○田中堯平君 ただいま上程されました五つの
法案のうちで、
運輸省設置法案、
労働省設置法案、この二案について、
反対討論を
日本共産党を代表していたします。
まず
運輸省設置法案についてであります。この
設置法案だけを見ますと大した問題でもなさそうでありますが、実は
定員法と表裏をなし、相一体とな
つて作用するものでありまするので、この点が非常に重点であると思うのであります。
定員法をのぞいて見ますと、結局國鉄六十二万の労働者に対して約十二万を
整理するということにな
つており、これを法制化するための
法案が本
運輸省設置法案とな
つておるような次第であります。
從つて、首切りを法制化する本
法案には、第一に
反対しなければならぬのであります。
第二点は、一方ではこのように労働者に対して大幅な首切りを用意しながら、この
設置法案を見ると、他方では高級
官僚のポストが一ぱい用意されております。たとえば親友
審議会というようなもの、これがいかに冗官であるかは後ほど述べますが、また運輸参與というような
制度を設ける。今日各
地方に鉄道局がありまして、九人の鉄道局長がおるのでありますが、これは今度六月一日実施のコーポレーシヨン
制度の時ともなりますと、この鉄道公團へ各局長連がそのままいすを温存移行されるのであります。ところが、その上にまた今日の鉄道局長と同じような意味の陸運局長なるものを九名ほど各
地方に置く。結局
行政整理といいながら、上の方のポストは二倍にも三倍にもなる。局長が二倍になれば、
從つてこれに附随するところの部長、課長といういすがまた二倍になる結果になるのであります。すなわち、一方には十二万というような出血
整理をやりながら、一方上の方の連中に対しては何もしないのみか、むしろそのポストを増加してやるというような、こういう不都合な案に対しては、われわれは何としても賛成できないのであります。
第三番目の
理由としては、一應この
法案を見ると、いかにも民主的にできておる、まことに巧妙にできております。ところが、よく調査をしてみると、一向民主的ではない、
まつたく非民主的であります。たとえば鉄道
審議会の
制度を設けてありまして、運輸
行政についてのおよそ重要
事項は、
大臣はことごとくこの
審議会にかけなければならぬということにな
つております。しかも、法の形式上は單なる諮問
機関にな
つておりますけれども、この
審議会にかけなければならぬ
事項については必ず運輸
審議会にかけ、かつその決定が上申された場合は、運輸
大臣がこれに拘束されることにな
つております。
責任政治の治下である今日、運輸
審議会のごとき一介の諮問
機関であり、どこに対しても
責任を負わぬような存在が重大
発言をなし、これが
政治の上に現われて來るということは、いかに非民主主義的であるかということの特徴の現われであります。
その他これに類する大小の例が、この
設置法案には随所に現われております。また海運
関係の諸法規におきましても、先ほど
社会党の
提案によ
つて、海難審判所が海上保安廳の管下に納ま
つておつたものを、切り離し独立の外局にしたということ、これは
共産党も大いに賛成であり、
共産党は最初から積極的にこれを
提案しておつたのでありますが、これさえも、原案においてはそういうような不都合が行われており、その他
修正せられない部分でたくさんあるのであります。
時間の
関係上詳細には申しませんが、これを要するに、
運輸省設置法案は非民主的であり、労働者の大幅首切りを用意しており、高位高官だけは温存するという
制度であ
つて、この三つの点において、私どもは断じて賛成することができないのであります。
民主自由党並びに
與党の皆さんは、こういうふうに、先ほどの
参政官設置の問題もありましたが、上の方の
官僚をやたらに優遇される。
官僚を優遇してどうなされるか。そういうふうなポストを一ぱいつく
つて、私どもの考えによると、結局これは、今や
日本の資本主義が行き詰ま
つて、從來のような民間における
独占資本としては成り立たなく
なつた、そこで
國家や
官僚というような権力
機関に
日本の資本主義が結びついて、官製的、
國家的な有力なる
独占資本としてこれからや
つて行こうとする、この
陰謀が露骨にこういう一片の法制に現われておるとわれわれはいわざるを得ない。根本的には、こういうためにわれわれは賛成ができないのであります。
最後に労働省
設置の問題でありまするが、
簡單にこれに触れますると、以上申し上げましたことは、およそ
労働省設置法案についても言えることでありまするが、ことに一言つけ加えておきたいことは、労働省は、私が言うまでもてく、これは労働者
諸君に対するところのサービスの省であるといわれておつた。しからば、今度の
設置法案を見ると、サービスを
強化する方向に行
つているか。ノーであります。全然正
反対にな
つている。今度の企業整備、
行政整理によ
つて莫大な
失業者が出て來るのでありますが、これを対象とするところの、たとえば職安のポストだとか、あるいは基準局のポスト、こういうふうなものは大
整理されておる。縮小されておる。ますます
失業者がふえて困る時代になるのに、これを対象とする
機関はいよいよ弱小化して來る。こういう一事を見ましても、この
法案の中には、さらに労働者に対して、また失業問題に対して合理的なる熱意が盛られておらぬということが指摘できるのであります。
時間がありませんので、この程度にとどめまするが、これを一貫して考えまするに、結局運輸省の
設置法案にいたしましても、
労働省設置法案にいたしましても、ただ高級
官僚だけを温存拡大して、そうして
日本の資本主義の勢力をこれに結合せしめて、これで勤労階級を台なしにするという結論にな
つて來るのであります。たとえて言うならば、馬はやせ細る。その上に威張
つておるところの大將だけがやたらに肥えて満腹して來る。これでは戰爭にはなりません。これでは何もできない。澆季末世の一つの現象でありまして、一つの権力社会
組織がまさに倒壊せんとする前夜をここに象徴しておるものであります。これにもかかわらず、ますます皆さんが馬上の大將だけをふやし、太らせるようにという政策をなさるならば、結局みずからの倒壊を急ぐことになる、かように断ぜざるを得ないのであります。(
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