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佐藤(博)
説明員 皆様御
承知の通り、
警視庁には
犯罪搜査科学研究所というものを持
つております。相当の施設が漸次充実しつつあるのでありまして、これをわれわれももども利用をさしていただいておるのでありますが、
検察庁に関する限りにおきましては、おはずかしい話でありますが、さような機械的な、あるいは自然
科学的な施設、機械というようなものの設備は、ほとんどまつたくないと申してさしつかえないのであります。早い話が、写真機一台を持
つているという
検察庁は数えるほどよりございません。大多数の
検察庁は写真機一台も持
つておらない。また写真機のある所でも、写真機を縦横に操縦して、これを活用するという技術を持
つている人がおらない。先ほど
馬場次席からも
お話がありましたように、たとえば電話であります。ようやく公衆電話は一通り全国に通じましたが、これは皆さん御
経験のように、公衆電話はしばしば故障があります。遠方にはなかなか通じません。そこで
警察電話がごく最近でありますが、非常に整備されて参りました。この
警察電話に依存することが非常に多いわけであります。しかしこの
警察電話は、主として
警察相互間に御利用になるために設けられているのでありまして、三段階、四段階に交換台を経由しなければ相手方を呼び出すことができない。こういう現状でありまして、時間を要する。また
警察でお使いになる場合は、われわれはこれを利用することができないというようなことで、
連絡の設備が非常に不自由をいたしております。
そこで、それならば
搜査は、これに
科学的な
搜査は、
警視庁なり
国警なりにおまかせしてもいいのではないかということも一応考えられるのでありますが、これはそうは参らぬ。こういう施設というものはあらゆる所にあ
つて、これが相競
つてその成果をあげて行くというところに、非常に進歩発達があると思うのであります。それよりもなお手元なところで、
検察庁が独自で
搜査をする必要がしばしば日常多数にあるのであります。ことに
検察庁が直接手をつけた方がよろしいという
事件も、
経験上非常に多いのであります。
警察は一応
証拠固めができればいいというところまでは、
警察の職務でありますが、
検察庁は検察官として、法律家として、さらにこれを分析解剖して参りまして、公訴を提起する価値があるという判断をしなければならない。公判に移りましては公判を維持する責任を持
つている。公判廷において立証するということが
検察庁の責任なのであります。さようなために、
検察庁に独自の
科学搜査施設というものが必要であることは、言うまでもないと思うのであります。今申すように、せめて手近なところから――大きな
科学施設を全国各庁に設けることは、これは今日の国家財政の上から申しても容易ならぬことでありますが、ごと手近なところから漸を追うて完備するという御
方針でもよろしいのでありますから、
検察庁の
科学搜査の施設及び技術を入れるということに、ひとつ強い御協力をぜひ仰ぎたいのであります。私の考えておりますのは、先ほど申した写真機の設備、それからら
検察庁の直通電話、無電、その他先ほど
山内検事から申しましたが、
鑑識自動車というようにものも、せめて高検の所内だけでも配置が願えれば、どれだけ費用が節せられ、
搜査が合理的、かつ早期にできるであろうか、こう考えております。せつかくの御配慮でありますので、ぜひこの機会にこれが実現できるようにお願いをしたいのであります。ところが結局
搜査の
科学化と申しましても、
犯罪を早期に、かつ合理的に
検挙するということなのであります。これはただ機械設備、自然
科学的な施設ばかりでは、決してその機能は果すことができない。これに加えますのに、やはり人的の面について、よほど考えていただかなければならないことがあろうと思うのであります。
検察庁今日の現状を申しますと、欠員も相当ありますが、検察官も
事件の負担量が最近非常に激増はい参りまして、ざつと調べたところによりますと、
昭和二十二年で、一昨年までの過去十年の統計を見ますと、
検事一人についての一年の
担当事件数は八百八十三件にすぎなか
つたのでありますが、二十三年、昨年度においては、俄然これが一人、二千四百七十一件、まつたく三倍に激増しておるのであります。これが本年に入りまして、
刑事訴訟法が非常にむずかしく
なつたということで、相当
制約を受けておりますので、あるいは
事件が多少減りはせぬかと考えてお
つたのでありますが、全国と三分の一の
事件を持
つております私の管内の東京高検において、過去六箇月、一月から六月までの統計で見ますと、昨年の一月から六月までの審理件数よりも五割五分増しております。これでありますと、
事件は減るというようなことは、ほとんど考えられないのでありまして、あるいは本年は
検事一人あたり三千件あたりを持つことになりはしないか、こういうように予想されます。これがいかに負担過重であるかということはお察し願えるのであります。
それと負担量が多いので、
