○三浦寅之助君 私は、
民主自由党を
代表いたしまして、このたび提案されました
労働組合法
改正法案並びに
労調法一部
改正法案に対しまして、修正案を含めまして賛成の意を表するものであります。
労働組合の目的使命は、
労働條件の維持向上をはかるとともに、
産業の民主化と経済の興隆をはからんとすることは当然であります。刻下の急務は、長期の戰爭によりまして
崩壞に瀕した
産業を復興し、
生産の回復をはかることであります。しかして、その重大なる責務は
國民の過半を占めまする
労働階級に課せられているのであ
つて、
労働者こそは実に
日本再建の
責任と使命に輝けるものというべきであります。この
意味におきまして、
産業復興が低
賃金を
労働者に押しつけ、
労働者の犠牲においてのみなされることの不合理の許されないことはもちろんであります。それだからと申しまして、
賃金の引上げのみを要求することは、現在のこの
日本の経済的情勢下において不可能なことは申すまでもないのであります。
今までの
労働組合の性格は、階級的闘爭團体として発達して來たのであります。すなわち、
労働組合の全機能を
ストライキに沒入した、いわゆる
ストライキ團体であ
つたとい
つても過言ではないのであります。しかしながら、
日本の経済
状態は、もはやこういうような
ストライキは許されるものとは
考えられないのであります。
日本の経済を再建するために、闘爭組合の性格から脱却いたしまして、建設的でなければならにと思うのであります。(
拍手)
正しい
労働関係は、経営者と
労働者が相互に深い理解と愛情によ
つて結ばれ、その任務を自覚し、両者対等の立場に立
つて協力一致することであります。すなわち、経営者は
労働者の生活を十分に考慮し、
労働者は
生産に
責任を持つことでなければなりま
せん。そこには、搾取と闘爭にかわるに民主的経営と建設的
労働組合が生れるのであります。敗戰
日本の建設は、社会
主義や共産
主義を基調とする階級闘爭を排撃いたしまして、自由民主
主義の上に立つ強固なる
労働大衆の團結にまたなければならないと思うのであります。(
拍手)かかる立場から、今回提案されましたところの
法案を檢討しまするならば、私は、まことに建設的な、自由な、民主的な
労働組合運動を発展せしめるために最も適当なる
法案であり、この
法律案が通過してこそ初めて
労働者の生活向上ができることと信ずるのであります。(
拍手)
しかるに、この
法案に対しまして、各委員会を通じまして最も強く主張されましたことは、今回の
改正案におきまして、第一條に正当行為を明示してことであります。すなわち正当行為を明示した中に、暴力の行使は正当な行為と解釈されないという点に反対が集中されたようであります。この反対を靜かに檢討いたしますならば、從來の
労働組合運動が組合運動であるならば、何をや
つてもさしつかえはない、あるいはこれは許されるものであるというような誤れる
考えから來ておるのであります。すなわち、この
考えを進めるならば、あるいは
労働者独裁、あるいは暴力革命をも企図
せんとするがごとき
考えの人々が、これに対して強く彈圧法規であり、あるいは取締り法規であるというようなことを言うて反対するのであります。しかしながら、少くとも、いかなる
労働運動でありましようとも、この暴力行使や、あるいは何をや
つてもよろしいというような、われわれの秩序をみだし、あるいは身体、あるいは器物に対し傷害、暴力を與えるごときことは、断じて許されないことであります。
過去の
労働爭議の実情を
考えましても、重役を監禁し、あるいは課長の住宅に入
つて乱暴、強迫をするとか、あるいは金庫を破り、はなはだしきに至
つては、重役の頭の上においてタバコの火を消すというような暴力行為も行われたのであります。こういうこうを容認されて、一体健全なる
労働運動ができるでありましようか。現行法のもとにおいても。正当ならざる行為のできないことは当然でありまして、この誤れる正当なる行為の解釈をはつきりさせまして、正しい
労働運動をするがために、この暴力行為の條項を入れることは、当然すぎるほど当然と言わなければならないのであります。
