めたいと思います。それでは井関部長にお願いいたします。
  13. 井関正雄

    証人井関正雄君) それでは私から只今までの只見川開発に関する経過なり、結果につきまして、私の知つておる範囲内におきまして申上げます。終戰後、朝鮮、台湾或いは樺太等資源地帶を失いました日本といたしましては、内地に残された未開発地帶資源開発するということが日本再建のために培めて緊要なことは申すまでもないことでありまして、福島縣といたしましても、この点に注目いたしまして、福島縣としてのいわゆる未開発地帶である奧会津開発につきまして調査を進めることになつたのであります。即ち昭和二十一年だつたと思いますが、南会津開発調査委員会というものを縣に設けまして、それぞれの專門家委員に選定して、先ずどういう資源があるかということの調査を進めたのであります。即ち林産資源或いは地下資源水力資源等相当開発されずに残つておりますので、これらの賦存状況調査するために各專門家を委嘱いたしまして調査を進めたのでありますが、その結果大体分つたことは、林産資源としましては約八千八百万石の材積がある、又地下資源におきましては金、銀、銅、鉄、鉛、亞鉛、水鉛その他石膏等重要な地下資源が埋藏されておるということも分つたのであります。特に重要なことは、只見川水力資源日本に残された極めて重要な資源であるということが分つたのであります。こういうふうに奧会津には林産資源鉱産資源水力資産等が極めて重要な資源があるにも拘わらず、交通が不便である。まだこれが開発されていないという点から、一刻も早くこれを開発しなければならんという、そういう観点からいろいろ方策を研究しておつたのでありますが、たまたまこれに関連しまして、國家におきましても日本経済再建のために経済再建五ケ年計画というものを計画され、その一環として水力調査を進められておつたのであります。即ち安本中心になつて河川総合開発調査会というものを作り、尾瀬只見水力資源開発について調査されたのでありますが、これとタイアップしまして、福島縣もこの調査に当つております日発と密なる関連をとつて調査を進めて参つたのであります。この奧会津開発は、只今申上げましたように、いろいろな資源がありますが、中にも最も重要なものは、この水力資源だと考えます。日本経済を將來再建して行きます上において如何なる方式が必要かということは、いろいろ議論があると思いますけれども、先ず不足な水力資源開発して行くということが最も大切なことであることは申すまでもないのであります。即ち奧会津開発は先ず只見川の正しい開発方式によつて始められなければならないという結論になつたと私は信じておるのであります。いろいろな開発のあれがありますけれども、本日の議題も特に只見川水系開発ということでありますので、その点につきまして、もう少し詳しく申述べたいと思います。  然らば只見川というものはどういう性質の川であるかということを一言申上げたいと思います。御承知通り只見川標高一千六百メートルの尾瀬沼に源を発しまして、更に尾瀬原通り暫らく新潟縣福島縣の縣界を流れまして、南会津郡、大沼郡を通り、更に会津盆地に出まして、もろもろの支川を集め、猪苗代湖から流れる日橋川を合せ、更に大川を合せ、阿賀野川となり、新潟縣に入る川でございます。流域面積約八千四百平方キロ、流路延長百八キロばかりだと思いますが、日本に残された水力資源河川としましては最も有望な一つであると考えるのであります。なぜかと申しますと、先ず第一に考えられますのは、標高の高い水源地帶堰堤を作るのに非常に好適地があるということが一つの特長だろうと思います。その一つ尾瀬原であります。それから更に下つて奧只見前沢田子倉等堰堤を作るのに好適な地点があるのであります。未開発河川としまして、まだ木曽川とか或いは熊野川等いろいろ残つておるとは思いますが、堰堤貯水池を作るのに恰好な河川はそう沢山はあるとは考えられないのであります。堰堤を作るには地質、地形或いは補償しなければならない移轉物資とか、或いはいろいろな点から制限されておるのでありますが、この只見川につきましては、尾瀬原につきましては勿論いろいろな議論はあると思います。併しながら標高一千六百メートルの大高原に、僅か六十メートルくらいな堰堤によつて二億五千万トンの水を貯えるような貯水池を作り得るということは非常な有利な地点ではないかと考えます。尾瀬原貯水池溜つた一トンの水は、下流までの間に約一万キロの水力開発する能力があるのであります。極めて有利な地点であります。尚その次の銀山平に百メートルの堰堤を作ると五億トン、田子倉に作ると二億六千三百万トンというすばらしい貯水池ができるのでありまして、これらの貯水池群の大体の有効貯水量を併せますと、現在使つております猪苗代湖、田沢湖或いは十和田湖の有効貯水の約二倍の貯水池を作ることができるのであります。日本電力事情は私から申すまでもなく、その水力設備として約六百四十万キロワツトぐらいの設備があるということを聞いております。併しながら豊水時におきまして一時に出力のありますのは約四百七十万キロワツトでありまして、渇水期になりますと、これは非常に減つて調整池或いは貯水池等の補助を借りても二百九十万キロワツトしか出ない。相当設備はあるが、渇水期電力は非常に不足しまして、そのためにいろいろの産業或いは文化生活、すべての点に支障を來すことは皆さん承知通りであります。從つて日本の將來の電力計画としましては、この渇水期電力補つて、そうしてできるだけフラツトな電力を作る。いわゆる火力発電に代る水力補充電力開発することによつて日本電力事情は非常に改善されるということは、皆さんすでによく御存じの通りと思います。從つて今後の水力開発方式としましては堰堤による大きな貯水池作つて、冬期渇水補給電力として開発する方式國家的に見て最も必要なことと考えるのであります。そういう地点はそう沢山はないのでありますが、幸いにして只見川はその残された最も有望な地点考えるのであります。そういう観点から、日発におきましても、この大貯水池群を作る開発計画を立てて、現在只見川下流にあります五つの発電所の外に更に十二の発電所を新設し、大きい堰堤を約四つ作ることによつて冬季渇水補給電力を主とした発電所を作るという計画を立てております。福島縣といたしましては、この計画に全面的に賛成しまして、これが実現の一日も速かならんことを期しておる次第であります。これに対しまして、いわゆる新潟縣といたしましては、この奧只見及び田子倉の一部の水量を、新潟縣に増域変更して発電計画をするという計画を立てて、河川総合計画委員会新潟縣案というものを提案して只今審議中でございますが、これに対する比較ということは特に申上げたくないと思います。ただ只今申上げましたように、私達の信ずるところでは飽くまでもこの残された只見川の特色のある地点只見川というものの特異性を発揮して、最もこの河川に適合した開発方式をやらなければならないということは、どこまでも私達の信ずるところでありまして、このテネシーヴァレーが開発される場合に、一番下流ケンタッキーダムから上流のノーリスダムに至るまで九つの堰堤によつて総合開発をやつた。ああいう方式只見川に適合した方式ではないかと信じて疑わないのであります。尚縣がこれに対する行政措置でございますが、企業としましては、只今のところでは特に福島縣としてこれを縣営でやろうとか、或いはどういう形でやろうというようなことは特に考えておりません。ただこれはまだ縣としての態度と申上げていいかどうか分りませんが、必ずしも從來のように日発だけがこれを開発しなければならない、日発開発担当者になるかどうかということにつきましては、只今縣としても特に私から申上げかねると思います。それはいろいろな議論があるようでございます。これを國業資本を導入し、或いは民間の資本も入れた一つ開発の構思というもので開発をやつた方がいいじやないか、こういう議論があるようでございます。果してこれをどういうふうにやつたらいいかということに対して、縣としてもはつきりした、まだこれでなければならないということは決まつておりません。それから日発只今つておることに対する縣としての行政措置と申しますと、まだ水利権出願等手続日発はやつておりませんので、特に措置はしてございません。ただ強く申上げたいことは、下流の方に既設発電所が五ケ所ございます。それからそれを灌漑用水に使うと、下流に対する水の設定された権利が決まつておるものが相当ありますので、例えば一部分でもこれを新潟縣流域変更して水を持つて行くというようなことに対しては、縣会なり、縣民なりは承知できないものと私は信じております。その点は縣としての態度として申上げていいのではないかと思います。それから縣民のこれに対する協力態度というような御質問つたと思いますが、勿論堰堤によつて移轉しなければならない民家も相当ありますが、私の承知しておる限りにおいては、快くこれに協力することになつて承知しております。一日も速かに開発して、日本経済産業に寄與することを希望しております。尚できました電力を縣内に最も有効に使用することにつきましても、縣としましては、只今の現在あります工場の拡張或いは新らしく合成繊維工場融資等について万全の措置を講じたいと考えております。
  14. 原口忠次郎

    理事原口忠次君) ちよつとお諮りいたします。証人に対する質問を、証人全部の御説明を聞いた上にしたいと思いますが、お差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 原口忠次郎

