○徳田球一君
吉田総理大臣は本議場におきまして、今度の総
選挙は、保守
政党に
日本再建の重任を與えるために
投票をせられ、これが圧倒的に勝利しこの支持を受けていると言われておるのであります。しかしながら、それは保守
政党自体に対してではなく、保守
政党が約束した、すなわち
民主自由党が約束したところの
公約に対して
投票せられたのである。断じて
民主自由党自体に
投票せられたのではない。かかることは
政治においても社会に、おいても同樣である。こういうふうに自分の党に
投票せられたと
考える吉田首相であるがゆえにこそ、吉田首相は実に横暴きわまることをや
つておるのである。(
拍手)これは社会を知らず、
政治を知らざるものである。
公約を履行しないことになれば、今や実際人民
諸君は憤怒に燃え、
民主自由党内部にさえも反首相の氣運が十分みなぎ
つておることは、
諸君の知
つておる
通りである。
さて施政の中心は、
復興を
犠牲にして、
経済を安定しようというのである。しかしながら安定というのは、
復興を伴わずしてはできないことである。戰時中及び
戰後におきまして、
経済は不正常な状態にある。この不正常な状態は、
復興なくしては、これは
整理することはできない、
整理することなしには安定はできないのである。でありますから、これはすでに基本的にい
つて、
政策の内部に矛盾があることははつきりしている。現に
片山内閣、芦田
内閣におきましても、この安定を目ざしてこれを徐々にや
つて來たのである。しかるにこれは実際上
経済を閉鎖し、ま
つたくいかんとも収拾のできないところへ來たのである。失敗したのである。それだからこそこの総
選挙が行われまして、これに
反対したところのインフレーシヨン專門——第一次
吉田内閣当時からインフレーシヨンの石橋財政でや
つて來たのである。これによ
つてやみとインフレをあおり、十分なる利益を占めたこの味が忘れられないためにこそ、今の
吉田内閣に対してもまた
投票が集中せられたのである。であるからして、
吉田内閣がこれに反して急轉直下安定の方向に向うならば、これはま
つたく谷底へ落ちるであろう。ずうたいが大きいだけに、その落ちる速度も早い、こうごうたる音を立てて、
諸君はいましばらくしたら崩壊することは明らかである。
しからば事実はいかん。
諸君の目ざしている第一の
政策は貿易を
促進するというところにある。昨年十一月、私は
質問演説におきまして、今度の貿易というものは不等價貿易であり、外國
資本に利益を與え、
民族を奴隷化する貿易であるがいかん。これをどう
考えるか、いかに処理するかということを
質問しましたけれ
ども、吉田首相その他の閣僚
諸君は、一言もこれに対して答えをしなか
つたのである。しかるにこのたびの
政策は、この貿易
政策を一層強化しようとしておる。このためにいかなることが起るか。実際輸入價格におきましては、國内の公定價格の三倍以上である。石炭におきましては、独占的な製鉄会社に拂い下げまするものは、公定價格で拂い下げます——これよりなお下に拂い下げますために、輸入價格の九分の一というのである。輸入價格がこの拂下げの九倍という驚くべきものである。しかもこのときに最も注意しなければならぬのは、運賃が独占的な運賃で輸入される点、これは驚くべきものである。輸入價格の全体の二一・五%というものは、これが運賃であるのである。しかもこのうちで最もはげしいものをあげますと、地中海塩は運賃が原價の四・六七倍である。海南島から來ますところの鉄鉱石は一・三二倍である。カナダ・コークスさえ八〇%という驚くべき運賃を拂
つている。さらに輸出を見ますと、國際價格よりもきわめて安價でありまして、人絹のごときは國際價格のわずかに二分の一弱、トヨダ自動織機におきましても二・五分の一である瀬戸物のセツトなどは四分の一、七倍率の双眼鏡におきましては十分の一以下の價格で賣
つているのである。そのためにこの二十四年度末までの入超は、十二億三千万ドルということになる。これを三百三十円に換算いたしますれば、驚くなかれ四千五十九億という、ま
つたく一年の歳出の予算と同じ額だけの負債がすでにできておるのである。かくのごとき貿易をいたしますれば、輸入で損し、輸出で損し、
日本人はま
つたく干物同樣に枯れて行くことははつきりしているのである。(
