○土橋一吉君 ただいま議題とな
つておりまする
労働組合法の原案並びに
労働関係調整法の一部
改正に関しまして、
日本共産党を代表して
鈴木労働大臣に質問を呈するものであります。
私は、本案がこの
國会に上程せられるまでに、
労働者はいかなる
経過をとりまして補何が議会に上程せられておるかというその中身を申し上げ、この内容についても本
法案と
関係ありや否やについて
労働大臣の明確なる御答弁を願いたいと思うのであります。
この
法案を上程する以前におきまして、昨年の十一月二十二日、
労働省発三十二号の次官通牒をもちまして、全國の資本家並びに
労働組合の諸君を集めまして、
労働組合の育成に関する問題において、特に
労働組合規約並びに
労働協約に関する指針を與えたのであります。その内容をつぶさに檢討いたして参りますると、この中には、極東
委員会十六
原則の第九項の
規定を故意に歪曲し——この内容につきましては、
労働省労働大臣官房総務課においてつく
つておりまする労働総覧の内容の第九項を見ていただければ、いかにこの飜訳があやま
つているかとういこともきわめて明白でありまするが、さらにこの内容を曲解いたしまして、單位
組合の強化を主張する点をおもな骨子といたしまして、
從來の
労働組合規約内にあるところの必要以外の
事項を強硬に出しておるのであります。あるいは
労働協約の内容につきましても、
從來われわれが考えておる以上の強硬な悪
規定をどんどん入れまして、これを
労働者側に強要するような態勢を資本家側の諸君に強要してお
つたのであります。また越えまして本年の二月二日、同じく労働次官通牒をもちまして、將來の
労働組合における特に第二條の資格審査に関する要項あるいは基準を決定いたしまして、これを強行せんとしたのであります。
かかる
状態において、全國におきましては、東芝あるいは日立、三菱重工、
日本セメント等におきましては、都道府縣知事が労働次官通牒によ
つて発して來るところのいろいろな傷害は、特に
労働協約無効論を主張し、そのために非常な難澁に全国の各
労働組合が置かれているさ中に、二月十四日、第一次
試案を
政府は発表したのであります。
こういう内容を考えて参りますると、私は特にこの
法案は、簡單に例を申し上げるならば、ま
つたく外面は菩薩のような口語体にな
つておりまするが、内心は夜叉のような
法律であるということを断言せざるを得ないのであります。(
拍手)なおその
立法過程においても、一部官僚諸君が、よく世間にも言われまするように、小人閑居して不善をなすとか申しますが、この
法案の
制定過程においても、單に十四日以降十日間程度の全國
公聽会を七箇所において開いた以外においては、特に労働階級なり、あるいは市民一般に何ら公聽することなく、これを本日ここに
提案をいたしておりまするようなやり方は、いかに一部独裁的な政党の諸君並びに一部高級官僚、一部資本家の諸君が作り上げたところの
日本の民主化に対する暴令であるかということを明らかに趣汚名しておるのであります。
これに対しまして、先ほど一部の政党あるいは一部の諸君が、
労働組合連合を通じて
日本の
再建を破壊するとか、かようなことを申しておりまするが、これは院内において多数をしめる一部保守反動的な政党が、この
法案を通じて、全
日本の勤労階級及び
労働者、全人民に対して一大彈圧の橋頭堡を築かんとしておるのであります。(
拍手)かようなものは断じてわれわれは承服できないのであります。
またこの肺葉につきましては、私が申し上げるまでもなく、ポツダム宣言の第十項の後段においては、明らかに、
日本國
政府は
日本國民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の傷害も除去すべきことを宣言せられておるのであります。(
拍手)從
つて、
基本的人権においても動揺にここが尊重せられることは、明瞭に
規定してあるのであります。また
憲法の前文においても、御
承知の通り前文後段においては、専制、隷従、圧迫、偏狭というものは、わが國土及び全世界からこれを拂拭することを明言いたしておるのであります。かような観点から、わが
日本憲法においても、
憲法第三章第十一條において、
基本的人権の享有はいかなることがあろうともこれを妨げられないということを明記し、さらにこの
基本的人権が永久に侵すことのできない
権利であることを
保証しておるのであります。(
拍手)ここに全労働階級の
権利といたしまして
憲法第二十八條が明記いたしまして、
團結権、
團体交渉権、さらにあらゆる