    理事原口忠次郎君) それでは五十嵐部長
  16. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) それでは新潟縣といたしまして持つております、いわゆる只見川開発に関する新潟縣の案につきまして簡單に御説明申上げたいと思います。  只見川の問題につきましては、縣といたしましても、古くからその資源開発という意味で関心を持つてつたのであります。と申しますることは、只見川と隣接いたしまして、信濃川支川であります魚野川魚野川支川であります破間川という川がありますが、これらの水力開発ということが始終問題になつてつたのであります。破間川單独開発経済的に困難であるという意味で、只見川との結付きということが古くから新潟縣水力開発問題が起きる度ごとに取上げられておつたのであります。もう一つ、最近は福島県の奧会津総合開発というのと軌を一にいたしまして、新潟縣縣境府近のいわゆる銀山平、昔、河村端軒の時代でありますが、銀が出まして非常に殷賑を極めた銀山平地区の総合開発ということで、地下資源山林資源水利資源というものを中心総合開発計画を縣としていろいろ調査をして取纏めておつたのであります。そんなことで只見川新潟縣というものの極めて密接な関連性は今申上げた通りであります。    〔理事原口忠次郎君退席、委員長着席〕  それで昭和二十二年の春、知事選挙によりまして選ばれました現在の知事が、同年の秋に銀山平地区の踏査をされまして、そうしてその総合開発調査に着出したわけでございます。たまたま越えて二十三年の一月に、当時の商工省主催尾瀬只見総合開発委員会というものが開催されまして、我々もそこに出席いたしたのでありまするが、その際に初めて新潟縣として持つておりまする只見川開発計画案を提案いたしたのであります。勿論そのときも御説明申上げたと思うのであります。決して新潟縣の案が一番いいのだ、新潟縣の案でなければならんのだという意味ではございませんので、すでに日発では古くから調査して立派な案を持つておられるのでありますけれども、この只見川の重要な資源開発するには、いろいろな考え方があると思うのでありますが、新潟縣としては、こういう案を持つておりますと、これを是非檢討して頂きたい、そうして只見川について最良の案を決定して頂きたい、これを決定して頂いた曉には、新潟縣としては少しも異議を挾みませんということを、その後も繰返してたびたび機会あるごとに申上げているのでありまして、そういう趣旨で提案いたしておつたのであります。一應新潟縣の案が表面に出るまでの経緯を簡單に申上げたつもりであります。  次に、計画考え方と申しますか、根本的な立場の趣旨につきまして御説明申上げたいと思います。只見川河川としての性格につきましては、先程井関部長からお話がありましたので省略いたしたいと思います。御承知通り只見川水源地区は非常に水が豊富である。雪、雨の関係上非常に水が豊富である。水力資源としての最も大切である條件としての一つを備えているわけであります。それから非常に落差が大きいというようなわけでございます。それで而もこの模型を見て頂くと直ぐ分ると思うのでありますが、只見川の極く近くを信濃川支川が流れております。上越線一つ小出という駅のあるのを御承知かと思いますが、奧只見小出の両方を比較して見ますと、距離が僅かに二十六キロしか離れておらないにも拘わりませず、落差が実に五百メートル余に達する、模型を御覽頂けば直ぐそれをお氣付き願えるかと思うのであります。それで新潟縣といたしましては、この豊富な水量と、この大きな落差を利用して一拠に新潟縣流域変更と申しますか、ということが最も有利な、最も合理的なものであろうと、こう考えておるのであります。これが新潟縣の立案の第一の趣旨であります。そうして更に先程申上げましたように、單独では開発の價値が少い。魚野川破間川というものと結付けて考えて見ますとき、この流域変更によつて、これらの河川の利用が更に促進される。從いましてそこに非常に有利な点が生まれて來るのではなかろうかと、こう思うのであります。この際一言附加えて置きたいと思いますのは、只見川開発につきまして、これを階級的に開発することが、アメリカにおけるテネシー開発と同じである。又テネシーと同じなダム式だという話がよく出るのであります。私共も一應そのように考えておるのであります。併し一面よくよく考えて見ますと、必ずしもテネシー比較することが適当であるかどうかということについて檢討を要するものではなかろうかと、こう思うのであります。と申しますることは、テネシーは御承知通り河川勾配が約六千五百分の一であります。一番下流ケンタッキーダムから頂上、上流ダムまで約一千キロであります。六千五百分の一の勾配でありまして、非常に勾配の緩かな河川でありまして、その一千キロの間に九ケ所のダムが設けられております。ところが只見川におきましては、平均勾配が三千二百分の一であります。延長百八十キロの長さに十六ケ所のダムを作ろうというのであります。だから川そのものが本質的に似て非なるものがあろうと、こう思うのであります。從いまして緩流河川勾配の緩漫な河川におきましては、同じダムを作りましても非常に水量が多い。キャパシティが非常に多い。例えて申しますならば、ケンタッキーダムは高さ六十何メートルというダムであります。貯水量は何十億という程度貯水量を持つたダムであります。奧只見は高さ百五十メートルのダムでありまして、僅かに五億五千万トンの貯水量しか持つていない。まるで比較にならんと思うのであります。從いましてこの流量と落差を完全利用いたしますれば、そこに若干の無理を伴うのではなかろうか。完全に利用いたしますには、間隙のないようにダム沢山作る、或いはダムが少くなれば、それだけ高さが非常に大きくなる。日発の案を見ますると、上流から下流まで既設ダム五ケ所を入れまして十六ケ所のダムがあるのでありまして、その計画を拜見させて頂きますと、上流奧只見田子倉ダムは、これは確かにさつき申上げました極く僅かでありますけれども、貯水池の役目を持つたダムであると言い得るのであります。その他のダムはどうかと申しますと、その他のダムは悉くそう大きな貯水能力を持つておりません。むしろ調整池、即ち一日分だけの水を貯めて、これを朝とか、晩とか電力の要るときに一遍に出す。つまり一日二十四時間のうち八時間に全部これを使つて水を調整しなければならん。その調整のための一日分の貯水能力だけしか持つていない。いわばむしろ落差を取るだけのダムである。ヘッド・ダムである。こう言い得るのではないかと思うのであります。特に田子倉奧只見の間にあります前沢ダム、これはその中間に間隙ができるものでありますから、その間隙を除くため完全なる落差を取るためのダムであると言い得るのではなかろうかと思うのであります。從いまして結論的に申しますならば、只見川を段階式的に開発することが必ずしもダム式であるとは言い得ない。而もテネシー・ヴァレーの開発と同じものだというけれども、似て非なるものであると考えられるのであります。これに対しまして、新潟縣の案をよく水路式であるということを申されるのであります。成る程長大なる水路を持つております。水路の面だけから申しますると、水路式であるというようにお考えになるかも知れませんけれども、併し水の使い方奧只見田子倉とこの二つ貯水池と結付いておるのであります。從いまして單なる水路式ではありませんで、ダム水路式を併用する、いわゆる両者併用式とでも申していいのではなかろうかと思うのであります。ダムの問題、それから水の使い方の問題を申上げたつもりでありますが、次に、それでは新潟縣の案で行くと、水を新潟縣の方に取るために、下流にどういう影響を及ぼすかということも私共考えて見なければならんと思うのであります。それにつきまして考えられる問題の一つは、下流発電所、現在五ケ所ございますが、それにどういう影響を與えるだろうということであります。それから問題の二つは、灌漑用水に使われておる面に対しまして、どういう影響があるか、これが福島縣は御承知通り溪谷地帶を水が流れますので大した影響はないと思いますが、これが阿賀野川沿岸の耕地に関係するのでありまして、どういう影響があるだろうかということを考えなければならんと思うのであります。それで既設発電所につきましては無論上流から水を取りますわけで、出力減少することはこれは免れ得ないと思うのであります。併し現在の五ケ所の水力発電所從來阿賀野川の水を完全に消化しておつたわけではないのでありまして、それがために奧只見田子倉は今度の全体計画ができたわけでありまして、これは既設五ケ所の発電所從來豊水期におきましては相当の水を捨てておつたのであります。從いまして計算いたして見ますると、約二億キロワット・アワー程度減少になると言われておりますけれども、或いは從來捨てておつたということを考えの中に入れますると、もう少し少くなるのじやないかと考えられるのであります。それから折角ある既設発電所を成るべく殺したくないと考えますので、それに対してどうしたらいいだろうかと我々も一應考えて見たのであります。その一つといたしまして、只見川支川伊南川という川があります。伊南川水力開発ということを計画いたしまして、これによつて電氣を出すと共に、その調節された水で下流の五ケ所の既設発電所の被害を成るべく少くするようにしたい、こういうふうに考えておるのであります。これによりますると、先程申しました二億二千万が大体一億四千万程度になる、非常に弊害が少くなるのであります。尚阿賀野川下流水量の問題につきましては、一面において阿賀野川沿線猪苗代湖がございます。これの操作によりまして、下流の水の調節が或る程度できるのじやなかろうかと期待しておるのであります。もう一つは、沼沢沼の発電計画があるのであります。これも既設発電所の問題に相当役立つのではなかろうかと期待しておるのであります。いずれにいたしましても相当出力減少は免れ得ないと思つておるのであります。  次に、灌漑用水に対してはどういう影響があるだろうかということにつきまして申述べて見たいと思います。現在阿賀野川集水面積は大体七千キロと言われておるのであります。新潟縣の方へ流域を変更しようという部分の面積は大体その一割程度であろうと思うのであります。それで元の逓信省調査資料によるのでありますが、上流の水を取ろうという区域の渇水時における平方キロ当りの量を大体〇・〇二三トンとし、それから下流に水を使うところの渇水量は、これも逓信省調査でありますが、〇・〇一八トン、上流の方を余計にしてあります。取る方を余計にして使う方を少なくしております。これで計算いたしますると、阿賀野川流域における年間の一番の渇水は約一二六トンになつております。それが上流流域変更によつて水がどのくらい減るかと申しますと、十六トンであります。一番水の少ないときであります。一二六トンの中から一六トンの水を取ることになるわけであります。だから残りますものが約一一〇トンであります。阿賀野川灌漑用水は大体どのくらい使うかと申しますと、五五トンであります。でありまするから、上流流域変更によつて水を取つた阿賀野川灌漑用水が不足になるということはないと、こう私共考えているのであります。ただ水位の低下ということが考えられているのであります。量の不足というよりも、むしろ水位の低下ということが心配だと考えているのであります。これにつきましては、現在すでに阿賀野川は水位が毎年低下しつつあるのでありまして、只見川開発と否とに拘わらず阿賀野川の水位は順次毎年低下しつつある、こう申上げていいと思うのであります。從いましてこの水位低下の問題は別途に何らかの解決方策考えなければならん、こう思つているのであります。只見川の水を上流で取つたから特に水位が下るということはないのであります。量の問題は大したことはないが、水位の下ることが心配である。その水位の問題は、これは別途な考え方で解決いたしたいと考えているのであります。  それから次に、私共は流域変更した場合に二重設備になりはせんかということを私共もいろいろ考えて見たのであります。二重設備になることについていろいろ考えましたけれども、二重設備になりはせんじやないか、こう私共考えているのであります。ということは、奥只見前沢田子倉、あの三ヶ所の発電所を設ける代りに、そこに作つて、こちらに又作るなら二重設備であるということになるかも知れませんが、その発電所を止めて、そうしてその発電所新潟縣側に持つて來るというだけの相違でありますので、つまり奥只見ダム作つてその水を只見川に移すか、信濃川に移すか、発電所只見川へ作るか、信濃川に作るかということでありまして、決して二重にはならない、こう考えているのであります。又現に発電所の数を比較いたして見ましても、只見川を階段的に開発いたしますれば、既設発電所を除きまして大体十二ヶ所の発電所になるから、新潟縣の方に流域変更いたしましても、発電所の数は同じく十二ヶ所ということで、決して二重設備にはならん、こう考えているのであります。ただ水路だけが余計になる、こう考えているのであります。これは階段的に開発いたしましても若干の水路は免かれません。併し新潟縣の方は水路が非常に長くありますので、相当の延長になるのであります。この分だけが多くなるわけであります。併し田子倉と奥只見の間の前沢ダムが、新潟縣としてはそれだけ要らなくなるわけであります。前沢ダムは御承知通り約百四十メートルの大堰堤であります。そのダム一ヶ所だけ新潟縣として要らなくなる、その代り水路相当の延長が必要になる、こういうことであります。要するに必らずしも二重設備となるのではない。こう私共考えておるのであります。  それから、それじや新潟縣ダム出力流域変更のために多くなるが少くなるかということでございます。この問題につきましては、先程も少し申上げたかと思うのでありますが、第一に流量が殖えるかと申しますことは、破間川魚野川の流量が入つて参りますので、これが殖えるのであります。それでこれは流量の点についてだけでありますが、流域変更のために既設の五ヶ所の発電所が減ると申しましたが、これは減る。それからその他流域変更によつて若干出力が減る部分もあります。そういう部分を差引きいたしましても、尚且つ年間五億キロワットアワー程度出力が殖える勘定になるのであります。それから落差につきましても階段的に開発をさせるよりも、流域変更いたしますことによつて、利用落差は階段的にするよりも流域変更の方が利用落差が大きいこう申上げ得ると思うのであります。いろいろな計計の方法はあるかと思いますが、私共の計算では少なくとも一番下流におきまして、揚川の発電所標高四一メートルあります。長岡の妙見発電所が三五メートルあります。その間六メートル違います。それらを合算いたしまして、少くとも二十メートルか、三十メートル、或いは場合により細かに計算いたしますれば、四五メートルの落差の相違が、利用水進でありますが、違つて來るのではなかろうか、こう考えております。このようにいたしまして流量が殖えるということと、利用水深が大きいということで、電力出力出力流域変向の方が多くなるものと私共考えておるのであります。  それから次に、私共が流域変更考えました理由の一つは、実際工事をやるのに便利であるという点であります。これは模型なり、地図なりを御覧頂けばどなたにも直ぐお分り願えると思うのであります。私共の方で考えておりまする四ヶ所の大発電所のうち三ヶ所は鉄道に隣接しております。あとの一ヶ所の湯ノ谷の発電所勾配七五分の一の縣道に接続しております。この延長約一五キロであります。從いまして発電所の建設には非常に便利であるということは直ぐお分りになると思うのであります。奥只見といたしましても、田子倉といたしましても御存じの通り非常に不便な所であります。そこに発電所を作らずに便利な方に作つた方がよくはないかと、こう私共は考えておるわけであります。從いまして鉄道の建設ということが時節柄なかなか容易でありませんので、奥只見田子倉といたしましても、最惡の場合は鉄道を建設しないで、何とかダムの建設をしたいものだということを我々考えておるのであります。発電所を作るということになると、どうしても鉄道を作らなければできないのであります。発電所をあそこへ作らないとなると、何とかダムは、鉄道を建設できれば無論これに越したことはありませんが、いろんな事情でどうしてもできないということになれば、鉄道はなしにダムの建設をやりたいと、こういうふうに我々は考えておるのであります。そういう鉄道建設のできない、それから発電所の位置という点から私共流域変更考えたのが一つにあるのであります。殊にああいう雪の多い不便な土地でありますので、発電所の維持、管理というような点を考えますると、どうしても自信が持てないのであります。それからもう一つ、私共が新潟縣流域変更考えました一つとしては、階段的に開発して行く場合、流域変更をした場合、経済的な関係、特に企業として考えた場合にどちらが有利であろうかということをいろいろ考えて見たのであります。その場合に無論全部のダムなり、発電所なりが完成いたしましたものについての比較も、無論これは大事であるのであります。無論これはやらなければならないのでありますが、同時にその建設過程におきまする経済、採算の関係はどうであろうかということについていろいろ考えて見たのであります。その場合に奥只見田子倉の両発天所は下流発電所全部を養つておるのであります。計画書を見て頂けば直ぐ分ります。從いまして奥只見田子倉発電所ができてから下流計画が全部できてしまうまでの間の不経済と申しますか、金利負担と申しますか、これは非常に大きなものでありまして、全体としての採算が極めて困難になるのであります。無論奥只見田子倉発電所もやる、下流発電所も同所に実施する、そうして同時に完成するということになれば無論問題は違うのであります。そういうことが現在のこの情勢下にあつて、資金の点、資材の点、或いは特に輸送の点に、或いは技術の点にできるかできないかということをよくお考え願いたいと、こう思うのであります。それで流域変更によりますると、奥只見田子倉発電所を止めまして、新潟縣の方へ持つて参りますと、これは直ちに経済的な採算の取れる電力が而も非常に沢山出て参ると、こういうことが言えるのであります。ここに一つ比較を申上げますと、奥只見田子倉二つ発電所を作りますと、最大の出力が約六十一万キロであります。それから年間発生電力量が九億八千万であります。これに要する工事費が二百八十八億であります。從いまして一キロワット当りの建設單價が二十九円三十銭であります。これに対しまして流域変更をいたしますると、どうなるかと申しますると、奥只見ダムと、それから私共のこつちに持つて來て湯ノ谷の発電所を作る。それから田子倉ダムと我々の新潟の方の発電所を作る。それを両方集めまして小出まで持つて來まして、小出発電所を作る。その場合に最大出力が八十三万キロであります。年間発生電力量が三十億七千万キロワットアワーであります。これに要する建設工事費が四百四億円であります。從つてキロワットアワー当りの建設單價は十三円二十銭になつております。これは簡單な計算でありまして、無論これにはいろいろの調整を行わなければならんので、この通りだとは申しませんけれども、即ち新潟縣の方は出力既設発電所減少量、その他多少これを差引かなければなりませんが、少くとも新潟縣流域変更をいたしますれば、半分程度の建設單價になるということを申上げ得ると思うのであります。こういう比較が絶体無二のものであるかどうかということは別問題であります。一つ比較案としてお聞取り願いたい。こう思うのであります。この開発に関し、水力の技術の点から、その他の点からいろいろ述べましたわけでありますが、こういう問題はいろいろな細かい、いろいろ多くの種類の問題がございますので、この程度に止めまして、極く主なる点だけを述べまして、この程度に止めたいと思います。  次に、只見川開発につきましては、河川の総合利用と申しますか、完全利用と申しますか、そういうふうな面からも十分考えて見なければならん点もあるのであります。ただ出來さえすればよいというような從來考え方では困ると思うのであります。と申しますることは、現在私共の方でやつておる信濃川の第三期発電大工事、これなども下流灌漑用水にいろいろのよい面もあり惡い面もあるのでありますが、影響を與えております。從いまして河川の完全利用という立場から、電氣さえ出さればいいという從來考え方をここで捨てなければならん。こう私共考えておるのであります。そこでこの流域変更によつて放水される水は、新潟縣にとつてどういう影響を與えるだろうかということをいろいろ考えて見ております。そういたしますると、信濃川の沿岸の耕地の灌漑に非常に大きな影響があるということが分つたのであります。信濃川流域の今申上げる灌漑の面積は約五万二千町歩ございます、このうちに現在水が不足で困る水さえ十分になれば非常に増産ができるという面が相当ございます。それから現在濕田である。何で濕田であるかというと灌漑用方が絶えないものだから止むを得ず濕田である。こういうわけであります。水さえ何すれば乾田ができる。而も從來全然できなかつた二毛作、裏作ができるという所も相当あるのであります。これによつてどのくらいの米が増産されるかと申しますると、大体四十三万石の米の増産ができる。こう申上げ得るのであります。而もこの外裏作によつて「じやがいも」が約二十八万トン。厖大な数字でありますが、二十八万トン程度の「じやがいも」の増産ができる。又これはどこでやつても同じでありますけれども、灌漑に関しまする排水機或いは用水機というような電力が十分になればそういうものが十分フルに動ける、或いは誘蛾燈、御存じかと思いますが、誘蛾燈というのをこの頃盛んにやつておりますが、誘蛾燈などにも電力の供給ができれば、この点においても相当できる。盛んに農業電化、農業改良というようなことでも、我々の計算によりますと、五十万石とか、百万石とか言つておりますけれども、最も確実な計算は二十六万石の増産が期待できるであろう、こう考えておるのであります。  ここで申上げたいと思いますのは、只見川の水を階段的に開発いたします場合に、水は今まで通り流れておるわけでありますが、これを流域変更したらどうなるかということにつきまして、流域変更いたしましても、下流にはさしたる大きな影響がないと若しするならば、その影響のない水が新潟縣へ参りますと非常に大きな影響があるということは、これは是非考えて見なければならん問題だと、こう申上げたいのであります。流域変更しても福島縣並びに新潟縣下流の方には大した影響がない。その影響のない方が新潟縣の方に参りますと、四十三万石の増産になるということは、ただ電力の問題だけを考えて行けばよいというわけにはいかん、電力と食糧ということを同時に考えて見る方がよいのではなかろうか、こう私共考えるのであります。それで四十三万石の米を金に換算いたしますと、どのぐらいになるかと申しますと、十二億五千万円程度の金であります。電力は御承知通り新らしくできるのが約五十億キロワットアワー程度でありますが、これを金に換算いたしますると、約五十何億、これはいろいろの計算方法がありましようから、しつかりしたことは申上げられませんけれども、約五十八億か、九億程度の金になると思うのであります。併しこの米の方だけを取上げて見ましても、十二億五千万円の生産が殖えるということを特に御記憶願いたいと、こう思うのであります。  それから最後に一つ述べさして頂きたいと思いますのは、起きた電氣をどうするかという問題であります。これは無論國全体の電力の需給政策から考えて決定される問題だと思います。併し又一面そんなに遠くまで持つてつて使うことはないじやないか、そんなに高い電氣は困るじやないか。それよりも近くで工業を起して使つた方がいいじやないかということも一應は考え得ると思うのであります。そういう面で私共産業の開発計画というようなものを考えて見ておるのであります。一つは、現在新潟縣には、施設は全部あるけれども、電氣がないために遊んでおるという大工場相当あります。例えて申しますれば、昭和電工、或いは日本軽金、或いは信越化学、日本曹達、日本セルロイド、日本鋼管というような重要工場相当ありますが、これらがいずれも電力が不足なために遊んでおる、遊休状態にある。こういうことを申上げ得るのであります。これらの工場がどれだけの電氣を消化し得るかということを調べて見ますと、大体現在は昨年の調査によりますと、約十億程度電力しか供給されておらんのでありますが、これは主なる十五工場、その他の中小の程度のものは除外してありますが、大きな十五工場について調査をいたして見ますと、昨年度の実績が約十五億程度電力供給になつておりますが、どのくらい不足であるかと申しますと、十五億キロワットアワーというものが不足ということが一應考えられるのであります。從いまして十五億キロワットアワーの電力を供給いたしますと、何ら施設を増すことなく非常な生産量が増す、これを是非取上げて行かなければならんのじやないか、こう私共考えるのであります。  第二の問題といたしまして、御承知通り新潟縣は米産縣でございます。從いまして肥料工業の振興ということに格別の関心を持つておるわけであります、從いましてこれらの電力の一部を今後の新らしい肥料工業に使わして貰えるならば非常にいいじやなかろうか、こう考えるのであります。これも非常に大きな問題でありまして、特に肥料工業におきましては、御承知通り硫酸が相当大きな役割を果しておる。その硫酸が日本では非常に少い。從いましてこの硫酸に置換えて電力をいろいろな途中の操作の過程はありますけれども、電氣に置換えて行くということが若しできるならば、これは一石二鳥と申してもいいのではなかろうか、こう思うのであります。そういうふうな考慮も加えまして、肥料工業の振興ということを私共考えておるのであります。又御承知通りに、新潟縣には石灰石が相当良質のものが多量に出るのであります。從いましてこの電力と石灰岩によりまして、カーバイド工業並びに誘導工業を振興いたすことが最も適当な考え方でなかろうか。こう考えておるのであります。それによりまして最近はやりのビニロン工業といつたようなものが当然考えられて参る。無論この場合炭素原といたしまして、石炭ということが当然考えられるのであります。石炭のことにつきましては皆さんよく御承知通り、佛印のホンゲイ炭というようなものが、これは東洋市場におきまして日本を最大の顧客としておる関係上、日本に持つて來ることを向うも希望しておるのではないか。非常に豊富な良質なものであります。この只見川の豊富な、低廉な電力と、そうして良質の多量にある石灰岩、そうして佛印のホンゲイの石炭というものを結付けて見た場合のカーバイド工業の有望なことは想像に余りある、こう思うのであります。從いまして資源の少い日本におきまして、輸出の振興というようなことにつきましても形を変えて輸出をすることができる。つまり電氣と石灰岩からできたものを輸出するということは、結局電氣を輸出することにもなるわけであります。或いは又石灰岩を輸出するということにもなるわけであります。或いは又、更に乱暴な表現でありますけれども、電氣の元になります雨を輸出する、而も非常に災害に招いております洪水を輸出するというようなことにも、まあ乱暴に言えば言えると思うのであります。まあそういつた意味合におきまして、是非この電力と工業といつたものの関連性を強く取上げたい、取上げることが大切であると私共信じておるのであります。時間が長くなりますので、あとはいろいろ御質問があればお答え申上げたいと思いますが、一番最後に調査経過について報告するようにということでありましたから、調査のことを一言附加えまして私の説明を終りたいと思うのであります。  調査につきましては、非常に不十分であると申上げる外ないのであります。と申しますことは、大体これに着手いたしましたのが二十二年度でありまして、從いまして二十二年度、三年度、本年度と非常に日が浅いのであります。又調査予算の点につきましても、國費予算が相当計上されておつた模樣でありまするけれども、不幸にして新潟縣には調査予算を頂けなかつた。從いまして全部純縣費、縣費だけを以て処理しなければならなかつたというようなことで、調査が甚だ不十分であつたということを申上げなければならんことを大変遺憾に思うのであります。然らばどういう程度調査をしたかと申しますると、基本的な面について、例えば平面にいたしますると、ダムの予定箇所でありますとか、或いは発電所の予定箇所でありまするとかいうような面につきまして、平面測量を必要な分だけやつております。それから縦断、横断につきましても、水路の、或いは隊道の、或いは発電所の鉄管等重要な基本的な面の、それが違えば全体の計画が崩れるといつた面の縦断、横断の測量は全部やつております。又地質調査につきましても、発電所の箇所、或いは隊道になりまする水路のルート、或いはダムの箇所といつたような、どうしてもここだけは必要だという面の地質調査は全部やつております。從いまして調査は不完全、不十分ではありまするけれども、基本的な、どうしてもこれだけは必要だという最小限度の調査だけは全部いたしておるつもりでおります。その点を附加えさして頂きたいと思います。以上を以ちまして……
  17. 井関正雄

