○柄澤登志子君
日本共産党を代表いたしまして、
船舶公團法の資金三億が一躍二十倍の五十九億二増資されることにつきまして、
委員会におきましては討論が十分かわされたような
報告がございましたけれども、ほとんどこれは質疑がかわされずに打切られたのでございます。
日本共産党といたしましては、今日
國家の予算に対する人民大衆の不満、租税の重圧に対する多くの不満の澎湃として起ります中に、かかる巨大の予算を十分なる
審議もせずに簡単に通過させますことに対して、まず反対したのでございます。このような形で、
法案が、期日がないという
理由をも
つて、次から次へと通過し、重大な
國民の血税を――ことに船舶公團というものは、今後船舶その他の巨大な会社のもとに資金並びに経営が戻
つて行く形にな
つているのでございまして、今後そのような独占資本家擁護のもとにこうしたことが決定されますことに対して、
日本共産党は断固として反対するものでございます。簡單でございますが、
船舶公團法改正の反対討論を終ります。(
拍手)
続きまして、
日本國有鉄道法施行法案についての反対
意見を、共産党を代表して申し述べたいと思います。
本
法案は、昨年総選挙を前にいたしました、十一月も押し詰まつたあの三十日に、わが党の熱心な反対にもかわらず急遽押し切られましたところの
日本國有鉄道
法案を施行するための
法案でありますけれども、この
法案が
日本の明治以來の國営鉄道を根本的に改革するところの重大な
法案であることは、
國会の各位が最もよく知
つているところであろうと思うのでございます。共産党といたしましては、
日本國有鉄道法が高く主張しておるものは、その第一條に掲げてございますところの、公共の福祉を増進することを
目的とするという点にあると思うのでございます。そして、その能力的な運営が保障されなければならないというのが、この施行法のまた実施されるところの
趣旨であると考えるのでございます。
ところが、私ども共産党の考えといたしましては、現在資本主義の諸國におきましても、
戰爭に勝ちましたところの諸國におきましても、
アメリカを除きました以外の國々におきましては、資本主義の矛盾のもとに、公益性を
中心とするところの鉄道
事業というものは、ほとんどその國営の形態に移
つているのでございます。
イギリスにおいてすら國営に移
つているのでございます。
從つて、敗戰後の
日本におきましては、能率的な、しかも公共の福祉を保障するところの、本
法案が盛
つておりますこの第一條の
趣旨を生かしますためには、國営
事業から切り離されて、独立採算制の公共企業体によ
つてこれが実行されるということは、そもそもそれ自体が矛盾なのでございます。
從つて、その施行法もまたその矛盾が拡大される形において現われておるのでございます。
日本國有鉄道法の施行の第一條には、内閣は、
日本國有鉄道法施行前に、同法第十
二條の例により、監理
委員会の委員となるべき者を指名することができるということが明らかにな
つておるのでございます。
日本國有鉄道法によりますと、監理委員の資格としていかなるものがあが
つているかと申しますと、運輸業者、工業、商業または金融業について廣い経驗と知識とを有する者があげられているのでございます。
先般運輸
委員会におきまして、
昭和二十四年の予算をも
つて日本國有鉄道の運営を十分に施行しますのには、國鉄労働者の血のにじむような努力以外にはないということを認められましたのは、運輸大臣並びに事務当局の各位であります。しかるに、重要なる権限を持ちますところの監理委員並びにその監理委員を基礎として選ばれますところの総裁が、その選出されますところの金融業者、工業、商業に基本を置きまして、内閣がこれを任命するということになりますならば、これは一体どういうことになるかと申しますと、公共企業体としての
日本國有鉄道というものは、こうした金融業者、商工業者、運輸業者――國鉄の現場のあらゆる崩壊と闘い、労働強化、首切りを押しつけられながらも國鉄
再建のために闘おうとするところの労働者の
意見をも無視したところのこれら独占資本の利益が、この企業の経営の
中心にな
つていることになると思うのであります。
政府は、その具体的な現われといたしまして、公共の利益を守り、能率を上げるところの方針をも
つて公共企業体に移るという、この方針をも
つて進んでおりますところの鉄道
事業に対しまして、その根本的な方針を無視しました、大衆の負担においてこれを解決するところの運賃の値上げの方針を実施したのであります。これがその最も具体的な現われとして指摘することができると思うのであります。
さらにこの
法案によりまして重要な問題は、國鉄の厖大な資産、さらにここに働いておりますところの多くの從業員の生活権、労働権、こうしたものがこの施行法によ
