○梨木委員 私の
調査によれば、今
法務総裁のおつしや
つたように、吉河氏は学生時代に、その後一時共産党の幹部に
なつたことのおる田中清玄氏と、帝大の新人会において並び称せられて、学生運動をや
つた経驗のある人だということは聞いております。同人の経歴は大正十三年一高に入学して、一高の社会科学
研究会の最高指導者であ
つた、その後帝大
——当時の帝大に入りまして、新人会において田中清玄氏と並び称せられて、非常に活発な学生運動をや
つてお
つたということ、それから卒業後評議会関東木材の書記をや
つてお
つたということで、共産党員として活動してお
つたこともあるということであります。
昭和五年ごろに運動から脱落したということであります。か
つてそういう経歴を持
つてお
つたからとい
つて、左翼運動に同情があるということは言えないのでありまして、か
つてそういう経歴を持
つてお
つた人は、その経驗を生かして、非常な辣腕と陰險な
方法で左翼運動を彈圧するのであります。そこで
法務総裁は御案内でないようでありますから、私の方で
調査した資料を今申し上げますから、この点についてとくと
調査されまして、その結果思想檢事的の経歴が非常に濃厚でありましたら、これは現吉田内閣のためにも即刻この
地位からしりぞけられるのが、いろいろの疑惑を受けないゆえんであろうと思います。まず第一に申し上げますが、
昭和十二年、名古屋地方檢事局で、
石川友右衞門ほか二十数名のものをいわゆる人民戰線
事件として檢挙した。この
事件に参與しております。この
事件におきましては佐藤時朗という人ほか数名が長期勾留のために獄死しております。第二番目には、
昭和十六年の五月、東京地方檢事局におきましては、有名な企画院
事件というのがありましたが、この企画院
事件に関連いたしまして川崎已三郎、玉城肇、これらの人々を取調べております。第三番目には、
昭和十六年いわゆるゾルゲ
事件において、ゾルゲ、それから尾崎秀実
事件の主任として活躍しております。最初主任としてこれに参加したのでありますが、その後同人は、いわゆる学生時代に社会科学
研究会へ出入りしてお
つたということが暴露したために、退陣を余儀なくされたということなのでありますが、この
事件の檢挙において抜群の功があ
つたということで、表彰されておるということをわれわれは聞いております。第四番目には、
昭和十七年の六月、満鉄
事件を檢挙するために中國に出張しております。そうして現在の
日本共産党の参議院議員であるところの中西功、西里龍夫、これを檢挙し、さらに北京において白井行幸、尾崎庄太郎を檢挙しております。張家口においては新庄憲光、安齋庫次を檢挙しております。この新庄憲光はとうとう獄中で死んでおります。私もこの人を知
つておりますが、これは死んでおります。中西功君は御案内ように死刑を求刑されて、無期懲役の判決を受けてお
つたのであります。こういうような重要な
事件に参加しておるのであります。さらに
昭和十八年一月、思想犯罪のエキスパートとして、当時の司法省から戰時下における犯罪とその
対策の
調査研究を委嘱されておるのであります。こういう事実を見ましても、彼がいかに思想犯罪についてのエキスパートであ
つたかということが明らかであります。大体われわれが調べた事実といたしましては、以上のようなものでありますが、こういう経歴は、これはいわゆる思想檢事としての
——当時追放に該当する年の計算とか、あるいは当時思想檢事という辞令を正式に受けてお
つたとかおらなか
つたという
関係で、たまたま追放を免れたのかもしれませんが、
現実にはこういう思想檢事としての非常なる辣腕を振
つてお
つた人であります。從いましてこういう人が特別審査局の
局長にすわり、しかもわれわれが納得し得ないような、予算を昨年度より三倍の増額をやる。そして
團体等規正令を
改正し、こういうように三位一体の
改正を行
つて來ておるということは、これによ
つて今後思想的な活動を干渉し彈圧し、いわゆる戰爭中におけるところの特高警察を復活するのではないかという危險をわれわれは非常に感ずる。そしてたまたまきのう、きようのラジオのニユースなどを聞きますと、
法務廳内においてこういう非日
委員会的な
委員会を設けて行く予算もすでにと
つてあるというようなこと、あれやこれや総合してみますと、現内閣の
考え方について非常な疑惑を持たざるを得ないのでありまして、この点についてもしそうでないとおつしやるならば、この思想檢事の経歴を持
つた吉河氏がこの
地位にあるということについて、私が申し上げた経歴を
調査されて、こういう事実があるのならば、こういう
人たちをすみやかにその職からやめさせることが
政府の疑惑をなくするゆえんであると思うのであります。この点についての
法務総裁の
見解を伺いたいと思います。