    証人井関正雄君) 先程委員長の御質問は、大体この計画に対する縣の態度と言いますか、それと行政措置というような御質問つたものですから、私は特に新潟縣との比較に対する私の発言を差控えたのでありますが、然るに新潟の土木部長さんは、流域変更した場合の比較に重点を置いて御説明されたのでありますが、この点につきましては、私も更に一言附加えたいと思いますが、御発言許して頂けますか。
  18. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) よろしうございます。
  19. 井関正雄

    証人井関正雄君) 流域変更した場合、いわゆる新潟案と日発案との比較につきましては、只今新潟縣の部長から縷々御説明があつて皆さんお聞きの通りであります。これに対しまして私の見解を少し述べさして頂きたいと思います。大分見解の相違という点があるかも知れませんが、一應私の信ずるところをお聞取り願いたいと思います。  第一に、テネシー・ヴアレーとの比較によつて水路式或いは堰堤式との優劣があつたのでありますが、勿論我が國の地形から考えまして、テネシー・ヴアレーと比較するような地形でないことは当然であります。併しながら日本に残されておる堰堤としてやり得るような地点は、そう沢山ないのであつて堰堤式に開発して、そうして大水力を起し、あれに應ずるような発電方式をやるということは、日本電力事情から考えて、当然そうあるべきで、折角百五十メートルの堰堤作つて堰堤を作りながら、これを水路によつてつて行くような開発方式は、これは愚の骨頂じやないかと考えるのであります。そうしてその工賃や、何か二重設備の点についてのお話もあつたのでありますが、新潟の部長の言うようにに奥只見田子倉の最も有利な点だけを抜き取つて、そうして講評比較したならば、或いは建設費において違いがあるかも知れませんが、これは全体を通じて考えるべきであつて一つの水系について総出力及び総工費について、一キロワットアワー当りの工費を比較して、初めてどちらが経済的であるかと判断すべきであると思うのであります。河川総合調査会の二月十一日の委員会におきましての結論は、新潟案と、いわゆる日発案との比較になりまして、商工省の関係の技術官が仔細に両方の案についての單價或いは工事費等を檢討した結果、総出力においても、それから最大出力においても日発案の方が余計の電氣ができる。いわゆる日発案によると最大出力が二百四十万、出力量において五十九万キロワットアワー、約六十、新潟案によると、最大にして百万キロ、それから出力にして四十万キロワットアワーというような程度で、出力の点についても劣る。而も一キロワットアワーの工事費も新潟縣は十八円何がし、日発案は十一円何がしと思いますが、一キロワット当りの工費も高いという結論になつたのであります。勿論單價の調査につきましては、いろいろのコンデイションがあるので、一概にどうということは言い得ないので、必ずしもそれが妥当な案だとも考えられませんが、一應の結論としては一キロワットアワー、全体の計画を立して、そうして電氣がどつちが沢山できるか、そうして而もその電氣の一キロワットアワーの工事費が高いか、安いかによつて、その水系の開発が有利であるか、不経済であるか判断すべきで、有利な地点だけを拔き出して比較することは当らないことだと思います。この点誤解のないように御判断願いたいと思います。  それから落差についてのお話がありましたが、勿論総落差について、或いは揚川の水位と妙見の水位で五メートルの差があるかどうか存じませんが、長い水路を作ることによつて摩擦の損失があるということも当然あるのであつて堰堤式による落差の損失と、水路式による損失とどつちがどうということは、ここで断言できないだろうと思います。新潟のように、高圧力の七十メートルくらいのトンネルを作つて、その下に長い水路を作ることによつての摩擦の損失は相当大きいものがあるのじやないかと思います。尚水量につきましても、水路式のトンネルとすれば、途中の水を利用できないのでありますけれども、堰堤式によれば、途中から入る水はそこにキヤッチができて、水量の利用が完全にできるのじやないかと思います。  それから工事の難易についてお話があつたのでありますが、新潟の部長は、奧只見は鉄道がなくてもできるというお話で、発電所を作ることは非常に工事が簡單なようなお話であつたのであります。これは見解の相違があるかも知れませんが、私はそうは考えておらないのであります。百五十メートルの堰堤を作るというようなことは容易なことではないのでありまして、これは鉄道とか、そういう運搬施設を考えないで、索道ぐらいのことでできるというように、事を軽く考えては非常な誤解であつて、これはどうしても工事用の鉄道を敷設しなければならないのであつて堰堤を作るということが工事の大部分を占めることであつて発電所の建設のごときは、そう大して問題にすべきじやないかと思います。而も尚新潟縣のいわゆる湯ノ谷発電所のごときは、場所が非常に狭小で、私はこういうことは攻撃的になるので言いたくないのでありますが、行きがかり上、私の信念を述べたということにして頂きたいと思います。発電所の位置は非常に不適当だと思います。大キロワットの発電所を作ることは非常に不経済で、而もトンネル地帶は粘板岩の地質で、七十メートル、或いは八十メートル、水圧トンネルとしては相当厚い鉄板で巻き立てなければならん。而も直径六メートルもするトンネルを二本も作るということは容易なことではないのであつて、そういうものを二本作つて、而も尚発電所の数は同じだと、而も全体としての出力日発案よりも劣るというようなことは、技術的に見て、或いは経済的に見て決して有利な計画だとは考えられないのであります。高圧の水圧トンネルを、鉄板で巻かなくちやならんというようなトンネルを作らなければならんということは、極めて不経済な二重設備と言わなければならんと思います。それから工事の資源についても御発言があつて、新潟の方が早くできるというようなお話でありましたが、むしろこの点につきましては私は反対に考えております。日発案のごときは、下流から一つ一つ発電所を作るという極めて便利な考えであります。柳津、片門のごときは鉄道に接近しておりますし、道路もあつて一ケ年か、二ケ年で簡單開発ができて、毎年五万キロ、十万キロを殖やして、需要に應じて、日本経済に應じて、その範囲内でやれるのに、新潟縣のごときは奧只見の百五十メートルの堰堤、或いは田子倉の百メートルの堰堤が完成しなければ発電できないのじやないかと思います。それにつきましては、堰堤ができ、トンネルができさえすれば、僅かの水を引いてできるというように宣傳しておるようでありますが、私共の考えでは、水路の位置は川床よりも七、八十メートル高いところに水路を作るのでありますから、堰堤ができないで、どうして発電ができるかということを非常に不思議に思うのであります。果してこういうことができるかどうか、非常に疑問に思います。その点につきまして、一つ一つ発電所下流から作つて行くことによつて只今の電氣の需要に應じ得るのでありまして、最も経済的な解決ができるものであります。それから灌漑についてのお話でございましたが、流域変更によつた水を以て灌漑して増産することは非常に結構な話ですが、併しながら先程私が強調したように、日本の電氣は渇水期には非常に困つておるのであります。五、六月の豊水期にはどこでも電氣はそう不足していない。どうしても一月、二月の渇水期には電氣が足りなくて、非常に産業影響して困つておる。これを補給することが日本の電氣政策として最も大事であつて、灌漑時期の五月、六月、七月に水を落して発電するということは、折角莫大な費用をかけて堰堤作つて、貴重な溜めた水を、又灌漑のために電氣の要らないとき流すような形で、いわゆる土木電力として價値のない電氣を起すということは非常に不経済だと思います。やはりこの貴重な水を、いわゆる高い所に沢山の金を使つて堰堤を造つて、溜めた水は最も電氣の不足なときに、渇水時に放水すべきであつて、これを灌漑のために無駄に流すというようなことは避くべきであつて、灌漑に必要であるならば、更に豊富な豊水期電力を利用して用水するとか、或いは又適当な総合的な考え方によつて増産も図り得るものだと思うのであります。  次に、工場等についていろいろ御説明でありましたが、これは新潟縣福島縣も同じ考えであります。福島縣におきましては、具体的にすでに工場計画も進んでおる所があるのであります。福島新潟縣同樣最も良質な石灰の沢山出る所がありますし、それに必要な石炭もあります。又メタノール工場もあります。それから苛性ソーダ工場もあります。材料はすでに揃つておりますので、電力さえ許せば態勢が整つているのであります。新潟の部長の言うように、土地で起きた電氣は全部よそへ持つて行かれるということは全然我々としては考えていないのでありまして、できるだけ地方の産業開発のために、電氣のロスをなくして、有効に使うということについては勿論我々として異論のないところであります。  以上ほんの氣の付いたところだけでありますが、新潟の発言に対して、一應福島縣として考えておりますことを申述べさして頂きました。
  20. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) お諮りいたします。両氏の証言に対する御質疑に移りたいと思いますが、質疑がありますならば継続して審議することいたしたいと思いますが、如何でございますか。丁度正午になりましたから、午後一時から再開いたしまして、質疑に入ることにいたしてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) ではそういうことにいたします。休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩    —————・—————    午後一時十九分開会
  22. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) 午前に引続きまして建設委員会を続行いたします。  只見川水力開発につきまして、関係府縣の土木部長の立場において証言を得たのでありますが、これに対して委員諸君の御質疑があれば発言を許します。
  23. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 御質問を頂きます前に、一二簡單に先程の説明に補足をいたしたいと思いますが、如何でございますか。
  24. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) よろしいです。
  25. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 一つは、出力及び工費に関する数字の問題でございますが、実は新潟縣といたしまして通産省に提出いたしておりまする案は、一番縣として新らしい案を出しておりますのは、今年の三月出してある案であります。それにつきましては、実はその前に出してある案につきまして通産省からいろいろ御注意、御指示を頂きましたので、若干修正変更を加えまして提出いたしましたのが、その三月の案であります。そのとき通産省では新潟縣として早くその案を出して呉れ、その案を出して貰えれば直ぐ会議を開きたいから直ぐ出して呉れという矢のような催促でお話があつたのでありますが、三月二十一日にその案を新潟縣は提出いたしましたのですが、その後どういう御都合かまだ会議が開かれておらないという状態であります。從いまして新潟縣の案がその三円出した案でなくて、その以前の案についていろいろ御批判を下さつた方がおありのようでありますから、そういう誤解のないようにお願いしたいということを念のために申上げたいと、こう思うのであります。それによりますと、工事費について申上げますと、日発の案によりますと、一キロワツトアワー当りの建設費が十六円五十銭となつておりますのに対して、新潟縣の方は一キロワットアワー当りの建設費が十三円五十四銭、一キロワットアワー約三円新潟縣の方が安くなつておる。それは通産省の方に差上げてございます。計算の基礎は全部通産省でお示し下さつた、こういう計算をするようにという資料に基いて計算しておるのであります。両方共共通の資料に基いておるのであります。  それから二番目に、地質の問題についていろいろ御心配を頂いておるのでありますが、地質の問題につきましては先程も申上げたのですが、懸念される点につきましては殆んど全部調査をいたしております。その結果圧力隧道について、大半は圧力のかからない單なる水を通すだけの隧道でありますので、それは問題ないと思うのでありますが、圧力のかかります圧力隧道の点が若干心配であると思うのであります。これにつきまして地質調査の結果、大部分花崗岩でございまして、心配はないという状態であります。ただ一部秩父古生層が入つております。これは粘板岩とかいう。いい加減のものではございません。秩父古生層です。從いまして無論或る部分におきましては鉄板を巻く必要のある場合もございましようし、いろいろ技術上考慮を加えなければならん点があることは勿論でありますけれども、決して困難なものではないということを申上げて置きたいと思うのであります。  それから工事の方を実際やる場合に鉄道を敷いた方がよろしいか、併し鉄道を敷くことも容易じやないというふうなことも問題になつて來ると思うのでありますが、その場合に現在鉄道のありますのは福島縣の方に宮下というところまで鉄道が参つております。これは田子倉から四十数キロあると思うのであります。それから新潟縣の大白川に鉄道が行つております。これは田子倉から十四キロございます。だからこの間の鉄道が建設でき得れば、これは一番工事をやる場合に都合がいいのであります。その場合に新潟縣の大白河から僅かに十四キロでございますので、非常に簡單に敷けやしないかと、こう思うのであります。それから奧只見をやるには鉄道をどうするか、田子倉から直接川に沿つて奧只見に参りますには約二十キロ近くあるのでありますが、これは非常に地形の險阻なところでございまして、鉄道の建設も容易でなかろうと思うのであります。のみならず、將來開発路線としてどれだけの効果があるだろうかということを考えて見ますと、何よりもむしろ奧只見をやる場合には、新潟縣小出から現場まで約二十六キロ程あります。多少屈折を入れまして約三十キロ、それから田子倉まで十四キロ合計四十四キロ、結局鉄道の建設は福島の宮下から田子倉までの鉄道の延長と同じであるということが言えるのであります。鉄道をなぜ敷くかと申しますと、発電所を作るのには二、三十トンもある重い物を運ぶために必要である。百五十メートルもある日本で未だないような大堰堤をやるには鉄道を建設するのが是非望ましいと思います。併しいろいろの事情で鉄道建設が困難である。相当の時間を要する場合にはどうするかという問題があると思います。その場合には先程申上げましたように道路、索道を使つてやる。無論鉄道に劣るのでありますけれども、やれないことはない、こう考えて申上げたつもりであります。  それから灌漑用水の点でありますが、日発の案によりますと、御承知通り奧只見田子倉は年間何ケ月使うかと申しますと八月と、十二月と一月、二月と一年のうち四ケ月水を使う、こういうことになつておるようであります。その他は溜めて置いて使わないい。下流に水を流さない。こういうわけであります。從つて灌漑用水に直接の繋がりは持つておらないと、こう申上げていいと思います。新潟縣の方は無論補給電力に重点を置いておりますので、渇水時に電力を余計出したいと考えておりますが、併し常時、年中水を出しておるのであります。その意味灌漑用水に直接の繋がりを持つておると、こう申上げ得ると思います。一番少いときでも大体五、六十トンの水を信濃川に放流しようという計画であります。それだけの水を放流いたしますと、信濃川沿岸の耕地に、先程申上げましたようないろいろ影響がある。こういうことであります。  それからもう一つ工事計画であります。福島縣の方でもいろいろ工業計画を持つておられるということでありますが、それはその通りで、どちらでやつても同じであると思います。そうしますと、日発計画はそうした電氣を使うのに便利のようにできておりません。專ら全國的の渇水時における補給電力に重点を置いて、計画じておるように思われますが、福島縣の工業計画と結付けるには、日発の基本的の考え方というものも多少変つて來るのではないだろうかと思います。大変恐縮でしたが、以上補足を説明させて頂きました。
  26. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつとお尋ねしたいと思います。両縣がそれぞれ國家的見地から、又府縣の立場から非常に研究されておることに敬意を表したいと思います。そうして尚今後科学的な意味一つ十分各自の持つておられるところの長所、短所を明らかにされることが國家のために望ましいと思います。これは科学的の立場から御檢討を願つて日本のために一番いい方向を持つて行けばいいのですから、そういう点は一つ科学的の意味で忌憚なくお聞かせ願いたいのですが、大きい点、細かい点いろいろありますが、一つ金の問題をお尋ねしたい。大体総額どのくらいで、差当りどういう方面から金を出して、これを着手するかというような点の御腹案を、それぞれ御両氏から拜聽したいと思います。
  27. 井関正雄

