○山口(好)
政府委員 私はただいま上程になりました各法案につきましての
提案理由を御説明申し上げます。
まず刑法の一部を
改正する
法律案につきまして、
提案理由を御説明申し上げます。このたび刑法の一部を
改正して、第二十五の二という新しい
規定を設けましたのは、近く本國会に提出いたすことになつておりまする
犯罪者予防更生法案が成立いたし、法務府の外局として
中央更生保護委員会が置かれ、その
地方支部局として
地方少年保護委員会及び
地方成人保護委員会が設けられ、その重要なる権限である
保護観察の制度が実施せられましたあかつきには、
裁判所が
懲役刑または
禁錮刑の
執行猶予の裁判の
言い渡しをする場合におきましても、從來のようにまつたく無條件に刑の執行を猶予しないで、
執行猶予の裁判の
言い渡しを受けた者の改善と、更生を助けますために、この者を
保護委員会の
保護観察に付して、これを補導、援護することが適当と認められる場合もあろうかと存ぜられます。それでかような場合には猶予の期間中遵守すべき事項を定めまして、刑の
執行猶予者を
保護観察に付することもできるように、このような新たな
規定を設けた次第であります。この
改正は從來のように、無條件に刑の
執行猶予の裁判の
言い渡しをすることを防げるものではありませんが、ただ
保護観察に付する旨の裁判をした場合には、刑の
執行猶予の言渡しに一種の條件を付することになりますので、一見
被告人に対して不利益な
改正のように思われますけれども、從來は
裁判所が刑の
執行猶予の裁判を言い渡すのに躊躇いたしたような場合には、
保護観察に付するならば、刑の執行を猶予してもよいと考えて、
執行猶予の判決をいたす場合もありますので、実際に
執行猶予の判決が言い渡される場合がふえる結果にもなり、かえつて
被告人には利益を與えることになろうかと存ぜられます。
次に第二十六條の
改正は、第二十五條の二が新設されました結果、
保護観察の期間中遵守すべき事項を遵守せず、しかもその情状が重いことを刑の
執行猶予取消の原因に加えることといたし、これに伴う必要な
改正をしたものでありまして、
保護観察の目的である刑の
執行猶予者の改善及び更生をはかりますためには、この
改正を必要と考えたのであります。
第二十九條第一項第四号の
改正は、
犯罪者予防更生法が成立いたしましたときは、從來の仮
出獄取締規制は廃止され、仮出獄中の者は同法によ
つて法定の
遵守事項のほか、
地方成人保護委員会または
地方少年保護委員会の定める
遵守事項を守らなければならなくなりましたので、これに伴う
改正を施したのであります。
最後に本法は
犯罪者予防更生法施行の日から施行いたしますが、刑の
執行猶予者を
保護観察に付し得る旨の
規定は、法律不遡及の原則に從いまして、
本法施行後に積を犯した者に限り、これを適用するというのがこの法律の附則の趣旨でございます。
以上がこの
法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ
愼重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようにお願いいたします。
次に引続きまして
刑事訴訟法の一部を
改正する
法律案の
提案理由を御説明申し上げます。
本案は大体三点からなるものであります。
第一点は、
家庭裁判所の開設に伴う
改正であります。御承知のように
家庭裁判所は本年の一月一日から発足し、家庭に関する事件の審判及び調停並びに少年の
保護事件のほか、
一定種類の成年の
刑事事件の第一
審裁判をも行うことになつているのでありまして、この
刑事事件の裁判については、当然
刑事訴訟法が適用されることになるのであります。ところが
刑事訴訟法は、
家庭裁判所がこの
種刑事事件を取り扱うことを予想して制定されていなか
つたので、
家庭裁判所における
刑事裁判の円滑なる運用をはかりますためには、
刑事訴訟法に若干の
改正を加える必要があるのであります。すなわち
家庭裁判所の
裁判官が忌避された場合の裁判に関する
規定、
家庭裁判所における
特別弁護人の選任に関する
規定、事実の
取調べ、勾引、押收、捜索、
証人尋問などの嘱託は、
地方裁判所または
簡易裁判所の
裁判官のほか、
家庭裁判所の
裁判官に対してもすることができる旨の
規定、
勾引状または
勾留状の執行の指揮は、急速を要する場合には、
地方裁判所または
簡易裁判所の
裁判官のほか、
家庭裁判所の
裁判官もすることができる旨の
規定、
執行猶予の
言い渡しの取消の請求は、
地方裁判所または
簡易裁判所のほか
家庭裁判所に対してもすることができる旨の
規定、
家庭裁判所の第一
審判決に対しては控訴することができる旨の
規定並びに
家庭裁判所の
裁判官のした裁判の取消または変更の請求に対する決定は、
合議体でしなければならない旨の
規定などを整備することでありまして、いづれも
関係條文に
家庭裁判所という字句を加えることなどによりまして、簡單にその目的を達することができるものであります。