つて決定されるのであります。運輸
委員会におきまして
政府当局も認めておりますように、今日の國鉄の赤字の
理由というものが決して運賃の値上げにあるものでもなく、また労働者の数が多いためでもなく、まつたく戰後のインフレ政策による、独占資本の持
つておるところの、國鉄の購入する資材の値上りによるものであるということを、われわれははつきりと確答を得ておるのであります。
從いまして、共産党といたしましては、今日
國民のこうした疑惑の的にな
つておりますところの國鉄運営の方針につきまして、徹底的に
國会がこれを明らかにして、そして
國民にこれを納得させるために運輸
委員会として國政
調査を提案し、拂下げの
調査あるいは請負工事の
調査――また公共企業体に國営鉄道から引継がるべきところの退藏物資、これは営々明治以來
國民の血税と労働者の汗とあぶらによ
つて築かれたものであります。これらのものが、今日少数の金融業者や運輸業者や商業者や工業者によ
つて事由にされようとている。ことに吉田総理大臣は、國営りの鉄道、タバコその他はこれを
外國に賣り佛
つてもよろしいということを、二月四日の讀賣新聞に言明されておるのであります。しかも、この二つの
事業は、今日タバコも國営鉄道も同時に公共企業体、すなわちコーポレーシヨンにかわ
つておるのであります。
われわれといたしましては、こうした重大な時期に際しまして、
委員会は
委員会の決定でありますところの國政
調査を十分に実施いたしまして
國民の疑惑を解き、われわれに課せられましたところの
責任を十分に果して、その後においてこうした重要な
法案を
審議することを主張したのでございます。しかるに、昨日理事会も開かずに、運輸
委員会におきまして
船舶公團法の改正案が提案になりました際に、日常に遅く
なつた時間に、私ども野党側がおりませんときに、主として民自党の委員と民主党一名の委員をも
つて、
緊急動議としてこの
法案が
上程され、多数決をも
つて押し切られたのでございます。私どもといたしましては、かかる重要な
法案をかかる態度をも
つて、もしこの議会がこれを通過させましたならば、これは
國会の権威に関するものであると思うのであります。(
拍手)明治以來傳統を保
つて参りました
日本の國鉄を、ただいま自主性のないところの吉田内閣の方針によりまして、
日本の現状をまつたく無視されたような
法案をも
つて、しかもこのような
状態におきまして
委員会が可決いたされましたことにつきまして今日実は運営
委員会にもこれを
上程したのでございますけれども、私どもといたしましては断固反対して委員各位の
反省をうながし、そしてこの
法案の通過を阻止することを主張するものでございます。
なお私どもが憂慮いたします点は、
國会の
審議権がこの
法案によりましてはまつたく無視されようとするところにあるのでございます。なお
日本國有鉄道法施行法の第一條にも第
二條にもございますけれども、ことに第一條の、内閣が
日本國有鉄道法施行前に監理委員を指名し、監理委員が総裁を選出するというようなことにつきましては、これはたしか
國家行政組織法の第八條にも相反するものだと思うのでございます。
さらにこの監理委員の権限でございますけれども、監理委員が非常に強大な権限を持
つておりまして、「
日本國有鉄道の業務運営を
指導統制する権限と
責任を有する」という、原案になります
日本國有鉄道法の第十條のごときは、まさに
國家行政組織法の第八條に矛盾しているものだと思うのでございます。
さらに
日本國有鉄道法施行法の第
二條のごときは、運輸大臣の指名する者を除き國有鉄道に引継がれるという條項がございます。これは職員の引継ぎに関してでございますけれども、それによりますれば、運輸大臣の指名する者は引継がれないということになるのでございまして、運輸大臣の任意によ
つて自由に首切りがやれるということになるのでございます。そういたしますと、基本的の人権の侵害のみではなくて、
憲法の違反でありまして、このような重大な
法案が、運輸省設置法も定員法も行われない以前に、かかる方法でこの本
会議にかけられ、通過されるならば、このようなフアツシヨン的なやり方に対しましては、多数をたのんでむりに押し切るというやり方に対しましては、おそらくわれわれ共産党のみではなく、廣汎な労働者大衆の反撃が諸君をして思い知らしめるであろうと思うのであります。(
拍手)
以上種々なる反対の観点があるのでございますけれども、運輸
委員会の決定でありますところの國政
調査以前にかかる
法案が急遽
上程されましたところのその意図がどこにあるかというような点につきましても、十分私どもといたしましては今後反対
運動を続けて行かなければならないし、この席上からも強くこの点を指摘いたしまして、党としての反対討論をこれで終る次第であります。(
拍手)