拍手)でありますから、この点をわれわれはぜひとも改めなければならないが、それに対しましては、貿易における自主権をぜひ確立しなければならぬ。(
拍手)現在の貿易はま
つたく自主権を持たない貿易である。そうして貿易を國営人民管理にし、最も大事なソビエト
同盟、中共、北鮮、その他極東一帶に対しまして、自主的な貿易をすることが最も大事である。(
拍手)そうしてこれを一層
促進するために、講和條約をどうしても
促進しなければならないのである。この点につきまして、首相、安本長官並びに商工大臣の明確なる回答を求めたい次第である。
第二点、輸出貿易を強化しますために、独占
資本に対して
産業を集中しておるのである。時にこれが鉄鋼に対して集中されている。
戰爭の危險はないといわれますけれ
ども、國際的の鉄鋼に対する需要ははなはだしいものである。今やこの鉄鋼に集中して、これを輸出に振り向けようとしているのが
日本政府の
方針である。しかもこの鉄鋼が日鉄、
日本鋼管並びに中山製鋼に集中せられまして、この三つの大会社は三倍にふくれ上
つているけれ
ども、その他の会社はほとんど壊滅状態に瀕しつつある。現に名古屋の大同製鋼のごときは、半分の
首切りが起き、次第々々に壊滅して行くことははつきりしておる。それがすでに昨年の第三・四半期から実行し始められておるのである。しかるに一方鋼材の國内需要におきましては、実に悲しむべき状態にな
つておるのである。一月におきましては掛賣代金の残高が二十一億あるのである。さらに引取らないものが三万八千トンという驚くべき数にな
つておる。この
傾向は二月、三月、四月と毎月毎月非常な速度を、も
つて増加しておるのである。
日本経済が破壊されつつあることがはつきり現れている。また鉄製品も同樣である。そうしてこの状態は独占
資本のすべてが、外國
資本の下請にな
つているということをはつきり表わしているのである。(
拍手)現に鉄製品について一例をあげますれば、造船は三菱、川崎、三井、浦賀ドツクに集中せられておりますが、それらは外國の一万五千トン級以上の造船に集中せられているのでありまして、
日本船はほとんどこしらえておらぬ状態である。さらに紡績機械におきましても、トヨダ、豊和等の五大メーカーに集中せられておりますが、これまたほとんどすベて輸出向きでありまして、國内向きのものは、賣れましても金がとれないという悲しむべき状態に陥
つているのである。さらに自轉車におきましても、三菱重工業、宮田、岡本の三社にほとんど集中せられ、これさえもほどんど大
部分が輸出向きに向けられているのである。
さらにこのほかにアルミの問題であるが、アルミは昨年に比しまして九二%の増産計画を立てておる。しかるにこれの需要は
日本には非常に少くなりつつある。これが
昭和電工、日新化学、
日本軽合金に集中せられまして、これらはまたほとんどすべてが外國に輸出せられているのである。そうして七六%の配電増加をこのアルミにいたしますために、硫安に対するものは電力が不足しつつあるのである。肥料はこれは非常にきゆうくつになることは、はつきりわか
つているのである。さらに石炭のおきましては、A級の大
資本家経営七十一炭鉱に対しまして、所要資金の九〇%が投下せられ、B級の百二十九炭鉱に残りのわずか一〇%しか與えておらぬ。それに対しまして、C級の三百九十一炭鉱は、ま
つたく資金がないために今や壊滅しつつあるのである。驚くべき状態が発生しております。
第三点は、独占
資本の支配を促しますために、第一、三百三十円の單一レートを設定して、多くの中小輸出
企業を壌滅させる結果になるのであります。独占
資本だけが生き残ることははつきりしているのである。
第二は價格補給金でありますが、これが大体二千億に達している。これは歳出の約三〇%弱にな
つている。しかるにこの補給金は安定帶物資、すなわち鉄、石炭、ソーダ、銅、化学肥料等と輸入食糧だけにとどまるのでありまして、実際独占
資本、大
資本にのみこの價格補給金の二千億がくれられるという、驚くべき事実があるのである。(
拍手)さらに船舶
運営会の補助金は六十三億となり、
政府出資金また六百三十億でありますが、合計二千七百四十億、歳出の四〇%、これが独占
資本のために使われることははつきりしておる。
さらに第三は対日援助特別会計を設ける
といつております。これは千七百五十億でありますが、これは輸入物資を拂い下げた金でありまして、借金です。これを黒字だなんと言うに至
