○
猪俣浩三君 私は、
日本社会党、
日本共産党、
労働者農民党を代表いたしまして
緊急質問を行いたいと思うのであります。
すでに
新聞に
発表せられておりまする
通り、昨夜の
都議会におきまして
警察官の
乱暴事件があ
つて、そのために死者が出たというのであります。今、その
事件の
愼相につきまして、
責任ある御
答弁を願いたいと思う。われわれの
調査するところによりますれば、いわゆる
傍聴席の
階段におりましたるところの
橋本金二という都電の
柳島営業所の車掌であります二十五歳になる
青年がスクラムを組んでお
つたのを
警察官が突き落とし、これを
足げにかけまして、この
足げにかけられました傷が
致命傷だというのであります。外見的には下
顎骨の下が紫色にかわ
つておるのでありまして、これが
致命傷らしいのてあります。單に
階段から落ちただけで、かように死亡するということのないことは、常識上わかることでありまするが、ほかに
骨析もない、何らの外傷がない。ただ下
顎骨の下に、ど
ろまみれのくつでけられたか、こん棒でたたかれたか、鈍器でも
つてたたかれた傷あとがあ
つて、これが
致命傷にな
つたというのであります。そこではたしてこれはいかなる
原因によりましてこの二十五歳の元氣な
青年が突然死亡するに至
つたか、これにつきましての
愼相の御
発表を願いたいのてあります。
毎日
新聞の報ずるところによりますれば、その友人の
目撃者が、これが三階から突き落とされて落ちて來るのを二階の中問でささえようとしたが、ささえ切れず、それが下に落ちたのを、
警察官がけ飛ぱした、かようなことを申しておるのであります。先ほどまたその
同僚諸君が見えられた話にも、それを裏書きしておるのでありまするし、中央大学の
大学新聞を編集いたしておりますところの亀山という人が、それを自分も目撃したと称して、その
証明書を
提出いたしておるのであります。かような次第でありまするから、ただこればデマであるとか、
警察官が何ら
関係がないとかいう問題ではないと思うのでありまして、詳細に明確に御
発表を願いたいと思う。
私
どもは、この話を開きまして、どうも
警察官の
暴行ということが
眞実であるのではないかという
感じを受けることは、近
來警察官の
態度が、ややもすれは粗暴になりまして、はなはだ憂うべき現象を來しておる。これは衆議院の
法務委員会で問題にな
つたのでありますが、徳島市におきまするところの
國家警察が、二十九歳の六尺ゆたかな
強盗犯人と、十八歳の五尺になるかならぬかの貧弱な少年を誤認して、ピストルで射殺してしま
つた。しかも射殺後の取扱いが、はなはだそれを目撃いたしておりました周囲の
人たちの顰蹙をかうような
状態で、手と足とをめいめい持
つてこれをトラツクの上にほうり上げたというようことを言われておるのであります。これに対しまして、
法務委員会は
視察団を派遣するように
運営委員会にお願いしたはすでありまするが、かようなことが行われまして、いわゆろ
基本的人権に対しまするところの
尊重観念というものが一般的に低下しているのじやないかという
感じをわれわれは持
つておるのであます。(
拍手)
この
基本的人権のことにつきましては、われわれが今ここに呶々申し上げるまでもないことでありまするが、これはわが
憲法におきましても最重要なる中心的な命題でありまして、この
基本的人権が侵害せられるような、いかなるささいなる
状態も許してはならぬ。(
拍手)われわれ
民主國会の
同僚といたしましては、ことに身をも
つてこの
憲法を守り、
國民の
基本的人権を擁譲する立場に立たなければならぬのでありまするがゆえに、私
どもは、この
警察官の
行動に対しましては特別な神経を働かせる次第であります。
かような
状態で、私
どもは、
警察官がこの
警察官職務執行法の第七條を濫用しないようにということを、この
法律のできるときに、きわめてしさいに
政府に要求したのでありますが、どうもかようなことがたびたび行われるところを見ますと、こういう
法律も、これは改正しなければならぬのじやないかと思われるのであります。こういう
法律の陰隠れまして、
武器を使用してもよいというようなことが濫用されますると、
暴行に陥りやすいのでございまして、今回の
東京都におきましても、みないかなる
武器を持
つてお
つたか知らぬが、