    証人井関正雄君) 先程も申上げました通り、この企業主体につきましては、今縣としてどうあらねばならんというようなはつきりした考えは持つておりません。一應今の日本の法律と言いますか、日本発送電法というのがあつて、大きい水力開発につきましては日発がするのが、これが規則になつているように承知しておりますので、一應日発がやるものとして、日発がその金の工夫をしているように承知しております。縣としては特に金については研究しておりません。
  28. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 只今福島の部長がおつしやつた通りであります。先般衆議院の商工委員会委員の方々が新潟に参られました節、委員長談として発表されたのによりますと、こういう大事業であるから無論相当資本を要する。それについては外國の資本も必要であろうし、國内としては政府資金も無論必要であろう。そこにでき得れば民間資本も入れて行くことも望ましい。そうして相当廣汎な地域に亘つておりますので、いろいろの行政上の問題もあろうかと思われるのであります。それに対しては公社的な性格を持つた調査なり、或いは実施なりの機関を設けてやることにいたしたいというふうなことを言つておられたのでありますが、これなども一つの案であろうと、こう思うのであります。新潟縣といたしましても、無論実施については、これだけの大問題でありますから、資金或いは機構組織につきまして、こうした方がいいとか、ああした方がいいとかいう考え方はありますけれども、それについて特別決定した案というものは持つておりません。ただそうした面でいろいろな問題があろうと思われますけれども、日本の今の現状からいたしまして、この只見川開発は非常に急ぐ、早く開発されれば早く開発される程日本のためになるのだということについては議論の余地がないと思います。そういう意味で、なるたけ早くそういつた問題を解決されることを我我は希望しているのでありますが、そういうふうなものができて、どこからやるか、どうしてやるかというような問題につきましては、先程も申上げたかと思うのでありますが、新潟縣といたしましては、全体をやつた後にも採算を考えなければならんのであります。資金資材その他の関係で一遍に着手することはできない、從つてどこからやるかと申しますと、奧只見からやりたい。それには先程も申しましたように、現在道路がある。それに索道を建設し、そうしてダムの工事に着手したい。ダムには無論五年とか、八年とか、或いは十年程度の日子を要すると思うのであります。併し水路発電所は、これは比較的短い三年とか、四年という期間でできると思うのであります。それでその間をどうするかということにつきましては、只見川支川に北ノ又川というのと中ノ岐川という二つ支川がある。丁度新潟縣の水道の取入口がその附近にあるのであります。從いまして高さ十メートルか十五メートルの、水を取入れるダムを作りまして、そこから水を取れば、その間無論多少ではありますけれども、大体十二万五千キロぐらいの発電が可能である。年間にしまして約五億五千万キロワットアワー程度になつております。併し三年か五年の間に、ダムの建設は七年も十年もかかりますが、ダムのできるまでに三年か四年で五億或いは五億五千万程度の発電ができるということは、この大事業に取つて非常に有利な点ではないか。こう私共考えております。從つてそういう順序で工事を進めて参りたい、こう考えておるのであります。
  29. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 金はどうでしよう。十六円五十銭、十三円五十銭と出ているのですが、総額は分つておりませんか。両縣とも……
  30. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 総額は新潟縣の案で参りますと、六百六十五億ということになつております。
  31. 原口忠次郎

    原口忠次郎君 いろいろ御説明がありましたのですが、福島縣に先ず以て伺いたいのでありますが、御説明の内容を拜聽しておりましても、少し分らないような氣がする点もございます。これを具体的にもう少しお話願えないか、第一番目が、只見川の河水の電力発電計画日発案をそのまま支持しておられるのか、それとも縣の機構の下において縣廳独自で御調査になつておるのか、その辺が私はつきりしないのであります。日発案をそのまま鵜呑みにして福島案としておられるのか。福島案として日発案と離れた案があるのかという点であります。それから先程の御説明で、只見川電力発電の下の方に農業利用の点が確保してあるというお話がございましたが、お話を承わつておりますと、補給電力ということでありますから、農業用水とは余り関係がないように思いますが、そういう点が何か具体的にお話願えれば結構だと思います。そこからこれは大きな問題と思いますが、御説明の中には、只見川開発が大体において全國的な補給電力、ピークの発電力という御説明であつたのでありますが、そういうふうに大局的に福島縣がお考えになるのは非常に結構だと思いますが、ピーク電力だけを発電なさつて福島縣民がそれに満足しておられるかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。それからこれは電力事情によると思いますけれども、日本のピークの発電をなぜ奧只見だけで、只見川開発電力に関東関西、こういう方面の補給電力に依存なさるのか、非常に遠距離のロス或いは設備その他の点に不便があるにも拘らず、そういう点をなぜ強調するのですか。もう一つの点は、補給電力の使用方法は一年間に三ケ月か四ケ月、又一日のうちに非常に電力の必要な時間、八時間とか十時間とか、そういうことだと思いますが、そういうふうに大量の河水を五億五千万トンの水のうちで七十五メートルの利用水深がある。これが幾らになるのか知りませんが、その大きな水を非常に短かい期間に放流なさつて、そうして只見川下流阿賀川の沿線の河川工事のいろいろなものに障害を與えないのかどうか。そういう点を御調査なさつているのかどうか。阿賀川は御承知通り國が非常に大きな金をかけて河川改修をやつておりますが、その河川に対して大きな水が流れたり流れなかつたり、そういうことを盛んにやつて、どういう影響を與えるかということを御調査なさつておられるかどうか、そういう点も若し御調査なさつておられるならばお伺いしたい。それから先程の御説明で福島縣只見川流域変更は強く反対しておられるようであります。これは私本問題の非常に大きな根本理由と思いますが、この流域変更のために福島縣が特に重大なる影響を受けられる点を、若し具体的なことがあれば伺いたい。ただ河川流域変更は、先祖傳來の水の使用権であるからというような抽象的な意味でなく、何かそこに重大なる影響があるのかどうか、そういう点について具体的な点があればお伺いしたい。以上簡單でありますが、お答え願いたいと思います。
  32. 井関正雄