つては、ま
つたく
経済を知らないあほうの言うことでありまして、何と驚くべきことではないか。(
拍手)しかもこれに援助されますものは、安定帶物資の
生産と鉄道、通信事業の
建設費に限られているのである。しかしこの鉄道並びに通信事業の例を見ますれば、逓信省の有線通信機械は、これは國内における九〇%まで逓信省が需要しているのである。しかるにこの逓信省に納めるものは、
日本電氣、沖電氣、富士電機、東芝の四社以外にはない。この四つの会社に
民主自由党が奉仕しているという、驚くべき結果が現われているのである。
第四点、独占
資本のための價格
政策が行われている。この点におきまして独占
資本の
生産物が價格が高く、中小
企業、農業、漁業等の
生産物は價格が一体に全部安いのである。これを
昭和十一年に比べまして、昨年の七月の物價を見ますと次の
通りである。一般農産物價は六十倍ないし九十倍に
上つた。
米價は百三十二倍に
上つた。しかるに硫安は二百六十倍に
上つた。石炭は三百十七倍に上り、銑鉄は四百六十二倍に上
つているという驚くべき事実、これを
諸君が驚かないというならば、それは
諸君が独占
資本家にま
つたく飼い殺されていると同じことになるのである。(
拍手)鉄鋼、肥料等を安くするというけれ
ども、
民主自由党は約束したことは一つも実行しておらぬ。これまで実行しないことを吉田首相は誇りとしている状態でありますから、これはとても当てにはならぬ。(笑声)なぜならば現に物價を
上げているからである。その
上げているものに対しまして、綿花は現に三・八倍、綿糸は三倍、織物が二倍というものを引
上げている。これがいかに
労働者、農民、中小商人
諸君のいかに苦しいものになるかははつきりしている。(「いつ
上げているのか」と呼ぶ者あり)
日本政府が今
上げている、四月一日現在に
上げている。(笑声)そういうことは明らかに綿花が独占
資本に有利である。綿糸は中小
企業に、織物は買う者の消費に当りますために、人民のためにはいよいよいよますますます痛烈、独占
資本のためにま
つたく奉仕していることは、この事実によ
つてはつきりしているのである。石油、鉛など値段を
上げることに
なつた。これまた独占
資本のためである。そしてマル公割れを演じているものは、中小
企業、農林、業漁等の
生産物でありまして、これは人民の購買力が著しく減退したことを意味するのである。
さてわれわれは運賃について、もつとはつきりしたところを見ましよう。鉄道の貨物運賃は原價の半分で非常に損をしている。旅客運賃は定期券を含めまして二〇%もうかる。定期券は大体奉仕的にや
つておりますから、これを除きますれば驚くなかれ四〇%もうかる。この四〇%もうか
つているもの、すなわち大衆が非常に損をしているもの、これへさらに
吉田内閣は六割を
値上げすることにな
つている。どうだ。貨物運賃を
上げずして、旅客運賃を
上げることは、人民に対して痛烈に搾取し、独占
資本に対しては奉仕している、この驚くべきことがあるのである。これが郵便料金においてもはつきりしている。郵便料金においては、われわれの使うものが四割
値上げされるのに、電信、電話料、会社で使うものはすえ置きだ。さて
昭和十一年の石炭價格に含まれておりまする運賃を見ますれば、一三・四%でありますのに、
昭和二十三年におきましては五・二%とな
つている。すなわち運賃にかかるものはずつと安くな
つている。これだけ独占
資本に有利であるのである。加うるに全
産業にわたりまして、予約クーポン制、予約割当切符制、これをやることに
なつた。これをやりますと、金を持
つている大
資本家に有利で、中小
企業者が壊滅することははつきりしている。大
資本家が支配を確立しようというこの野望に対しまして、
吉田内閣は至れり盡せりだ。
さらに課税
方針に見ましてもそうだ。課税
方針はま
つたく人民を死に瀕せしめ、独占
資本家、大やみ業者をこやすところの課税
政策にな
つている。現に予算全体に関しまして、これを通常予算から特別会計その他を加えますれば、三兆一千億以上になる。昨年に比較しまして、まさに二倍である。昨年よりも今年は
生産が増加する云々といいますけれ
ども、中小
企業が壊滅する、農民も漁民も壊滅しつつある状態におきましては、決して
生産は増大しない。独占
