○平田(敬)
政府委員 では
所得税の算定の基礎につきまして、御
説明申し上げたいと思います。
所得税は御承知の通りに源泉
所得税におきまして、前
年度予算に比べまして五百八十億、申告
所得税におきまして六百七十二億、合計いたしまして千二百六十億という増加を示しております。六割九分の増に相
なつております。これにつきましては、所得の
計算その他相当各種の統計に基きまして、算定いたしているのでございますが、まず税法によりましても、実は何ら改正いたしませんでも、前年の改正の平
年度化によりまして、基礎控除と扶養控除につきましては若干の引上げになります。昨年は御承知の通り年額から申しますと、基礎控除は一万三百二十五円の控除をいたしたのでございますが、それが本
年度は一万五千円になります。それから扶養控除におきましては、昨年は千百九十五円控除しておりましたのが、本年は千八百円になるのでございます。從いまして事業所得等の場合においては、これは完全に適用になります。ただ勤労
所得税の場合においては、源泉でございますので、すでに本
年度の額を毎月の月給から昨年の六月十五日以後差引いております。從いまして勤労所得に関しましては、実質的に今までの毎月の課税額に比べますと変化はございません。年額で見ますと、さようなことに相なるのでございます。さような点も一部においては
計算の要素に入れて算定いたしたのでありますが、まず給與
所得税でございますが、給與
所得税におきましては、大体二十三
年度の課税
見込み人員及び所得金額を基礎にいたしまして、雇用、賃金、その他の点を考慮して、二十四
年度は五割五分の所得の増加を見込んでおります。このうち雇用を見る場合におきましては、通常で行きますならば、大体百四パーセントぐらいになるじやないか、こういう見方をとつておりますが、本年は行政整理等の
関係もございますので、若干低目に見ているのでございます。賃金につきましては最近までの工業平均賃金等をもとにして推定いたしたのでございます。それによりまして
計算いたしまして、大体課税所得を推定し、それに対して平均所得に対する税率を適用しまして税額を求めて、それに対してさらに累進率の適用を受けます結果若干の増になりますが、それを一〇%増と
見込みまして
計算して参りますと、さつき申しましたように
予算額において千二百二億という
数字が得られるのでございます。最近の
状況から見ましても、勤労
所得税は月に大体百億ちよつと足らずぐらい現実に入つておりますので、この金額は今後賃金水準が現在で安定すると考えましても、確保できるのじやないかと考えております。
問題はむしろ申告
所得税にあると考えますが、申告
所得税についても、同様な方法で算定いたしたのでございます。まず所得におきましては、農業所得においては生産と
物價との
関係を考慮して、昨年に比べて二割七分の増を見ております。課税が暦年になりますので、昨年の暦年に対して二割七分の増を見ております。営業におきましては、農業のよりも生産の増が若干よけいに考えられますので、三割一分の増を見込んでおります。そういたしまして申告
所得税全体で二割九分、約三割の増加を見ております。それによりまして課税所得を推定いたしまして、それに対して先ほど勤労
所得税について申し上げましたと同じように、それぞれ税額を求めまして算定いたしたのでございます。一番問題になりますのは、算定しました税額のうち、何パーセントがはたして当
年度の
収入になるだろうか、この点が先日の
予算委員会におきましてもお尋ねがあ
つたのでありますが、本
年度におきましては大体七十六パーセント
程度徴收可能という
計算にいたしております。この七十六パーセントがはたして可能であるかどうかということにいろいろ問題があろうかと思いまして、実際のところにおきましては、私どもあらゆる方法によりまして、徴収確保に努力しなければならないと考えておりまするが、大体この
程度に
見込みますれば、
数字といたしましてはさような
数字が出て参るのでございます。
結果から申しまして、どのくらいのものになるかということを御参考に申し上げますと、勤労所得者の納税人員の見込が千百四十万人
程度になるように見込んでおります。一人
当りの平均所得が年額九万円、それに対しまして本
年度の課税所得金額が一兆二百九十億
程度を
見込みまして、税額は先ほど申し上げましたように千二百億になるのでございますが、そのうち配当利子等に対する分が約三十八億ございまして、純粋の勤労
所得税だけの分は千百六十三億という
数字に相なるのでございます。それから農業におきましては、大体課税人員を三百五十四万人ほど見込んでおります。平均所得が八万六千円、課税所得におきまして三千六十八億、それで先ほど申しました方法で
計算いたしまして、本
年度の
収入見込み額が四百九十七億
程度農業における
所得税を見込んでおります。それから営業におきましては、課税人員が二百二十八万人で、平均所得が一人
当り十七万三千円、課税所得におきまして三千九百五十三億、そういたしまして先ほど申し上げました方法で税額を
計算いたしまして、本
年度の
見込みは千百七十億ほど見込んでおるのであります。その他の分も若干合せまして、申告
所得税の税の総額におきましては千九百億、勤労
所得税の源泉の分を合計いたしまして、三千百二億という
数字を一應算定いたしたのでございます。
從いまして一番問題は、先ほど
大臣もお話いたしましたように、申告
所得税をいかにして徴収するか、というところに問題があると思いますが、今までの経験にかんがみまして、私どもとしましては、極力ひとつ本
年度は申告指導と申しますか、申告によつて税が納まるような方向に、全力を上げて行きたいと考えております。そのやり方といたしましては、農業所得等につきましても、昨
年度は標準率を公開いたしまして、ところによつては相当いい効果を上げているところもあります。現に北海道のごときは、納税者の九十パーセントぐらいが申告で納まりまして、更正決定をいたさなか
つた事情もありまするが、本
年度はひとり農業のみならず、営業等におきましても、極力事前に申告の指導をいたしまして、それによつて納まるようにいたしたい。しかしながら最近の
状況からいたしますると、なおやはりそれだけでは完全な目的は達成し得ないということが考えられまするので、この方におきましてはできる限り、納税者の実地について税務官吏がよく
調査するように、このことをさらに徹底いたしたいと考えております。ただ遺憾ながら熟練した税務官吏が多数いないというところが非常な難点でございますが、しかしその点も今まで二年の経験があ
つた者が三年になりますと、よほどまた
程度も違つて來ますし、さらに全般的に組織等につきましても、でき得る限り有効な労法を考えまして、極力納税者の実地について
調査を徹底いたしまして、実額をとらえて、それによつて賦課をいたしまして、紛爭を少くして納税するようにいたしたいと考えております。それから申告
所得税の実際の納税上におきまして一番問題になりますものは、結局最後まで税金を納めないで、更生決定が來た際に一ぺんに納める。そこで非常に無理があるというところに私ども難点を感じておりますので、本年は特に納税準備預金という制度を設けまして、この預金の制度を極力事前に利用していただきまして、たとえば收入金の一部を必ず毎月預金するようにしておくというような方法を、納税者にやつていただきますならば、今までに比べまして、よほど納めやすくなるのじやないかと考えております。さようなことにつきましても極力普及をはかりまして、円滑にしかも適正に徴収するように心がけたいと存じます。