○野坂參三君 私は共産党を代表して、
提出されました
予算案全体に対して反対するとともに、全面的な
編成がえを要求するものであります。
先ほどから各
討論者からの意見にもありましたが、今共産党だけではない。日本のすべての政党政派の眞劍に考えなければならないことは、いかにして荒廃した日本を
再建するかということである。一体だれがこのような破壞された日本をつくり上げたか。これについては、私は総理大臣の言葉を引用したい。この破壞は、申すまでもなく單に戰爭に負けただけでない。過去三年半における日本の政治の責任である。これは
インフレとやみと浪費、これについて総理大臣は、この壇上から、この間施政演説の中でこう申された。これだけはいいことを言われた。「過去において
インフレーシヨンを激化せしめたものは主として
政府であります」と言
つている。共産党ではない。幣原内閣から第一次吉田内閣、片山内閣、芦田内閣、第二次吉田内閣、第三次吉田内閣、これらの
政府がこの
インフレの激発についての責任があることを、吉田総理大臣自身がここで認めている。(
拍手)
しかしながら、私は過去のこのような責任を今ここで追究するのではない。いかにしてこの
再建をわれわれが
実現するかということ、これについて、ここに二つの道がある。二つの根本方針がある。第一は、少数の独占資本の救済のために
國民の大多数を犠牲にするという方針、第二には、前者とは反対に、
國民の大多数を救済するために少数の独占資本を犠牲にするという方針——第一の方針は、これは吉田内閣の方針であり、第二の手段が共産党の方針である。(
拍手)これが
予算の面にありありと現われております。私は、これについて詳しくは申しません。もうすでにいろいろの議員からも指摘されておる。二、三の例を申し上げましよう。
この
予算の面では何が現われているかと言えば、結局給與、賃金の低下という事実が現われている。官公吏に対しては五千三百円のベースを言
つておるが、民間企業の労働者に対しては三千七百円のベースの一・六六倍、すなわち六千百四十二円を民間労働者には強制しておる。六千三百円よりずつと下まわ
つている。これを今強制する
予算がここに出されている。すなわち、実際において賃金の低下です。飢餓賃金を今
政府はこの
予算で強要しておる。これが一点。
このようにして給與を下げながら、一方では生計費を今度は上げるような
予算が組まれている。
政府は、生計費の高騰はわずかに三%ないし五%と言
つておりますが、しかし実際は、われわれが計算してみれば一・七倍ないし二倍に上
つておる。はつきりした問題は
食糧です。主食の配給値段が一割三分今度上
つている。これは皆さん方も否定はできない。さらに野菜のマル公をはずした。これがために、実際においては、もう新聞も書いていますように、四倍、五倍、六倍に騰貴している。また今の勤労者にと
つて一番重要な問題であるのは、たとえ交通費、
旅客運賃の六割の
増加をごらんなさい。どれだけこれが勤労者の大きな
負担になるか。また家屋税が加重されるために、家賃が今騰貴しておる。このようにして、衣食住全体が騰貴の方面へ進んでいる。反対に給與は下
つている。これが今度の
予算です。
さらに、この上に税金がますますかさま
つて來ておる。これについて私は、ここの壇上からいろいろの議員が話されましたから、くわしくは申し上げませんが、たとえば
勤労所得税だけをと
つてみても、前の三千七百円ベースのときには九十四円であ
つたものが、六千三百円ベースにな
つてから八百四十円に高騰しておる。言いかえれば七倍高騰しておる。そのほか、
民主自由党の
公約された
取引高税の撤廃のご破算、
所得税低下のご破算、これがために中小業者や農民がどれだけ破産するか、どれだけこれによ
つて犠牲をこうむるか。また、ある官廳の
報告によりますと、いかにこの税金のとり方がひどいかということは、
政府の
予算面を見ますと、三月末までに三千百六十億の税をとる計算にな
つております。ところが、すでに三月末までに三千億と
つている。
政府自身も、これはあまりにひどいと言
つている。あと二百億とらなければならないが、しかし、これもと
つてしまえばこれで打切る。どこを打切るか。大口納税者のところを打切るということを、
政府の役人自身が言
つておる。
このようにして、一方においては給與を下げ、税金でさらにしぼ
つておいて、その上に首切りです。官公廳労働者や、あるいは民間企業の労働者全体をひつくるめれば、
政府の言
つておるところを計算してみると、百四十万人今年首切ると言
つておる。これが今度の
予算です。結論ははつきりしておる。今度の
予算は大衆收奪の
予算です。この收奪は、
歳入面を見れば、
歳入面の約七〇%が大衆收奪と見てよろしい。この收奪したものを一体どこへ使うか。
歳出面をごらんなさい。これに対しては。すでに他の党の方も言われておりますが、この
