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証人(
野澤一郎君) お言葉に從いまして要点を簡單に申上げます。
中小企業が潰れたら
日本はどうにもならんと思うのでありますが、併し終戰後歴代の内閣の放慢政策からして
インフレを來し、そうして今日に及んでいるのでありまして、そこでこのアメリカからの九
原則からして徹底的にここで出鼻を完全に
インフレを抑えよという指令でありますでの、
企業が行悩み、
中小企業が特に行悩んでおることは止むを得ないのでありますが、それにしても重圧が甚し過ぎますと、これで財界が滅茶苦茶になるので、それでその点に深く考慮を願いたいと存ずるわけであります。実際の
業界の
実情を見ると、もうどうにもならん、進むこともできなければ、退くこともできんという
状態なんであります。それで第一として需要供給の関係が甚しく不均衡でありますので、
從つて競爭が激甚であり、そうして採算割れの甚しい
実情にある、これだけでも
業界はどうにもならないわけであります。それから第二に続けさまに金融々々でありますが、本当にこの金融の甚しい硬塞は
お話にならん
実情でありますので、繰返して申上げるのも何かと思いますが、実にこの金融は絶望
状態にある、それは勿論先程前弁士から申上げたようでありますが、
政府の支拂の遅延、それから
企業、元請
工場の支拂の延期といいようなことがこの問題に関連しているのでありますが、これが容易ならざる問題で、実際金融等も、事実御存じない方面もあるかも知れんのでありますが、月一割、月二割、甚しいのは一週間に一割というような高い利子まで拂
つておるのでありまして、これは先行きどうにかや
つて行けるだろうというので、目先だけ
考えて、こういう高率の利息を拂
つて切抜けようとしている、こういう全然先に明るい見通しがないというような
状態にいる
中小企業の問題は、容易ならざる問題なんであります。
第三は担税能力を超えた重税、担税能力を超えた重税でありますから、この申告等についてもその申告を度外視されて、そうして更生決定が來る、それがやはり一年過ぎ、少くも一年半以上過ぎたあとで追加徴收がある、このためにやはり同じ担税能力を超えた徴收でも、直ぐならよろしいのでありますが、ずつとあとで徴收が來るので、計画がすつかり狂
つてしま
つて金融政策がますます深みに陷るというような問題になるわけであります。
それから第四、これは今の
集中生産は、先にも申上げましたが、
重点生産方式が今度又
集中生産方式になる、そうして而も小
企業がこの際相当範囲整理されなければならないような運命になる、少くともその問題では資材その他の面に対しては全く行詰りの
状態である、事実、終戰後は相当資材を持
つてお
つたのでありますが、それは悉く供出の結果となり、而も生産方式が
重点的になりまして、割当は全然ない、資材は全然ないというような
状態で、これもやはり進退どうにもならん
状態であるわけであります。
それから第五といたしまして、これは、これ程の難局でありまするならばこれを切抜ける
一つの方法として、時間を長くするとかというような労働
條件の切下げというようなことで、どうにか切下げる手もあるのでありますが、而も今は
基準法というようなものに拘束されて、而も時間の延長ができないというような
実情のために、尚その難局を切抜ける
一つの方法として、時間外の労働というようなもので切抜けようとしても、これも
基準法によ
つて切抜けることはできないというにも拘わらず、これらの外にかてて加えて無理解なる労働攻勢というようなものがありまして、これもどうにもならん
状態に追い込まれておるような
実情なんであります。
それから六といたしましては、これは爲政者の無理当なる
施策及び書類地獄が挙げられるのであります。爲政者の無理解なる
施策ということになると甚だ言葉が過ぎるのでありますが、実際よくお
考え願いたいのは、仮に食い詰めて、工賃が拂えん、材料もない、それでは材料を買うか工賃を拂うか、止むを得ずして工賃を半分拂
つて、あとは來月の材料の手当をしようというような場合でも、材料を買
つて工賃を拂わないときには、これはやはり檢察廳の手に掛からざるを得ないわけであります。從いまして百年の大計どころではない、來月の計画も立てられないというような
状態が、その面だけでも押進められるような
状態なんであります。今申上げましたように、一が需要と供給の甚しい不均衡、二が金融の甚しい梗塞、三が担税能力を超えた重税、それから甚しく遅れた
