○
山口(好)
政府委員 ただいま上程に相成りました
檢察廳法の一部を
改正する
法律案の
提案理由を御
説明します。
本案は大別して三つの事項をその
内容といたしているのでありまして、その第一は、
檢察廳法と國家公務員法との調整、第二は、國家行政組織法及び
法務廳設置法の一部を
改正する
法律の施行に伴う必要な整理、第三は、その他の
改正であります。
まづ第一の点から御
説明いたします。從來檢察官の任免につきましては、
檢察廳法第十
五條第三項によりまして、
一般の檢察官は内閣が、二級の檢察官は、内閣総理大臣がこれを任免することとな
つておりましたが、本年一月八日施行の人事院規則一ないし三によりまして、國家公務員法中第五十
五條を初め、國家公務員の任免に関する
規定の大部分が
適用されることになりました結果、檢察官の任免につきましても、
法務総裁がこれを行うことと相な
つたのであります。しかしながら檢事総長、次長檢事及び檢事長につきましては、いずれも認証官であります
関係上、これが任免は内閣がこれを行うことを適当と認めまして、第十
五條第一項を
改正することにより、その旨を
規定し、その他の檢察官につきましては、國家公務員法の
規定により、
法務総裁がこれを任免するものとし、同條第三項はこれを削除し、かつこれに伴
つて、第二十三條の罷免の手続についても必要な
改正を加えたのであります。次に三級官吏の進退に関する権限の委任並びに檢察事務官、檢察技官の支部勤務
命令に関する第三十條の
規定は、國家公務員法第五十
五條第二項の
規定が優先する結果、すでにいずれも不要となりましたので、これを削除いたしました。しかして檢察官はその職責上、その任免につきましては、
一般の國家公務員とはおのずからその取扱いを異にすべきものでありますので、檢察官の任免手続、任用
資格等に関する
規定を、國家公務員法
附則第十三條の
規定による同法の特例といたしたのであります。
次は第二の点でありますが、これは本年六月一日から國家行政組織法及び
法務廳設置法の一部を
改正する
法律が施行される
関係上、これに伴
つて、從來
政令で定めることにな
つていた檢察廳の職員の
定員を
法律で定めるものとしたほか「
法務廳」とあるのを「法務府」に、「副檢事選考
審査会」に、「檢察官適
審査委員会」とあるのを「檢察官適格
審査会」に改める等の必要な整理を行
つたのであります。
第三はその他の
改正でありますが、その一は、副檢事の任用
資格に関する点であります。
檢察廳法第十八條第二項第一号によれば、副檢事は高等
試驗に合格した者で、副檢事選考
委員会の選考を経たものの中からも、これを任命することができることにな
つているのでありますが、
政府におきましては、ただいま高等
試驗にかわるべき
試驗について
法律案を立案準備中でありまして、その
法律が制定施行せられるに伴
つて、この点を
改正する必要があるわけでありますが、
本案におきましては、本号の
試驗は、
司法修習生となる
資格を得る
試驗と
同一の
試驗であることを明らかにするために、これを「裁判所法第六十六條第一項の
試驗」と改めたのであります。
その二は、檢察官適格
審査会に予備委員を置く旨の
規定であります。檢察官適格
審査会の予備委員につきましては、さきに
檢察廳法第二十三條第五項に基き、檢察官適格
審査委員会令(
昭和二十三年
政令第二百九十二号)等にこれを
規定いたしたのでありますが、これは
委員会に関する重要な事項であり、かつ
國会議員については、
國会法第三十九條により、内閣総理大臣その他の國務大臣、内閣官房長官、各省次官をかねる場合及び
國会の議決に基いて内閣行政各部における各種の委員、顧問、参與その他これに準ずる職務につく場合のほかは、
法律で定めた場合でなければ、國または地方公共團体の公務員をかねることができないことにな
つておりますので、これを
法律により
規定することを適当と認めたのであります。しかして
本案におきましては、予備委員は各委員に対應して置かれ、その
資格は対應する委員と
同一資格を要するものとし、
國会議員たる予備委員は、委員の場合と同樣にそれぞれ衆議院または
参議院において、これを選出するものといたしたのであります。
その三は、
檢察廳法施行の際、現に
弁護士試補たる者で一年六箇月以上の実務