資本家のみは幾らか増大するかしらぬが、これは損をして輸出するのであるから、國内における担税力、金を出す力は非常に少くなるにかかわらず、昨年に対して二倍の税を課するということにおきましては、ま
つたく
吉田内閣はあきれ返
つたものである。(
拍手)
経済を知らないことおびただしい。法人税は租税のわずか三・六%でありまして、しかも法人税の大
部分は中小
企業家が負担するのである。大
資本家は赤字赤字でごまかして大脱税を試みている。さらに
所得税におきましては、
民主自由党はこれを
軽減すると言いながら、実際においては昨年に対して七〇%増加している。この点も大
資本家や大やみ業者が脱税いたしますから、実際は中小
企業家が二倍以上に課税せられることは明らかである。
軽減すると約束して、これで二倍以上をぶ
つたくるというに至りましては、吉田首相がいかに大衆の支持がある
といつても、これは一ぺんにひつくり返ることは明らかである。(
拍手)かくのごとき
公約の違反、それは勤労
所得税におきまして、免税点を
上げ、税率を下げると言いながら、これはすえすえ置きであり、農民、漁民、中小
企業家の事業
所得税におきましては、必要
経費を認めると言いながら、これをほとんど認めない状態である。かくして実際上農民の課税が毎年累増されておるが、この驚くべき事態を見まするに、
昭和十一年におきましては、農民の課税は、総所得に対しまして、わずかに五%である。しかるに二十三年度は五六%が税をだすことに使われている。しかるに二十四年、今年は推定でありますけれ
ども、八〇%前後になるであろうといわれているのである。これではとても農民は生きて行くそらはない。さらに
取引高税のごときも、いろいろ緩和するするとは言いながら、昨年に比しまして、全体の價額としましては二倍以上とることにな
つておる。取引は今やどこを見ましても大体減少しつつある。マーケツトだ
つてどこへ行
つたつて、みんなさびれている。だのに
取引高税を二倍以上
もとるに至
つては、これは全人民をま
つたく破滅させる結果になることは明らかではないか。
さて
地方への配付でありますが、この
地方への配付はわずかに五百七十七億でありまして、昨年よりも百十三億減少しておる。一般の予算はうんと増加しております。大体七〇%増加しておるのに、この
地方への配付は百十三億も減少しておる。それは去年は歳出の一〇・八%であ
つたのに、今年は八・二%に引き下げられる。この点につきましては、法律上課税の三三・一四%を
地方に渡すことにな
つておるのに、実際は法定の半分しか渡さぬ。知事
会議におきましても各市町村の
会議、縣の
議会におきましても、この
政府のやり方に対しては
徹底的に
反対しておるのである。(
拍手)そうしてこれを補うために、
民主自由党の
内閣は
地方税を大幅に引
上げておるのである。住民税を引
上げた上に、なおかつ権利なき社團並びに財團に課税するということを臆面もなく言うておる。これは
労働組合、農民組合、その他の民主團体に課税することを意味するのである。これは驚くべき残虐であるといわざるを得ない。かくのごときは民主主義を
促進するのでなく、ま
つたくフアツシヨの独裁を強化することになるのである。(
拍手)それから地租や家屋税は六倍に
値上げする。そのためにこそ
小作料を
値上げしようとしておるのである。
地主は
小作料をと
つても、こんな税を課せられたんでは一層苦しくなる一方である。今や
地主といえ
ども、
民主自由党に対しては断固
反対しつつあるのである。入場税のごときにおいても、免除せられた
部分が今度は課税せられることになる。一層苛斂誅求求されるのである。そのほかに、くだものの引取税、ガソリン税を新設する。今や長野縣などのごときは、りんごの木をどんどん切り倒しておるということにな
つて來ておる。こういうでたらめをやらせるようになりましては、
民主自由党ももはや生命は長くない。(
拍手「何を言うか」と呼ぶ者あり)かような点におきましては、六月にさらに
公約を実行するように、いろいろ檢討するということを、本日吉田首相並びに
大藏大臣は約束した。しかしながらこれも、実際それならば、今の
民主自由党のように、独占
資本のためにのみ奉仕するようでは、ほかに税金のとりどころがない。とりどころがないのに、いくら約束して見た
つてだめだ。今度だ
つて諸君が
公約を果そうとするならば、大口の脱税をとる、大