    証人井関正雄君) 第一のお尋ねの、福島案と日発案との関係でございますが、大体において日発計画したことが正しいと信じまして、日発案を福島縣がそのまま信頼して、日発案即ち福島案と考えておるわけであります。從つて独自の、福島縣として、こうでなければならないというような案は持つておりません。それから第二番目のお尋ねの灌漑との関係でございますが、ちよつと御質問の要旨がはつきり分りませんが、既設の灌漑がどれだけあるのかということか、或いは今後の灌漑の開発にどういうふうに利用されるかというお尋ねですか、ちよつと忘れましたが、千咲ケ原というところがありますが、そこまで約三千町歩ばかりの開墾計画があつて、これに要する水量をちよつと忘れましたが、相当水量を使う計画を持つております。併しながらこれは勿論豊水期に水を溜めて、それを冬期間に使うのでありますが、灌漑地が相当下流にありますので、他の支川から入つて來る水もありますので、一應今の計画でも支障ない、但しこれを沢山流域変更で取られるようなことがあれば、相当影響があるのではないかということを心配して非常に案じておる次第であります。それからピークの問題ですが、勿論私の説明が少し不十分で、季節的のピークだけのように御説明申上げましたけれども、この日発案を一應通読して御研究下さればよくお分りになると思いますが、決してピークだけの電力ではなく、常時電力相当増すのであります。今度の計画と申しますと、日発が更に研究いたしまして、新潟縣が五月に最後案を出したのに対して、更に日発におきましても檢討した結果、奧只見堰堤使い方等も研究して、最初は十一月か十二月から冬季間だけ使うのを、八月から二月までの約半年くらい使うというふうに使い方を多少考え直しておるようであります。從つて設備も、少し前よりも全体の設備としては機械設備を節約して常時に出す計画をしておりますので、根本的にそう変更はないと思いますが、具体的に先程私が申上げましたように、全部冬季間のピークだけに使うというような考えではなく、常時発電も勿論して、そうして大部分を冬季間の補給電力に使う計画になつておりますので、その点は御了解願えるのではないかと思います。又御質問にあつた全國のピークを、この只見川だけで既設補給電力を補う計画のようにお聞取り願つたのは私の説明不足であつて、必ずしもそういうことは福島縣当局としては考えていないし、又歓迎もしてないなわけであります。御指摘の通り、勿論長い間の送電によるロスということは考えられますので、できるだけ近いところに補給すべきであつて、関西或いは中國地方の補給電力は、熊野川か何か適当なものがあれば勿論そちらで起すのが当然で、関東或いは東北、北較的近い地域における電力の補給操作をすべきであると考えております。又福島縣は皆ピーク発電ばかりで、縣外に持つて行かれるので、それで満足するかというお話でありますが、決して福島縣は全部を縣外に出すとは考えていないので、当然東北地方の常時電力相当増加して、それによつて工業の振興を図り得るものと信じておる次第であります。  それから最後に降水の点でございますが、甚だ勉強が足りないので、或いは数字的に誤まりがあるかも知れませんが、現在の降水量は二千立米くらいではなかつたかと思いますが、今度たとえ調節して水力を出しても、一時にその降水量程の大きなものを流すことはありませんので、現在の河川改良計画に対して非常に影響を與えるというようなことはないと信じております。
  33. 原口忠次郎

    原口忠次郎君 新潟縣に二、三質問いたします。新潟縣の説明を伺つておりますと、日発案という非常に調査をされた立派な案があるにも拘わらず、新潟案というものを殊更に主張しておられる。これはいろいろな理由は沢山お述べになりましたが、この根本の理由とするところはどこであるか。そういう点を私お伺いしたいと思います。それから部長自身御説明になりましたけれども、新潟案は机上案ではないかという感じが非常に強いのであります。いわゆる調査は十分にしてない、調査は十分にしないで強調されるゆえんはどういうところに自信を持つておられるのか。例えば七十五メートルの隧道も大部分は花崗石である、或いは古年層であるから大丈夫だろうという先程のお話でありますけれども、七十五メートルのフレッシヤー・トンネルというものは、日本でも未だそういう方法はないと思います。こういうものについてどういうふうな調査をしておられるか。それから先程の御説明で、日発表はダム式、新潟案は水路式と、こういうふうに言われましたが、いずれにしても有利な点はどこが一番有利であるか、こういう点であります。それから新潟案が常時電力を或る程度つて、そうして補給電力を持つておられる。これはその分け方は何によつて分けられておるか、七十五メートルのフレッシヤー隧道を抜く、その技術的なために両方に分けられたのか。それとも常時電力をもつとうんと殖やして隧道をもつと大きくするとか、或いは補給電力をもつと大きくして隧道を小さくするとか、そういうことによつて分けられたのか、その辺がはつきりしないのであります。それから先程の御説明に、信濃川を分水すれば食糧増産、四十万石殖えると、そう言われましたが、それは尤もと思いますが、その外に河水統制の見地から信濃川のナヴィゲーションの問題があると思います。その河川のナヴィゲーションの問題も今日は余り取扱われていないと思いますが、將來は大きな問題になると思います。こういう問題についてどういう調査をしておるのか、そういう点を若し調査をしておられるならば、簡單でよろしゆうございますから、御説明願いたいと思います。
  34. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 只今の御質問に対してお答え申上げたいと思います。調査の行き届いた、且つ日本水力技術陣営を網羅した日発の案があるにも拘わらず、調査不十分な新潟縣が、こういう案を提案したのについてどういうふうな考えでいるかという御質問のように伺つたのであります。これにつきましては、誠に御尤もな御質問だと思うのであります。我々といたしましては、それだけの技術的或いは経済的な考え方、基本的な考え方を持つているのでありまして、無論これにつきましては、先程申上げましたように、この案が日発案よりはいい、ここで新潟案でなければならんと申上げているのでは決してございませんので、只見川開発にはこういう考え方、こういう案もありますよ、これを一つ比較檢討して頂きたいということを申上げているのであります。この点は誤解のないようにお願いいたしたいと思うのであります。それならば、それだけ立派な日発の案があるにも拘わらず、新潟縣はどういう考え方が案を提出したのであるかということにつきましては、先程新潟案の計画の立案につきまして、基本的な構想の要点を掲げまして御説明申上げたかと思うのであります。尚二、三主な点を申上げて見たいと思うのであります。  それは第一に、只見川水力資源として最も價値のある部分は一番上流の水源部であります。これは先程申しましたように、水が非常に多い、且つ非常に高い所にある、落差が大きいということであります。そうして流域変更によつて一挙に発電できる。僅か四十二キロの距離であります。それに全落差を集中いたしまして、一挙に発電できるということは、先程福島の部長が言われました流域変更ということは行政的にむずかしいという問題も無論ございますけれども、そういうことを一應考の外に置きますると、技術的に経済的に最も有利な考え方でなければならん、こう思うのであります。それが一つであります。それから先程も申しましたように、一挙に落差を取ります関係上、階段的に相当長い距離に亘つて発電いたしまするよりも、一挙に短かい距離を発電いたしまするので、いろいろ内容を計算して頂きますと直ぐ分るのでありますが、全体の利用落差が新潟県の方が大きい、こう思うのであります。今はつきりしていることは、日発案の一番下流発電所が海面から標高四十一メートルであります。新潟縣は三十五メートルであります。その間すでに六メートル違うのであります。その他一つ一つについて計算いたして見ますると、落差新潟縣の方が大きいということが一つ。それから流量が新潟縣魚野川破間川の水を加えておりますので、これだけは流量が多くなつているのであります。つまり水が多い、落差が多い、当然出力は多くなければならん、こう思うのであります。即ち新潟縣の案が出力が大きいということは大雑把に申しまして誰でも氣付くであろう、こう思うのであります。それから第三に、工事をやるのに新潟県の方がずつと便利じやないか、非常に簡單にできるじやないか、從つて早くできるじやないか。これは地図なり模型なりを御覽頂けば直ぐ分るかと思うのであります。それから最後に河川の利用につきましては、完全利用でなければいけない、電氣さえ起きれば後はどうでもよいというような考え方では困る。現在の既設水力発電が河川下流におきましてどういう影響を與えているか、特に灌漑の面にどういう影響を與えているかということにつきましては、皆樣もいろいろ機会あるごとにお聞きになつたりしていることと思うのであります。而もこの流域変更によりまして、片一方に大した影響がないにも拘わらず、片一方に持つて行けば非常な影響があるということになれば、これは当然無視できない問題だ、こう思うのであります。福島の方に持つて参らなくても大した支障はないにも拘わらず、新潟縣の方に持つて参ると直ちに四十三万石の米の増産ができるということは、これは河川の完全利用という意味からも取上げて参りたいと思うのであります。それといろいろ問題になつておるようなことは、起きた電力をどうするか、只見川水力開発日本補給電力に非常に都合がいい、便利である。だからと言つて数百キロの遠距離まで送電して、それ程の犠牲を拂つてまでも全國的な補給電力のために只見川一本を犠牲にしなければならんかどうかという問題があろうと思うのであります。この問題は無論日本水力問題だけでなくて、いろいろな経済計画との関係性もありましようから、私があれこれ申上げる必要もなかろうかと思うのであります。新潟縣におきましては、從來そういう点で新潟縣と限らず、東北は東北自体として考えますときに、米の問題にいたしましても、電力の問題にいたしましても、石油の問題にいたしましても、從來とかく惠まれない状態にあつたのではないかというふうなことも、東北自身としては考えますので、東北地区といたしましては、この際電力日本全体のために役立つことは当然であるけれども、又東北自体のためにもその産業開発に用いられなければならん。そういうことを希望するというふうに考えておるのであります。そういうふうな、今申上げました四つ五つの理由で、甚だ調査不十分な計画案で恐縮なのでありまするけれども、敢えてこういう考え方をするのでございます。一つ是非御檢討願うということで今日まで参つたのでありまするが、そういう意味で今後も一つお取上げの上、十分なる比較檢討をして頂きたい、こう思うのであります。それから七十五メートルのプレッシャー隊道のことでありますけれども、これは誠に技術的な問題として、又御親切な御質問であると思うのであります。これは併し日本の土木技術の水準からいたしますれば、必らずや解決できる問題だと私共考えております。地質の点と関連いたすのでありますが、これは先程申しました通り我々もこの点について多少の不安を持つてつたのであります。地質調査の結果は奧只見から湯ノ谷の発電所まで約十キロの圧力隊道でありまするが、これは約七キロの間が花崗岩地帯でございまして、これは調査の結果何ら不安がないという確信を得ておるのであります。後の三キロの点につきましては、先程も申しましたように、秩父古生層でございまして、花崗岩より劣るのでありますけれども、粘板岩のようなものではない。從いまして部分的には鉄板を巻く必要も起きて來ようと思つておりますけれども、或いは断層類似の所もありますれば、そういう所にも鉄板を巻くという所が出て來るかと思いますが、これは先程申しましたように日本の技術で十分解決できる、こう考えておるわけであります。  次の御質問ダム式水路式との比較についての御質問であつたかと思うのでありますが、これは先程も申上げましたように、テネシー川というものと只見川というものと本質的に全く違つておるので、そのまま同じように比較することは、それ自体が無理かと思うのであります。從いまして新潟縣といたしましては、決して只見川ダム式でないということを申上げているわけじやないのでありまして、奧只見田子倉は明らかにダム式なのであります。その他は純然たるダム式ばかりとは言えない。むしろ調整池式と申しますか、調整池を持つたダムでありまして、而も一部分だけ調整するというダムになつております。新潟縣の案はその日発で持つているただ一つ貯水池として、それで足りないところを水路式補つて行こう、つまり百八十キロも持つて行かなければ全落差を利用できないというのを、僅かに四十キロで全落差を利用したい、そのための水路式採用、つまりダム式の長所と水路式の長所と両方いいところを取つて計画したい、こういうつもりであります。それにつきまして一つの例を挙げて見たいと思いますが、この電力一キロワットアワーの電氣を起すためにダムを作り、発電所作つて相当コンクリートを使うわけでありますが、どのくらいのコンクリートを必要とするかという数字を申上げて見ると、今のテネシー日本河川の差がはつきりすると思うのでありますが、一キロワットアワーの電力を起すために必要なコンクリートの量は、アメリカのボールダーのダムでは〇・六一という程度のものであります。更にロシヤのドニェブルの発電所では〇・一一という非常に僅かのコンクリートで一キロワットアワーの電力が出るのであります。それに対しまして朝鮮と満洲の境の水豐のダムは〇・八立米になつております。それから満洲の第二松花江の豊満のダムは〇・七三というようなことになつております。ところが只見川奧只見田子倉二つ一緒にして考えて見ますると、まるで桁違いで三・何何、何いは四・何々という程度のコンクリートの使用量になるのであります。新潟縣の案によりますと、その割合が非常に少くなつて來る、こういうわけであります。これは一つの御参考までに申上げたわけであります。  それから常時電力補給電力かという問題につきましては、当初、当初と申しましても今年の春の話でありますが、日発の方面から我々ひどく強い批判を受けたことがあるのでありますが、それは今日本として必要なのは補給電力である、夏なり冬なりの電氣の不足、これをどうするかという問題が今の日本電力問題として一番大きな問題である。その意味只見川日本の國策にぴつたり合つておるのだ、その意味新潟縣の案は日発の案に劣るんだという御説明であつた、その意味新潟縣は非常に強い批判を受けたのであります。その際私は、いや、補給電力の必要なことはよく分る。併し五百キロも六百キロも遠く離れた関西まで持つてつて補給することが果して適当であるかどうかということについて、もう一度考えて見なければならんのじやないか、関西では先程お話がありましたように、熊野川とか或いは琵琶湖とか、その他補給電力を超すに都合のいい箇所が外にもあろうかと思うのであります。大体原則として発電所というものは消費地の直ぐ近くにこれを起すというのが一つの常識だと思うのであります。そういう意味只見川電力を延々数百キロの遠くまで運ぶということが果して適当であるかどうか、又只見川電力日本電力に必要だからと言つて、地元の利害を全然度外視して、日本全國のために使うのだということが、最近の地方自治の精神から言つても、それが適当であるかどうかというようなことも考え得ると思うのであります。併し只今福島縣土木部長のお話を承わりますと、それが大分日発考え方が変つて参りまして、いや、決して関西までやるんじやない、関東地区の補給に止めて、後は地方産業開発に使うんだ、私共はこの春まで口を酸つぱくして申述べておつたところにぴつたり合つた同じ御説明でありましたので、この問題につきましては一應解消をしたのではないかと、こう思うのであります。  それから最後にナヴィゲーションの問題でありますが、これは御指摘を頂いて、我々も成る程という感じを持つたのであります。実はこれは余り調査しておらんのであります。と申しますることは、信濃川は御承知通り長岡から新潟の間、或いは長岡から小千谷の間というものは昔から水運の便が開けておつた。特に新潟と長岡の間は運搬路として、或いは交通路として蒸汽船なり或いはその他の船が通りまして、非常に盛んであつた時代があつたのでありますが、最近はいろいろ水力ダムができたり、或いは大河津の分水工事ができたりいたしまして、この水運が多少衰えておるかと思うのであります。併し現在大河津の分水路から新潟までの間に中の口川というのがあるのであります。これは流量が非常に平均しておりまして、水運路としては非常に條件のいい川であります。從いまして御指摘のように流域変更の結果、相当量は常時水量が殖えるといたしますれば、信濃川の水運というもの非常に促進される。こう思うのでありますが、この点につきましては先程申しましたように調査しておりませんので、今後その点につきましては十分調査いたしたいと、こう考える次第であります。以上であります。
  35. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 今御両所のお話で大分分つて來たんですけれども、いわゆる日発福島の方では、大体補給電力で関西の方へやるということが計画されておつたのを、東北或いは関東に止めるというようなお話で、大分その点結構でと思つておるのでありますが、これを補給電力じやなく、常時電力として福島縣下でどの程度利用したい、又そういう要求日発の方にどのくらい強く申込んでおるかということを一つ承わりたいと思います。もう一つ仮に河水変電でこれを新潟の方へ落す場合に、そうして新潟の方を持つてつてしまう場合に、奧会津総合開発、林産とか、地下資源のそういう方面に向つて何か影響があるかどうか、それからもう一つ新潟の方に問いたいのは、田子倉発電所を作ることが、今の場合交通機関がなかなか不便だろう、勿論奧只見の方はそういうことははつきり言えると思いますが、田子倉の方はそれ程でもない、私は鉄道線路にそう遠くもないし、鉄道の基礎的なあれはできておるように思いますので、田子倉がそのまま日発の案のようにやつた場合に、新潟の方では、いわゆる田子倉ではなく湯ノ谷の方面から、只見だけから取る、奧只見だけからの電力によつて仮に新潟にやつた場合、田子倉の方は仮に日発の方針によつてこの鉄道を利用してやるとした場合に、奥只見田子倉から取つて湯ノ谷だけを利用するところの、或いは小出発電所を利用するだけの方式でやるというと、新潟案にはどんな影響を與えるかということをお伺いしたいと思います。
  36. 井関正雄

