○椎熊三郎君 私は、この
機会に、民主党を
代表いたしまして、吉田総理
大臣の施政方針の演説に関してと題しまして所見を披瀝したいと存じます。
第二次吉田内閣は、去年の暮に
國会を解散いたしまして、本年一月二十三日をも
つて総
選挙を行いました。その結果は、
民主自由党は二百六十九名という絶対多党になつたのであります。私は、この
選挙の結果は
國民の嚴粛なる審判の結果であ
つて、
國民の意志の明らかなる表現であると思います。
國民は、過去一、二年間の
日本の政治上の情景を見て、連立内閣では徹底した政策を実行することができないということを考えておられたようであります。そうして、
選挙の結果から私
ども考えますと、
民主自由党という絶対多数の勢力を持つ單独内閣で徹底した
日本復興のための政策を実現してもらいたいということが
國民の
希望であつたと思うのであります。これは全
國民の非常に重大なる決意の結果現われた現実でありまして、
民主自由党に対する
日本國民の期待は実に厖大なるものがあると思われます。
この結果を獲得するにあたりまして、
民主自由党はもとよりわれわれとは
立場が違いますが、まず
取引高税の撤廃、供出後の米麦の自由販賣、料理飲食店の即時開始、あるいは統制
経済の大幅なわくの取はずし、そういうことが今度の
選挙の題目でございまして、これを全
國民は非常に期待しておつたようでございます。ところが、
選挙の結果できました今日のこの吉田内閣は、
民主自由党の單独内閣ではないようであります。そして、二人ほど
民主自由党でない者が閣僚の中に入
つておる。そこでだんだんだん私
どもの党内事情もそれでわか
つて参りますから、しばらくお聞きを願いたい。
私
ども民主党は、残念ながら今度の
選挙では七十名よりとれませんでした。ところが、今度の吉田内閣ができるときになりまして、党内にいろいろの議論がございまして、それは人おのおの見解が違うからやむを得ませんが、
國民がこれほど單独内閣を期待しておつたにもかかわりませず、どうしても連立内閣でなければ
日本の復興ができないという考え方の人が三十二、三名あつたようであります。ここに私
どもの党内では
意見が対立いたしまして、今日では党内に二つの派ができたという現実でございます。
私は、この連立内閣に反対の
立場を堅持しております。それは、
民主自由党が
國民からあれだけの信頼を受けて二百六十九名も得て、
大臣の数は十四、五名よりないのですから、もう
大臣のいすが三十あ
つても、
民主自由党としては足りなかろうと思われるこの状態の中に、わずか三十二、三名の者が連立だと称して入
つて行
つても、その
人々の
意見が実行されるはずはございません。現に今日新聞を見ますると、
経済閣僚
会議の懇談会などをやりまして、閣議の後には、
民主自由党の閣僚
諸君は意氣揚々と
本部へ
連絡に帰られるということである。二人の、民主党と称して入つた木村小左衞門氏や稻垣平太郎君のごときは、閣議の済んだあと、どこへ帰るでありましよう。三十三人の所へしよんぼり帰
つて來ても、内閣には微動だも與えないという状況、こういうことは、
日本の政治を明朗化せしめるゆえんではございません。
吉田総理
大臣は、かねがね本
会議のこの議場において、政治の行動は
國民が納得できるような
簡單にしてはつきりしたものでなければいかぬと言われました。私
どもは、その言説には敬意を表します。
吉田さんは、去年の
選挙を行う際には、おそらくこれほど多数とれるとは思われなかつたかどうかはわかりませんが、犬養さんに、この次はひとつ連立で
協力を頼むということを言われたと、犬養さんから私
どもは聞いております。それで、今度の
選挙の結果を見ると、
民主自由党としては、ほんとうは、犬養さん一派の
人々から閣僚を入れるということは反対の
意見がたいへん多くて、百五十名から調印をして反対する人さえ党内にあるということで、これは至極ごもつともなことだと私は思うのであります。それですから、
選挙の結果としては條件が変
つているのに、さすが吉田さんは大
政治家ですから、
選挙の前に考えたことと
情勢はかわ
つてお
つても、
政治家の仁義として、一月二十六日には犬養さんの所に行
つて、ぜひ
協力を頼むということを言われたには相違ないと思います。けれ
ども、そう言われましても、犬養さんも天下の
政治家ですから、この
選挙の結果というものをよく達観せられて、なるほど御親切はありがたいが、今度は二百六十九名だから、あなた方單独内閣をつく
つて、思う存分
日本復興のためにや
つていただきたい、われわれは閣外において大いに
協力いたしますとや
つてくれれば、これは
政治家の仁義が通るのです。
入つた閣僚も閣僚です。稻垣君のごときは、実業家上りの、しろうとと申しては失礼ですが、再び閣僚になる
機会があるかどうかわからぬから、この
機会になつた方が、本人にと
つてはたいへんけつこうなことでございます。(「やめろ」と呼ぶ者あり)私は、今日は政策の演説をしているのではない。そういう題目で言
つている。それが自由討論である。稻垣さんなどは、
個人的にはその方がいいのだ。木村さんに至りましては、政界に苦労すること三十年、あれほどの人が、二度も
