○勝間田清一君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
吉田総理大臣並びに
経済関係閣僚に対しまして、主として毎日汗水をたらして働きながら、
日本の祖國の振興をこいねが
つておる働く
人たちの
立場に立ちまして、御
質問を申し上げてみたいと存ずるのであります。
一昨日の
経済の諸方策について、私も拜聽をいたしたのでありますけれ
ども、率直に申しまして、私はきわめて失望を感じたものであります。またある
意味においては、非常に恐怖さえ私は感じたものであります。そこに説かれておりますところのものは、言うまでもなく、從來の
民主自由党の
諸君の公約が無視されておるという問題だけではございま
せんで、今度の吉田
内閣のとろうとしておるいわゆるインフレ
処理政策なるものは、これは
財政と金融を極度に引締めることによりまして、インフレーションを一挙にここに收束せしめんとするところの政策でありますが、この一挙にインフレを收束させるところの政策に対する裏づけは、これはあの十八世紀当時、ちようど今から二百年前にとられたまことに素朴な自由主義そのものであります。
戰後世界の各國におきましては、いろいろインフレの
処理政策が
考えられて参りました。皆さんも御案内の
通りに、イギリスにおきましてはいわゆるデイス・インフレーションの政策がとられたし、西ドイツにおきましてはライヒス・マルクをドイツチエ・マルクに切りかえるところのいわゆる通貨の
処理政策というものがとられて参
つたのでありまして、ソビエト・ロシヤにおける平價の切下げ等、各國はいろいろな
手段を
考え、思考を凝らしてこの重大なるインフレに取組んで参
つたのであります。わが國におきましても御案内の
通り、從來あるいは中間安定による政策があり、またわれわれといたしましては、一箇年間いわゆる安定恐慌に対する準備を整えて、その上に金円を発行することによ
つてのインフレの一挙收束ということを、主張して参
つたのであります。しかしながら今度吉田
内閣がとろうとするインフレ
処理政策というものは、
財政と金融の極度な引締めによ
つて、これを一挙に
解決せんとするところの政策であることは明らかにな
つたわけであります。
この政策なるものが現在
日本において最善の方法であるかどうかにつきましては、幾多の議論を要するところと
考えますけれ
ども、当然ここにわれわれに懸念をせられますところは、これによ
つてあるいは資金が詰ま
つて來るのではないか、あるいは長期の建設がこのためにできなくな
つて來るのではないか、失業者が出るのではないか、その際における農村はどういうようにな
つて行くのだろうか、こういう問題に対しまして、その
程度の多少は異なるでありましようけれ
ども、一様にここに大きな疑念を抱きつつあることは、私は明確だと思ふのであります。
しかしながらこのインフレの
処理方策に対して、
政府の主張しておるところを見ますると、先ほ
ども申しました
通りに、結局のところ何であるかと言いますならば、まず第一に、
政府に頼るな、一生懸命で働け、節約をしろ、そうして貯金をして行け、それで何とかあとを自分でや
つて行けというのが、今度のいわゆる自立政策というものの本筋であるのであります。こういう政策によ
つて、はたしてこの自立に耐え得て行くことができるかどうかを、私はまことに疑問に思うものであります。それと同時に、私
どもが今度の
演説を通じて、はつきりといたさない点が多々あると思うのでありますけれ
ども、特に明確にな
つておらないところのものは、今度の政策を実行した場合における産業
経済に対する影響の問題が、ほとんど明らかにな
つておりま
せん。それから同時にここに大きな一石を投ずるものが、次の安定と自立に行く過程において、そこにいかなる新しい
日本経済の均衡
條件というものが生れて來るかどうか、その新たなる均衡に対する
條件というものがわれわれに示されておらない。そうして結局われわれが一番に疑問にたえま
