○並木芳雄君 私は、國際
教育協会から
日本に対する
アメリカへの留学生百名割当の選考に関して
政府当局に
緊急質問を試みる
提案をしたのでございますが、議事運営の関係上
自由討議となりましたので、特に吉田総理及び外務大臣並びに文部大臣の出席を得て御答弁を求め、私の
自由討議を進めるつもりでございます。
昨日は、皆樣御
承知の通り、われわれ待望の永井氏が國際オリンピツク委員会に参加することを許されました。また近くは、
政府の発表によりますと、商務官を送るような段取りになる予定との報道もあります。さらに最近では、われわれ熱望に熱望を重ねておりました
國会議員の海外視察ということも予定されておるやに聞いておりました。私
どもは、苦しい生活の中からも暗夜にともし火を求めるような感じがして参
つたのであります。このさ中におきまして、去る四月九日、朝日新聞の第二面のトツプ記事に、留学制度新設、
アメリカ陸軍十一万ドル補助、こういう大きな見出しで報ぜられました、
日本、ドイツ、オーストリアに対して留学生を割当てるというのこの一大快適ニユースというものは、われわれをしてさらに感激せしめたものでございます。(
拍手)
ところが、私はこれを読んで行きまして、最後のところに、
日本における選考が遅れておる、この一事、並びにもし
日本の留学が行われないならば、この割当を他に振り向けるという記載がございました点に触れましたときに、実は愕然といたした次第でございます。せつ
かくの
アメリカの御好意に対し、もし
日本政府の段取りが遅れておるようなことによ
つてこの御好意に報いることができなか
つたならば、何としてわれわれこれにこたえることができるだろう、また
國民の側から言いましても、私
たち待望の留学制度というものを確立する上において、この輿望にこたえるゆえんのものでない、この二つの観点から、これは私どうしても
緊急質問として当局にお尋ねをしたか
つた次第でございます。
そこで、この問題が間違いのないように、新聞記事に記載されましたところを、簡單でございますから適宜読み上げた方がよろしいと思いますので、そういう形におきまして論を進めて参りたいと思います。
この記事はニユーヨーク特電でございまして、ニユーヨーク・タイムスとの特殊記事で、日付は書いてございません。冒頭に「
アメリカ留学熱が盛んな折から、今度日、独、オーストリア三國の大学生に対して、米
政府の
補助金による一
年間の留学制度を設けることに
なつた」、こう触れております。すなわち、初めて新しい試みとして留学制度が設けられた、このことをうた
つてありまして、続いて「國際
教育協会副総裁ドナルド・シヤンク氏の発表によれば、新留学資金はドイツ、オーストリア、
日本の復興計画の一部として立案され、これら三國における將來の指導的人物を養成することを目的とするもので、三月中旬、陸軍省と同協会の間に協定が調印された」と具体的に述べてあるのであります。つまり、これが
日本、オーストリア、ドイツの復興計画の一部として立案されたところにわれわれは大きな意義を見出すものでありまして、その目的も有望なる指導的人物を養成するという点にあるのであります。しかも、その報道によりますと、すでに國際
教育協会と
アメリカ陸軍省との間に三月中旬に調印が行われておるという具体的
事業を示しておるのであります。
さらに「今までにも陸軍当局は個人的な留学生を認めて來たが、今回のように陸軍の復興資金から直接
補助金を交付することは初めてのことである」。今までの留学生あるいは海外派遣が費用の点においてまちまちであ
つたにかかわらず、今回は直接
アメリカの
補助金によ
つて留学生のめんどうを見る、こういう点が書かれておるのであります。さらにシヤンク氏は「一九四九年—五〇
年度にドイツから百五十名、
日本から百名、オーストリアから五十名、合計三百名の留学生をとりたいと述べているが、これらの留学資金として陸運当局は十一万ドルを支出、さらに渡航のせわもする、また上陸後の國内旅行宿舎などについても協会が一切の
責任をとることに
なつた」、こう書いてあります。つまり、具体的に何名をどこからとるか、そうしてそのせわはどこがするか、上陸までのせわは陸軍省がして、それからあとの宿舎、旅行その他の