大臣にな
つてお
つて、この内閣にむり押しに閣僚にならなければならぬというこの心事は、私には了解が参りません。
そこで、そういう状況でこの内閣ができて、二人ほど目の中にごみの入つたような
大臣がお
つても、ともあれ
民主自由党が絶対多数を持
つておるのだから、この緊迫せる時局に向
つて堂々たる総理
大臣の御演説を聞いて、
日本再建のための予算の御説明も願われるだろう、それが
日本全
國民の期待であつたと私信じます。しかるに、予算編成の都合で
——
これは私
どもも與党としての体驗を持
つておりますから、よくわかります。今は占領治下にある
日本ですから、か
つての
日本の
政府のように自由な考えで予算をつくるということは、おそらく不可能なことです。いろいろ関係方面との折衝もございましよう。そういう点は、よく私
どもは了解いたします。
そこで、その結果といたしまして、今月の二十二日に関係方面から予算の内示があつたということが新聞に出ております。先刻
議会の
運営委員会でも議論になりましたが、今まで終戰後でも、
國会に提出する予算は、
政府がまつたく責任を持
つて國会に提出するので、関係方面の折衝等は表面には
議会には現われてまいりませんでした。今回は、内閣官房長官から公開の席上で、予算の内示を受けたということを私
どもは報告された。これは
日本の
國会にとりましては重大なことでございます。そこで、この重大なる内示を受けるその内示の内容についてはどうかということが、今
運営委員会で問題にな
つております。後刻大藏
大臣から説明を聞くことにな
つておりますが、とも
かくも内示を受けた。これもやむを得ません。
そこで、
民主自由党の政策、すなわち料飯店の再開であるとか
取引高税の撤廃であるとか、そういうことが、新聞に傳えられる予算面から見ると、どうも私
どもは、
民主自由党旧來の主張のごとく完全にはできないのではないかという心配を受けるのでございます。
民主自由党は、目下せつ
かく関係方面と折衝中だということでございます。それは当然のことでございましよう。折衝を願います。そこで官房長官の言明を聞くと、内示を受けてからあと二、三日中には予算の大綱が閣議で決定せらるる段階にあるということ。私の言わんとするところは、これからのことなんです。
それならば
政府は、予算案の大綱が決定したならば、そのとき即刻本
会議に総理
大臣が出られて、
政府の施政の大方針を披瀝せらるるのでなければ、
國会は軌道に乗
つて審議が進んで行かない結果になる。ことに今回の場合はそうなんです。会計年度に関係いたしまして、三月三十一日でも
つて効力をなくしてしまうという
法律がございます。現に
臨時物資需給調整法の一部を改正する
法律案のごときは、二十二日にすでに
國会に提案にな
つております。予定としてはなお二十三件今月中に審議してもらいたいというものが出ておる。これらはことごとく
國民の生活と密着しておる。
日本の財政
経済と離るべからざる法案のみでございます。これを審議するにあた
つて、どうしても三十一日までに完了しなければ、
政府としては
行政上に非常な支障の起る問題で、私
どもは何とかそういう政治上の空白ができないように、三十一日までにはこれを愼重審議して完了してしまいたい。完了してしまうためには、この絶対多数党の吉田総理
大臣の施政方針が明らかでなければ、私
どもは予算に関係ある
法律の審議を進めることはできないのです。
私は、これは何も
政府につら当てを言つたり、
政府を困らせようとするとか、そういうけちな量見を持
つておるのではありません。私
どもといたしましては閣僚は送らなくとも、この
民主自由党という政党が、二百六十九名もこの時局において
國民の信頼を受けたというならば、
日本再建のためには、この内閣が三月や半年でつぶれるようなことがあれば、それは
國家の非常な不幸でございます。私は、この絶対多数をも
つて、三年、四年の長期にわた
つて、足を大地に踏みつけて
日本再建のために努力していただきたいということを、
國家のために念願しておるのです。それですから、たとい閣僚は送らなくとも、私
どもは健全なる在野保守党の
立場をも
つてこれに
協力して行きたいというのが、私
どもの偽らざる心情であります。それですから、三十一日までに仕上げなければならぬという
法律のためには、この議事を進行せしめ、ほんとうの愼重審議をするためには、
政府の大方針というものを一日も早く承
つておかねばならぬわけであります。
本日内閣官房長官の言明するところによれば、來月の二日か三日には予算書が完成するであろうということでありました。それを私
どもこの間から
運営委員会で研究したところによりますと、予算書のでき上るのは、かりに官房長官の言われるように來月の三日だとすると、これを逆算いたしまして、
政府が大綱を決し、予算を決定いたしまして印刷にまわす、そうして技術的に最小限五日、普通でも十日
——
五日から一週間の間にはできるということです。それを
政府もせつ
かく努力中ですから、最小限五日くらいで仕上がるとすると、逆算して見ましても、二十八日には印刷の手元に予算書を出すということになる。そうすると、二十七日か八日には、