検事も相当疲労もいたしまするが、この負担量をこなして行くためには、
検事の数をふやす。それから
科学的な施設でも
つてこれを補
つて行くということの二つの道があるのでありますが、そのほかに
検事の素養、能力を増して行くというくふうもぜひとも必要なことでなかろうか。何となれば、
検事の増員ということは御
承知の通り非常に資格に制限がありますので、そうふやそうとしてもふやすわけには参らないのでありますから、どうしても
検事一人の教養、訓練というものを強化して参りまして、一人々々の機能をより一ぱいに出させるということのために、
検事の待遇というものをひとつあわせてお考えを願う必要がある、こう考えるのであります。
検事の待遇は、一昨年国会の非常な御盡力で、大体において裁判官、判事と同等の待遇をするという制度ができたのでありますが、
検事は国家公務員法の上で、一般職に
なつております。裁判官は御
承知の通り特別職でありまして、人事院の
制約を受けないのであります。しかも最高裁判所が財政権を持
つておりますために、報酬法の
範囲内で自由に昇給ができる。そのために制度の上におきましては、判
検事平等というひとを御承認願
つたのでありますが、実際の運用において、判事の方がはるかに高い待遇を受けておる。はなはだしいのは、何十年かまつたく同格で来た者が、あるいは多少下
つておつた判事が、同格あるいは一段も二段も
検事より上の待遇を受けておるような実例が多々あるのです。そこで大体調べてみますると、一般の判事、いわゆる平
刑事、
地方裁判所以下の平
刑事ですが、平
刑事の一人平均本俸は二万八百八十二円、これに対して一般
検事の一人平均本俸は一万六千百二十五円というので、四千七、八百円も開いております。これが検察官の志願者にたちまち影響いたしまして、どうしても判事の志願者が多いのであります。
検察庁はいかに努力をいたしましても、判事の志願者の方がはるかに多い。現に
昭和二十二年度におきましては、判事の任官者が六十三人、
検事の任官者が四十人、二十三年度におきましては、判事が三十二人に対して
検事が十八人、本年採用いたしましたのは判事が六十八人、
検事が四十人にすぎない。検察官の方は非常な努力をこれに拂
つておるのでありますが、志願者がない。また素質も相当落ちる。待遇の面等におきまして、志気に非常に影響いたしまして、十全な機能を出させる上においてかなり困難があるというようなこともございますので、できますことならば、国会の御盡力によ
つて、
検事も判事も今日のところでは資格あるいは任免の手続等においてそう径庭はない。日本では従前から判事、
検事をあわせて司法官と申して、まつたく見られて参
つたのでもありますので、判事と同様に、
検事も公務員法の上において何とか特別職というふうに願えぬものであろうか。そういたしますと、待遇等の上において相当運用が楽であるということになりますし、
検事の地位
もより一層安定する。それから
検事だけではやはり検察機能というものは発揮できないので、
検事の
活動には常に影が伴うように、検察事務官というものが必ず補助をいたすのであります。これもよく御
承知の通りでありますが、この検察事務官の待遇が非常に惡いのでありまして、御
承知の通り、これは特別職というようなわけにはどうお願いしてもできないと思うのでありますが、一般公務員の待遇でも、
警察官、刑務官、経済
調査官、海上保安官あるいは財務官というようなものについては、特別法の規定が定められておるのでありますが、ほとんど
警察官とかわれがない。ことに
検事搜査の
事件については、
警察官とまつたく同じ動きをなしておる。それから庶務、会計というような一般の行政事務をや
つておりますものでも、これは当直をしておる。大衆
犯罪が起きますれば、広島の日鋼
事件でもそうらしいのでありますが、会計の者であろうが、庶務の者であろうが、秘書の者であろうが、飛び出して
搜査に従事するというようなことで、事務官僚を平生はいろいろわけてお
つて、全部が全部
犯罪搜査に従事するわけではありませんが、一朝大事があれば、同じように
搜査に飛び込むのであります。
従つて平生それにたえ得るだけの指導訓練を強硬にや
つておるのでありますのに、これが特別俸給表の恩典に浴することができない。それで非常にみじめな待遇に甘んじて、機能を発揮する上において非常にさしさわりを来しておるという現状でありますので、
警察官、あるいは経済
調査官、あるいは刑務官とほぼ同様の特別俸給表に組み入れていただきたいということを、数年前から強くお願いいたしておるのでありますが、まだ実現いたしておりません。人事院当局においても大体おわかりくださつたことでありますので、ここで国会の御協力が得られますものならば、遠からず実現可能だと、切に期待を申し上げる次第でありますので、御盡力を仰ぎたいのであります。
検察事務官の本俸を申し上げますと、現在の六千三百七円ベースで一人当り四千五百四十五円です。これは本俸ですが、これで夜中でもどこへでも飛び出すことは非常にむずかしい。いろいろ申し上げましたが、人的な面において強行できますように御配慮をお願い申し上げます。