第二点は本國会に提出しております刑法の一部を
改正する
法律案に関連する
改正でありまして、この法案によりますれば、
裁判所は懲役または
禁錮刑につきその執行を猶予する場合に、必要と認めたときは、その刑の
執行期間中、
被告人を
遵守事項を定めて
保護観察に付することができることといたし、かつ
保護観察に付された者が
遵守事項を守らなかつたときは、刑の
執行猶予を取消し得ることにいたしておりますので、かかる
保護観察に付する旨の裁判の言渡につき、また刑の
執行猶予の
取消手続につきまして必要な
規定を
刑事訴訟法中に加えたものであります。すなわち同法第三百三十三條を
改正いたしまして、刑の執行を猶予し
被告人を
保護観察に付する場合には、その裁判は判決をもつて、刑の
執行猶予の判決の
言い渡しと同時に言い渡すべきものといたし、そのことを
規定いたしました條項を同法第三百三十三條の第三項として新たに加えたのであります。次に第三百四十九條の
改正は、從來刑の
執行猶予取消の原因は刑法第二十六條に
規定してありますように、新たに刑に処せられた場合または前に他の罪につき刑に処せられたことが発覚した場合等、比較的明瞭な事項でありますので、
裁判所は
被告人及び檢事の意見を聞いた上、決定でただちにその取消の裁判をいたしたのでありますが、このたび刑法の
改正によりまして、先に申しましたように新たに
保護観察の期間中遵守すべき事項を遵守しなかつたことを、
執行猶予取消の原因といたしましたので、はたして
執行猶予を受けた者が
遵守事項を守らなかつたかどうかについては、
裁判所は愼重に事実の
取調べをした上で判断をする必要がありますので、必ず公開の法廷で、原則として、
被告人及び檢事の両当事者を出席せしめて事実の
取調べをなすことにいたし、かつ
被告人はその場合
弁護人を選任し得ることにいたしたのであります。また從來は
執行猶予の
取消決定に対しては、
即時抗告をなし得るのでありますが、
即時抗告の期間は三日と法定されているのでありまして、前述のごとく從前と異りまして、今回の
改正によ
つて保護観察期間中の
遵守事項を守らなかつたことを理由として
取消決定がなされるようになりますと、
被告人が
取消決定があつたことを知らず、
從つて被告人の知らぬうちに
取消決定が確定してしまうというような場合もあり得るのでありまして、これでは
被告人に対し酷に失しますので、
取消決定に対しては
普通抗告をなし得るものとするとともに、その期間を控訴の期間と同
樣十四日とし、かつ期間の計算は、
被告人が
取消決定のあつたことを知つたときから起算いたすことにいたしました次第であります。なお第三百五十條の
改正は、第三百四十九條に第二項、第三項及び第四項が新たに加えられましたことに基きます整理のための
改正であります。
第三点は、その他の
改正でありまして、あるいは解釈を明らかにし、あるいは不備を補正し、あるいは不要の
規定を削るものであります。このうちでまず御留意を願いたいのは、第二百十八條の
改正であります。これは身体の拘束を受けている
被疑者については、特別の令状がなくても、指紋の採取などをすることができることを明らかにしたものであります。
刑事訴訟法上
被疑者が身体の拘束を受ける場合としては、第百九十九條のいわゆる通常の逮捕、第二百十條のいわゆる
緊急逮捕、第二百十三條のいわゆる
現行犯逮捕、第二百七條のいわゆる起訴前の勾留が主なものであります。しかしてこれらの場合には、これら
逮捕行為などの
付随処分として、指紋の採取その他本
改正條文に掲げてある程度の処分は、
被疑者の
同一性を識別するなどの目的のためには、当然なしうるものと解しえられるのでありますが、なお疑義の起きる余地のないように、この際明文をもつてこれを明らかにしておくのを相当と認めた次第であります。
次に第五十五條第三項の
改正でありますが、同項の
規定は、期間の末日が日曜日、一月一日、二日、四日、十二月二十九日、三十日、三十一日または一般の休日として指定された日にあたるときは、これを期間に算入しないことになつているのでありまして、これは旧
刑事訴訟法の規定をそのまま踏襲したものであります。そしてこの
規定のうち一月一日、二日、四日となつていますのは、從前は一月三日及び五日が一般の休日になつておりましたので、四日を休日に準じて取扱うことは意味があ
つたのでありますが、國民の祝日に関する法律が実施されました今日におきましては、一月三日及び五日はいずれも國民の祝日になつておりませぬので、四日を特に掲記する意味がなくな
つたのであります。しかし一月三日は、國民の祝日には指定されておりませぬが、一般官廳の
休暇日に指定されており、
國民生活の現実においても
正月三箇日の一日として特別の意味をもつていますので、この際一月三日を休日に準じて取扱うことといたし、一月四日を一月三日にふりかえたのであります。
なお第九十七條第一項に「勾留の期間の更新」の規定、第四百二十九條第一項第二号に「保釈」の
