○田嶋好文君 私は、検察
当局不正防止のため、去る三月二十五日
法務委員会が
國会の承認を得まして國政調査をいたしたのでありますが、その國政調査の
報告をここにしようとする者であります。
最近、われわれの人権を擁護いたしてそうして社会の秩序を維持するところの総元締である検察
当局の不正事実がひんぴんとして世人の口に上
つておるのであります。また新聞紙上をにぎわしておるのでありまして、この点は、まことにわれわれの衷心にたえない事実とな
つておるのであります。つきましては、國政の最高
機関である
國会の
法務委員会といたしましても、これを黙視するに忍びず、
憲法第六十
二條に基きまして國政の調査を開始いたすように
なつた次第でございます。
まず取上げました具体的な事案は、横浜
地方檢察廳を中心としたものでありますが、この事案は一、二とな
つておるのであります。第一は、横浜
地方檢察廳におきまして、
経済事犯を担当いたしまして被疑者の取調べに当
つております木船という
事務官が、
昭和二十三年八月上旬から本年一月の末日までの間に、被疑者または
関係者から十回にわたりまして合計七万数千円を収賄または恐喝したという事実が被疑事件になりました。この被疑事件の取調べ中に、木船
事務官が手記を係檢事に
提出いたしまして、自分ばかりが悪いことをしているのではない、自分以外に檢察官が一名と
事務官が十七名、この十八名の者も同様なる事実があるのだから、自分のみでなく、これらの人も取調べをしてくれと訴えた事実なのであります。第二は、有名な女だそうでありますが、後藤という女性が横浜
地方検察廳にいつも出入りをいたしておりまして、検察官または檢察
事務官等に対しまして住宅を提供したり、また斡旋し、あるいは酒さかなや金品を贈與いたしまして、事件のもみ消しとか、検事の求刑の減刑とか、身柄の釈放等の斡旋をしておつたというところの芳しからない事案なのであります。この二つの事案は、現在横浜
地方検察廳と東京
地方検察廳におきまして捜査取調べ中でありますが、われわれ
法務委員会といたしましては、この取調べとは別個に右
関係事案につきまして取調べをいたすことになりました。横浜
地方検察廳並に名古屋
地方検察廰並びに名古屋
地方検察廳岡崎支部に調査班を派遣いたしまして調査をいたしました。その結果、こういう事実が判明するに至
つたのであります。
まず横浜
地方檢察廳に参りました調査班は、
地方検察廳の検事正以下係りの檢事に面接いたしまして、種々の
関係書類その他証言等によりまして取調べをいたしたのでありますが、まず第一に調査の対象になりましたのは、事件の受付簿であります。この事件の受付簿と申しますのは、ちようど人間の戸籍に匹敵するものでありまして、検察廳にとりましては、何ものよりもこれが一番大切なものであります。この大切な事件の受付簿を取調べいたしましたところがまつたくわれわれが想像もしなかつたような、じだらくな受付簿にな
つてお
つたのであります。事件番号は第一から最後まで整
つておるにかかわりませず、百番の次へ持
つて行つて二百番の番号が出、また事件番号が続いていないことはいいといたしまして、あるところには事件が連続しておるにかかわらず白紙が入
つておる。その白紙には、まつたく事件が記載されていない。またその中には、被疑者の名前が抹消されて、抹消された被疑者は遂に記載されてない。こういうように、まつたくでたらめな事件簿が作成されておりまして、われわれ調査員は、この事件の受付簿に対して疑惑の念をも
つて見なければならないところの結果に立ち至
つたのであります。
第二といたしまして、木船
事務官の取調べにあたりまして、木船
事務官が
関係者としてあげたその十八名の取調べにあたりまして、当初木船
事務官から出た事件でございますから、木船
事務官取調べの検事がこの派生事件の取調べの担当検事として当るべきはずでありますのがわれわれの常識であるのにかかわりまぜず、木船
事務官取調べの檢事は、いつの間にか檢事正の命令によりましてすりかえられ、新しい檢事がこの木船事件の派生事件について取調べをいたしておるのであります。この取調べの結果を検事正に
報告をいたしておるのでありますが、検事正への
報告は、まつたく事実を隠したものとは申しませんが、最小限度にとどめまして、世間の人を納得さすことができなかつたという事実がうかがわれるのであります。
また後藤事件にあたりましては、取調べの結果、檢察官二名、
事務官一名が後藤から住居の提供を受けておる。また後藤なるものは常に檢察廳に出入りをいたしておりまして、十名前後の検察官が後藤と交際を保ちまして、しばしば飲食を共にいたしておるというところの不愉快な事実が上
つておるのであります。また、こうした後藤事件は、東京、横浜の檢察首脳部においても十分認知せられておるのでありまして、昨年一月ごろ行われました行政監察官におきましても、この問題を
はつきり認めて帰
つておるという事実であります。その後、後藤は檢察廳への出入を厳禁せられ、うわさに上るところの検察官は東京その他に逐次轉任を命ぜられておるのでありますが、この轉任は、世に言うところの栄轉に終
つておるようなきらいにな
つておるのであります。
こういうように、横浜地檢におきましては、われわれはまつたく芳ばしからざるところの事実の結果を得るに至
つたのであります。
次に、名古屋
地方検察廳並びに同岡崎支部方面に派遣された調査班の
報告でありますが、この名古屋
地方並びに岡崎支部に派遣されましたところの派遣員の調査