せん点は、一体
政府が主張しているところの安定というものそれ自身は何であるか、自立ということはどういうことであるか、その姿もその構想も、それに対する見通しの問題も含まれておらないのであります。このことがわれわれに一層不安を與えるものと
考えるのでありまして、このたびの
政府のきわめてドラステイツクな政策に対して、
國民が一番知りたが
つているところの問題は、この点にあると
考えるものであります。(
拍手)
吉田
内閣の政策を一言にして申しますれば、一つは完全なる公約のたな上げということでありましたが、もう一つはこのドラステイツクな
財政金融政策を通じての、いわゆるインフレの一挙收束政策である。それを裏づけるものは十八世紀的な自由主義である。
最後には、安定と自立の目標も示されておらない。この大きな欠陥の前に
日本の
経済を出して行く。その大きな冒檢さということをわれわれはまことに心配をいたすものであります。(
拍手)吉田
内閣の公約のたな上げ論について、幾多の議論も從來ございましたけれ
ども、私はこの問題については、別な角度から申し述べてみたいと思うものであります。もちろん
経済の九
原則は総選挙以前にきま
つてお
つた事柄でありますけれ
ども、それまでに來る過程におきましては、あの重大なドレーパー・ミツシヨンによるところの報告が参り、あるいはヤング使節團が
日本に來ておりますし、さらに芦田
内閣においては、すでに
経済の十
原則というものが
考えられておる。第二次吉田
内閣の直後におきましては、例の賃金に関する企業の三
原則というものも示されておるのでありまして、こういう点から
考えて來れば、明らかに吉田
内閣の公約がいかなる政策のものでなければならなか
つたか、どれが眞実の公約であ
つたかということは、私は当初より明確であ
つたと存ずるものであります。(
拍手)しかしながらこの一切の公約無視という問題につきましても、私はこの際、單に
民主自由党の問題だけでなしに、
日本のあらゆる政党も、あるいは
内閣も、
國民も、官僚も、私は重大なる反省の機を與えられたものと
考えるものであります。私はこの
意味において、もう少しこの点を明確にしておく必要があると存ずるものでありまして、現在何ゆえに公約が実行できないかは、もちろんその一つにおきましては、現在占領治下であるということも言い得られるでありましよう。しかしながらそれにも増して重大な事柄は、
敗戰後のきびしい
日本の現実に対する認識が十分に
行つておらない。そして政策に対して論理と科学が尊重されておらないことも明らかでありまして、安本長官の言う
通りに、現在一面におきましては、あるいは実質賃金の向上の問題があり、あるいは通貨の増発率の問題があ
つて、確かに安定のきざしは見得られるに違いありま
せんけれ
ども、他面において
財政のインフレの高進は、非常に危機をはらんでおりまするし、いわゆる実質賃金におきましても、現在はわずかに
戰爭前の六割という
状態にすぎないのでありまして、
國民は重税に苦しんでいる。この事実もわれわれは忘れてはならないのであります。安定と自立ということがいかに重要であるか。ましてや安定が何よりも最初に
解決されねばならぬということも、これもまた明らかであります。
そこでここに必ずやこの安定を築くために、現在最大の原因にな
つておる
財政と金融に手をつけなければならぬということも明らかだと思います。そこでむしろ吉田
内閣の問題にすべきは、いかにしてインフレ
処理を
考えて行くか、この点にあ
つたに違いないのであります。しかしながら從來この道を回避いたしまして、
生産第一主義なるものを唱えておる、それなるがゆえに、吉田
内閣の最大の欠陥、公約無視の最大の欠陥ということは、
民主自由党がいかにインフレを
処理するかを
考えておらなか
つたことに帰着すると私は存ずるのであります。(
拍手)
経済安定本部長官はここにおいて、はたして安定政策が可能であるかどうか、