こん俸様のもので頭を乱打され、蹴とばされた者が数々あるのでありまするから、これに対しましては徹底的な御
調査を願いたいのでありまするし、その御
報告を願いたいと思う。いやしくも
基本的人権に危害を加えるやの
行動に対しましては徹底的なる
態度をと
つていたたきたいと思うのであります。
なおこの際申し上げたいことは、
昨晩の
都議会の
警察官の
不祥事件というものも、これは結局におきまして、いわゆる公要
條例が上程され、これが制定せられるのじやないかという心配の余りに、
労働組合その他の
團体がニの
傍聽に出かけて
行つたのであります。この
保安條例なるものを各
自治体においてつくるということは、これは私は
日本の
憲法の
基本的人権を擁護するという
根本的態度から見ますると、ゆゆしき大問題であろうと考えるのてあります。(
拍手)かかる
憲法を蹂躪いたしましたるところの無謀なる
條例が次々にできるときに
不祥事が起るのでありまして、まだこの
條例ができる幾多の形勢が見えるのでありまするが、その都度に、かようなはなはだ
國民として悲しむべき
事態が起らぬとも限らぬのでありまするが、私はその点につきまして、やはり
政府の御
見解を承りたい。
この
保安條例なるものは
地方自治法の第十二條から出ておると思いまするが、
地方自治法の第十四條では、
法令の範囲内においで初めてこれをつくることができる。
法令といえば
法律政令であります。こういう
政令というような下位な
法規によりましても、それに背くようなものは絶対つく
つてはならぬというふうに嚴重な制限があるにかかわらず、ただい
まつく
つておりますところの各
都市におきます
保安條例なるものは、
法令どころか、
根本法規であります
憲法の大
精神に非常に違反しておると私は確信を持
つておる。(
拍手)これは、かかる
地方自治体というようなものによりまして
地方の
自治体が
條例をつくり、これに刑罰を科するということは、極端に狭く解釈することが
民主國家の常態であります。これが、いやしくも
憲法の成文はもちろん、
憲法の全
精神にも背反する場合におきましては、
断画としてかかる
條例をつくることは阻止しなければならぬと思うのでありまして、
憲法の第十九條をわれわれは今一たび見る必要がある。そろそろ忘れかけているのじやないかと思われる。
御承知の
通り、
憲法の第十九條には「
思想及び
良心の自由は、これを侵してはならない。」と書いてある。その第十九條を保障するために、
憲法の第二十
一條には「
集会、結社及び言論、出版その他一切の
表現の自由は、これを保障する。」と書いてある。いわゆる
示威行進なるものは、
思想の一つの
表現の自由ではありませんか。(
拍手)
表現の自由でなくして何だ。一定の目的を持
つている者が
集團的行動をする、これは
表現の自由であります。これを彈圧しようとすることは
憲法の第二十
一條にも反する。
從つて、第十九條の
思想及び
良心の自由というものを阻害することに相なるのであります。なお、第二十八條にある
勤労階級の
團体行動に制圧を加えることに相なる。これは
りつぱに憲法の
精神に私は違反しておると思う。いわゆる縣会のような、あるいは
都議会のような
自治体が、罰則を設けまして、
憲法が
言葉を大にして保障いたしておりますところの
基本的人権を制圧するがごときは、ま
つたく
憲法の逸脱と申すよりしかたがないのでありまして、もし
國画が
憲法の番人でありますならば、これらの
行動に対しましては何らかの
対策を講じなければならぬと私は思うのである。のみならず、なお私が
政府に対してただしたいことは、これらの
大阪あるいは
新潟各地にありまするところの
保安條例なるものが、はたして
憲法の大
精神に違反しないものであるかどうか、この確答を顧いたいのである。過般
法務委員会におきまして、
共産党の
梨木委員が
法務総裁に対しまして、この
保安條例は
憲法違反の疑いがあるが、どう考えるかという
質問をしたのに対しまして、
法務総裁から、多少
行き過ぎだと思うという御
答弁があ
つた。あるいは
法務廳の
調査意見長官からも、さような
言葉があ
つたのであります。しからば、多少
行き過ぎているというようなことを――いやしくも
憲法の
基本的人権、これが多少とも
行き過ぎているような
感じがあ
つたならば、よ
つても
つてすみやかに適切なる処置をとらなければならない。(