更正決定の追徴、それから四が
集中生産方式による資材難、それから供出の結果による資材難、それから五は、時間延長等によ
つてこの難局を救おうとしても、
基準法及び労働攻勢というような問題でどうにもならん、而もこの問題が爲政者の、というと言葉が惡いかも知れませんが、この無理解、
実情を把握しない
状態に置かれた
中小企業は全く進退両難の
状態に陷
つておる、のみならずこの最も大事な
一つとして、
中小企業は書類地獄、もう事務方面は手薄でありますが、而も書類を出す量に至
つては、これはもう
お話にならんほど無茶なんでありまして、これを
中小企業では書類地獄と称しておるのであります。これらも救わなければならん、以上六つの点を挙げられるのであります。
それでこの救済
対策といたしましては、先ず救済策甚だ困難であるということを一言にして言い得るのでありますが、
第一の問題に対しては、
輸出産業の
振興、それからそれには技術の指導、もう
一つは
中小企業廳による診断
制度の
実施、それと同じ診断でも自己診断の要領、診断を
企業廳がするには手が廻りかねるので、自分自身の健康を自分が診断するというような自己診断の要領書というものを
中小企業廳で作りまして、それを
企業方面に廻して、自分の今の難局はどことどこで、これに対しどうするというようなことも、救済の
一つの方法として大きなる方法であると思うのであります。そうした
行き方で行
つても、尚この技術の指導、それで行く以外は業種を轉換するか、然らざれば大勢の変るまでこれは雌伏して待機すよるり外に仕方ないが、若くは廃業するより外にないので、これより以外には救済の途はないと思うのであります。
第二は金融の問題でありますが、この問題は勿論
政府の未拂、それから元請
企業の未拂その他の問題があるのでありますが、それ以外に信用保証
制度、連帶保証
制度、これは一人の者が借りるのでは、それに倒されては困る、然るに五人か、十人なりの共同連帶的に借りるなら、貸す方でも甲、乙、丙がしつかりしておるから、あとはどうか知らないけれども、貸してやろうというようなことであるので、貸す上も取扱がし易いと思います。こういう共同連帶保証
制度の採用、これは今度
協同組合法ができましたが、その
組合法の適用によ
つても効果的に運営し得るわけでありますので、この点も御了承願いたいと思うのであります。尚又この金詰りのときにこういう金融政策によ
つてインフレを止めるというわけでありますから、
從つて金融面に対してはそう緩みは取れないでありましようが、併し余りに急激に來て、そうして牛を殺すようなことではいかんのでありますので、結局のところは金融をじわじわと緩めるような手を相当範囲採
つて頂きたい、その意味では
復金の貸出の
資金、あれの償還期日に対して手加減を願いたい、
復金の貸出に対する手加減を願いたいということであります。
それから三の問題に対してましては
税率の改正、併しこの
税率の改正につきましては、これは困難であればまあいたし方ないといたしまして、
更正決定の促進、これは一年も過ぎて
更正決定をするのでは全く困るのでありまして、
更正決定の促進はでき得ることであると思いますのでそれをお願いしたい、それから又納税に対しては手形分納、これは本当にここで納税に対して御経驗のないお分りにならんと思いますが、督促状が來るとその次にはもう日歩二十銭で、一年に七分というようなことになりますので、これには手形分納を許して頂きたいということをお願いしたらよろしいのじやないか、もう
一つは納税証券の設定であります。納税証券というものを作りまして、その納税証券を設定するというような
制度であります。納税証券の
制度につきましては、ここに参考案として作
つておりますが、提出いたしますので、これを御覧願いたいと思います。朗読は時間の都合上省略いたしますが、例えば納税証券の
制度を作ります。そうして納税証券を運用するならば早く納税ができる、それからこれは
預金して置くという代りに証券を作
つて置くと、証券が証券として外に使い得るというようなことがありますので、そうして而もそれに対しては詳しく運営方法については書いてあります。朗読は省略いたします。
次に資材の面でありますが、第四でありますが、この
重点生産方式、若しくは
集中生産方式で、
能率を上げて、そうして
輸出を増強するというようなことでありまする以上、絶対量の少い資材に対してはいたし方ないのでありますが、從いまして、この点に対しましては
重点統制も多少止むを得ないと思うのでありますが、併し統制で行く場合に手続を簡單にするということを御考慮願いたいと思うわけであります。
