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青野委員 齋藤長官に
——法務廳の
関係も同様でありますが、せつかく御出席していただいておりますので、この機会に、ほかの質問をさしおきまして、一番最初にお尋ねいたしたいと思いますのは、これは日本の炭鉱
労働者の半ばを占めておりまする福岡縣の筑豊炭田の一部に起
つた問題でありますが、その影響は、石炭増産の上に非常に大きい問題を投げておる問題であります。福岡縣遠賀郡香月町で、前の縣
会議員のある人が、暴力團のために殺害をせられた。それの原因は、町有林の拂下げの不正問題に端を発したのでありまして、殺害せられた人は民主主義擁護同盟の会長であ
つた。いろいろな対立
関係もあ
つたと思いまするが、この問題が非常に大きな影響力を持
つておる。そしてこういうことが過去において、私どもの知
つておりまする範囲でも、二十年間ぐらい日常茶飯事のように繰返されて來たのであります。由來香月町という所は、有力な代議士の諸君も出ておりましたが、沈黙の町と言われております。
暴力行為に対して
一つも町民の諸君は発言ができない。この問題があ
つたときに、福岡の有力な新聞記者が自動車で参
つて、公正な報道をしたために、非常に生命の危險にさらされて、一里も離れている所に宿をと
つて、その調査に行かなければならぬ。小倉の檢察廳の諸君は、命がけで調査をしなければならぬ、こういうような土地柄であります。それが遠賀郡、鞍手郡、嘉穂郡、田川郡等、筑豊炭田一帶にこの
暴力行為を日常茶飯事のごとく繰返しておる人々が、裏面で非常に繁密な連絡をと
つておりますので、労働
組合は弱体化し、あるいは御用
組合化して來る。戦闘的な労働
組合の
指導者は、常に生命の危險にさらされておる。たまたまこの問題の将來に大きな影響があるのであります。
警察署長は七、八名の
警察官ではどうすることもできない。これは
一つの実例でありますが、私どもが昭和三年、五年、七年の衆議院の選挙をいたしまするときには、五、六名の諸君が、あいくちと棍棒で非常にひどい目にあいました。今代議士にな
つて出て來ました田代文久君は、数回にわた
つて暴力団に狙撃せられた。炭鉱團管の問題のときには、水谷前
商工大臣、鉱工業
委員長伊藤卯史郎君等に対しては、二人とも暗殺團を組織して東京までつけねらわれた。そういうようなことで、事実か、事実でないかわかりませんが、とにかく正しいことを正しいとして率直に主張すると、必ず
暴力行為がつきまとう。これは
警察力の不足もありまするが、こういう
事件が発生して、これは摘発、檢挙して嚴罰に処すということよりも、
未然に防ぐという方法が今までとられておりません。
警察力も、
地方自治
警察が非常に弱体化しておる。あるいはこれと密接な裏面的な
関係もある。明らかに町有林の拂下げ問題は不正であるが、町民の諸君は一口もこれに対して抗議を申し込むことはできない。先頭に立つ者は常にこういう災厄がある。これに対して、私が巷間聞くところによりますると、
関係筋も今度の問題については非常に重大な問題であるということであります。この問題について法務廳
関係はもとよりでありまするが、
國家警察本
部長官として、この筑豊に巣を食うて、四、五十年間非常に大きな勢力を持
つておりまするこうい
つた暴力行為を絶滅するためには、大体どういう御
意見を持
つておるか、生やさしいことでは根本的な解決はできないと思いまするが、放任をしておりますると、こういうことが常に繰返されるのであります。たとえば共産党、社会党の候補者が演説会をやりますると、あるいは遠賀川の堤防で自転車に襲撃を受けて、自動車はこわされてしまう、あるいはわれわれの同志が堤防に引きずり出されて、なぐり飛ばされる、演説会場になぐり込みをかける、白晝どすを持
つて会場にあばれ込んで來る、こういうようなことで二十年間繰返されておる所です。その根は絶対に枯れておりまするが、これが労働
組合運動の上に、石炭の増産の上に、非常に大きい影響を持
つておるということを
考えておりまするので、この点について
國家警察本
部長官としてのお
考えを、ひ
とつこの機会に承
つておきたいと思うのであります。そのほかに質問もありまするが、
齋藤長官の
関係がありまするので、これだけ一應御質問したいと思います。