拍手)
憲法の第九十九條には何と書いてあるか。これをいま一應われわれは読み返してみる必要がある。(「
憲法を
知つているのは君だけではないよ。」と呼ぶ者あり)
知つてお
つても聞いてください。「天皇又は摂政及び
國務大臣、
國会議員、
裁判官その他の公務員は、この
憲法を尊重し擁護する
義務を負ふ。」、こういうふうに書いてある
政府は多少
行き過ぎであると考えたならば、
憲法を擁護するために、その
義務を盡していただかねばならぬと思うが、いかなる
義務を盡されておるか承りたいのであります。(
拍手)
さような次第でありまして(「
憲法を守るためには当然だよ」と呼ぶ者あり)この
保安條例そのものをつくることに非常に私は大きな関心を持
つて、この
阻止運動を起さなければならぬと思うのでありまするが、それがあたりまえだというような御
見解の方もあるので、私はこの
憲法を読んでいるのであります。私
どもは、この
憲法の
精神を具現する意味におきまして徹頭徹尾闘わねばならぬのであります。
昨晩の
都議会におきまする
事件も、結局におきまして、
労働組合その他の
勤労階級が、この
憲法を蹂躙せんとするところの
公安條例を阻止すべく
傍聽に出かけて
行つたのでありまして、
不祥事の
原因はそこに発している。かようなことが次々と行われますならば、いかなる
不祥事が
各地において起るかもしれないのでありまして、この点から見まして、
政府はいかなる覚悟を持ち、いかなる
対策を持
つているか、お尋ねしたいと思うのであります。
なお私は、この
警察官の
昨晩の
行動は、
國家警察であるか
自治体警察であるかわからぬのでありまするが、
警察の
指揮系統につきまして
責任の所在を明らかにしていただきたいと思うのであります。
國家警察の
最高の
責任者は何人であ
つて、
自治体警察の
最高の
責任者は何人であるか、その
指揮系統がどういうふうに相な
つているのであるか、監督の
系統がどういうふうに相な
つているか、お尋ねしたいと思うのであります。このことは、
公安條例が
都市においてつくられると、その
責任は
自治体警察がこれを持つ。ところが、その近郷の市町村には何らこんな
條例はない。そうすると、一歩
大阪なら
大阪の市外に出ますと、もうてんでそんな
條例がないから、これはか
つて次第に何でもできる。
憲法の
精神を最もくんで自由にやらしている。一歩
大阪に入ると、
デモ條例というものがあ
つて、下手やるとひつくくる。まことにこれは、
封建時代に各國に各藩がありまして、みな
法令を異にしてお
つたような
状態を呈しておるのであります。かような
法令の
分割化ということが、はたしていいことであるかどうか。これでは、私
どもは一々、ああここは
大阪だな、ここはどこだなというて、地域を判定して
行動をやらぬと、いつ
ひつぱられるかわからぬというような、まことに不安な
状態に置かれるのでありまして、かようなことは、どういうふうに考えましても
條理の通る問題ではないと思うのであります。かようなことでありますから、かような点について
政府はいかなるお考えをお持ちであるかお漏らし願いたい。いや、この
公安條例なるものは、これは
自治体のやることであ
つて、われわれの干渉すべきことでないなんということをおつしやるならば、それははなはだ無
責任きわまるものでありまして、いわゆる第九十九條のこの
憲法を擁護する
責任はお互いにあるのでありますから、いわんや
政府がかようなことを看過していいわけはないのでありまして、適切な指導をしなければならぬと思う。あるいは声明を発しなければならないと思う。さようなことについて
政府はいかなる構想がおありであるか、お尋ねしたいのであります。
なお、
東京都の
警察官の問題につきまして実相を
発表していただくとともに、その
責任者に対してはいかなる
態度をも
つて臨まれるのであるか、これもお漏らし願いたいと思うのであります。
以上私は、
昨晩の都会の
騒擾事件とその
眞相をお尋ねするとともに、なおこの
公安條例につきましての
政府の御
見解、これが
憲法違反であるのかないのか、あるとすればいかなる
対策をお講じであるか、さような点について御
答弁願いたいと存ずる次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣林讓治君
登壇〕