責任は一切國際
教育協会が負うという点まで明らかにされておるのであります。そうして、採用者は大学在学生で、できれば三年生または上級者、大学
卒業生もいいわけだげ、在学生七人につき
卒業生三人の割合で選考される、どういう人を留学生に選ぶか、これを明示されておるのであります。そうしてシヤンク氏によれば、「ドイツでは一千名の志望者があり、すでに定員の二百名が決定した、しかし
日本の選考は遅れていると語
つた」、この点がつまり私
たち重大関心の持つところでございまして、ドイツではすでに選考が終
つたと言われておるのであります。
この定員につきましては、最初のところに百五十名と書いてありますが、あとのところは二百名でございますから、五十名の違いが出て來てはおりますけれ
ども、とに
かく千人からの希望者があり、その中から嚴選して二百名が決定した、しかし
日本の選考は遅れている——この点が、私
たち本日この議場におきまして
政府からの明言を得たい点であるのでございます。
「ドイツの場合、選考は
アメリカ人を委員長とする各州のドイツ
教育者選考小委員会で行われたが、共産党主義者やナチス分子はあらかじめ除外された」——選考の方法について述べております。それから最後にこういうことがつけ加えてあるのであります。「なおシヤンク氏は
日本についての左のようにつけ加えておる、國際
教育協会は留学資金を日、独、オーストリア三國間に適宜配分する権利を持
つておるので、もし
日本からの留学がなければ、資金をドイツとオーストリアに振り向けることができる」、以上であります。もしわれわれがこの絶対の機会を逸するようなことがあるならば、國際
教育協会は
日本への割当を他に振り向けてしまう、早くしないかと言わぬばかりの記事でございまして、この点につきまして、外務省、文部省においてはいかなる取扱いをなされているのか、ぜひ明確にしていただきたいのであります。(
拍手)
最近、青少年の問題あるいは学生の問題が取上げられ、目的をはつきりつかめない
人々の間には、あるいはその日暮し、あるいはぐらつくような方もある折柄、この大量なる留学制度、しかも將來有望な人材を養成するというニユースをも
つてして、
日本における若い学徒や青少年の意氣はいやが上にもあが
つて來るものと私は確信しておるのであります。(
拍手)そのときにおきまして、一体外務省あるいは文部省は何をしておるのだろうか、この記事を見てそう感じなか
つた國民は一人もないと思うのであります。
もちろん、占領治下において自主的外交というものがない以上、思う存分の活躍ができないことは推察せられるのでありますけれ
ども、いやしくも自主的活動ができないということと積極的活動をしないこととを混同するがごときことがあるならば、これは外務省として、また外務大臣として、
國民の負託に沿うところのものではないと思うのであります。もし実際に積極的な活動ができないならば、行政整理の要望せられておりまする今日、潔く外務省というものを廃止して、これを
内閣に併合してしかるべきであろうと思います。
しかしながら、われわれはたとい占領治下におきましても、許された範囲内において、あるいは海外引揚げの問題、あるいは賠償の問題、ただいま
議題となりました移民の問題、その他いろいろその限度において活躍していただきたい分野が多いのでありまして、吉田外務大臣がその任にあらずとするならば、過半数を占めた
民主自由党の中にはりつぱな人材がおられると思いますから、この際吉田総理大臣は專任の外務大臣を置いて、そうして
國民の輿望にこたえることが適当であろうと私は感ずるのであります。その点、吉田総理大臣がお見えになるならば御
意見を率直にお伺いしたいのでりますけれ
ども、残念ながらお見えになりません。また副総理がおいでになるならば、林副総理の御
意見も聞きたいのでありますが、さいわいに政務次官がおられますから、この点吉田総理大臣として專任外務大臣を置くことを漏らされておるかどうか、その御意思、あるいはまた政務次官として、近藤さんはこの点いかようにお考えにな
つておるか、この際御明答を得たいと思うのであります。
これをも
つて私の
自由討議を終る次第であります。(
拍手)
〔國務大臣高瀬荘太郎君
登壇〕