資本家からどんどんとるようにしさえすれば、
諸君は
公約を果されるのに、独占
資本に奉仕することになるから、こういう
公約は果されなくな
つたのである。
だからして六月に
といつても、
諸君がいくらがんばろうとも、
吉田総理大臣がいくらがんばろうとも、こんなことは当てにならぬがゆえに、わが党の
政策はかくのごとくなければいかぬと思う。こうして初めてよくなる。すなわち独占
資本のために資金と資材とを集中することに
徹底的に
反対し、大やみ、横流しに
反対し、
官僚統制を廃止し、人民のためにする價格統制をやり、さらに大衆課税の即時廃止、大口脱税の即時取立て、高度累進
所得税を設定いたしまして、このことによ
つて物價を三分の一に引下げ、人民の購買力を四倍に引
上げる。そうして独占
資本による重要
産業の國営、人民管理を実行することによりまして、將來脱税を防ぐとともに、これらの利益を
國家のために全部使わなければならないと思うのである。かくして初めて不正常の状態から正常の状態になり、これを土台といたしまして初めて
復興政策が行われる。この
復興政策を行
つてこそ、初めて安定に向うのである。(
拍手)この点に関しまして、特に
地方税のことに関しては、
地方財政を担任されまする木村小左衞門
國務大臣に
答弁を求め、税その他の問題に関しましては、大藏、安本、商工大臣に対して
答弁を求めるものであります。(「
答弁する價値なし」「何だかわからぬ」と呼ぶ者あり)理解にならない方は、何を尋ねておるかわからぬそうだが、これは
議会演説の本筋でありますから御安心願いたい。
第六点におきましては、金融
資本の支配権を確立されようとしておることである。すなわち
國家が握
つておりました金融支配権を放棄いたし、
産業復興金庫の廃止、公債、
地方債の発行を停止いたしまして、かえ
つて償還をしようとしておる。そのことによりまして金融力は九大民間銀行に集中せられ、
産業と農業と漁業は
官僚統制でありますために、この金融
資本が
官僚統制を支配し、
日本における
経済の支配権は、九つの民間銀行の手に握られる結果になるのであります。そうしてこれがまた
政治をも支配することになるのである。現に
吉田内閣の
政策は、この独占
資本に支配されておる
政治といつて、だれがこれを否定することができるであろうか。この民間の大銀行外は國独。占
資本と結合することは明らかである。すでにこれに対しましては、ニユーヨークに本店を置きまする大銀行は、虎視眈々として
日本に支店を設け、この
日本に、おける金融
資本との結合をはか
つておるのである。でありますから、かかる状態をも
つてすれば、
民族は外國
資本の奴隷にならざるを得ない。(
拍手)自立
精神だとか、いや自主的な
経済だとか言いましても、これではま
つたく身動きのできない、外國
資本の奴隷にならざるを得ないではないか。それゆえに金融
資本を打倒し、
労働者、農民、林民、漁民、
中小商工業者、
民族資本のために、金融の國営、人民管理をすることのみがこれを解決すると信ずるのであります。(
拍手)安本長官、
大藏大臣はいかなる意見を持ち、いかにしてこの独占
資本の支配を打破り、人民のために金融を処置するかという点を、特に明らかにしてもらいたいのである。
第七点は、
國家並びに
民族企業の荒廃のことに関し、同時にこの荒廃を利用して、外國
資本を導入しようとする一大悲劇が起りつつあることに対しまして、特に
質問しなければならないのである。
國家企業の荒廃しておる実例に対しまして、最も重大なものは國鉄でありますために、國鉄から申し
上げる。國鉄の非常な危險に瀕しておる箇所が、駅舎及び駅構内におきまして五十二箇所ある。トンネルが三十六箇所、橋梁が三十箇所、線路におきましては三百七十四箇所が危險である。その他の施設におきましても五箇所が危險である。こういうことのために
幾多の大惨事が起
つておりますが、このうちでも岩手県の山田線のごときは風水害によ
つてま
つたく今後いかにこれを回復するかの予想さえもつかないほどにこわれておる。そのためにこの奥におります山林の民は、入るものが入らず、出すものが出せないために、非常に困難をしておる、さて二十二年度の國鉄の資材の最低需要量は、國鉄から書き出ておりますものは二十一万三千トンでありますのに、実際配給されたものは三万五千三百トンで、二八%である。だからこそ國鉄は荒廃しておるのである。そこで実際鋼材の使用は、施設にまわすこともできないで車輌に移