再建政策なるものはいかなる
犠牲を受けるのか、いわゆる從來まで、五箇年目におきまして
昭和五——九年の生活水準まで
復興して行こうとするこの
日本の産業五箇年計画とこの安定政策との関連を、どこに
考えて行くのか。私は安定と
再建の矛盾をいかに吉田
内閣は
解決せんとしているかを、まず第一に明らかにしてほしいと思うものであります。
次に重大な事柄は、われわれの政策におけるいわゆる國際的な関連性の問題であります。われわれはこのたび
経済の九
原則や予算編成にあた
つて最も暗示を受けるものは、皆さん御案内の
通りに、一九四八年のあの外國
援助法に基くところの双務協定の精神であります。その中には御案内の
通りに、その國の通貨を安定させ、為替の有効なレートを確立または維持し、予算の均衡をはかるために、必要なる
財政的並びに貨幣的
手段をとることが要請せられて、双務協定が結ばれたことは御案内の
通りであります。ドツジ声明が安定と自立を強く主張いたしまして、その安定はいわゆる貿易を順調にするために、あるいは
日本の産業の発達の基盤をつくるために、あるいは外資導入を有利ならしめんがために、この三点をあげて安定の
要求がなされておるのでありますがゆえに、ここに何が
日本國に対して
要求をされておるかということは、明確なはずであります。すなわち
アメリカの自由な多角形的
世界貿易政策の一環としての
日本経済の
再建、そのために必要なる通貨の安定、為替レートの單一化と維持、さらにそのために必要なるところの
財政の均衡化、この点にあることは明白だと存ずるものでありまして、皆様御案内の
通りに、ブレトン・ウツズ協定になり、あるいは國際貿易憲章なり、あるいはゼネバ協定なりの精神を見ると、一層それが明瞭にな
つて來るものと私は
考えるのであります。私はこうい
つた世界の
経済政策のいかんを問うものではありま
せんけれ
ども、
日本経済の
再建が
アメリカの
援助政策、ひいては
世界の
復興計画、その一環として立
つておることは、これはきわめて重視すべき問題でありまして、このたびの二十四年度の予算も、こうした
アメリカの
経済政策と、被
援助國としての
日本の持つべき
條件を
考えに抜いては、一項目といえ
ども審議でき得ないことは明らかであると思うのであります。ここに從來の吉田
内閣というものの公約の甘さがあ
つたと私は
考えるものでありまして、このことはどの
内閣が
政治をと
つても同じである、あるいは
民主自由党が現在一番まわり合せが惡か
つたのだというようなことで済まさるべき性格のものでは断じてないと思うのであります。
そこで私は吉田総理に対して御
質問を申したいのでありますけれ
ども、吉田
内閣は歴代の
内閣とは違
つて、予算編成の途上で公約実現の不可能という事柄と、
経済九
原則の実施から來るところの、
國民に対するきびしい影響に対する
責任を回避するために、あたかもその
責任が
日本政府以外にあるかのごとき印象を
國民に與えたということは、私はきわめて重大なる事柄といわなければならぬと思うのであります。われわれが從來申し上げて参りました
通りに、ここに來る原因というものは、私は確かに吉田
内閣そのものの持つ性格から來たものであ
つて、その不明の
責任は吉田
内閣自体にあるものと
考えるものでありますが、
経済の九
原則の実施と、それから生ずる一切の
犠牲の
責任はどこにあると
考えられるか。このたびの予算編成の途上における吉田
内閣の、事の重大さに狼狽して、それから出る非
自主性ということを、私はまことに残念に思うのでありまして、特に最近に至りましては、吉田総理は税金の問題や、あるいはその他の公約の問題を、五月に來朝するところのシヨープ使節團のときにおいて、これを
解決すると言
つておるけれ
ども、これはまた公約を無視された大衆に対して、あるいは公約した代議士
諸君に対する
政治的ゼスチユアと
考えざるを得ま
せん。私はこのときにはつきりとお答えを願いたいのは、もしその際において吉田