それから先程も
中小企業に対する政策を
中西さんからも御説明申上げましたが、それに対して私ここで附加えるわけでありますが、それには適当な大いさ、これが非常に大事なんでありまして、私共は学校時代から教えられたことは適当な大いさ、エフェクティヴ・サイズでなければ
何事も成就せん、機機を設計するのもエフェクティヴ・サイズ、
企業をするのにもエフェクティヴ・サイズ、
企業で必要なものは、小さい
企業でなければ成功せんものもある。仕事の種類によりましては大
企業でなければならんのがありますが適当な大いさ、それには小さい
企業でなければ成功せんというような
企業の種類が非常に多いのでありまして、これも甚だしく爲政者は沒却している場合が非常に多いのであります。戰時中のごときはこのエフェクティヴ・サイズを沒却していたために非常に
中小企業が犠牲になり、而も一番
最後の戰時生産は
中小企業が大
部分を担当したというような実例があるのでありまして、苛まれておりながら而も
中小企業がや
つてのけたとあうことは、やはりエフェクティヴ・サイズの重要なお蔭でありまして、本所、深川方面が爆撃を受けたために全然戰闘力がなく
なつたというのは、やはりエフェクティヴ・サイズの小さな必要な部品その他の
部分が壊わされてしま
つたために、あとの生産ができなく
なつたという事実は多くの人の知るところでありまして、エフェクティヴ・サイズについては非常に大事なことと思うのでありまして、この問題に対してはエフェクティヴ・サイズを無視するものはというような問題で私の書いたものがあります。これはやはり問題として御提供申上げます。読むのも時間的都合で略します。
次に労働法規の改正についてでありますが、
基準法を変え、労働法規を変えるということはなかなか困難であろうと思うのでありますが、それにつきましては、労働法の改正に対しての希望意見その他の問題に対して、特に
基準法に対しての希望意見等がここにありますのでやはり御提出申上げます。朗読は時間の関係で省略いたしますが、これには
是非御考慮を願いたいと思うのであります。例えばここでこれ程苦痛に
なつたという場合には、先ず時間を延長して、おやじさんも徒弟も悉く時間を延長して仕事をやろうとすると、而もこの急場を抜けようとすれば時間の方の、
基準法の制限を受けてできないのであります。又その中に労働攻勢が深刻を加えておりましてできないのであります。一体窮乏
輸出、飢餓
輸出、若しくは耐乏生活を続けよということをドツジ公使も言
つているようでありますが、それに拘わらずやはり向うからの指図である
基準法ができ、その
基準法が時間が八時間以上ではいかんというような、こういう矛盾はやはり向うの指令なら止むを得ないのでありますが、それには適用緩和
規定でも設けなければ、この際どうにもならんと思うのであります。如何に敗戰國であ
つて民主主義に
なつたとい
つたところで、余裕のあるアメリカは而も実働八時間であるにも拘わらずそれを眞似ている
日本は拘束八時間、実は実際働くのは七時間しか働いていない、労働白書には今は七、八時間だけ働いていると、こう書いてありますが、あれは誤りでありまして事実そんな工合のものではないので、八時間労働制は七時間しかや
つていない、それ以上やる場合は、あれは夜業若しくは作業の延長とかいうような名前の下にそうした時間をや
つているその平均を挙げたに過ぎないと私は思う、私は実際上からで統計から見るのではありませんが、そういう点から事実私共が
工場を一、二
経営しているのでありますが、そういう点から想像してあれは労働白書の誤りであると、実はあれは夜
業等の時間をあの中に重ねたためにああいう
数字、七、八という
数字にな
つたのである、あの辺に対しても
実情を把握しない点が多い
一つの証左として申上げ得ると思うわけであります。
それからここで、もうそれ程
経営が困るなら廃めるかどうかということにな
つてもこれは実は今の退職手当の金が都合ならないというような
実情でありまして、
企業を廃めるにしても、退職手当をやるわけにいかない、銀行へ持
つて行
つても、廃業するという
会社に退職手当を貸す筈がない、一万田日銀総裁は先程の日産協の総会において、退職手当に対しては、これは
企業整備である関係上貸してやるというようなことをはつきりされておりますが、あれは特別の
企業に対して退職手当ならば外のものは貸さんけれども
企業の整備の退職手当のためには貸してやるというのであ
つて、然らば
中小企業がここで