修習を終えまして考試を経た者を、その考試を経たときに
司法修習生の
修習を終えた者とみなす旨の
規定であります。これは
檢察廳法施行の際
弁護士試補であつた者百四十九名中、現在までに
修習を終えた者が百二十八名あり、その中には檢事を志望している者もありますので、裁判所
法施行令第十條第二項の
規定になら
つて、
規定いたしたものであります。
その四は、外地
弁護士に檢事たる
資格を附與する
規定であります。御
承知の
通り裁判所構成法により、三年以上
弁護士たる者は檢事たる
資格を有することにな
つており、その結果これらの者については、
檢察廳法第三十七條第一項の
規定によりまして、檢事たる
資格を得たときに
司法修習生の
修習を終えたものとみなされるのでありますが、
弁護士たる
資格を有する者が、三年以上外地
弁護士をしていた場合または内地、外地の
弁護士在職を通じて三年以上になる場合にも、右と
同一の取扱いをし、また
弁護士たる
資格を有する者が、朝鮮
弁護士令による
弁護士試補として一年六箇月以上の実務
修習を終えた場合には、内地の
弁護士試補として一年六箇月の
修習を終えた者と
同一の取扱いをするのを相当と認めまして、判事補の職権の特例に関する
法律第三條の
規定にならいまして、これを
規定したものであります。
以上御
説明いたしました
通り、
本案は國家公務員法及び國家行政組織法の施行並びに
法務廳設置法の一部を
改正する
法律の施行に伴い、必要な整理を施しますとともに、檢察官適格
審査会に予備委員を置き、かつ檢察官の任用
資格に関する
規定を整備するためのものでありまして、いずれも檢察機構を整備充実せしめるため重要な
規定でありますから、何とぞ愼重御
審議の上、すみやかに可決せられんことを
希望する次第であります。
次に
民法等の一部を
改正する
法律案の
提案理由を簡單に御
説明申し上げます。
まず第一條は
民法を
改正する
規定でありますが、その第一は、第三百六條中第二号と第三号とを入れかえることであります。現行
民法では第二号に「葬式ノ費用」第三号に「雇人ノ給料」と定めてありますので、この両者が競合する場合には、
民法第三百二十九條の
規定に從い、債務者のために葬式の費用を拂つた者が雇人の給料に先んじて弁済を受けられるわけであります。しかしながら葬式の費用はあくまでも個人的なものであり、もともと
本人の家族または縁者が負担すべきものであ
つて、かつ
商法第二百九十
五條によりますと、
会社の使用人の給料の先取特権については、葬式の費用に優先せしめているのでありまして、この
商法の
規定とのつり合いから申しましても、
会社の使用人以外の雇人の給料の先取特権の順位は、当然勤労者の生活確保の見地から、
会社の使用人の給料と
同一の順位といたし、その債権を保護すべきものと
考えますので、順位の変更を
規定した次第であります。
第二は、第三百八條を第三百九條とし、第三百九條を第三百八條とする件でありますが、第三百七條ないし第三百十條は、第三百六條の第一号ないし第四号の順を追
つて規定してあり、第二号と第三号を入れかえました
関係上、法文の体裁を整える意味において、第三百八條と第三百九條とを入れかえた次第であります。次に入れかえた後の第三百八條の
改正でありますが、本條は雇人給料の先取特権は、最後の六箇月間の給料につき存することを
規定し、但書において、その金額は五十円を限度としたのであります。雇人給料の先取特権を認めて勤労者の生活を保障しようとする趣旨は明らかなのでありますが、この條項は明治二十九年民
法制定以來一度も
改正されていませんので、時代の変轉に伴い、この
規定の意義は無用と申すより、むしろ立法の趣旨に沿わないのでありまして、勤労者保護の目的は全然達せられていないのであります。このゆえに但書を削り、金額の制限を設けないことにいたしたのであります。さきに申しました
商法第二百九十
五條の
規定には、
会社に対する使用人の給料の先取特権につきましては、金額に制限をいたしておらないのでありまして、この均衡から申しましても、但書を削るのが相当と
考えたのであります。
次に第
二條は民事訴訟法を
改正する