内閣が、その公約を実現することができないといたしましたならば、そのときの吉田
内閣の
責任をいかに
考えておられるかを明確にしてほしいと存ずるものであります。
次に先ほ
ども申し上げました
通りに、インフレの收束方策は、結局いつ、いかなる速度で、いかなる方法によ
つて行くかということは、これはいろいろの方法があり得ると存ずるものでありまして、現在眞劍にこのインフレーシヨンに対してわれわれが立ち向
つて行く場合において、時期と方法と
手段をいかに選ぶべきかという事柄は、きわめて重要だと
考えまするが、これに対しては
日本経済の現実をいかに認識するかという問題にかか
つておるだけでなしに、これに
國民が耐え得られるかどうかということが、きわめて重要な要点をなすと
考えるものであります。そこで私は、もしこの政策を眞実に実行して行
つた場合における
日本経済が耐えるかどうかという問題と、
國民が耐えるかどうかという問題を
考え、それに対して
政府がどういう手を打とうとしておるかということを
考えて、ここで重大なこの吉田
内閣の
経済政策の全貌を
國民に知
つていただかなければならぬと
考えるものであります。(
拍手)
今度の予算の中心は何と申しましても、一面において非常に厖大なる、いわゆる総合的、眞の
財政の均衡化をはか
つており、他面において一番大きな問題は、千七百五十億円という見返り勘定の特別会計を持
つておる。それで問題は、おのずからその二つが勘案されて
考えられて行かなければなりま
せんけれ
ども、從來まで吉田
内閣の発表したところによりますれば、この見返り勘定に関する政策は、ほとんどまだ明らかにな
つておりま
せん。それでそのことを明確にしてほしいと
考えるものでありますけれ
ども、それ以前において、いかにこの厖大な均衡予算がわれわれ
國民生活に、
経済に影響を及ぼすかということをまず知らなければなりま
せん。
そこでまず第一に、この政策を実行いたしますならば産業資金がどうなるか。すなわち長期あるいは短期の設備資金、運轉資金がどうな
つて來るか。それがわが國の産業にどういう影響を及ぼして來るか。われわれの常識をも
つていたしますれば、この政策を実行するならば極度の資金詰まりが來るであろうことは、ほぼ推測のつくところであります。それにはまず第一に、通貨が安定した場合における貯蓄がどうなるか。從來のインフレーションのもとにあるとは違いまして、貯蓄は著しく減少するであろうという事柄は、あのイギリスのデイスインフレ政策によりまして、一九四八年の貯蓄高が四〇%に減じたことでも明らかで、これはわれわれの注目すべき事柄であります。
昭和二十三年の
日本の貯蓄は三千四百四十四億円でありましたけれ
ども、これが二分の一に下るか、三分の一に下るかは、おそらく現在
政府の最も苦心せられるところと
考えまするが、この
條件の重大な変化のもとにおいて、私
どもはこれに回答を與えること自身も非常に困難と思いますけれ
ども、どうしてもこれを
考えておかざるを得ま
せん。
次に
政府は國債とか、あるいは建設公債とか、あるいは復金債というものの新規発行をやめ、地方債は一定限度内においてこれを発行するとい
つておる。
從つて今度はこうした資本の利用の道というものはとざされたわけであります。國債や復金債が
政府支出と輸入見返り勘定で返済されるために、市中銀行の資金の余力が確かにできるに違いない。だが逆にこれらの市中銀行の持
つておるところの、日銀のいわゆる担保付債務というものは同時に返済されて行くに違いないのでありますから、この場合において産業資金がどの
程度にいわゆる潤
つて來るのであるかどうか。私はこのときに、はつきりと通貨は縮小するのではないかと
考えるものであります。大藏大臣は今度の政策はデフレ政策ではないということを言
つておられますけれ
ども、今度この政策を実行して行
