○風早八十二君 私は、
日本共産党を代表して
本案に
反対の
意見を表明いたします。
今、民自党の諸君もきわめて痛切にこの日銀法に対してはいろいろな批判を加えておられますように、本
本案は、その
内容から申しまして、またその背景から申しましても、きわめて支離滅裂、矛盾撞着をきわめておるしろものであります。
提案理由の説明書は、
財政と
金融との分離に伴う新しい事態に即應するために日銀の機構と機能を整備すると称しておるのでありますが、この前提は完全に間違
つております。先ほど田中織之進君も指摘せられたのでありますが、
財政と
金融の分離などは、これは官僚の頭の中にのみ存在するものであり、紙の上では書くことができるのでありますけれども、事実の上では、そんなものは全然存在しておりません。
事態の実際というものは、
財政と
金融とがますます緊密さを加えておりまして、すなわち
國家と
金融資本との癒着、結合というものの事態をなしておるということは、十分に明らかなのであります。問題は、むしろこの両者の結合の仕方にあるのでありまして、この点におきまして、同じ戰後経済におきましても、九原則以後の最近の
段階においては、新しい特徴がつけ加わつたことを見のがすわけには行かないのであります。その特徴というのは、
金融資本が今までよりももつと有効に、もつと効果的に
國家権力を使いこなそうとしておることであります。戦後の巨大な銀行資本というものは、自己が支配しておりますところの産業資本に対する融資の負担の一部を、あるいは補給金、あるいは各種の
政府出
資金の形で、
財政負担、言いかえますれば税金負担に負わせて参
つたのであります。しかし、その結果は
財政の際限のない膨張になつたことは御
承知の
通りでありまして、巨額の復金債その他事実上の赤字公債の発行、その日銀の引受け、やがては悪性
インフレ等、結局相当の負担が
金融資本、特に銀銀行資本の側にはねかえ
つて参つたのであります。そこで、これではいけない、もつと身軽にな
つて産業への支配力を
強化しなければならないというので、今度はその
財政負担を文字
通りとことんまで税金負担にしわ寄せをするということを決意したのが、九原則を悪用した吉田民自党
政府の現在の政策なのであります。(
拍手)二十四
年度予算案が、一般会計の赤字公債はもとより、復金債の発行をも停止して、地方におきまして、これは民自党の諸君もはなはだお困りのように、地方の配付金というものを半減いたしましことは、すべて以上のことを
意味するものにほかならないのであります。
しかしながら、それは負わされておりまするところの犠牲負担というものが軽くなつたことを
意味するものではないのであります。一部特権的な資本家に対する二千二十二億円に上ります莫大なる補給金、八百四十二億円に上りますところの
政府出
資金、こういうものがある限り負担が軽くなる氣づかいはないのであります。負担を直接引受けるものが、ただ日銀から他のものにかわつただけであります。
この新たな犠牲負担者というものは一体だれでありますか。「曉に祈る」ということを申しますがこれは吉村部隊だけのことではありません。今や吉田内閣のもとにおきまして、
労働者は首切りと低賃金と
権利の剥奪によりまして、
農民は低米價と強制供出と重税に加えまするに封建的なる長子相続制度の足かせによりまして、学生は学生で六・三制の御破産と大学校案等によりまして、また中小商工業者の諸君及び内外の
独占資本に結びつかないところの産業資本家の諸君は重税と
資金の締め出しとの板ばさみによりまして、また最近におきましては多数の市町村長までが地方配付金の半減によりまして、曉に祈りつつあるのであります。(
拍手)これは決して誇張でも何でもありません。
わたしが先般ここで
反対討論をいたしました、あの復金に対する融資の問題にいたしましても、復金がこのたび、その積極的なる融資をやめた。しかしながら、その回收する分だけについてはこれを融資をするということにかわ
つたのではありますが、この場合において、どこから一体その
