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宮腰喜助君 まず、
各党共同提案になる本
決議案の本文を朗読いたします。
海外市場調査員派遣についての
決議案
単一為替レート設定によ
つてわが
國経済は
國際経済と交流する途が開かれた。これを
機会として
輸出入貿易の伸長のため、あらゆる方策を講ずる必要が痛感される。特に
國際經済、
國際市場の
動向に速やかに即應して、一層の
振興をはかるため、
関係者として
海外マーケツトの
実地調査をせしめるとともに、
通商代表を
海外要地に常駐せしめる必要がある。
政府は、至急これが
実現できるよう
関係方面に懇請すべきである。
右決議する。
次に、
右決議の
趣旨を各派を代表して説明申し上げます。御
承知の
通り、わが國のごとく
原料資源に乏しく、
國内市場が狭隘な國におきましては、この
國内繁栄を維持発展させ、
國民生活水準を向上させるためには、一に
貿易の
増大にまつよりほかないのであります。すなわち、
貿易の
増大は実にわが
國經済の死命を制するとい
つても過言ではありません。これは明治初年以来ずつとそうでありましたし、この事実は
終戰後の今日においても何ら異なるところはないのであります。いな、むしろ戦時中のような
孤立的自給経済をやめて、
國際交易体制の
一環として自國の存立をはかるべき
方向に
変化した現在、わが國にとり
貿易の
重要性はますます大きくなつたといわざるを得ないのであります。それゆえ、
貿易の
振興は、かの
経済九
原則の重要な一項目としても示されていることは、御
承知の
通りであります。
このように、
終戦後
貿易の
振興がいよいよ必要であるにもかかわらず、遺憾ながらその実績はいまだ十分であるとは申せないのであります。たとえば昨
昭和二十三年は、
輸出二億七千万ドル、
輸入六億八千万ドル、
輸出入合計九億六千万ドルでありますが、これを、
戰前昭和十年ごろの
貿易額を現在のドルで換算して四十億ドル以上であ
つたのに比べますと、実に四分の一にすぎないのであります。
政府は、本年度の
貿易計画として
輸出五億ドル、
輸入十億ドルを目標とし、それぞれ昨年の二倍くらいを見込んでおりますが、内外の諸
事情より見て、これが達成は必ずしも容易でないと思われるのでありますから、
日本経済の
再建復興を念願としているわれわれとしては、何よりも
貿易の
振興をも
つて最大の
國民的課題として
努力しなければならないのであります。
しかして、
貿易、
輸出入と申しましても、もちろんその
重要性は
輸出面にあります。
従つて、われわれはまず何よりも
輸出の
増大に全力を傾注せねばならないのであります。それには、國内におきましては、従来の
消費財生産第一
主義から
輸出産業優先主義へと切りかえる必要もありましようし、また
企業の
合理化によ
つてコストを引下げ、優秀な
商品を安く大量に
輸出せねばならないことも当然であります。これらは國内における
輸出振興の
対策であります。
ところが、このような
國内政策だけで必ず
輸出が
増大するとは限りません。それは何ゆえか。それは、言うまでもなく、
輸出には
相手國が必要であり、その
相手の政治的、
経済的條件によ
つて海外諸國の
有効需要に
変化を来し、それがただちにわが
國輸出貿易の盛衰を左右することとなるからであります。もちろんわれわれは、諸
外國のこれらの諸
條件をみずからつくり出すことはできません。これは、われわれの力ではいかんともすることはできないのであります。
しからばわれわれは、
海外諸國に対して何ら働きかけをなさず、漫然と現状のまま放
つておいてよいかというと、決してそうではありません。ここに、われわれみずからの手によ
つて相当程度貿易状況を改善し得る手段があるのであります。それは何かと申しますと、われわれがいま少し
海外諸國の
市況を的確に把握するということであります。それにはどうすればよいか。それには
海外市場の正確な
調査研究機関の設置されていない今日のわが國としては、どうしても早急に
海外に
調査員を
派遣し、
海外要地に
通商代表を常駐させることがぜひとも必要なのであります。幸いにして、総
司令部当局の御好意により、
終戦後再三わが國の
業界代表が
海外に渡航し、
海外諸國の
経済事情に接し得る