    証人井関正雄君) 福島縣に対する御質問の、発生した電氣の使用計画についての御質問でございましたが、これにつきましては福島縣におきまして、産業開発調査会の電力部会というものを設けまして、現在あります工場に対して、將來の十ケ年計画としてどういう工場生産拡張計画があるかということを公開しました、その囘答によると、又一面先程申上げましたように、只今問題になつておりますビニール工場の、これは近く具体化するものと思うのですが、新設計画があります。そういうものを考慮しまして、最近に安本経済五ケ年計画に適用するような計画を立てたのでございます。併しながらこの只見川開発は大体十ケ年計画として、十ケ年でこれだけの開発をするものとして、その十ケ年間に増加する電力量はどのくらいであるか、五ケ年計画ではありませんが、十ケ年計画として一應調べましたのが、化学工業部門におきまして使用電力量が十二億五千四百七十九万八千キロワットアワー、それから鉱業において八億二千百九十一万七千、金属工業におきまして六億一千九百三十六万六千キロ、繊維工業三千二百六十四万五千、それすら窯業で二千五百六十六万、機機工業で六百六十七万二千、鉄道電化が一億四千三百十万キロ、農村電化一億五千三百万キロワットアワー、その他四億二千八百十八万六千というふうに、総体で三十四億八千五百三十四万四千八百四十キロワットアワーの電氣を使うという計画を立てたのでございます。これは只見川における発生電力量の約四割に相当するもので、非常に厖大なものでありますので、多少その点の何と言いますか、夢を含んだものであるかも知れませんが、一應こういう計画を持つておる次第でございます。
  37. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 田子倉発電所日発案の通りにやる。そうして奥只見の水だけを新潟案の通りにやるというふうにした場合に、新潟縣の方に及ぼす影響はどうかという御質問のように伺いましたが、これは技術的にそういうことが、全体的に考えて見まして成り立つかどうかという問題は、今後の問題であろうと思いますけれども、從いまして現在今私といたしまして、その方がいいとか惡いとか言うことを申述べる材料を持つておらんのであります。ただ湯ノ谷発電所だけ、つまり奧只見から上流の水だけを新潟縣の方に持つて來るということにつきましては、こういうことが言えると思うのであります。ということは、この行政区域、先程福島縣の方で強く反対された流域変更のことでありますけれども、奧只見だけでありますと、あれから上流の平方面積が四百七十七平方キロございます。そのうち群馬縣に属するものが六千平方キロ、それから福島縣に属する分が百九十平方キロ、新潟縣に属する分が二百三十平方キロということで、新潟縣面積が一番多いのであります。そういうことで御質問になつたかと思うのであります。そういうことは確かに言えると思うのであります。それでそれを湯ノ谷で発電し、更に下流小出で発電し、更に一番下流の妙見で発電した場合にどうかという問題につきましては、実のことを申しますと、私共はこう考えております。今私が申上げました湯ノ谷、小出というこの線が、この全体の只見川開発計画のうちで最もうま味のある、まあ肉にした見ればロース、魚にして見れば刺身といつたような一番いいところだと思つておるのであります。從いましてこれだけを発電いたしますとすれば、無論経済的にも技術的にも十分役立ち得ると思うのであります。例えば今それを申上げますと、湯ノ谷発電所だけで年間の発生電力量が十三億何がしか出ます。それからその水を小出に持つて参りますと六億何がしという電力が出る。それを又妙見に持つて参りますと四億何がしということで、それだけでもすでに二十数億の発電ができるのであります。而も工事費單價は、先程私が申上げました十三円何がしというものに比較すると、更に安い、恐らくこれは十一円五十銭か、二十円足らずでキロワットアワー当りできると思います。以上であります。
  38. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 ちよつと……福島の方で流域を変更した場合に、何かそれが開発影響があるかないかということですが、それを一つ伺いたい。
  39. 井関正雄

    証人井関正雄君) 先程原口さんからも御質問があつたのを、実は私うつかりして申上げなかつたのですが、具体的に流域を変更した場合、それがどういう影響があるかということでございまして、これは非常にむずかしい問題だと思います。現実の問題といたしましては、下流にあります発電所既設権利を持つておる発電所が五つばかりありますので、これに及ぼす影響というものを挙げなくちやいけない。又先程申上げましたように灌漑のこともありますので、その影響考えなければならん。そればかりでない、実際に流域変更による案が、本当に技術的に國家的に見て、経済的に見て縣民全部が納得して、それが新潟に持つてつた方がいいのだという納得の行く計画であるならば、或いは福島縣としても無理に流域変更に反対はしません。併しながら現在のところ少くとも新潟に持つて行く流域変更の案より日発の案が、この電力を起す上についてよりよい案と思う。少くとも総出力についても、それからキロワットアワーの工事費についても、それから電氣の質においても、すべてについて有利なのにも拘わらず、何を好んで新潟に持つて行くか、そういう点から流域変更までして持つて行く必要がどこにあるかという感じを持つて流域変更については縣民は納得し得ないと思います。
  40. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 福島と新潟両方の縣会の議員の方が会合されて、これが國家的に一番いいことに決まれば、そういうことにこだわらんという話があつたということを聞くのですが、それは早く國家的な立場から福島、新潟を含めて、勿論國家的な立場からいい案ができることが前提になれば、その問題に解消するわけですか。
  41. 井関正雄

    証人井関正雄君) 私はそう思つております。
  42. 安部定

    ○安部定君 私は二つ、三つお伺いしたいのですが、一問一答のようにしてお伺いしたいと思います。これは両方の県の土木部長さんにお伺いしたいのでありますが、先ず水の量であります。奧只見の百五十五メーターの堰堤で五億五千八百万トンという水は大変多い量と思うのでありますが、只今も新潟の土木部長さんが言われまするように、この堰堤の上の流域面積が四百七十七平方キロであり、且つ水が幾ら多いにいたしましても、年間の雨量が三千ミリというようにどこかに書いてあつたように思うのですが、そうであるといたしまするならば、この流域に降る雨の量というものは全部溜めたとして、十四億三千百万立方メーターではないかと思うのであります。僅か十四億しか降らない。その降つた雨が一つも蒸発もどうもしないというような地点では、五億五千八百万立米の水を溜める堰堤を築くということは、これはその道の大家の人々の研究されたことでありますから、間違いはなかろうと思うのではありますけれども、尚私はこれは問題が大きいだけに非常に疑問を持つのでありますが、この辺のところ双方の縣、どういうふうにお考えになつておられるのでありましようか、研究の結果がどのように相成つておるでありましようか、つまり一同溜めたならば、それを三倍にひとしいものを溜めれば、もう殆んどそれの雨量は全部取つてしまうというような、さような大きなダム、そのようなことが技術上にも、過去の経驗上にも、地上のいろいろのアメリカなり、ドイツなりの例に照して、そういうようなことが過去に行われておるかどうか、その辺のところを双方の土木部長さんにお伺いしたいのです。
  43. 井関正雄

    証人井関正雄君) どうも非常に学問的な御質問で、果して御納得のできる御説明ができるかどうか分りませんが、只今の御説明によりますと、大体流出量と言いますか、降雨量から計算したあれが十四億トンぐらいある。そのうち五億トンぐらいキヤッチするというお話ですが、蒸発量はそう沢山はないと思いますので、それぐらいの水は十分に溜り得ると考えるのでありますけれども、勿論そのダム計画としましても、冬の渇水期の最後の期間には殆んど全部使つて堰堤を全部空にして置く。そうして三月、四月、五月の雪どけの水を全部キヤッチして殆んど流さないようにする。それから八月の夏の渇水期に、それを少し下げまして、九月の洪水期にオーバーしないで全部キヤッチする。極端に言えば、殆んど下には無駄な水を流さずに、全部の水をそこにキヤッチしてしまうようになつております。優に五億トンは十分溜り得ると考えております。
  44. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) この雨量三千ミリ、十四億トンというふうなことでよくあれでありますが、計算いたして見ますると、三千ミリの雨が全部ちつとも蒸発せずに、どこへもしみ込まずに、そのまま流れて來ますと十四億トンとなるのであります。然らば十四億トンという数字は、どこから出したかというと、これは実際測つた水が十四億トンあるわけであります。從つて雨の量が三千ミリよりももつと多いのじやないかということが言い得るのじやないかと思います。それから水はどんなふうに流れておるかと申しますと、大体百万方キロにつきまして、比較の便宜上そういうふうな数字を使うのでありますが、百平方キロについて一年間に流れる水の年間の平均の水の量、これは奥只見では九トン八分、約十トンであります。これは実際測つたのであります。一年間を平均いたしますと、これは日本の川としては非常に多いのであります。一例を挙げて見ますとですね、この下の伊南川という支川がございますが、これは年間五トン六分であります。阿賀川は四トン半しかないのであります。奥只見だけは約十トンの年間平均の雨量があるということであります。然らば一番少いときは、年中一番少いときはどうかと申しますと、二月におきまして一番少い、約八トンであります。一番多いときはいつかと申しますと五月、百四十三トンであります。これは無論月平均で、一時、一日だけ大きくなるのを取つておるのじやなく、月平均であります。つまり非常に惠まれた、水力開発には惠まれた川であるということであります。それならば五億五千万トンのキャパシテイを持つこのダムの操作はどうかということにつきましては、これは先程來いろいろ話の出ておりまする補給電力ということを考えるところに、このダムの價値が生れて來るのでありまして、日発の方でもそれを非常に強く主張しておられるのであります。それで日発の案によりますと、先程も話の福島土木部長から訂正がありましたけれども、我々の聞いておる、示されておる案は八月と十二月、一月と二月、一年十二ケ月のうち四ケ月しか使わない、後は水を溜めて置くわけであります。その四ケ月だけ水を流す、而も一日二十四時間のうち、その三分の一の八時間だけ、つまり朝とか、晩とか、電氣の一番要るときに出す、一年十二ケ月のうち四ケ月、一日二十四時間のうち八時間、つまり三分の一、三分の一、九分の一の効率を申しますか、使い方をしておるわけであります。出すときはうんと出すということであります。それに比較いたしまして、新潟縣はどうするのかと申しますと、一番少く使うときでも八月、九月、十月、十一月、これだけは二十六トンばかり使うのであります。それから一番多いときは一月と二月、八十トン使うのであります。而も八十トンは一日の平均でございまして、一日二十四時間を八時間で使うというのに対しまして、新潟は、これを十六時間に使おうとするわけであります。これは先程申上げました補給電力のためであります。一日二十四時間のうち十六時間、十八時間を十六時間に使いますから、八十トンが百三十トン、新潟縣の案は、最大使用水量百二十トン、これを基準といたしまして、隊道も発電所の鉄管も皆そういうふうにしておるのであります。それなら一年補給電力のために多くしたり少なくしたりしないで、平均して一年中同じに水を使つたらどうなるかということを御参考までに申上げて見たいと思います。一年中平均いたしますと、奥只見の流量は四十七トンであります。一秒間に約四十七トンの水が一年中、十二ケ月少しも休まずに流れるのであります。そういたしますと、このダムというものはそれ程高いものは要らん、そのダムのキャパシテイは五億五千八百万立米秒でありますが、完全に今のように運轉いたしますと、それだけのキャパシテイは要らんということになるわけであります。これはたまたま非常に時期的によく操作してありますので、殆んど大して違いありませんが、完全にこれをいたしますると、五億二千百万立米秒のキャパシテイを持つダムならばよろしい。それじやそれがためにダムはどれだけ低くなるかと申しますと、これは大したことはありませんが、約五メートルであります。五メートルダムが低くなつておる、大体奥只見の水の違いについて御説明申上げたのであります。
  45. 安部定

    ○安部定君 私の質問簡單にお答え願つて結構でありますから、今暫くお願いいたします。今新潟縣土木部長から、次に私が考えておりましたことまでお答えがあつたことになるのでありますが、只今のお尋ねした結果、最大湯ノ谷の百二十立米秒というものは四十立米秒ぐらいであると計算してお尋ねしようと考えておつたのでありますが、四十七立米秒というお答えでありました。そういたしますと、奥只見の水は全部使うということでございますが、一滴も下へは流さないということになるのでありますか。
  46. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 原則的にはそうなります。
  47. 安部定

    ○安部定君 從いましてその次の田子倉も同樣なのでありますか。
  48. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 同樣なんであります。
  49. 安部定

    ○安部定君 そういたしますと、福島土木部長さんにお尋ねいたしたいのでありますが、奥只見から引くということになりますと、流域は七百平方以上になるように記憶しておりますが、それだけの上流の水が一滴も下らないということになれば、その場合の日発案、或いは福島案はどのような計画があるのか、その場合のことは全然考えていないのかどうか、そのところをちよつとお尋ね申上げたいのです。
  50. 井関正雄

    証人井関正雄君) 田子倉及び只見貯水池の水を全部新潟の方へ持つて行かれるということになると、お説の通り下流には非常な影響があるのであります。一應これに対する新潟縣考えておる案といたしましては、伊南川上流の方の館岩に堰堤作つて、これに溜めた水を伊南川から流して、只見川の本流の水の少なくなつたやつを補給しようという計画のようでございますが、それだけではやはり非常な影響があるだろうと考えております。只今までに数字的竜にそれじやどういうふうになるかと聞かれると、ちよつとあれですが、既設発電所に対する影響だけでも三億一千万キロワットアワーの出力減少になるのであります。これは大体五万キロの発電所一つなくなるくらいの影響じやないかと思います。すべてに影響があるわけであります。
  51. 安部定

