○國務大臣(森幸太郎君)
地方における
農業土木の執行につきましては、私の知
つておる範囲においては、
河川を管理たいしておる土木出張所、
道路を管理しておるこの土木出張所等、十分綿密なる連絡を取
つてや
つておると思
つておるのであります。かりそめにも國家の
河川から用水をするという場合に、勝手氣ままに用水溝を設けるというようなことは許されないのでありまして、この設計の上においての打合せを十分いたしまして、そうして
建設の方面から見ても、こういうふうにすればいいという、十分技術上の打合せをいたしてや
つて行く、又やらせなければならんと思うのであります。今お話のような町村に請負わすということは、從來
建設土木の上におきましても、請負師にやらすか、或いは地元請負にやらすかという、この二つの途がありますので、我々農林行政の上から申しまして、できるだけ
土建業者にそういう
仕事をやらすことは技術上完全に行くという取得はあるかも知れませんけれども、できるだけ縣費なり國費がその
地方の
労働力を收容するという上におきまして、技術上の監督をいたし、又
資材の配給等も十分いたしまして、これを地元の請負にさすということは敢て差支ないのではないかと思うのであります。ただこの点に、工事の終始十分なる監督をするということが必要でありますので、この監督注意を怠るということになれば、これは
建設事業でありましても、
農業土木におきましても、同じ結果を見るのでありまして、今後はただこの行政面における指導と監督ということを更に徹底するということよりほかないと
考えるのであります。尚開墾地の問題でありますが、これは実は私が就職いたしました当時、開拓局というものがありまして、
災害復旧、開墾、干拓、土地改良というふうに分けまして、その
内容を見ましたときに、行政面の連絡が
一つもないのであります。これは開拓局と
一つの統制がついておりましても、この相互間の連絡がないことはいけない。今流れ作業的に開拓局によ
つて一つの大きな國家的計画を立てて、そうしてこれを技術上研究いたしまして具体化する。具体化してそれは
災害復旧にいたしましても、土地改良にいたしましても、或いは開墾干拓にいたしましても、それが相互の連絡を密にいたしまして、そうしてその結果がこれを総合的に監査をする。技術指導をしてこれを総合的に監査する、その結果開拓局はこれだけの土地が改良されて、そうしてこれだけの收量が上る、こういうふうに統制を付けなければならない、こういう
考え方から実は局の廃止と同時に統一を図
つたのであります。併し今回
國会の御意思によりまして三部制になりましたけれども、私はこの氣持で今までのような三者対立ということは絶対に許さない、最も綿密に連絡をとりまして、
災害復旧と土地改良、そうして開拓開墾というものと連絡した総合的な
事業でなければいけない。こういうふうに行政を持
つて行きたいと
考えておるのであります。開墾にいたしましても、私は実は今日日本の食糧事情から、或る程土地は足らないのだ、だから猫額大の土地でも欲しいというのは食糧増産の面から
考えられますが、今お話のような
一つの耕地を得たがために、五つの耕地を失うというようなことがあ
つては大変なんであります。現にこのデラ台風におきまして、各地における台風の状況出水を見ましても、平地林を徒らに開墾いたしましたがために、既耕地を失
つたという実例があるのであります。これは我々祖先が一應土地を欲しいというので、耕地を望んで開墾をや
つて見た。開墾をや
つて見たが、やはりこそは開墾すべきところじやないという氣持から、これが又平地林とな
つておるのであります。それをこの現代において、祖先の失敗を更に繰返すようなことをや
つておるのではないかという氣持がいたしますので、昨年の末でありましたか、次官通牒を以ちまして未開墾地の開拓につきましては、森林
関係の者を集めました
調査委員会を作
つて、
地方事務所ごとに、そうして大きい問題については
委員会を設けまして、この
委員会に一應未開墾地の開拓をすべきか、すべからざるかをよく
調査して、この
委員会の承認を得て初めて農地
委員会がこの買收をやるという措置を取
つておるのであります。そういうふうなことで百五十五万町歩ということが一應推算されたが、一應そういう