政府の方針というものは、財政的には明細な点まで確定しなければならぬ。それならば、なぜ二十七日か八日というその
機会に
國会に向
つて大方針を宣明せられないのか。私
どもは二十六日と言いたいところだが、せめて二十七日か八日に総理
大臣の施政の演説、一般の方針を承ることができれば、晝夜兼行でも三十一日までに仕上げねばならぬ法案の審議には私
どもは全力をあげて
協力したい、こう考えるのであります。すなわち、私
ども大臣を送らざる閣外
協力の
立場とはおよそ
かくのごときものなのであります。この点はどうか御了承を願いたい。
それで、これはひとりわが民主党の
意見だけではございません。
社会党からも先般來の
意見が出て、どうも
民主自由党に交渉しても、あまり在野党の方が不足だから相手にもせられぬだろうから、
國会の
決議として二十六日に総理
大臣の施政の演説を聞こうじやないか、こういう申入れがわが党にありました。私
どもは幹部と相談の結果、それに同意をいたしましたけれ
ども、その総理
大臣の施政方針の演説を二十六日になすべしという
決議案の提案者の中に共産党も加わ
つておるということです。そこで、私
どもの党派といたしましては、共産党とはまつたく政治上の理念を異にしております。それで私
どもは、健全保守党たる建前から、遺憾ながらこの政治行動を共産党と一緒にすることだけは断じてできない。そこで、各派の交渉会を開きまして、共産党が提案者の一人に加わるなら、われわれは別個の行動をとります、それよりも共産党は提案者などにならずに、われわれの
決議案に
賛成するということなら、賛否は議員の自由ですからそれは結構だ、提案者として政治行動を手を結んでともにやるということだけは、まつぴらごめんくださいというのが、私
どもの考えでございます。そこで、それは各会派におかれましても円滿なる了解がつきまして、それでは健全保守党たる民主党は自由の
立場に立
つてこの
目的を達していただきたい、こういう了解のもとに、私
どもは昨日、來る二十六
日本会議において吉田総理
大臣は施政方針の演説をなすべきものだという
決議をやり、関係方面の了解も得まして、現に
事務局には提出してございます。後刻
運営委員会でこれの取扱いを決定することとな
つておりますが、形は総理
大臣の演説をなせとのことであるが、共産党とは、その動機
目的において全然私
どもとは反しておるのであります。この点を明らかにしなければならぬ。
共産党の徳田君は、
選挙の直後、天下に声明を発せられまして、吉田内閣などはもう三月くらいで崩壊するであろうということを発表せられました。(「そんなことは言いやしないよ」と呼ぶ者あり)それは共産党としては、そうなつた方が御都合がよろしいのかもしれませんが、私
どもは、
國家のためには、そういうような状態になることは
日本民族としての悲しみであると思う。(「喜びだ」と呼ぶ者あり)すなわち、現在のような
政治組織を是認しないというところに共産主義本來の
立場があるのでございます。
大体共産主義者が、
議会主義者のごとき状態をも
つて選挙で選ばれて、ここの席にいるということすら、私は本來の共産党からいつたら変なものではなかろうかと思います。(
拍手)共産党というものは、民主的な
議会主義占者ではない。そこで私
どもは、共産党とは同調いたしません。二百六十九名の絶対多数党たる
民主自由党の
諸君は、
諸君も保守党側の方々であります。どうか健全なる在野党の
立場に立
つて國家復興のために
協力して行こうというわれわれ民主党の
立場というものを御了解ください。
なおわれわれのほかに、民主党とあえて僣称する者三十三名ほどございます。そうでございます。(笑声)これはすでに控室等も分離してございますが、
本部事務所も分離してございまして、命令系統は一切違
つております。か
つては修正資本主義を唱えたる
同志ではあつたが、吉田内閣成立に際して、閣外
協力を是とする者、閣内
協力を是とする者が
意見対立して、今日
どもは、ほんとうの民主党はわれらであるということを全國大会で確認していただきまして、その他の者は民主党と申しておりましても、あえて僣称しておるだけだと、私
どもは黙認しておるのであります。
すなわち本日、私はこの
機会において、吉田総理
大臣は、天下の輿望をにな
つて、絶対多数二百六十九名の権威にかけて、
日本再建復興のために堂々たる施政方針の演説を來る二十六日か七日の間に断固としてやるにあらずんば、期限付の
法律案を審議するのに重大なる支障が起るということを、
諸君の前に披瀝したい。なお、絶対多数をも
つてこの施政の演説をやらずして、無理押しに三十一日までにこの重大なる法案を可決確定せんとするならば、それは多数をたのむ精神的暴力行為とでも申すべきことだと私は断ずるのであります。願わくは、天下の輿望をになわれましたる
民主自由党の
諸君におかれましても自重自愛、も
つて國民全体の御負託にこたえるごとき正々堂々たるお
立場を堅持されんことを、
國会の権威のため、
日本再建のために、こいねがう次第であります。
以上私の卑見を披瀝いたしまして、吉田内閣総理
大臣の施政方針の演説を強く要求しておく次第であります。(
拍手)