つて來ておる。
昭和十一年におきましては、鋼材の使用量は、施設に七四%、車輌に二六%でありましたのに、二十三年度におきましては、施設が三七%、車輌が六三%ということにな
つておる。これは車輌が傷んでおりますために、大惨事が発生するので、やむを得ず應急手当をした。この惨事の実態を見ますと、
昭和十一年に対しまして、二十一年は、線路が二・六七倍、車輌に至りましては二十九倍弱という驚くべきものだ。だからこれを車輌にまわしましたが、その結果今度は線路がどんどん弱くな
つて、荒廃いたしまして、現在におきましては、この線路から起こる事故というものは驚くべきものになり、
昭和十一年の十倍ということにな
つておるのである。これは実際驚くべきものである。さてこの國鉄は、独立採算制をとりますればどうなるかということでありますが、事実旅客運賃を六割
値上げをいたしましても、國鉄事務当局の意見によりますれば、一千億という驚くべき赤字が出ると言われておる。だからして
大藏大臣などが、やあ三十何億なんだと言いましても、それはほんとにでたらめであります。こういう勘定ではとてもだめです。ですからどんどんどんどん荒廃して行くのである。さらに電信電話のことにつきましては、焼けたもののいまだに復旧しないものがたくさんある。二十四年度におきまして技術家は、改良拡張費に三百七十四億と、復旧公債費におきまして一千億を要求しておるのである。しかるに改良費は半分になり、公債は絶対に発行できないということになりましたために、電信電話の復旧は望みなきものにな
つたのである。そのために篠原工務局長並びに鈴木工務局市内課長は辞職を申し出ている。彼らはもう自信がない。高級
官僚といえ
ども、彼らの言うには、
修正資本主義に頼
つてお
つたらこれもだめ、民自党もいいと思
つたらこれはなおだめだから、辞職して行くというのである。今や彼らは共産党を支持する方向に向いつつあることは明らかである。(
拍手)專賣局におきましても、外資の導入が実際できるかどうかはきわめてあぶない。なぜならば外國のタバコ・トラストは
日本における專賣局の施設が腐り果てておるから、こんなものは買う必要はないと言
つている。それよりも自由競爭をさせる。自由競爭をさせたらわれわれが
徹底的に勝つと言
つておる。吉田首相は、この專賣高を賣りまして、大きくもうけようとしておるかもしれぬけれ
ども、とて
もとても、外國人が笑
つておる。それどころか実際上は專賣権を賣り渡すという悲劇が來なければならないのである。吉田首相はこの点につきまして特に
考えなければならない。愼重に考慮すべきであると
考えるのである。
民間企業もこの
通りに荒廃しているのである。この荒廃していることを理由にいたしまして、民自党を中心にして國鉄拂下げ
運動が非常に盛んである。
もと私鉄を拂い下げ、バスを拂い下げるといいますが、さてこの拂下げの條件が、二十七億円の財産に対して、民自党の側から拂おうというのは十分の一である。そうしてこれを長期年賦——これでは何にも拂わないと同じだ。ただ利権をかせいでこれを外國
資本に賣り渡す結果にならざるを得ないのである。(
拍手)かくして專賣局、電信、電話も外資に賣り渡したならば、一体
日本人は何になるのだ。かくのごとき外國
資本に隷属するような
政策、ま
つたく賣國奴といわざるを得ない。スタンダード・オイル会社は帝國石油を支配し、スタンダード・オイルはさらに東亞燃料の和歌山における港湾施設を支配したのである。それからカルテツクス石油会社は
日本石油に投資し、鶴見の精油所を支配するようになり、すなわちすべての株式の五一%を外國
資本に賣り渡したのである。かくのごときは中國の腐敗した
國民党
政府でさえも行えない、あの江兆銘反
民族政府でさえも行わなか
つた驚くべき賣國奴的の
政策であるといわぎるを得ない。(
拍手)
しかるに吉田首相は何と言
つた。植民地にな
つてもよろしい、
國家もたけのこである。何を言
つておる、人民を賣り渡して、この数十年にわた
つて日本人がたくわえた財産を外國に賣り渡す、こんなことでどうなる。わが共産党は人民を外國
資本の奴隷にするような外資導入に対しましては絶対
反対である。(