さらにこれに対しまする反対は、委員会を通じ、あるいは先ほど大矢君も申されたようでありましたが、從來使用者が
労働組合の専從者に対して給料を
支拂つてお
つたことを、この
改正案についてはつきりと
禁止したことに対する反対であります。この専從者の給料が、從來誤
つたる解釈のもとにおいて
支拂われてお
つたのでありまして、民主的なる、健全なる
労働運動をわれわれが
考えるならば、いやしくも使用者の援助を受けて、使用者から専從者の給料をもら
つてるということでは、決して民主的なる健全なる組合運動とは称し得ないのであります。
しかるに
政府に対しまして、あるいは
労働組合を財政的に圧迫するとか、あるいは最低
賃金制度のない場合において、この専從者の負担を
労働者にせしむるということは、今日生活のできない
労働者を圧迫するものであるとか、あるいは
労働者の既得権の侵害であるとか、いろいろ論じられておるようであります。しかしながら、いやしくも
労働組合が健全であり、しかもりつぱなるところの活動をする場合において、専從者の給料をもら
つていることは、いかに不合理であり、かくのごときことによ
つて組合が御用化されて、健全なる発達が阻害されることは当然すぎるほど当然であります。
しかも、かくのごとき
労働組合の運動者は、常に
労働組合は何人の干渉も排斥するとか、あるいは自由なるものであるということを呼称しながら、専從者の給料だけは使用者が負担すべきものであるというようにこれを要求することは、あまりに御都合
主義であり、氣ままきわまるところの議論であると言わざるを得ないのであります。今日の
労働組合が、経済的に苦しいながらも組合費を負担し、その最も中心にあたるところの専從者の給料を負担すること、それこそ健全なる
労働組合が発達する上にも必要でありまして、この
法案に対して多く反対するということは、ま
つたくその理由なきものと言わなければならぬと思うのであります。
また、先ほども大矢君から申し上げたようでありますが、
労働組合の範囲に対しまして、組合に加入し得ない者の範囲、すなわち役員であるとか、あるいは雇入れ、解雇、異動、昇進というような人事をつかさどる監督的地位にある者、あるいは機密事項を取扱うところの
職員とかいうものに対して、これを
禁止することは当然であります。この問題に対しましても、あるいは組合を弱体化するとか、組合分裂の
政策であるとかいうような意見が行われたのでありますが、いやしくも使用者の
利益を
代表する立場にあり、同時に
労働運動に從事しない立場の人をしてこれを加入せしめるということが、いかに健全なる
労働運動を阻害するものであるかということを
考えるならば、この
規定も当然であり、いな、現行の法規のもとにおいても当然それはかく解釈すべきものを從來誤
つた解釈のもとにおいて行われたということを、われわれは
考えざるを得ないのであります。
しかも、この
法案に対しまして多く行われるところの憲法
違反の問題であります。各條項において憲法
違反を叫ばれておりますが、これは憲法そのものをほんとうに解釈しない議論であります。なるほど、憲法第二十八條において勤労者の團結権及び
團体交渉その他の團体行動権の保障されていることは当然であります。しかしながら、憲法第十三條を見ましても、「すべて
國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する
國民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」、しかもまた第十二條においては、
國民に保障する自由及び権利は、
國民の不断の
努力によ
つてこれを保持するものでありまして、
國民はこれを濫用してはならないばかりでなく、公共の福祉のためにこれを利用することは当然であります。でありますから、少なくとも公共の福祉の範囲において行き過ぎたり、また
労働運動の誤れる点に対しましてある程度制限を置くということは、何ら憲法
違反ではないのであります。しかも、これらの公共福祉の問題に対し、これを曲解いたしまして、ただ
労働者が憲法の基本的権利があるのだから、これに対して少しでも制限することは憲法
違反であるとかいうようなことをも