規定でありますが、現行民事訴訟法第五百七十條第一項第六号は、有体財産に対する強制執行につきまして、官吏、神職、僧侶、公立私立の教育場教師の職務上の收入または恩給についてのみ差押禁止物として保護しておりますが、工員その他の雇人等の労務者が受ける報酬その他の收入を除外する
理由はありません。当然保護されてしかるべきものと
考えますので、第六号を改め官吏、神職等の職務上の收入のほか工員、労務者、雇人等の給料等をも差押禁止物に指定して、これを保護しようとする趣旨であります。
終りに
附則について御
説明いたします。この
改正條項は、前に述べました勤労者の生活擁護の目的を持つものでありますから、その実施は急を要するものと認めまして、公布の日からこれを実施することといたした次第であります。これまた何とぞ愼重御
審議の上、すみやかに御可決を賜わらんことを御願い申しあげます。
次に
公証人法等の一部を
改正する
法律案につきましても、簡單に
提案理由を御
説明いたします。公証人に対する監督事務につきましては、一昨年五月裁判所の分離独立に伴いまして、これより切り離して、法務行政のもとに置かれることとな
つたのでありますが、当時やむを得ない事情から、
一般的な應急
措置が施されたにとどまりまして、裁判所の分離に伴う公証人法の
規定の整理は、見送られて今日に至
つたのであります。ところがこのたび再び
法務廳の機構の改組に伴い、公証人法の
関係規定を整理することが必要とな
つたのであります。なお同法が
規定する公証の手続等に関しては、從來いたずらに煩瑣に過ぎ、時代に即さないものがありますので、この際これを是正するとともに、また公証人の任用
資格等についても、現状に即するよう
改正を加える必要があるのであります。これがこの
法律案を提出した
理由であります。
以下
改正の要点を申し上げます。
第一は、
法務廳設置法の一部を
改正する
法律により、司法事務局またはその出張所が、法務局、もしくは地
方法務局、またはその支局、もしくは出張所に改組されるとともに、公証人懲戒
委員会については、これを公証人
審査会として同法に
規定されることになりましたので、これらに伴い、公証人法の
関係規定を整理しようとするものであります。公証人法第七條ないし第十一條、第十四條、第十
五條、第十七條、第二十一條、第二十四條、第二十
五條、第六十
二條の二、第六十
二條の五、第六十三條、第六十四條、第六十六條ないし第六十八條、第七十一條、第七十三條ないし第七十六條、第七十八條、第八十一條ないし第八十三條及び第八十
五條の
改正規定がこれであります。
第二は、公証、認証等の手続を簡素化しようとするものであります。公証人が公正証書を作成し、私署証書等に認証を與える行為は、私権に重要なる
関係を有するものでありますから、公証
制度の権威のためにも軽々にその手続を簡素化することは嚴に愼まなければならないことではありますが、しかしながら現行法の
規定は
あまりにも嚴格に過ぎ、かえ
つて公証人はもちろん、当事者に対しても、いたずらにその煩にたえざらしめているのでありまして、このたび公証
制度の趣旨に反しない範囲内において、これを適当に是正して、ますます公証
制度の機能を発揮せしめようとするものであります。なお公証人の調製する帳簿についてもこれを簡易化するよう若干の修正を試みました。公証人法第二十八條、第三十
二條、第三十四條、第三十六條ないし第四十
二條、第四十四條ないし第四十七條、第五十一條、第五十
五條、第五十九條ないし第六十
二條及び第六十
二條の四の
改正規定がこれにあたります。
第三は、公証人の任用
資格等につき、現行法では判事、檢事または
弁護士たる
資格を有する者に限
つて、所定の
試驗及び実地
修習を経ないで公証人に任ぜられることができるのでありますが、これでは廣く適材を求めるに適しないうらみがありますので、このたびこれを
改正して、多年法務に携わり、公証人の職場に必要な学識経驗を有するもので、公証人
審査会の選考を経た者もまた
試驗及び実地
修習を経ることなくして、公証人に任ぜられることを得るものとしようとするものであります。なお公証人の住居、筆生の名称、身元保証金及び過料の額等についても、それぞれ所要の
改正を試みました。公証人法第十三條、第十八條、第十九條、第二十四條、第三十四條、第八十條及び
民法第九百七十四條の
改正規定がこれにあたります。
何とぞ愼重御
審議の上、すみやかに可決せられんことを御願いいたします。