○土橋
委員 ただいまの御答弁で
政府は語るに落ちたと思う。それは
労働基準監督に從
つて、的確に各業者の機械設備、あるいは機械の中身、あるいは
工場の設備の点檢を嚴重にするならば、災害は起らなか
つたであろうという場合もあるし、また意識的に
工場主が、たとえば東京都西多摩郡の
日本セメント西多摩
工場の例を引いて見ますと、直径一間半もあるようなかましかも長さが四十メートル、ないし五十メートル、こういうかまが回轉してセメントを焼くのでありますが、ところがこのかまは十五年
程度の延命数しか持
つていないことが科学的にも立証され、あらゆる面からいわれておるのであります。ところが今日二十四年ないし二十五年
使つておる。そうしてかまに亀裂を生じたというような場合に、
労働基準監督署がこれを十分監督して、業者に対してもつと前に、こういうかまをいつまでもや
つてはいかぬではないか、とりかえなさい。こういうことを言う責任が國家にある。ところが業者の方でも、監督官もこれをやらないで、水をぶつかけてはや
つている。そうして中のれんががとれてしま
つて、側はだが熱くな
つて、まつ赤にな
つて來ると、水をぶつかけてはどんどん回轉さしておる。こういう
情勢を監督官も、企業家も、
資本家も容認しながら、それによ
つて起る災害は、
労働者の犠牲と負担においてこれがまかなわれるような傾向を來すわけであります。從
つてこういうことを
考えた場合に、
政府のそういう監督行政が適切でないために起
つて來る機械なり、設備なり、階段なりあるいは天井なり、強風なり、あらゆるものについて、三年、四年について一回しか監督ができないというような機構を持ちながら
——これは
政府の全責任においての監督行政が適切であれば、そういう災害は十分予防ができるのである。私が言いたいことは、
労働者諸君の不注意と過失によ
つて災害をこうむる場合はごく少いのであ
つて、國家が善導し、國家が監督行政を適切にし、なお
資本家側の諸君がもうけることばかり、ふんだくることばかりや
つてないで、もつと正しく機械の延命数、あるいはその機械作業能率全体を
考えて、これはただちに直さなければならぬ。そういう良心的な
資本家諸君は、
日本では寥々たるものであると思うのであります。こういう事態について、
労働省がこの災害補償
保險法を制定するにあた
つて、今
春日委員からも御
指摘があ
つたように、これを單なる一般民間における
保險法の原則に從
つて、いわゆる
保險加入者の共同防衛のためにやるというのではなくして、やはり災害保償
保險でも、
失業対策に関する
保險でも、これは國家がもつと強く
労働者階級諸君のために、大きく
保險額のわくを越えて、
保險の原則を越えて、國家、
資本家の全額負担によ
つて、
労働者の救済をするという措置が講ぜられるべきである。もしこれを普通の養老
保險とか、あるいは人の
保險とか、物の
保險のような
考え方で、
保險の範囲内において、
保險経済なり、
保險の経理能力の範囲において
考えるならば、こういう
保險はやらない方がよろしい。從
つて私はそういう
意味から、この
労働者がこうむるであろうところの災害については、むしろ
労働者の過失なり、不注意というものよりは、
資本家の諸君が適切なる階段の設備をしないとか、あるいはすべるようなものについては、十分なゴムを敷かないとか、そういうことから起るので、機械の設備について十分な機械の延命数、事務量、あるいは
生産高等によりて、これを逐次やるように、國家が嚴重なる監督行政を行わなければならぬと同時に、
資本家諸君がこういう災害保償費を出すということ自身は、
資本家諸君の恥である。これは
日本の
産業状態がいかに幼稚であるか、いかに
資本家諸君がもうけるために一切の
労働者を犠牲にしておるかという証左でありまして、それがこの
労働者災害補償保險法が出た根本的な原因である。從
つてこういうものがないようにする措置を、
労働省において
考えておるかどうか、この点を明確に御答弁願いたいと思うのであります。