歳出面における一番大きな額は何かといえば、結局あの莫大な
價格調整費とか、これに類する資本家の援助費用、これが全
予算の約三八%を占めている。こうした補給金とか、こういう金はどこへ使われておるかといえば、結局これは中小企業には行かない。大きなところにだけこれが使われる。これが今度の集中
生産の方式です。
さらに今度の
予算において、例のことではありますけれども、終戰処理費、これは明らかに不
生産的な費用です。これが一八%を占めておる。このようにして大資本の補助をするところの金と不
生産的な金、これをひつくるめれば、
歳出の六〇%。ですから、大衆を搾取して、これをどこへ使うかと言えば、こうした方面、すなわち不
生産的な、あるいは資本家の補助金にこれを使
つておる。これが今度の
予算の本質です。他の一方で、この
支出面において、すでにそここからもいろいろ言われておりますが、たとえば
公共事業費が半分になる。六・三制もだめ、
災害復旧できない、教育費はわずかに三%、
失業対策もできない。これがすなわち今度の
予算です。
さて、私が第二に指摘したいことは、今度の
予算はか
つてない自主性のない
予算です。この点においては、前の片山、芦田内閣よりももつとひどい。吉田総理は、この壇上から、施政演説の中で自主精神を強調された。われわれはこれに
賛成です。共産党は初めから片山、芦田、吉田内閣の外資導入による対外依存
政策に反対して、自力
再建をここで主張して來た。今ようやく吉田総理がここの壇上から自主ということを言わざるを得なくな
つて來ておる。しかし、この彼らの自主ということは、ただ口先にとどま
つて、実際の
予算にはこれが全然現われていない。たとえば
予算編成の過程を見ましても、この
予算はわれわれ日本
國民の
予算である。ところが、
政府が全責任を持たなければならないこの
予算の
編成はだれがしているか。私はこれ以上は言わない。——これ以上は言わない。諸君にはわか
つておるはずである。ま
つたくここに自主性がない。どこにこの
予算編成において自主性があろうか。この点は各党派を超越して眞劍に考えなければならない。このような惡例、日本の歴史において初めてのようなこの屈辱的な例を、今この吉田内閣は残しておる。(
拍手)
これについて、私は
予算委員会において聞いた。このようなことをやりますかと聞いたら、將來やるかやらないかわからないと言
つた。すなわち総理は、將來断然こういうことはやりませんということを、かれは言わなか
つた。必ずやるでしよう。
さらに、この
予算の中で私たちの最も注意しなければならない、また先ほど植原
委員長が言われた例の見返
資金千七百五十億円が問題です。これについて、
大藏大臣は打出の小づちと言
つた。あるいはそうかもしれない。しかし、この打出の小づちをだれが握るかによ
つて、このつちから福の神が出たり鬼が出たりする。この問題について、私たちは
予算委員会においていろいろ
質問しましたが、
政府の
答弁から何もはつきりしたものをつかむことはできない。たとえば、贈與かあるいは貸與か、もら
つたものか借りたものかと聞いたときに、
大藏大臣は、これは講和
会議でわかるという。それでは今は何かというと、今はわからぬという。こうした性格のわからないものを基礎として千七百五十億円が組まれておる。
しかも、この
資金というものは現実にはない。今年の七月からアメリカの新しい
予算において初めて組まれるという。幾ら組まれるか、どんなになるか、これはまだわからない。將來にもらえるかもしれないという仮定のもとにここに
予算ができておる、空虚な
予算である。さらに、この見返
資金の中で千七百五十億円は
貿易特別会計から繰入れると言
つておる。この
金額には、
輸入補給金として税金の中から八百三十三億円を入れることになり、そのほか輸出に向けられるもの約五百億があります。これらは当然千七百五十億円から
差引かれなければならない。そうすると、実際には四百十六億、すなわちこの見返
資金の勘定は実は四百十六億で、そのほかのものは
國民の税金から取上げたものです。このような事実がここに含まれている。これだけをここで言えば、諸君にはわかると思う。(
拍手)
それからさらに、この見返
資金の
法案については重大な疑義がありました。
予算委員会及び
大藏委員会でもこれは論議されたが、今まで日本の國内法にか
つてなか
つたものが現われて來ておる。これ第四條の六項、七項に、この見返
資金の
運用、使用については最高司令官の承認を求め、監督を求め、
報告をしなければならないと書いてある。これは幸いにして
大藏委員会においては削除されたそうですが、しかしながら、これが削除されるされないにかかわらず、実質はこれです。すなわち、打出の小づちと言われておるこのような重要な——日本の財政だけではなく
経済全体を握るようなこの
資金が日本
政府の自由にならないというところに、自主性のない重大な問題を含んでおる。