機会を得ましたことは、われわれの常日ごろ厚く感謝いたしておるところでありますが、しかし、それらは地域的にも期間的にもきわめて限られたものであり、まだまだ十分なものということができないうらみがあるのであります。
今ここに、われわれが
海外に
駐在員を持たず、
海外の
市況に暗いということがどのような不
利益をわが國にもたらすか、
反対にわれわれの希望が
実現されるなら、どのような
利益をもたらすかということについて、二、三の点を考えてみたいと思います。
まず第一に、
売買価格の決定に関する問題であります。現在は、何分にもわれわれには
輸出される
商品が当の
相手國において幾らに売られているのかさえ十分わからないため、バイヤーに不当に安く買い上げられるという危険があるわけであります。また一方、現在のようにFOB価格によ
つていることは、早晩
CIF価格によるように改められる必要がありますが、そのためには当然に
海外事情を把握せねばならなくなるものと考えられます。
第二に、現在では
先方でどんなものが売れるか、よくわからないのであります。すなわち、
海外の嗜好はどうか、どういう規格、どういうデザインのものをつくつたらよいのか、こういうことに一向通せずに、ただ
盲めつぽうにつく
つていなければならない。
従つて、ほんの少しのことで
先方の
需要にマツチしないというようなことが起り、
輸出に支障を来すようになるのであります。
第三に、これは非常に重要なことでありますが、この
調査團の
派遣等によりまして新しい
市場、新しい販路を開拓することであります。御
承知のように、わが國の
貿易上に占める各國の
比率は、戦後と
戦前では著しく異な
つております。
輸入の面におきましては最も極端で、
戦前三割前後であつた対
米輸入が昨二十三年において六割以上を占めておりますのは、現在の諸
事情からい
つてやむを得ないものと思われますが、一方
輸出の面におきましても、
戦前は
アジア大陸がその半ばを占め、その中でも
満州國及び
中華民國がその半分を占めておりましたのに、昨年の
輸出額中、中國の占める
比率はわずかに二・四%であり、また
インドのごときも、
戦前には全体の一割以上を占めておりましたのに、昨年は実に〇・九%にすぎない有様であります。
戦前に比べて
総額が著しく減少しているのに、これらの國の占める
比率がこのように低下しているようでは、わが國の
輸出不振が叫ばれるのもまことに当然のことと思われます。この原因は、根本的には、これら諸國の政治的、
経済的條件の
変化に基くものでありましようが、また一方、これら國との
相互の
接触連絡の不十分によること多大なものがあると思われます。
中國との
貿易は特に最もわれわれの
関心を寄せるものでありまして、
政治的変化がどのように中國の地図を塗りかえようとも、わが國との
経済的相互依存性は決して動揺するものではないと信じます。その他
インド、東南アジア、
ソ連、
ソ連同盟國、あるいは最近特に有望を傳えられる
中南米等、これらの
市場はわれわれの
関心の的となるものがあり、今後十分
調査の必要があるわけでありまして、その結果は
予想以上に大きな
利益をもたらすものではないかと考えられます。
その他、
海外に
調査員の
派遣し、あるいは駐在せしめることは、
輸出商品、特に
機械等の場合、
先方にその取扱いの技術を手ほどきし、その
故障修理を容易にするためにも必要でありますし、あるいはまた
商品の摩損、
変質等による種々のトラブルの解決にも、
調査員あるいは
常駐員の
派遣がぜひ必要なものと思われます。
以上申し述べましたように、
海外に
調査団を
派遣し、
通商代表を駐在せしめることは、わが國の
貿易を
振興し、
國際貿易の流れを円滑にする上に多大の効果を與えるものでありますが、なおそれのみでなく、また諸
外國との
文化の交流を活発にし、
國際親善の実を挙げ、
平和國家、
文化國家としてのわが國の
國際信用を大いに向上せしめるものと確信いたす次第であります。われわれは、
政府が一刻も早くこれが
実現方を
関係方面に懇請するよう要求するものであります。また特に申し添えておきますることは、
政治形態を異にする國、すなわち
ソ連、
ソ連同盟國に対しても、特にその國に適する
駐在員を
派遣して
貿易を促進させたい
趣旨であります。
以上をも
つて決議案の
趣旨弁明といたします。何とぞ
全員一致をも
つてこの
決議案に
賛成せられんことを切願いたします。(
拍手)