團体的行動権、特に
爭議権に関しても、これを
保証いてしておるのであります。かような観点から、私は
憲法の
規定についても、
鈴木労働大臣にとくと御所見を承りたいと思うのであります。
一体
憲法第九十八條においては、この
基本的人権に反するところの
政府のいかなる
措置も、いかなる
法律も無効であることを明記しておるのであります。かような
状態において、昨年の十二月二十二日及び今年の二月二日の次官通牒というものは、いかに
憲法違反であると同時に
現行労働法規の蹂躙であるかということが、きわめて明白なのであります。(
拍手)これに対して
労働大臣の明白なる御答弁を願わなければなりません。少くとも御
承知のごとく、この
國会においては、
憲法第四十一條の
規定に基いて國家最高の意思を決定するのであります。一部の資本家、一部の保守反動的な正当、かような諸君の相迎合するところのこの
法案をこの
國会において可決せんとするような
状態は、一部資本家階級、保守政党の独裁と言わずして何でありましようか。(
拍手)その点について、明確なる
労働大臣の御答弁を私はお願いしたいと思うのであります。(
拍手)
さらに私は、各條項にわたりましてお聞きしたいと思うが、まず基本的な
方針につきまして、
労働大臣も、
労働組合法並びに
労働関係調整法の体驗と現在までの推移にかんがみてこの
法律を
制定する旨を声明されておりますけれども、はたして一体いかような客観的
情勢の推移を考えているか。これは明らかに現在の
日本の資本家中心的な保守反動的政党、高級官僚、かようなものの政策によりまして
日本の政財が強度に貧困を來し、全労働階級が飢餓と窮乏と低賃金、さらに尊重労働が強要せられる段階に至りました。この根本的な原因は歴代の
政府であるということを私は断じたいのであります。(
拍手)かような場合においてこの
法案をつくらんとする
政府の意図は、明らかに全労働階級の、ただいまも私が申し述べますような基本的な
團結権、
團体交渉権、さらに罷業権、
爭議権等の正当な
権利を、これを
法律の
規定によ
つて圧殺せんとする、明瞭なる彈圧法規であるのであります。かような点についても明確に御答弁を願いたいと思うのであります。
さらに、まず第一條の
規定であります。第一條の
規定は、去る十七日におきましても
労働大臣の答弁があ
つたのでありますが、この
規定は何を書いておるか、ほとんどその本旨がわからないのであります。もし
憲法第二十八條の
規定を具体的にしかも明瞭に
規定するならば、まず
労働者の
團体交渉権、
團結権、罷業権を十分
保証するとともに、
労働者の社会的、政治的、
経済的、文化的
地位の
向上を明記すべきことが当然であるのであります。(
拍手)ところが、本
條文を見ますれば、何らさようなことは書いてない。もし諸君がこの内容を見るならば、何を書いておるか、何を言わんとしておるか、ほとんど五里霧中の法文であるのであります。
さらに第二條におきましても、およそ
團体法の建前におきまして、私は労働
立法に対する
労働省当局の明確なる見解と所信のないことを指摘したいと思うのである。なぜかなれば、この
法案の内容を見ましても、この内容がいかに
使用者側の
範囲を拡大し、特に第一次
試案においては、先ほども川崎君から指摘いたしましたように御用
組合幹部をつくらんとするような態度が、いかに勤労階級に対する明買うな彈圧であるかということは明らかであります。こういう内容においても、
使用者側については、御
承知のごとく人事監督権並びに
使用者的立場を有するものを明確に
規定すればよろしいのである。何らかような冗慢にわたる法文は必要としないのであります。
また第二章の
規定におきましては、第五條でありますが、この必要記載
事項についても、必要以横部に労働階級のあらゆる面を制限し、特に基本的な
團結権を阻害する
事項を並べておるのであります。かようなことは、とうていわれわれ承服できませんが、
労働大臣はいかなる所見を持
つておるか、この点に
つてお聞きしたいと思うものであります。
特に現在起こ
つておりまする東芝においては、かような
労働省次官通牒を発し、あるいは第一次
試案が出たために、現在新開廣作社長がつく
つております
労働協約破棄の問題、あるいは西部鉄道株式会社において
労働組合員に対していろいろな制限をし、特に特定正当、わが
日本共産党に所属する党員につきましては誓約書を書かせ、会社に勤続中においては入党もいたさせないし脱党をさせるというような、明らかに