さて、この問題について、植原
委員長が、この壇上から、つい先ほど、自主性がないと言
つても、昔日本は水力電氣とか鉄道には外國の投資を得て、その結果日本は大きな発展をしたではないか、何ら独立は破壞されなか
つたではないか、こういうことを言われた。これは明らかに小学生の歴史の知識もないことを証明しておる。現在の日本と、あの独立を保持し、資本主義
経済のどんどん発展してお
つた日本を比較することは根本的に間違
つておることは、だれでも知
つておることである。(
拍手)しかも日本の過去の発展というものは、決して外資を導入したから発展したものではない。軍國主義と侵略によ
つて発展して來ておる。しかし、現在は当時の事情とは根本的に違
つておる。この例は、現実にこの見返
資金の
法律を見てもよくわか
つておる。昔の外資は、日本
政府、日本の会社が完全な支配権を持
つてお
つた。ところが今はない。このような今日の現実の日本を無視して、昔そうであ
つたから今も大丈夫だと、どうして言えますか。ここにも
政府の詭弁があり、ここに私は重大な日本の自主性を失わせる
政府の
政策に反対せざるを得ないのです。(
拍手)
私は、時間が切迫いたしましたので、先に急いで進みます。第三に申し上げたいことは、この
予算は
均衡の形はと
つているが、実際は
均衡はくずれる。この点については、先ほどから三宅議員、さらに中曽根議員からも言われたと思いますが、われわれ自身、
歳出歳入の
均衡は
賛成です。しかし、今の
政府の組んだこの現実の
予算は必ず破れる。これについて二、三の理由を申しましよう。
たとえば
租税の面を見て、
租税とか
印紙收入とか、こうしたものは昨年よりも五割二分増しておる見込みでありますが、その
実現はほとんど可能が少い。たとえば源泉
所得税を見ます。今年は昨年の倍額にな
つておるが、しかし大量の首切りとか低賃金で、どうして一体この
勤労所得が
政府の言う通りとれようか。
政府自身がとれないと言
つておる。その通りだ。また申告
所得税を見ます。これは昨年の五割五分増している。しかし、中小業の破産、また昨年末の徴税による預金の引出し及び借金とか家屋の賣却による納税余力のなくな
つていること、これらにより、申告
所得税は
政府の予想通りには絶対にとれない。また
間接税、
印紙收入、これは
政府は昨年の四割増を見積も
つているが、しかし大衆の購買力の低下と企業の倒産によ
つて、これも
実現は困難である。さらに
特別会計からの繰入を見ましても、主として
專賣益金であるが、昨年より二百四十七億円増を見込んでいるが、すでに配給タバコの辞退さえ今起
つている。購買力の減退のために、
特別会計も
政府の
予算通りには絶対にとれません。
以上のほか、
歳入と
歳出との時期のずれとか、あるいは見返
資金のずれ、これに対して
政府は、このずれを補うために短期の証券を発行せざるを得なくな
つているし、今現に発行している。これがすなわち日銀の引受にな
つて通貨の増発になる。このような理由から、われわれは、
政府はただ紙の上だけで
均衡をつく
つているが、実際はこの
均衡は必ず破れることを断言し得ると思う。これを
政府が強行するために、おそらくあらゆる手段をも
つて、━━━━手段をも含めて、これによ
つて大衆からの收奪をますます強めるに違いない。(「━━とは何だ」と呼ぶ者あり)ここにおいて、そのような
政府の
政策のために、日本の勤労者の間には、この
政府の
政策に対する反対鬪爭が必ず起らざるを得なくな
つて來る。この政治的な不安、社会的な不安、これは
政府が全責任を持たなければならないものである。
さて、今申しましたように、この
政府の
均衡予算は
歳出歳入の実質的な
均衡予算ではない。中にただ
一つだけ
均衡のとれたところがある。それは何かといえば、
歳入における大衆に対する極端な收奪、
歳出における大資本に対する極端な保護、この二つの
均衡だけはとれている。私は、今まで申し上げましたような理由から、
予算に対して私たちは全面的な反対をしなければならぬ。そしてわれわれは、これに対して
編成がえを要求する。この
編成がえの基礎、基準はどこにあるかといえば、第一に、
歳出面において補給金とか不
生産的な
支出を徹底的に削除すること。第二には、公共事業、教育文化の費用、社会施設その他地方税の配付金、これらの人民の生活、日本の
再建のために少しでもよくなるような面においては、われわれは大
支出をしなければならぬ。
歳入の面においては、大資本に対する高度の累進課税、脱税の徹底的な徴收、それによ
つて反面大衆課税を徹底的にわれわれは
廃止しなければならない。このような
予算を組むことによ
つて、われわれはほんとうの
復興と人民生活の安定のための
予算をつくり上げ、同時にほんとうの意味の
均衡予算をつくり上げることができる。
最後に一言申し上げたいと思います。吉田総理は、