つて議論される、その議論自体が私は憲法
違反であると思うのであります。
時間がありま
せんから結論を急ぎますが、このたびの
労働組合法その他各條項においてこれを精査いたしましても、この組合員の平等権、あるいは役員の選挙、あるいは同盟罷業等におきまして選挙によらなければならないというような
規定をしており、同時にまた資格のある会計檢査人におきましてこれを檢査しなければならぬという
規定に対しましても、いろいろこれに対する批判があるのでありますが、いやしくも民主的な組合運動をする場合におきまして、こういう
規定によ
つて從來のごときボス幹部の排撃ができるのであります。しかも、從來の
労働組合の費用が、眞の
労働組合運動に使われた以外に、他の目的のために、あるいは政治活動、あるいは必要以外の方に使われなか
つたとは、たれが保証するでありましようか。こういうような点に対しまして、公正なる資格のある会計をつかさどる人によ
つてこれを監査して、組合の前に向
つてこれを公表するということは、一体何が惡いでありましようか。正しい
労働運動をするならば、進んでこれらの
規定を制定すべきであるということは当然であります。しかも、過去の三箇年の
労働組合運動の実績を見ましても、一部これらの誤れるところのボス幹部に指導されて、行き過ぎたる
労働運動、あるいは健全なる
労資の
関係を破壞するところの幾多の事例を
考えました際におきましても、私はこの役員の選挙、あるいはこの選挙法を
考えるということの
規定は、これまた民主的な
労働組合運動の健全なる発達のために、まことに喜ぶべきことであろうと思うのであります。
また
労働関係調整法の
改正の條項につきましても、これが一度権威ある
労働委員会によ
つて採択され、しかもその履行や解釈の点において爭いがあ
つた場合には、あるいは一度
労働委員会においてこれが当事者双方におきまして受諾せられたるところの組合
調停案、受諾後においてこれに対してある程度これが
解決まで
爭議を引延ばすということは、いやしくも
労働委員会の
調停の趣旨を理解し、
労働委員会の権威を保持し、
労働委員会の
調停をして最も権威あらしむる
意味におきましても、当然の
改正であろうと思うのであります。
私は、かく
考えました際におきまして、この
法案に反対の人々が、この
法案に対しまして、あるいは取締法規であるとか、あるいは彈圧法規であるとか、あるいは資本家擁護のものであるとか、あるいは
政府と資本家と
民主自由党の結託による、陰謀による
法案であるというようなことを言われることは、これはま
つたくこの
法案を傷つけんがためのものでありまして、かくのごとき反対は断じてその理由がないのであります。いな私は、この
法案の全体を通じまして、ことに
法案の中に使用者の不当
労働行為を明確にいたしまして、そうしてこの不当
労働行為、使用者に対するところのいろいろな制限を設けることによりましても、あらゆる点から
考えまして、この
法案こそは、ま
つたく進歩的な
法律案であり、(
拍手)また同時に眞の
労働者の生活、眞の
労働者の保護立法であるということを断言せざるを得ないのであります。
私は、かくしてわが
民主自由党こそは、眞の健全なる
労働組合運動をなすところの、最も適当なる、また最も
労働組合運動に対して理解のあるものであるということを断言するものであります。(
拍手)しかして私は、わが
民主自由党の組合運動こそ、
民主自由党の主張の立場に立
つてこそ、初めて健全なる
労働組合運動ができるばかりではない、初めてこれで
労働者の生活は救われ、また今日破壞せるところの
日本の経済情勢、長い戰爭によ
つて七割の経済力を失
つた日本の再建は、実に
民主自由党の主張する正しい
労働運動によ
つて初めてなし得るものであると思うのであります。(
拍手)
こういう
意味合いにおきまして、この
法律案が通過いたしましたならば、今日一部誤れる人々によ
つて反対の運動はされておりますけれども、わが党の立場、わが党の主張というものが十分に
労働者諸君に理解ができたならば、必ずやこぞ
つてわが党のために協力されることを確信いたしまして、私の賛成演説を終るものであります。(
拍手)