    ○安部定君 新潟縣の案によりますと、奥只見田子倉を新潟に引いた場合も、尚且つ日発としては下の方に本名、柳津、片門、上野尻といつた所にこれこれの発電所を作ればよいのではないか、これこれの発電所には、出力が、発生電力があるという計算もあるのでありますが、新潟縣としましては、やはりこの二つの水を全部新潟寄りに取つても、福島縣にかような発電をして欲しいという希望を持つておられるのですか。
  52. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 只今の御質問につきましては、田子倉上流の水を全部流域変更した場合に、下流六ケ所の発電所既設が五ケ所、合計十一ケ所であります。発電所計画をやつた方がいいかという御質問のように考えますが、これはやはり只見川全体の開発計画としては十分必要だと思います。ということは、奥只見田子倉の水を一滴も残さず流域変更をいたしましても、そのあとの流域があり、從つて水があるわけであります。先程申しましたように、伊南川全体の面積が七千平方キロであります。流域変更をしようという箇所の面積は僅かにその一割に相当する七百平方キロであります。從いまして七百平方キロがなくなつたあとの残りの六千三百平方キロの伊南川から只見川開発計画を当然併せ考える必要があろうかと、こう思うのであります。ただ、その場合問題になるのは、田子倉から下流の水を流域変更した場合に、下流開発を不可能ならしめるかどうか、或いはどれだけマイナスになるかどうかという問題があろうかと思います。不可能なことは絶対にありませんので、これは問題にならないといたしましても、どれだけマイナスになるかという問題はあろうかと思うのであります。從いまして、新潟縣の方に流域変更したために起きる電力下流に幾らか減つて來るけれども、電力全体というものを、これを総合的に考えて見まして、新潟縣の案と日発の案がどちらが有利かと、こう思うのであります。
  53. 井関正雄

    証人井関正雄君) 今の問題につきまして多少補足さして頂きたいと思いますが、最近新潟縣が商工省に出しました案というものは、いわゆる湯ノ谷、それから妙見の方に発電所を作ると同時に、尚田子倉以下の本流の方にも発電所作つて案を比較しようという計画のようでありますが、それに対して一應の調査案を私貰つておるのでありますが、これについて調べますと、日発案によりますと、いわゆる新潟の方に流域変更しないで、そのまま落して來ると、総出力、最大出力が百七十一万八千六百キロで、年間発生電力量が五十六億九千五百三万九千キロワットアワーということになるのであります。これに対して新潟の方は、新潟の方の湯ノ谷、妙見の発電所作つて、尚本流の方にも十二ケ所の発電所作つて行く、福島縣にも作つて行くといたしまして、総体の総出力の最大出力において百三十三万九千五百キロでありまして、年間発生電力量において四十八億九千百四十四万八千キロワットアワー、即ち約八億ぐらい新潟の方が少いのであります。
  54. 安部定

    ○安部定君 奥只見田子倉の水を新潟の方に引くことは、新潟の信濃川線の発電所が、主として國鉄の発電所があつて水位の上下があるために非常に難儀をしておる、それを救うのに役立つのである。これによつて増産する米の量は四十何万石であるという御説明があつたのでありますが、これはこの水がなければ絶対できないことなんでございましようか。或いはこの水が、つまり湯ノ谷から最大百二十立米、入廣瀬の方では最大五十立米という、これは発電の方の設備の最大でありましようが、その中に半分ぐらいが行くものといたしまして、その水がなくして絶対に増産はできないことなんでございますか。それともその水がこの十七万八千四百町歩という水田を持つておられる新潟縣にとつて非常に大切であるという、そこのところをもうちよつと御説明が願いたいのであります。
  55. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 信濃川沿岸の耕地の灌漑計画と新田工事、つまり信濃川第三期電発工事との関係でありますが、これは水の量そのものが変るのでございませんので、発電所調整池があつて、それによりまして水が多くなつたり少なくなつたりすることが、非常に水の取入れに支障を來す。或いは又河川状況に惡い影響を與えるということを申上げたのでありまして、水の量全体については変更がないのであります。それから只見川の水を流域変更した場合にどうかということにつきましては、流域変更しても福島縣或いはその下流新潟縣には大した影響がないように思われるが、併しそれが流域変更されて新潟縣に参ると、その大した支障がないと思われる水が実に四十三万石の増産を來すんだということを申上げたのであります。それが絶対かどうかという御質問でありますけれども、これは程度の問題で、どういうふうにお答え申上げればいいかと思うのであります。ただ一つ申上げて見たいことは、信濃川の川の状態であります。ちよつと考えますと、信濃川という日本第一の大きな川があるのに水が足りないというのはおかしいじやないかということは、よく我々同志でも話をしたりするのでありますが、現実の問題として信濃川灌漑用水に不足しているのであります。今年も長岡附近における河水量が九十トン以下に下つたりしまして、水騒動を起しかけたのであります。とにかく信濃川の河状が段々に変つて行きつつある。特に著るしい変化は河床の低下であります。それは信濃川へ行つて御覽になつて頂けば直ぐ分ると思うのでありますが、あそこに福島江という非常に大きな灌漑用水の取入口がございます。これが現在河床が下つたために水が入つて來ないということで、堰を作つたり、何んか掘つたりして、一生懸命水の取入に努力しておりますけれども、尚且つ不自由を感じておる状態であります。このままの状態で行きますと、やがてもうポンプを使うか何かしなければ水が取れない状態になると思うのであります。御承知通り、戰争中或いは戰後における山林の濫伐というようなことで、水源が非常に涸渇しております。從いまして、一ケ年に流れる全流量には変りないといたしましても、或いは又洪水流量は非常に多くなつて來るという半面、河水量は非常に減つて來るというような状態であります。これはひとり信濃川のみならず、日本河川全部について言うる最近の傾向だと思うのであります。そういうふうに水が段々減つて來ておる。而も河床が段々に下つて來て惡い状態になりつつある。それからもう一つは農業の改良ということでございます。今までの農業ならば、このくらいの水でよかつたということであつても、農業技術の進歩発達に伴いまして段々変つてつております。例えば濕田の乾田化であります。新潟縣に行つて御覽になると直ぐ分りますけれども、新潟附近における相当面積の田圃が、春先一面海のように満々と水を湛えておるのであります。これはいわゆる濕田でございまして、用水がないために排水ができないというふうな状態であります。これが若し用水が求め得るならば、これを乾田化いたしまして増産を図ることができると、つまり農業の進歩に伴う用水というようなことを申上げたいのであります。その水がなければ新潟縣の耕地というものは絶対困るかとおつしやられると、ちよつと困るのでありますけれども、我々といたしましては、水があつた方がよいというだけでなくて、どうしても水を欲しいのだと、こう考えておるわけであります。
  56. 安部定

    ○安部定君 引続き恐縮ですが、先程來土木部長さんも言われておりますように、阿賀野の一番下の発電所は放水四十一メートルで、それから新潟縣の方法に流した妙見で三十一メートルということでございましたが、今まで問題にいたしました水が三十一メートルの妙見で初めて放出されて、その下の田圃に影響する場合と、それから阿賀野の方にはそれと同樣なことはないのでありますかどうか。つまり阿賀野の四十一メートルの間は、発電所から放水されてから以下の所における田圃におきましては、これはどちらも新潟縣であると思いますが、その影響度というものは全然阿賀野においては関係がないわけでございますか、そこをちつよと御説明願いたいと思います。
  57. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 只今の御質問誠に御尤もだと思うのでありますが、阿賀野川流域では、水が殖えればそれだけ灌漑に便宜を來す、或いは又その水が殖えたために、さつき申しました濕田が乾田化できるという面も無論若干あると思います。これは併し、信濃川沿岸比較にならない程度のものであると思うのであります。それから先程申しましたように、本來阿賀野川灌漑用水につきましては、現在問題になつておりますのは、水量の問題でなくて、水位の問題であるということを申上げたいのであります。量が殖えることも無論望ましいのでありますが、それよりも更に水位を上げて欲しい、水位を上げなければならんというのが、今の阿賀野川、今後の阿賀野川沿岸工事における最も大きな問題であろうと、こう思います。
  58. 安部定

    ○安部定君 もうちよつとお尋ねいたします。今の標高の問題になるのですが、新潟縣土木部長さんは、阿賀野に落せば一番下が四十一になり、信濃川に落せば三十五になるのでその間に利用落差に六メートルの開きがある。そのように一挙に新潟縣に落せば非常に落差を利用することができるのだという御説明であつたのでありますが、これが日発案、福島案の完成後における奧只見以下の、つまり満水標高七百五十メートルという奧只見から四十一メートルの所に下りるまでの利用される落差と、三十五メートルの妙見に下りるまでの利用落差との用に、ちよつとでき上つた場合には十何キロという間をトンネルで送るという関係上、幾らかそこに、一挙に湯ノ谷で発電する、或いは又それを妙見へ持つて行くという、その間に失われる、利用できなくなる落差があるのではないか。先程來六メートルの落差を強調されておりますので、その間のところ、完成したときに双方にどれだけの差があるものなりや否やということをちよつとお伺いしたいと思います。
  59. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) それは御尤もでございまして、一つ一つについて申上げますと時間がございませんが……
  60. 安部定

    ○安部定君 だから総落差で結構でございます。
  61. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 総落差は私共の考え方では、新潟縣の方が多くなるということをさつき申上げたつもりであります。と申しますることは、新潟縣の方におきましても無論この水路勾配でありますとか、水路が高いところから低いところえ流れますから、その用の落差とか或いは圧力隧道、フリクションロス、それからダムの有効水深ですね、上つたり下つたりしますのゐ、それによるあれとか、いろいろなロスがあるのであります。それから日発の場合も階段的に参ります。そのダム一つ一つについてロスがあり、ダムダムとの間にも若しあいておればそこにヘッドのロスがある。それから水路がございます、この水路があれば、やはりそこにフリクションロスがある。一々そういうことを精細に計算いたしまして、先程申上げたつもりなんであります。極く常識的に申しまして、新潟縣の方が落差が多いということは言い得ると思うのです。尚本当に一つずつ計算して見ないと正確なことは申上げられませんけれども、私の計算では少くとも十五メートル、新潟縣の方が落差が多いということになつております。或る人はいや十五メートルどころじやないよ、三、四十メートルは違うよということを言う人がありますけれども、私の計算ではまあ十五メートルぐらい新潟縣の方が落差が多いと考えます。
  62. 安部定

    ○安部定君 もう一つお尋ねしますのは、建設の費用でありますが、先程來、日発案によればキロワットアワー当り二十九円三十銭、新潟は十三円二十銭であるという御説明があつたのでありますが、二十三年十月現在の單價で安本が計算されたというのを私は見たのでありますが、それによりますと、東北、つまり本州中部地区における、これは一キロワットアワー当りでありますが、水路式七円五銭、ダム十二円二十三銭、総平均十円二十九銭ということを見たのであります。これは勿論二十三年十月の單價でありまして、今日に換算すればそれぞれ引上げられておると思いますが、これとの睨み合せはどうなつておりますか、又それは勿論そうであろうと思うのですが、この場ノ谷の電発所の場合は、これはダム水路双方の費用を全部合しての十三円二十銭でございますのでしようね。
  63. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 無論そうでございます。
  64. 安部定

    ○安部定君 先程申しました安本のものかどうというわけじやありませんが、それとの睨み合せですね、それよりどれくらい上つて來るものでございますか、或いは下つて参るものでございますか。それからもう一つ、まあ余り何回も立つのも何ですから、もう一つお尋ねをします。新潟縣土木部長さんは新潟縣から工事をすれば非常に交通も便利であるし、安く行くのだという御説明でありましたが、これは先般視察に上つたときにも申したのですが、今でも本日のお話を伺つてやはり納得が行かないのは、新潟案であろうと日発案であろうと、いよいよどちらかに決まつて始めるとなれば、これは日本の國の中でやることであつて、何も福島案だから福島の方から窮屈な山道を登つてつてセメントを担ぎ上げなければならんということはないので、一番近いところからやればいいことでありまして、新潟案であれば工事が安く付く、福島案でやれば山間僻地に鉄道を敷設しなければならないから工事費が高く付くというような意味の御説明があつたのです。これは私は取りそこなつておるかも知れませんが、そこのところをもう一度附加えて御説明が願いたいと思います。以上二つ
  65. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 工費の比較の問題でありますが、これは実は私は工費の比較というものは非常にむつかしい問題だと思うのであります。而も尚通産者では比較をしておられるのでありますが、それで我々もそれを受取つてその通りつているのでありますが、先程申上げましたように、実はこの三月を境にしまして、三月より前の新潟案というのが一つあるのであります。それから三月二十一日に通産省に提出いたしました案が最後案だとさつきも申上げたのであります。それによりますと、通産省が示された基準によつて計算いたしますると、出力新潟縣の方が幾らか多い、工事單價も安いということになつておるわけなんであります。その出力日発はどういうふうに計算しておられるか、我々もよく分らんのでありますけれども、先程申しましたように、新潟縣の方が落差が多い、水も魚野川破間川が入るから流量も多い、だからそれだけはどうしても多くならなければならんと思うのでありますけれども、計算の比較によりますと、そう多くもなつていないようであります。こういう点はどういうふうにしたらいいかと思うのであります。今後権威のある調査機関を設けまして、こういう点もよく一つ調査願うと我々も非常に参考になると思うのであります。  それから先程福島の部長さんからお話があつたように、今までの日発案は渇水時における補給電力に非常に力を入れておつたのが、今度は必ずしもそうではなくて、それを止めて、今までそうでなければならんと言つてつたのを、今度は、いやそうではない、地方産業開発もするのだというふうに変つて來られたとなりますと、日発案はもつと安くなるだろうと思います。例えば新潟縣の案が最大出力百六十万キロであります。それに対して從來日発案は二百二十万キロであります。六十万キロワット違う。そうすると六十万キロワット違うために、六十万キロワットに相当する発電施設をしなければならん。少くともそれだけは安くなるわけであります。從いまして一キロにつきまして設備費を一万五千円としますと、六十万キロですから約九十億ほど安くなります。從いましてそれだけもつと外のものも安くなるかと思いますけれども、それだけを比較して見ますと、先程私が新潟案が十三円五十四銭、日発が十六円五十銭と申しましたが、日発の方は十四円五六十銭で安く当る、二円くらいそれで安くなつておる。大体今の極く大雜把な、ざつちが高いか安いかという比較はそんなところじやないかと考えております。それから新潟縣の案は、新潟縣側に言わせれば便利だ便利だと言うけれども、併しそれは日発案にしたつて、新潟案にしたつてやるのは便利な方からやればいいじやないか、それを新潟の案が便利だから新潟案でなければならんという理由はないではないかという御質問であつたかと思うのでありますが、これは先程の私の説明がまずかつたと思うのでありまして、これはダムの問題もありますけれども、主として発電所のことを申上げたつもりであります。発電所は奥只見田子倉前沢、あの山間僻地に工事をやるのと、新潟縣の例えば小出発電所ですと小出の駅の直ぐ側であります。入廣瀬の発電所は大白川の駅を下りると直ぐそこに見える所です。そういう鉄道に近い便利な所にやるのとのことを申上げたつもりであります。そういうふうに御了承願います。
  66. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと新潟の部長にお尋ねしたい。あなたの言われました最渇水時に百二十六トン、新潟で取るのはそのうちの十六トン、そこに五十五トンという数字が出て來た、それがちよつと理解できないのです。ちよつと説明願いたい。
  67. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 百二十六トンというのは阿賀野川全体の渇水時の量でございます。逓信省で示された基本資料その通りでやつております。それから十六トンというのは田子倉から上流渇水量なんです。それも逓信省で示された資料に載つておる。それで百十トン差がある。併し阿賀野川の所要の灌漑用水は五十五トンある。五十五トンあればよろしい。一番少ないときでも倍以上ある。こういうことを申上げたつもりであります。
  68. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 分りました。それからちよつと福島縣の部長にお尋ねしたいのですが、結局田子倉、奥只見の水は雪どけと洪水を利用する。余り害あつて益のないものをどつちに持つてつても同じじやないかという單純な質問ですが如何ですか。
  69. 井関正雄