企業を廃止するのだから退職手当を貸して下さいとい
つたところでこれは言うだけ野暮な話でありまして、全然そうした見込みがないというような
実情にあるわけでありまして、今の
中小企業は全く進むこともできず退くこともきでず、然らば廃めようとしても廃めることもできんというような
実情にな
つているのであります。勿論今までの歴代の内閣が放慢政策でここまで來てしま
つて、而も九
原則によ
つてインフレを一挙に止めるということでありますので、今まで非常なスピードで走
つていた自動車が一挙に止まるのでありますから、それには大きなシヨック、大きな出血が來るのは当然でありますが、出血は多少あ
つてもいい、潰れてしま
つてはいかんので、その辺に同じ止めるにしても、少しじわじわと止める必要があるのではなかろうか、相当中央においてこの金融等についても、金融操作の面において
インフレを止めるというふうな、これは或る
部分まで止むを得ないとしても、そのために、社会内のシヨックによ
つてそれの全部が死んでしま
つたらいかんので、死なないように止めなければならない、実に
中小企業の
状態におきましては、それがもう本当にそれと一緒のシヨックによ
つて一緒に死んでしまうというような
状態になるのであります。で、
集中生産方式の維持方面等においては、実は余り大
産業中心にして
考えるならば、それは
集中生産方式には有利だというような面もあるでありましようが、併しその半面その外の方面では悉くここで破算若しくはそういうような
状態に陷るのでありまして、そうした場合に労働方面に対しては失業救済、失業保險があり、その他のものにも救済方法がありますが、
企業者に対しては救済方法は勿論ないのでありまして、この辺も非常に考慮を願わなければならないと思うのであります。尚又先程の長官の
お話でこれが
デフレに
なつたら大変だが、ここで一應
インフレを止めたい、ここが狙いとおつしやいますが、今の担税能力を越えて、この
税金では
中西さんの
お話のごとく半分以上営業を廃止するとかいうような
実情にあり、それから半分以上破算の
状態にあるというようなことを
豊田さんが申された点から
考えましても、そうした
状態になり、材料は捨て値に賣る、機械は捨て値で賣るということになる、現に或る方面ではもうどうにもならない、從業員にこの機械を全部やるからこれを使
つてや
つて貰いたい、これは全部賣
つて貰いたいというような
実情がある、又或る
会社では、
会社の名前は……、はつきり言えと申せば申上げられるのでありますが、その
会社では殆んど仕事がない、仕方がないから、六〇%だけ自分で拂う、後は出稼にして
負担を追い付けようというような
実情があり、それから全然退職手当を出さんとか、全部退職手当を二十年働いた者も、三年働いたもののも共に五百円、泣きの涙で與えたというような実例等もあります。これは記憶があるのでありますが、名前がちよつと今ここにありませんが、いつでも申上げられるのであります。事実こうした
状態にあるので、その点を御了承を願いたいと思うのであります。尚又ここにそれに対する租税諮問
委員会の設置の要綱、租税証券
制度に関する参考意見、それから
中小企業の
協同組合法案に対する意見といたしまして、この
中小企業協同組合は非常に結構な意見でありますが、
行き方によ
つては必ずしもそれがそう行かんので、角をためて牛を殺すようなことがあ
つては困るというようなことを、これは杞憂に終れば結構なのでありますが、そうしたことで先程の
お話がありましたように、工業は百人、商業は二十人というようなことを限度としてやるというが、併しここで先程公正
取引委員会の許可を得る場合は、その
組合は私的独占禁止法二十四條第一号の要件を備える
組合をみなす特別の特例を設けること、
協同組合の事業として納税に便宜を図るために
預金の斡旋等をとること、というようなこと等も書いてありますので、これも時間の都合上省略いたします。これはこのまま書類として提出いたします。尚又この事業は大きいばかりではいかんので、小さくてもいいのだ、そうしなければならないので、エフェクチーヴ・サイズ、適当な大きさを
考えないものは悉く失敗に終るということを
考えます。先程申しましたことは私の書いたものでありますが、それも一緒に出します。尚又
中小企業に対する要望、これは全般的な要望でありますが、
東京商工会議所の要望でありますが、これも一緒に提出いたします。そういうようなわけなのであります。尚時間の関係がありますので、甚だ雜駁でありますが、以上申上げたようなわけであります。