つた場合において、通貨は縮小し、デフレの現象が起きて來るのではないかということを明確にしてほしいと存ずるのであります。いろいろの学者が、いかにデイスインフレを行おうとしても、デフレーションを避けることはできないと言
つております。確かに今度の政策はデフレーションが來るのではないか、これを大藏大臣は明確にされる必要があると存ずるものであります。
次に、
政府は補給金と
現状維持の價格政策をも
つていたしまして、減價償却に見返るところの企業内部の積立てや、あるいは社債発行、あるいは株式の発行という自己資金の調達というものが、どの
程度ここに期待できるのか、私はそれについても重大な疑問を抱かざるを得ないのであります。さらに
政府は鉄道及び通信の建設公債の発行をやめました。災害復旧費、六・三制の費用も削りました。そうしてこうい
つた血の出るような資金がなくな
つて、農業
生産に必要な土地改良費も、あるいは開拓費もほとんど皆無にまでこれが削減を受けたのでありまして、ここにおいて大きな
政府投資の減少を見たわけであります。こうした資金に対しまして、安本長官は、蓄積資本の範囲内でまかな
つて行けとか、赤字金融はしないから大いに努力をして行けとか、健全金融主義で行くから、
生産費を切り下げて合理化を促進して行けとか、こういうことを言
つておるのでありますが、しかしこの資金の大きな変化に対処する眞実の政策を持つことなしに、
日本の健全なる産業の発達は、断じて期し得られないと存ずるのでありまするがゆえに、私は安本長官及び大藏大臣にお尋ねいたしたいのは、資金計画ができているのかいないのか、できているならばこの際明確にしてほしいのであります。同時に長期資金はどの
程度現在われわれは期待し得られるのか。その場合において
日本の産業五箇年計画はどの
程度取入れることができるのか。それから今年の
生産計画に必要な設備資金あるいは運轉資金はどのように來るのか。從來までの状況におきましては、あるいは電力の不足、あるいは石炭の不足、あるいは資金の不足によ
つて、
日本の産業はそれぞれのネックを持
つてお
つたのでありますけれ
ども、本年一番重大なネツクを形成するであろうところのものは、この資金であると
考えますがゆえに、本年度の資金と
生産計画との
関係を明らかにしてほしいと存ずるのであります。この政策を実行して行きますならば、
生産は一時低下するのではないか。
さらにわれわれが重大な関心を持ちますのは、中小企業者に一番重要なところの運轉資金あるいは商業資金、また農家の一番重要な短期の資金と、特に長期資金、農家に対してどういう長期資金——たとえば土地改良はなかなかできないという
條件下において、現在の農村にどういう金融政策をも
つて臨んで行こうとするのか。さらに一番われわれの追究したいのは、
民主自由党はいわゆる建築資金の問題を掲げましたけれ
ども、庶民金融に対してわれわれは非常に大きな関心を持たざるを得ま
せん。一面においては失業者が出る、賃金の不拂いが來る、家計における重大なる影響というものをわれわれは看過することはできないのでありまして、これに対する処置を明確にしてほしいのであります。
次に、私
どもがさらにこの大きな問題を
考える場合において必要な事柄は、今度の予算を実行して行
つた場合においては、
生産財や消費財にわた
つて需要構造が大きな変化をいたすのでありまして、その需要構造が変化した場合において、
生産構造に及ぼす影響は、私はどうしても
考えて行かなければならぬと
考えるものであります。たとえば鉄道の建設が打切られる。そうするとただちに困
つて來るのはいわゆる車輛工場でありまして、車輛工場が困れば鉄の原料代金あるいはその他のものも未納にな
つて來る。ある場合においてはそこに資材の過剰さえ生れて來る。すなわち一石を投ずることによ
つて、その波は全関連産業に波及をいたして來ることは、皆さんも御案内の
通りであります。ましてや六・三制の事業がここで終り、たとえば
政府の資金が遅いので、村では一生懸命で金の來ないのに先に金を出して学校を建てておる。災害復旧費も六月まで待てないので、もうすでにこの問題にとりかか