拍手)外資の利用は、貿易を國営人民管理にすることによりまして、專念人民のためにのみする貿易でなければならない。そうして初めて外資は利用されるのである。この事実に対しまして、
吉田総理大臣、運輸大臣並びに逓信大臣安本長官、商工大臣は何と
考えられるか。
さて民自党の
政策の結果はいかなるものをもたらしたか、これを
質問したいと思うのである。人民のためにする
経費と思われるところの
公共事業費、
失業対策費、
地方への配付税は千九十八億にしかすぎない。昨年に比しまして五百九十七億を減少し、全歳入出に対しまして昨年二一・二%であ
つたのが、今年は一五・六%に減少している。これすべて独占
資本のために、人民のことなんかどうでもいい、いやなら出て行け、自分に
反対なら、
民主自由党の
諸君も自由にしろ、という、吉田首相の横暴きわまる
政策によ
つてこそ、これが生れて來たのではないか。(
拍手)このために災害の復旧はほとんど放棄されておるのである。治山治水の復旧と將來のための建設工事に関しまして、技術者
諸君は千五百億必要であると言うのに、予算はわずかに二百二十億しかない。これはわずかに一五%にすぎない。これでは國土が崩壊して行くのはあたりまえである。
さて
政府は金がないないと言
つておる。金がないからしようがないじやないかと言うておる。だが事実はどうだ。日銀に対する
政府の預金は三百四十億ある。これをあんまり多過ぎるというので、民間銀行に百六億を移そうというのである。資金は豊富である。ただ
吉田内閣は人民を崩壊させるために、民間
資本、中小
企業を崩壊せしめ、これらを独占
資本の手足に使うために、この資金を支拂わないのである。実にひどいことをや
つている。だからして
民族防衛大会が起り、独占
資本に対して闘うために、
民族資本、中小
企業家
諸君も、
労働者、農民その他の全人民と統合して、一大反
政府闘爭に移
つて來ているのである。実際農林におきましても、漁業などにおきましても、実に大きな崩壊が起
つておる。これは國土の荒廃のための大打撃があり、
生産費を伴わない物價を設定しているためである。さらに
土地改革は進行しているのではなく、逆行しつつあるのである。
土地取
上げは農林省の調べによりましても十万件ありますが、実際はこれの十倍、百万件あると思われる。この
土地を賣り渡して、小作民からと
つた金は三十一億ある。しかるに
地主に渡した、買收した金はわずかに十億しかない。二十一億を
政府がねこばばをきめまして、これを
大藏省の預金部に黒字
といつてたたき込んでいる。おどろくべきことだ。(
拍手)一体こういう賣買の途中に立
つて、
政府がどんな金を一日とても持
つていてはいかぬのではないか。今や農民は非常に苦しんでいるのに、この金を二十一億も拂
つてやらぬというのは、一体何ということだ。
その上にさらに重税はひどくな
つているのである。そのために二十三年度におきまして、中農の上層農家におきまして、平均耕作面積一町七反もありますりつぱな農民が、一箇年一万二千六百円の赤字を出しているという状態、これでは農民が崩壊するのもむりはない。この結果は
耕地を放棄しているのである。昨年の夏作におきまして、農林省の調査によりますと、二万五千
町歩を放棄し、関係農家は五万戸ということにな
つているのである。非常にこれは悲しむべきことだ。食糧が足りない足りないというのに、農民が耕すことを放棄するに至りましては、
日本はどうなる、これこそ外國
資本にま
つたく生死を握られる結果になるではないか。その結果人身費買は起りまして、十二、三歳前後の子供たちが三年ないし五年の年期でわずかに二千円で賣り渡されているのである。これは主として東北、北陸の單作地帶に起
つておりまして、一箇年一万人を下らない数である。この大きな数字に上
つておりますが、これに対しまして賣
つている農家
諸君は何と言
つているか。実際にこれは食えない、家に置いておけば子供は死ぬのだから、まあこれは食うだけでもいいから賣る
といつて、二千円などの賣
つた金をとるのはも
つたいないくらいだと言
つている。かくのごとく農民は疲弊しているのである。漁民において、中小網元を加えまして、全面的に大体同樣な
危機に瀕しているのである。
さて
労働者に対してでありますが、これまた驚くべきことでありまして、
経済白書によりますと、実質賃金は向上していると言うけれ