数字が浮び出ているのでありますが、現在私は百五十五万町歩というものは開墾ができないのである、又そういうことをしてはならない、かように
考えているのであります。むしろ今後入殖者等の
考え方から、開墾すべきものは北海道方面の石狩川沿岸等で、大規模に土地の改良をし、入殖をいたさしむるべきではないかと思うのであります。北海道等におきましても、実情を聞いて見ますと、三十年くらいの幼木林をぼんぼん伐採していたのでありまして、開墾をや
つておる。そうして開墾して見たところが結局酸性土壤で失敗に終
つて、元の林にいなければならんという実情を聞いているのであります。即ちこれは三十年前に祖先が一應や
つて見て失敗したものでありまして、やはりその失敗を後の者が多額の金を
使つて、労費を費して繰返しているということになり得るわけですから、私はこの未開墾地の開墾ということはもう済んだ、もう止めるんだ。併し今手を付けて相当の成績を上げているところは絶無ではないのであります。十分
調査したしまして、この分ならば開墾いたしてもいい、而もこの未開墾地の開墾は、そこに入植
農民が永住し得られる要素が備わ
つて來なければならない。永住し得る要素と言いますと、決して芋と麦とを作
つただけでは
農業は経営が立たないでありまするから、そこには文化的な施設の及ぶところの要素もあり、飮料水の心配もない。又家畜等を増殖いたしまして、酪農的の
状態になりましても、それが経済的に利用されるというような所を
考えて開墾を將來はや
つて行くのであります。ただ徒らに平地林であるから、或いは
道路に近いからというようなことによ
つて未開墾地は開墾すべきものではない、こういう氣持を持ちますので、未開墾地に対する開墾に対しましては、甚だ私といたしましては消極的な立場を以て進んで行きたい、かように
考えるのであります。尚内田農相当時における灌漑排水の土地改良の
事業を言われましたが、あれはあの当時
農村が非常に不況な時代でありまして、
農村救済というような
意味で画一的に土地改良がばら撒かれたのであります。私もその当時その土地改良をや
つた者でありまするが、ああいうふうなことは私は繰返すべきものではないと思います。各府縣の実体
調査がすでにできておりますので、各府縣におきましては、土地改良をして灌漑排水をし、土壤の
性質を改良いたしまして、一毛作を二毛作にする、或いは更に
空氣の滲透によ
つて能率を上げるというような事情が十分
調査されているのであります。この
調査されました所に重点的に土地改良を行な
つて行くということは
考えられるのでありまするが、あの当時のように、各町村に
金額によ
つてこれを割当てるというようなことは、なすべきことではないのでありまするが、先ず土地改良にいたしましても、現在まだまだなすべき所が相当あります。殊に沿岸を干拓いたしました
地方におきましては、この塩分の除去等については、ただ田にしたから、それでいいというのではありませんので、まだまだ塩分除去については相当の土地改良の
方法も
考えなければなりません。又畑地を灌漑用水によ
つて地力を上げる、或いは一毛作を二毛作にする等々、いろいろ土地改良については地区的ないろいろの事情がありますので、まだまだ
沢山の
仕事が残されていると思いますので、そういう方面に今後は力を入れて行きたい、かように
考えるのであります。尚干拓にいたしましても、今後五年かかるか、十年かかるか目度の付かないようなところに手を付けていた向きもありますので、そういうようなところは、今までいたしましたことを、今惜しいようでありますが、この際思い切
つて重点的に、ここ三年、五年の短期間のうちにおいて立派な耕地ができる。こういう干拓地を重点的に行きたい。かように
考えておるわけであります。今御注意もありましたが、土地改良に重きを置き、次に干拓の重点的を開墾につきましては、消極的な態度で行きたい。こういう氣持を持
つております。而して入植者の点につきましては、この北海道の総合開発の方針によりまして、北海道はまだまだ土地改良の入植の余地ありと、かような
考えを持
つておるので、そういうふうな方面に土地政策を進めて行きたい。かように
考えておるわけであります。