資金を回收して行くか。そうして、これをどこに出して行くか。この場合におきまして、新たなその融資部分がきわめて限られただけに、中小商工業者に対する
金融の機能がまつたく停止せられることは火を見るよりも明らかなのであります。
さらに、今日、先ほど本院を通過いたしましたところの塩の專賣法にいたしましても、われわれはこれになぜ
反対したか。今日
日本の塩の業者というものは、まだまだ非常な遅れた
生産方式によ
つておるのでありまして、これらは現状をも
つていたしますれば、とうていその
生産費は引き合わないのであります。この場合におきまして、現在の
政府は、この
金融の道につきましてまつたく冷淡である。今日全國の塩業者がたくさん
國会に押しかけて参りまして、諸君にも訴えて参つたと思う。しかしながら、これらをまつたく無視いたしまして、無残にも見殺しにしてしま
つたのであります。
また、今大藏委員会にかか
つておりますところの
やみ金融業者に対する取締法案にいたしましても、なるほど
やみ金融を封ずるということはけつこうです。しかしながら、なぜ今日
やみ金融が横行せざるを得ないか。結局今日の中小業者の諸君は、これは一般の
金融機関が少しも相手にしてくれないから、やむにやまれずにこの
やみ金融に頼らざるを得ない。しかも、一般の普通銀行その他の
金融機関が今まで
通りその中小企業に門戸を閉鎖しているままで、この
やみ金融に対して全般的に
取締りを嚴重にするだけでは、結局これは中小企業者をつぶしてしまうという、今日の
集中生産方式の、一般的なる吉田内閣の政策の一環であると言わざるを得ないのであります。(
拍手)この吉田内閣のいわゆるデイス
インフレーション政策というものの正体は、およそかくのごときものであります。
さて、今以上のごとき判断を前提といたしまして本法案をつぶさに檢討いたしまするに、その眼目とするところは、第一に、國の
通貨信用統制に関して從來よりも廣汎な権限を日銀に與えたことであります。すなわち、從來大藏
大臣に属しておりましたところの基準割引歩合、貸出歩合などの決定の権限であるとか、あるいはまたオープン・マーケット・オペレーションの権限であるとか、つなぎ
資金の運営の権限であるとか等々であります。
かくのごとき廣汎かつ強烈なる権限を與えられるにかかわらず、他面におきまして政策委員会の構成を見ますると、ほとんど問題にならない貧弱なものであります。と申しますのは、ここに
労働組合代表やその他の民主的な
國民代表が加わ
つておらないということは別といたしましても、この
金融界の代表そのものにしてからが大した人物が得られないことは、もう十分にわか
つている。これは先般の公聴会におきましても、みな一致した
意見であつた。結局、新聞の下馬評に上
つている候補者の顔ぶれを見ましても、これははつきりしているのであります。また大藏代表、安本代表も加わ
つておりますけれども、これは
國家と
金融資本との癒着結合のシンボルとして出ているだけのことでありまして、少くも一万田日銀総裁程度の総裁ががんば
つております限り、いずれにしても歯の立つしろものではないのであります。
概してかくのごとき委員会なるものは、現在存置いたしておりますところの参與制の上に屋上屋を架する無用の長物でありまして、政策委員会、すなわちポリシー・ボードであるよりは、いわゆる睡眠委員会、スリーピング・ボードにならねば幸いであります。民自党のいる大藏委員さえ、これは失業救済委員会だと、痛いところを突いているほどなんであります。この結果は、結局ローマ法王廳日銀というよりも、ローマ法王たる日銀総裁の独裁が一層はげしくなることは、今から想像にあまりあるものがあるのであります。ただ異なるところは、対外的に政策委員会が大藏
大臣や
國会に対して直接
責任を負うことになることによりまして、ローマ法王たる日銀想像には、自己の独裁の
責任を政策委員会に轉嫁することができるという、こういう便利なものになつただけがかかつた点であります。(
拍手)これこそは、日銀法の民主化どころか、その独裁の仕上げにほかならないのでありまして、これはわれわれの最も強く
反対してやまないところであります。
日本共産党は…