予算委員会で、日本の
再建は外資によらなければならないと言われておる。われわれも外資そのものに反対しているのではない。われわれは外資を導入する方法に反対しておる。吉田内閣のような外資導入の方法はいけないということをわれわれは言
つておる。たとえば、
一つの例は見返
資金である。あのような外資の導入の仕方はいけないということをわれわれは言
つておる。自主
再建の方式でやらなければならないと言
つておる。
われわれは、外資の導入については、もうすでにこの壇上から何度も言
つておりますが、第一に、外資の導入をする場合、日本の自主権は徹底的に守らなければならない。第二には、この外資の導入は日本の
再建と
國民生活の安定のために使われなければならない。少数の独占資本家の利益のために使われてはいけない。第三には、この外資は單に
一つ二つの國に片寄らないで、世界の民主主義國と全面的な提携をやらなければならないということを言
つておる。第四に、今のような外資導入のやり方、官僚と大きな資本家の代表、この少数のやみ取引による外資導入、このやり方にわれわれは反対しておる。そして、民主的な方法によるところの外資の導入方法をわれわれは主張しておる。
しかし、吉田総理は外資の導入を盛んに言われておりますが、はたして吉田内閣、吉田総理に外資を吸引する力があるかどうか。これについては、アメリカの通信社のAP記者が、四月二日にこういうことを電報で打
つております。「日本人が、外國の投資が日本の
経済復興上の最も重要な要因となり得ると考えられておるとすれば、それはばかげたことだ。」(「それは共産党だ」と呼ぶ者あり)共産党ではない。トム・ランバートという人です。彼は、さらに続けて「外國投資家は、危險を冒してまでも日本に投資する價値があるとは考えていない」と言
つておる。私は、これは世界の民主的な人士の代表的意見ではないかと思う。
もう
一つあげましよう。商工大臣が
委員会において、將來日本が貿易をやるためには中國と提携しなければならないと言われておる。戰前の統計を見ましても、輸出入の三〇%内外が中國との貿易。今度の
予算を見ましても、やはり海外貿易が中心とな
つておる。日本の
再建のために、われわれは中國と緊密な
経済提携をとらなければならないことは、超党派的な意見だと私は考える。ところが、この貿易をはたして吉田内閣の下においてやれるであろうかどうか。新しい中國の情勢は、昔の吉田総理のよく御存じのような中國とはかわ
つて來ている。(
拍手)新しい人民の政権が今打建てられようとしておる。四億五千万の上に新しい人民の政権がつくられようとしているではないか。
これについて、今年の一月十九日の新華社電報が——中國共産党関係の通信社ですが、これがこう申しております。「東亞の三大國は緊密な友好関係を打建てねばならない。中國との眞の密接な友好関係を打建てるに最も適した資格あるものは、日本の民主的要素、すなわち日本共産党及び中國人民の血で手がよごれていない他の民主主義分子である」と言
つておる。もう一度繰返して申します。中國人民の血で手がけがれていない民主主義者とならば喜んで手を握ると言
つておる。(
拍手)はたして吉田総理はこの資格があるかどうか。これは中國の問題だけではない。今後日本が進む上において、世界の民主主義國と提携する上において、日本の
政府担当者が——はたして帝國主義の戰爭の血でよごれていない人がや
つているかどうか。これは決定的な問題である。
吉田総理について、私は
一つの書物をここで読みたいと思います。山浦貫一氏の書いた森恪の傳記の中に、こういうことが書いてある。これは、すでに戰犯として処刑された鈴木貞一は、ぼくと森と吉田と会食したという記事がある。この書物の中には、こう書いております。(「共産党の宣傳だ」と呼ぶ者あり)共産党の宣傳ではない。皆さん方のか
つての指導者であ
つた森恪の傳記の中に書いてある。(
拍手)吉田の言うのには、東方
会議——あの有名な侵略の東方
会議に、これはどうしてもアメリカにぐうの音も言わさないようにしなければいかぬと言
つておる。しかし、こういう考え、たとえば東方
会議の十大原則というようなものについては、内閣ばかりでなく、元老、重臣も承知しそうもないから、これはひとつオブラートに包まなければならない。このオブラートの役割を果たしたのが吉田らしい。吉田、齊藤が外務省の方の基礎工作をする。すなわち、東方
会議というものがその
政策を実行する場合のオブラートの役をなした。そうして、吉田は元老、重臣の方を口説く。これが、か
つては
民主自由党の最高の指導者であ
つた森恪の傳記の中にはつきりと書いてあります。
この事実を見ただけでも、はたして吉田総理が今後日本の民主化と平和を守り、ほんとうに人民を安定するような
予算をつくり得るかどうか、私はできないと考える。(
拍手)この意味においても、われわれはこの
予算には絶対に反対する。