ども、実際はこれはみんな低下している。たとえば一公務員法
成立の後に
官公廳は六千三百円ペースに上りましたが、時間が強化されておりますために、実質上は四千七百円でありまして、副業をすることができないために、非常な苦しみに陥
つているのである。そのほかに号俸の切下げ、年末調整などがありましたために、一、二月の給與は半数以上が千円以下である。全然とらなか
つた者も多数いるのである。これを中央郵便局の例にと
つて申しますれば、夜勤手当が三十八円五十銭であ
つたのが、わずかに四円五十銭に切り下げられている。このために深夜業の加配米の代價である五円十銭が支拂えないのである。こうして厚生課の物品取次所におきまして、一日六万円賣り
上げてお
つたものが、わずかに二万円、三分の一に減少した。こんなに
労働者は実際苦しんでいる。実質賃金が
上つたなんていうのは、どこを押せば出るのか。青木安本長官はどこを見てそんなことを言うのか。(
拍手)しかるに警官や刑務所の職員は同じ号俸でも五〇%高い。暴圧をも
つて人民をなぐるこの連中は五〇%高い。そうして
首切りもなく、予算はだんだんだん
増額されまして、警察費だけでも百億に増加する。
吉田内閣がいかに警察
政府であるかをはつきりと示しているではないか。(
拍手)現に大阪市の鈴木警察局長は、大阪におきまして先月の二十七日と今月の三日に、産別
会議の所属の
労働者諸君に対してどんな暴行を加えたか。かれの命令は何だ。じやまするような者があれば、けとばしてしまえ。文句を言うような者があれば、殺してしまえ。何でもかんでもやつつけてしまえ。非常に重大な問題にな
つている。今や大阪市長もこの鈴木の暴行に関しまして非常に怒り、これに
徹底的な抗議を申し込んでいる。しかるに
政府は何もしないじやないか。こういう者を檢挙しないどころか、こういう者をむしろ増長させる
政策をと
つておるのである。(発言する者あり)この点に関しましてはさらに詳細なる調査を法務委員会でやるでありましようから、
諸君が騒がなくても大丈夫だ。
生産は戰前の六〇%に上
つておるという。これも紡績を除きますれば、実に九六%に上昇しております。しかるに賃金はわずかに二七%しか上
つておらぬ。その点におきまして、いかに大
資本家に
政府が献身しているか、はつきりしておるのである。これは私鉄
労働組合が調査したのでありますけれ
ども、昨年の十一月の全收入におきまする賃金の占める
部分は、都会におきましてわずかに六六%であり、郡部におきましては八〇%にすぎないのである。どうして生きているかといいますと、これすべて内職をして生きておる。そうして賃金だけでは毎月四千円から五千円足りない。これが三・七人の家族においてそうである。
從つて衛生費や娯楽費は全体のわずか五%にすぎない。これで
労働者が健全であり得るか、
労働者意欲が出て來るか。出て來ないのはあたりまえではないか。さらに賃金を遅配させ、不拂いをしておるものは非常に廣汎に及んでおるのである。これは中小
企業ばかりではなく、この遅配と不拂いは実に大
企業にまで及び、炭鉱におきましては全國に平均いたしましまして、二〇%は拂わないのが普通で、これがいい方である。そのあとにもつと拂わないのがうんとたくさんある。この石炭においてさえそうである。そのために
労働強化をするために危險率はきわめて多くな
つておるのである。炭鉱を代表的にあげますれば、二十二年度の上半期と二十三年の上半期を比較しますれば、出炭量は六%上
つておりますのが、災害は二・二三倍にな
つております。非常に災害が多くな
つておる。実数から申しましても、三万人のけが人が六万七千人に増加しておる。しかもこれは官憲が干渉いたしまして
労働強化をしておる。
労働者側は炭鉱の特別調査團に対しまして、非常な不滿の意を表しておる。この
労働強化に対して特に官憲が干渉していることに関し不平の意を表している。こんな状態では四千二百万トンをあげるというこの予定はとんでもない、とてもあがるものではない。
從つて日本の全
生産は非常に崩壊し、
諸君の計画とはま
つたく違
つたものになるのである。しかして
企業整備、
行政整理によりまして二割、三割の
首切りを始めておりますが、これでは
民族資本、中小
企業の崩壊に一層拍車をかけることになり、すでに
失業者は三百万と推定されるのでありますが、さらに
潜在失業者が一千万人もおりますために‥‥