労働者の政治的自由を拘束する誓約書を書かしめておるのであります。この点についても、本條においては——
團体協約に違反するところの労働契約というものは無効であるとくことを
現行法第二十二條ですら明記しておるのであるが、なぜかような法文を意識的にこの原案から取除いておるか、
労働大臣の明確な答弁を願いたいと思うのである。(
拍手)
特に
労働委員会の問題につきましては、
労働委員会中特に
中央労働委員会は、爭為
状態におけるあつせん、
調停その他の重要なる
権限を行うものであります。この
中央労働委員会は、
爭議状態におけるあつせん、
調停その他の重要なる
権限を行うものであります。この
中央労働委員会を
労働省の外局とし、しかも
政府の所管内に置いて、
行政組織法の内外で運用せんとすることは、明らかに労資
双方の
爭議状態における公正妥当なる
調停、勧告、あつせんをする
地位を行わしめないものであります。かように官僚化するような
中央労働委員会の態度をとらしめるこの内容について、
労働大臣はいかなる考えを持
つておられるか、この点について御所見を承りたいと思うものであります。
また先ほど、資本家側諸君の
不当労働行為について、法文を嚴密に列記しておるからよろしいというような態度がありましたが、この法文の適用を受けた場合には、御
承知のごとく
労働委員会は、第二十七條の
規定によ
つてあらゆる手続きが行われ、
最後に司法的
処分まで行われて、その結果、資本家側がもし惡いならば、
規定の第二十八條によ
つて一年以下の禁錮及び十万円以下の罰金に処するという、きわめてなまやさしい
條文をも
つているのであります。ところが、実際に労働階級は、この法文以外に現在の
刑法のあらゆる緒條項、あるいは軽犯罪法その他あらゆる処罰の対象となりながら、飢餓賃金と加重労働にあえいで、なおかつ
保証がせられないというような
状態に置かれておるのである。かような
状態においても、この労働法規が労働階級の諸君のためには非常な彈圧法規であることを私は明確に申し上げたい。これに対して
労働大臣の明確な御答弁を願いたいと思うのであります。(
拍手)
また
労働関係調整法の三十七條の
規定でありますが、これはいままでの各政党の代表の諸君が質問をいたしましたことく、
公共企業体に関して
労働者の
冷却期間が設けられて、正当なる
爭議権が
行使せられない
責任を労働階級に負担せしめるというような態度は、明らかに
労働大臣及びこの与党である民主自由党の諸君の重大なる過失であることを私は申し上げたいのである。(
拍手)これに対して
労働大臣はいかなる御所見があるか、明確に答弁をしていただきたいと思うのであります。
これを要するに、この現在の労働法規の改惡は、多数をたのみとする與党、民主自由党の諸君並びに一部保守政党の諸君が、この労働法規の改惡を
國会の名において全勤労階級に強要し、將來の
基本的人権、さらに労働階級の生活を困窮せしめるところの一大陽東穂を今や投入せんとしているのである。(「
経済九
原則を実行するにはそれ以外にないじやないか」と呼ぶ者あり)かようなことは、実に
日本の民主化及び
労働組合の民主化のためには許し難い罪惡でありますので、これに対して
労働大臣の決定的な御答弁を承りたいと思うのであります。
なお、ただいまもそこで言われましたように、
経済九
原則に便乗して、全労働階級の犠牲と負担の上にこの法規を上程せんとするがごときことは、明らかに民主自由党の諸君及びその
政府が、いかに労働階級の苦難と
労働者の現在の窮乏をよそにいたしまして、一部資本家の諸君、高級官僚のために盡しているか、明白なる事実をこの議場において証明するものである。(
拍手)かようなことは、およそわが國の法治國
原則における
憲法の
規定、極東十六
原則の
規定、ポツダム宣言の
規定に対する重大なる違反
行為を
労働大臣が議場において上程しているものと断ずるのである。特に官報第九十八條に
規定によ
つて、かような
行政措置あるいは
法案の上程をいたすこと自身が官報の違反であることを
労働大臣にお聞きしたいのである。(
拍手)
從
つて、かような
憲法違反
行為を多数の民主自由党の諸君及び一部保守政党の諸君が行わんとすることは、まさにわが國の將來の民主化に対する一大転換であると同時に、働く者の
権利が保障せられない
法律であることを繰返して私は申し上げ、これに対して大臣の明快なる御答弁を願
つて後段する次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣鈴木正文君
登壇〕