つている。そういう一つの事実が打切られることによ
つて及ぼす重大な変化に、ただちに現在の産業が適應できるかどうかという事柄は大きな問題であります。一面において、需要構造がかわ
つて來る。それに対する
生産構造との食い違いが出て來る。そこに申すまでもなく失業や、共倒れや將棋倒しや、あるいは一部的
生産の過剰が起
つて來るという事柄は、いわゆる安定恐慌の一つの大きな原因であるとわれわれは
考えるのでありますが、これらに対して本年度の予算をそのまま実行した場合において、この大きな変化を
政府はどのように計算をいたしておるか明確にしてほしいと思うのであります。
もしこの点が言われるようにわか
つていないとするならば、この政策を
政府は公式的に実行して、あとの安定の過程も、自立の過程も、本年度に及ぼす産業の計画もわか
つていないとするならば、あとは野となれ山となれという
趣旨にほかならないと思うのであります。この際いわゆる政党政派を超越して、眞劍に
政府がこの点にとつ組んでもらわぬことには、この大きな冒險に対してわれわれは安んじていることはできないのであります。もしこれらの政策が、
日本の現在の
経済の著しい衰弱をここで來すということでありますならば、こは
日本経済の
再建のために、ゆゆしき問題と
考えるものでありまして、これを十分消化してこの政策を実行してもらわないと、私はまことに懸念せられるのであります。
そこで安定本部長官に対して
質問申し上げたいことは、ドツジ声明によ
つて安定をまず実行せなければならぬ
理由は明らかでありますけれ
ども、それをあえて今日実行する科学的根拠はどこにあ
つたか。すなわち
日本経済に及ぼすドラステイツクな影響を見まして、今日が最も賢明なる時期と
考えた根拠を明らかにしてほしいのであります。(
拍手)從來まで、いわゆる過般の吉田
内閣の発表いたしました
経済分析において、安定のきざしが一部に見られておるというけれ
ども、しかしながらいわゆる竹馬
経済というものが他面においてはある。そこに安定のきざしというものがあ
つた。それに対する長期計画を立案いたし、ここにデイス・インフレの政策をとることによ
つて、小さな安定でなくて大きな安定の基礎をつくり出して行こう。風船をいくらでも小さくして安定することはできるけれ
ども、自立された
日本経済の大きさというものを
考え、そのときにおける
日本の
経済の
生産水準、生活水準ということを
考えたならば、この政策をとるべき時期、
手段、方法というものには、愼重な考慮が拂われなければならなか
つたはずであります。(
拍手)その
意味において、私は安定本部長官のお
考えを明らかにしていただきたいと申し上げておるわけであります。(
拍手)
次に、安定政策を通観した場合における
生産水準の見通し、自立
経済というものはどういうものであるか、大きさをはつきり示していただきたいのであります。安定々々と言うけれ
ども、われわれの從來の常識をも
つていたしまするならば、どこの
世界政策におきましても、御案内の
通りに
國民生活の安定のために、安定政策というものはやられたのでありますけれ
ども、現在の
政府の安定という事柄は、いわゆる資本の安定を
考えておるのではないかという疑念も起きて参るのであります。かくして私はどうしても安定と自立の構想を明確に
國民に知らせていただきま
せんと、産業とそれから勤労大衆にしわ寄せをして、これを
行つて行こうとする政策の重大な基礎が欠けることに相なると存ずるものであります。
こうい
つて参りますと、おそらく
政府は、いやそれに対しては千七百五十億円のいわゆる見返り勘定があるのであるから、この千七百五十億円の見返り勘定でこれを始末して行こうというようなことをおそらく言うに違いありま
せん。ところが、実際に私
どもの懸念いたします問題は、千七百五十億円の見返り勘定は、輸入品が入
つて、それに
從つていわゆる金円資金がそれによ