目的といたしますものは、やはり横浜地検に係属をしておる事件でございまして、被疑者は岡崎に在住いたしますところの花園繊維株式会社というのでございます。この花園繊維株式会社が、
昭和二十三年の四月ごろ、横浜市の交通局ヘガラ紡を多量に横流しいたしました。だが、この事件がいまだに終了いたしてない。しかも、この事件がどう
なつたか結末すらわからないという事案の調査であります。名古屋
地方檢察廳におきましても、同様に係官に会いまして調査をいたしたのでありますが、この花園繊維株式会社の事件は、どうしたことか、横浜の
地方検察廳に係属いたしたにかかわらりませず、
昭和二十三年八月九日に、横浜
地方検察廳から名古屋
地方検察廳に対しまして、被疑者の住所地が岡崎市だという
理由のもとに移送をいたしておるのであります。名古屋
地方検察廳におきましては、被疑者の住所地が名古屋でなく岡崎支部の所在地にあるということで、
昭和二十三年九月三日に、名古屋から岡崎支部に向
つてこの記録を移送いたしております。ところが、突然
昭和二十三年の十二月二十五日に、東京高等檢察廳を通じまして、名古屋
地方檢察廳に対しまして、無電をもちまして、本事件は一活処理の必要があるのだから至急に横浜
地方検察廳に移送されたいというところの通知が到達いたしました。名古屋
地方検察廳におきましては、無電による再移送の通告でございますので、とりあえず急ぐ問題だというので、すぐに岡崎支部に連絡をいたしまして、この記録を岡崎支部から横浜に移送を完了いたしておるのであります。
次に、岡崎支部におけるところの調査でありますが、ちようどこの事件が名古屋から岡崎に参りましたのが、今御
報告申し上げましたように
昭和二十三年九月の三日でございました。その間横浜に再移送いたすには、十二月でございますから、相当の期間を経過いたしておるのでありますが、これは当時岡崎
地方におきまして暴力團の檢挙があつたために、一時この事件に手をつけることができずに、十二月まで延期をいたしたという
理由を発見いたしました。十二月十日に至りまして、暴力團の検挙を一應完了をいたしましたので、岡崎支部におきましては、この
関係者であるところの深谷由松、平岩良三という会社の
代表者並びに営業主任を呼び出しまして取調べを開始いたしておりました。この両被疑者とも、その事実に対しましてはこれを承認いたしましたので、岡崎検察廳におきましては、これが承認の結果に基きまして調書の作成をいたしてお
つたのであります。それだのに、この調書作成の途中、突然名古屋
地方検察廳から、東京高等檢察廳から無電があつたから至急に横浜にこれを返せという通告があつた。取調べの最中、しかも半年以上経過いたしました事案に対しまして取調べをし、調書の作成途中で、無電をも
つてこの事件を横浜に返せというような連絡があつたという、私たち派遣員といたしまして理解することのできない、まことに疑わしいところの結果を調査するに至りました。
以上が、派遣されましたわれわれの調査の結果
報告でありますが、私は、ここで結論といたしまして、こういうことを申し上げたいと思います。檢察
当局に対する今までの世評や今までの新聞紙上の報道は、少なくともわれわれの治安維持に当る檢察
当局であ
つてみれば、そうしたことがなかれかしと念願いたすのが普通なのであります。だが、なかれかしと念願いたしましたわれわれの前に現われましたものは、火のないところに煙は立たないのだという、まことに遺憾なことでありますが、この事実と一致するということなのであります。
申し上げるまでもなく、私たちは
國家を愛するものでありまして、その愛する
國家の治安を維持するものはこの檢察
当局でなければならぬのであります。その檢察
当局が、この調査の結果によ
つてもおわかりになりますように、まことに明朗性を欠いておると言わなければなりません。そうして、世間に言い触らされている事実からいたしますれば、信用を失墜しておるということを言わなければならぬのであります。
検察
当局が明朗性を欠き、信用を失墜いたしておるということは、われわれ
國民にとりましては悲劇中の悲劇なのであります。どうしてもこの悲劇は、われわれの
國家の現状から抹殺をしなければなりません。このためには、抹殺の方法といたしまして、檢察
当局によりよい調査、よりよい追究を願うことも一つでありましようが、現在の機構をも
つていたしまして、檢察
当局にこのままの
状態において取調べを願い、よりよい追究をさすということは不可能ではないかと思います。
最後に許された問題は、捜査の秘密を守らなければならぬということはもちろんでありますが、われわれ
國会におきまして、この捜査の秘密を守りつつ、
國家最高の
機関たるわれわれの威信によ
つてこの失墜したる検察
当局の信用を回復し、
日本國民の治安維持のために立たなければならないとう熱意なのであります。(
拍手)
どうか皆様、こうした
意味におきまして、今後われわれ
法務委員会がこの種問題を取上げまして徹底的に調査し、徹底的に糾明することに御賛同を願いたいのであります。(
拍手)それがためには種々の
経費も要することと思うのでありますが、それらの点に対しましても議員
諸君の格段の御援助をここにお願い申し上げまして、私の
報告を終る次第であります。(
拍手)
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選挙法改正に関する
特別委員会設置の動議(
山本猛夫君
提出)