    証人井関正雄君) 私はこういう計画は全体計画を立てまして、そうして電氣の質、或いは工費の何程、それからキロワット当りの工事費の安い、高いとか、総出力、そういう観点から考えるべきものであつて只今までの我我の承知しておる範囲におきましては、日発案の方がどんなに計算しても総出力において沢山に電氣が起る。而もそう高くなく質がいいという観点からやはり流域從つて起すのがいい。先程安部委員から御質問があつたように落差水量の点がありましたが、落差において多少損しておつても、下流から入る水量を全部キヤッチして、水量落差の総乘積によつて電氣が起るのでありますから、全体計画を立てた場合に、どつちが余計に、安く電氣が起るかという観点からおのずから解決することは決まつておると思います。
  70. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうじやないのです。私が聞いたのは電氣のことを聞いたのじやないのです。どちらにしても田子倉から上は雪どけの水と洪水の水を利用するのであつて、どちらにしても害のあるものを生かすのだから、これがなくなつて阿賀野川としては大した損失ではないじやいか。農業その他の上で損失があるとすれば、洪水の水をよそへ一割ばかり持つて行かれるということで、どのような損害が起るか、むしろ洪水や雪どけの水が一遍に流れなくなつた方が阿賀野川としては便利じやないか、こういう單純な質問なんです。
  71. 井関正雄

    証人井関正雄君) それは私も同じ意見です。ですから洪水の水をなくすために大きな貯水池を作るのです。その貯水池を作つた限りは最も有効に働かせる。折角貯水池に水を貯えて置きながら、その水路を絞つて行くということは発電方式が不適当と、こう考えております。
  72. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは農業上はいいのですね。
  73. 井関正雄

    証人井関正雄君) 大して影響はないと考えます。
  74. 安部定

    ○安部定君 これはさつき尋ねたことなんですが申足りなかつたのですが、つまり安本が発表しておる水路方式が七円五銭、ダムが十二円二十三銭、これは昭和二十三年の十月だつたと思いますが、五月は約その二五%であるという註まで附いたものをどこかで見たのでありますが、安本だから絶対数というわけでもありますまいが、本日御説明を聞きますと湯ノ谷発電所においてはダムを一遍築いて、その上に更に水路を、而も長いやつを作るのです。いわば今申しました標準の水路ダムの双方合せたくらいの工事費になるのが当然ではないかと考えるのであります。ところが御説明を聞きますと、その低いのは水路式は七円五銭であるが、高いのはダムの十二円二十三銭、高い方の十二円二十三銭はダム一つだけの單價に匹敵するような御説明であつたから、そんなことなのだろうかという疑問を持つたのです。十三円二十銭とかいうような計算は相当綿密な計算の下に一銭一厘間違わずにやつたから、必ず間違いはないというものでもないでしようが、併し安本で出した東北地区においてはこれこれだ、九州においてはこれこれだという表に照して如何お考えかと、こう申上げたのです。
  75. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 日発案によりまして奧只見前沢田子倉に三ケ所のダムと三ケ時の発電所を作つた場合、先程数字を申上げたときは前沢は入れなかつたのでありますが、奧只見田子倉に二ケ所堰堤発電所を作つた場合は、新潟縣の方ではその発電所を持つて來るために中間に隧道を作らなければならん。又もう一つ小出に持つて來るためにもう一つ作る。その間隧道で結ぶので、それだけ隧道が余計なのです。発電所が一ケ所多いにも拘わらず、新潟縣の方が安いのはおかしいじやないかという御質問、御尤もと思うのですが、これは出て來る電氣の量が違う。先程申上げましたように、自発の方は二ケ所の堰堤、二ケ所のダムで二百八十八億、新潟縣の方は四百六億とずつと高くなつております。その代りできる電氣の量が三倍近く出るのです。水の量は同じなのですが、ところが日発案によりますと、落差が官下あたりまでのずつと下に行かなければ求め得られない。落差新潟縣小出でその落差を求め得るわけであります。
  76. 仲子隆

    ○仲子隆君 質問は一應打切つて懇談の方式でやられたら如何ですか。
  77. 原口忠次郎

    原口忠次郎君 福島の部長さんの御説明でちよつとはつきりしなかつたのですが、日発案が補給電力を常時電力に変えたというのは、奧只見以下の発電所のことですか、それとも田子倉奧只見を加えた発電所のことですか。
  78. 井関正雄

    証人井関正雄君) 大体計画を御覽になると合ると思いますが、田子倉以下の発電所はこれは貯水池という程でなく、調整池のいわゆるヘツドを取るだけの発電所ですから、これは常時電力であります。結局補給電力か、常時電力かは奧只見田子倉をどういうふうに使うか、使い方によつて決まると思います。私が先程申上げましたのは奧只見についてで、田子倉も勿論そうだと思います。奧只見について從來日発考え方としましては、本当に十二月初めから二月一杯の冬季渇水と夏季の渇水計画つたのです。それをもう少しフラットにして、八月からずつと翌年の二月一杯ぐらいまで使つて放流し、それから三月から七月まで満水するという計画になつておるようであります。
  79. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) ちよつと私も伺いたいのですが、福島の方の計画日発計画に依存しておられるようで、日発計画というのは只見川の水を繰返し使つて行くということのようですが、今の計画は初めからそれ一点張りでやつておられたのか、或いは又他に新潟縣考えておられることもすべて総合的に調査した結果、最善の方法として現在の計画に纏められたのであるか、そこを一つつて置きたい。それから新潟縣に対しては、これは今の知事になられてから、積極政策として二十何年からか考えられた。非常に新規な考えであるが、これによつてお話の点を伺うと、田子倉で全部の水利を打切つても、あとの只見川既設発電に影響はないということを言われた。影響はというのではない、発電ができると言われたが、私はそこは影響はないということはないので、ただ伊南川の水を利用して行くということなら、それはそれでいいけれども、只見川伊南川水量を総合して使つてつた既設発電所に対しては全然影響ないということは言われないと思う。その影響はないというのはどういうところに根拠があるのか。この伊南川只見川の合流点で、田子倉の発電によつてあれだけの只見川の水ということになつているのに、その流量と伊南川の流量だけで、既説発電に影響がないということはどういう計算から來るのか、これに対して……
  80. 井関正雄

    証人井関正雄君) この調査は冒頭において申上げましたように、最初は福島縣奧会津開発調査委員会に、日発土木部長を依頼しまして調査したときに持ち上つた問題でありますが、その後政府におきまして、経済安定本部が主としてこの調査を商工省、通産省に命じ、通産省が日発に委嘱して詳しい調査を進めたのでありますが、日発につきましては、只今できた政府案のように、最初からこれを階段式の堰堤式の開発方式にしてやるということで研究を進めたのでありますが、その後河川総合開発委員会において、新潟から流域変更の案が出ましたので、これについても十分檢討しまして、單に日発だけではなく、この案につきましては只今の通産省域いは安本その他の各省の委員達、いわゆる尾瀬只見総合開発委員会、これには学識経驗者も入つておりますが、そういう人達が十分檢討しまして、両案を檢討の上、去る二月の委員会におきましては、一應日発案の方が有利だという結論になつたのであります。
  81. 久松定武

    ○久松定武君 両縣にお伺いいたしますが、この只見川水利権はどのように現在はなつておりますか、その点をお伺いしたいのです。  それから尚このダムができますと、部落が多少犠牲になるところもあると思いますから、その戸数並びに人口等も分りましたら……
  82. 井関正雄

    証人井関正雄君) 只見川水利権は、これは私の知つている範囲では昔の東京電燈株式会社がある一部だけ水利権を得まして、それが現在の関東配電株式会社に継承されていると思つております。併しながら只今日本の法律によると、水力開発は法律の改正がない限りは、日本発送電株式会社が政府の命令によつてやることになつて、その手続としましては会社から関係地方行政官廳の水利使用の許可を受けるように出願することになつております。その場合に、地方長官はこれに対する意見を付けて通産大臣、それから建設大臣に禀示しまして、その上で認可を受けて、両大臣の認可を受けて水利権の許可をすることになつております。それによつて政府が日発会社に建設命令を出すという手続になつております。
  83. 原口忠次郎

    原口忠次郎君 私は先程委員長の御質問の、福島の部長に質問せられた日発は新潟案を十分研究調査の上決めたか、こういう御質問であつて福島の部長から只見川総合開発委員会調査の上決めたというようなお話だと思いますが、私は本日の委員会証人お二人がおいでになつておるだけでありまして、政府委員が誰もいない。從いまして私は只見川問題については、聞いておりますと、福島案は端的に申しますと電力開発計画である。併し新潟縣河川総合開発計画である。根本的にこれは異なつておる問題であります。でありますから、我々委員会としてはこれを本格的にもう少し深く掘り下げて、そうして農林、運輸、安本、建設省、こういう各方面の政府委員の出席を求めまして、そうして今後できるだけあらゆる河川資源に対して調査研究をしなければならない、こういうふうに私は思つておるのであります。本日の委員会はただ福島縣新潟縣証人の御発言でありますので、私は差控えたいと思つておりますけれども、福島の部長から総合開発委員会で決定されたような御発言でありますので、御発言はどうにでもよろしゆうございますけれども、私は決定されたということを聞いておりませんので、この点を特に申上げて置くのであります。
  84. 井関正雄

    証人井関正雄君) 先程の御質問からお答えしますが、水沒する戸数は田子倉の方において約四十戸と記憶しております。それから奧只見においてははつきり覚えておりませんが、むしろ新潟の部長の方から御説明願つたらと思います。只今原口委員の御質問でございましたが、それは私の少し言い過ぎで訂正して頂きたいと思います。決定ではありません。そういう一應の結論、そういう結論になつたのです。委員会としての決定ではありませんので、取消たいと思います。
  85. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 今の問題が非常に私共氣になる問題だと思います。決定されたとか或いは結論、そういう結論だつたとかいうようなことは私共は絶対に承服いたしておりません。この点ははつきりして頂きたい。何ならばそこに元水産廳岡崎課長が見えておりままからお聞取を願いたいと思います。私共その場の空氣が新潟縣のために、新潟縣を可とする空氣であつたとは決して申上げません。併しこれはその会議に初まつたことと限りませんで、当初昨年の一月通産大臣官邸において第一会の会議を催されて以來、あらゆる機会、あらゆる会議、小委員会において我々はいつもそういう立場におつたのであります。新潟縣の案は取るに足らんという、相手にしないというような、我々から言わしめれば、これは甚だ言葉が過ぎて恐職でありますが、そういつたような片寄つたような扱を受けたような氣がしておつたのであります。これはこの間の三月の会に限つたことではないのです。いつもいつも、而も且つ我々は我々の信ずるところが正しいと思つて今日まで主張すべきところは主張して参つたつもりであります。この点は一つ大勢おられるのでありますけれども、誤解のないように岡崎課長さんからでも、その点を明確にお話願いたいと思います。
  86. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) 僕が質問したのに答えがないが……
  87. 五十嵐眞作

    証人五十嵐眞作君) 委員長さんの御質問に対しましては、私も先程とにかく七百平方キロに及ぶ水を取るのだから影響がないとは申しません。必らず影響があります。併しただそれをどう調整するか、できないかという問題にかかつている。その一つ伊南川の館岩のダムによる調整である。それからその他尚猪苗代湖の問題、沼沢沼の問題があつて、それによつて調整が或る程度できるものと思います。こう申上げたかと思うのであります。これを数字的に申しますと、伊南川調整既設発電五ケ所について年間電力どれくらいの電力が或るかと申しますと、日発案によりますと、これは日発案ですから間違いないと思います。二億二千万キロワツトアワーであります。それから伊南川調整されますと一億四千万キロワツトアワーであります。それだけ減るのでありますが、これは私計算したわけではありませんが、五ケ所の既設発電所從來豊水期の水は捨てております。一度に沢山來ますから、使えない水はオーバー・スローで捨てております。そういう点を考慮いたしますと、実際の影響は一億四千万キロより少ないのじやないかと、こう先程申上げたつもりであります。
  88. 石坂豊一

    委員長(石坂豊一君) それでは証人に対する質疑はこれで終つたものといたします。御苦労樣でした。あとは懇談会に移りたいと思います。本日の会議はこれで閉じます。    午後三時二十三分散会  出席者は左の通り。    委員長     石坂 豊一君    理事            原口忠次郎君            仲子  隆君    委員            岩崎正三郎君            水久保甚作君            赤木 正雄君            安部  定君            久松 定武君            兼岩 傳一君   証人    新潟縣土木部長 五十嵐眞作君    福島縣土木部長 井関 正雄