つて出て参るのでありまして、明日から千七百五十億円の見返り勘定が始まるものとは
考えられま
せん。そうして現在一番
考えられておりまする事柄は、いわゆる五百億円を市中銀行の持
つておる國債償還に充てるという事柄と、百五十億円を鉄道の建設公債に持
つて行くという事柄と、他面においてはいわゆる通信の建設勘定に百二十億円を持
つて行く事柄との、この三つが現在きま
つているのにすぎま
せん。
政府はこれをはつきりと言われておるのであります。そこで私はいろいろ準備の都合もあられると
考えまするけれ
ども、明確にしてほしいのは、この見返り勘定というものを、どういう形で運営されて行くのか。資金はいつどのように、どの
程度入
つて行く見通しを持
つておるのか。それが
日本経済にどういう効果を持
つて行くかということを、この際
國民にお知らせを願いたいのであります。(
拍手)それから次に問題になりますのは、この
政府予算を見ますると、一面において金融資本を救済しておる、他面において勤労大衆を
犠牲にしておる。これが明確にわかるのでありまして、すなわち言うまでもなく、
政府は本予算におきまして、輸入
援助の‥‥(「一方的に言うなよ」と呼ぶ者あり)私は両方申し上げておきまするが、輸入
援助の見返り勘定の方で、市中銀行に対する國債償還を五百億やられるのであります。それからなおこの五百億というものを見ますると、現在の市中銀行の國債の保有高は千四百六十億円であります。
從つて本年において一挙三分の一の國債を返還
せんとするものでありまして、それから同時に
政府は
政府出資の中から三百三十億円を復金債の返済にあてがおうとしておるのであります。これも市中銀行の救済であります。こうして市中銀行はここに救済され、そうして安定本部長官の言う
通りに、あまりもうからないような
会社には貸すな、企業整備しないような
会社には貸すな、赤字融資をするような
会社にはやるな、こういうことで市中銀行の独裁性というものがここで必ず起きて來る。そうしておそらく現在
考えまするのには、いわゆる資金は非常に詰ま
つて來るだけでなしに、この市中産業の生死のかぎを完全に市中銀行が掌握をいたすのでございまして、わが党は從來いわゆる軍需公債の利拂いの停止、ひいてはその打切りを主張して参
つたのでありまするけれ
ども、今度の吉田
内閣は市中銀行のこうい
つた國債をすべて短期間に返済
せんといたしておるのでありまして、このたびの政策はその
意味におきまして、金融資本の政策であるということは決して一方的観察では断じてありま
せん。(
拍手)
ここにおいて私は大藏大臣に御
質問申したいのでありまするけれ
ども、産業の死活の
権利が銀行に移るのでありまするが、しかも千七百五十億円の見返り勘定の比重も、きわめて多くなるのでありまして、いかに
民主自由党といえ
ども、この資金下において、市中銀行や、見返り勘定や、あるいは日銀券をこのままの形においては、この時代に処することは決してできないと存ずるのでありまするがゆえに、吉田
内閣は信用統制をする
考えがあるかどうか。あればその構想をこの際に明確にしてほしいと存ずるものであります。(
拍手)
また現在の金融機関は、きわめて横暴の面がはつきりいたしているのであります。月一割や一割五分の利子はとる。現在銀行員は俸給生活者中最高の給料をと
つておる。私は企業整備を一面において
要求するけれ
ども、銀行の資金コストがきわめて高いのが
日本の
現状だと思うのであります。そこで
政府はこれらの銀行に対して、統制なりあるいは信用の社会化を
考えているかどうかを明確にしていただきたいと存ずるものであります。
次に御案内の
通り、先ほど申しました
通りに、失業がたくさん起
つて來ることは、これは皆さんも、またいろいろの方々からも説明のあ
つたところでありまして、それは資金の面におきましても、あるいは
政府支出が非常に減少する点におきましても、あるいはまた單一為替レートの設定……。