規定を加えたのは、本來かくあるべであつた不備を補正したものであります。また第四百六十八條第二項後段の「この場合には、第四百六十三
條但書の規定を準用する」旨の
規定を削
つたのは、さきに第四百六十三
條但書を削る
改正をしたのに伴う整理に過ぎないのであります。
以上で大略でありますが、
提案理由の御説明をいたしました。何とぞ
愼重御審議の上、すみやかにこれの御可決くださいますことをお願いいたします。
次に引続きまして
裁判所法等の一部を
改正する
法律案の
提案理由を御説明申し上げます。
この法案は、
裁判所法と
裁判官及びその他の
裁判所職員の分限に関する法律の一部を
改正せんとするものであります。
裁判所法については、
裁判所書記の制度、
司法修習生の採用、
補充裁判官の員数並びに
司法研修所教官及び
裁判所調査官の任用につきまして若干の
改正を行い、
裁判官及びその他の
裁判所職員の分限に関する法律については、
裁判官以外の
裁判所職員の分限につき若干の
改正を行おうとするものであります。以下この法案の要点を御説明いたします。
第一は
裁判所書記制度の
改正の点であります。
裁判所書記は
現行法では
裁判所事務官の中から補せられることとなつておりますが、
裁判所事務官は、本
來司法行政事務をつかさどるものであるに反し、
裁判所書記は法廷に立ち会い、
裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管その他
民事訴訟法、
刑事訴訟法等に定める事務をつかさどり、執務に際しては職務上の独立を認められているものでありまして、
司法行政事務を担当する
裁判所事務官の
職務内容とはまつたく異なつているのでありますから、
裁判所事務官を
裁判所書記に補する
現行制度は、
國家公務員法が採用している
キヤリア・システム(
閲歴制度)と根本的に相いれないものがありますので、この点に関する
現行法第六十條を
改正して、
裁判所事務官を
裁判所書記に補する制度を廃止し、新たに
裁判所に
裁判所書記官及び
裁判所書記官補を置くものとしました。
裁判所書記官は現在の
裁判所書記の職務をその
職務内容とし、一應旧來の
敍級制度に從い、一級、二級及び三級の三階級を定めました。民刑両
訴訟法の
改正により、訴訟は民刑とも
公判中心主義と相なりました結果、
公判手続の
複雜化はひいて
裁判所書記(
改正法の
裁判所書記官)の事務を質的に重要かつ困難ならしめ、また量的にも繁忙ならしめることとな
つたのであります。そこで各
裁判所を通じて一
定員数の二級及び三級の
裁判所書記官補を置いて、
裁判所書記官の事務を補助させることといたしたのであります。第六十條の二の
規定がこれであります。從いまして、この
裁判所書記官補の新設は、
裁判所書記官の地位を現在の
裁判所書記のそれに比し一段高いものとしたのでありまして、
裁判所書記として
相当年限の職歴を有し、かつ成績優秀な者のみが一定の
任用試驗を経て
裁判所書記官に任ぜられるようにいたしたいのであります。
從つて現在
裁判所書記たる者がもし本法により任命されるとすれば、大部分はこの
裁判所書記官補に任ぜられる建前になるのであります。附則第二項の
経過規定は、この観点より立案されたのであります。以上の次第でありますから、
裁判所書記官の充実は即時には期待できず、さしあたりは、若干の欠員が予想されますので、
本法施行後
裁判所書記官が充員せられ、
裁判所書記官の事務が本格的にも軌道に乘るまで、
裁判所書記官の職務の澁滯を避けるため、当分の
間裁判所書記官補として
裁判所書記官の職務を行わせることができる措置を附則第三項で
規定したのであります。
次に第六十五條の
勤務裁判所の指定に関する
改正規定は、右申し述べました第六十條及び第六十條の二の
改正規定に伴う当然の
改正でありまして、御説明するまでもないと存じます。
第二は
司法修習生の採用の点であります。
司法修習生は、
現行法では
高等試驗司法科試驗に合格した者の中から
最高裁判所が採用することとなつておりますが、
國家公務員法の
改正によりまして旧
高等試驗令が廃止となり、
高等試驗司法科試驗の制度は昨年末で消滅いたしましたので、これにかわる
試驗制度を定める必要があります。そこで政府は別に
司法試驗法案を國会に提出いたしましたが、これに対應して
司法修習生は、この
司法試驗に合格した者の中から
最高裁判所が採用することといたしたのであります。
第三は、
補充裁判官の員数の増加の点であります。
合議体の
裁判所の長期間にわたる審理を円滑ならしめるために設けられました
補充裁判官の制度は、
現行法ではその員数を一人に限つておりますが、近時きわめて長期間の審理を予想される事件が出て参りまして、一人ではせつかく
補充裁判官を置いた趣旨に沿わない場合も予想されますので、員数を一人以上にすることができるように改め、
合議体の員数の範囲内に制限することにしたのであります。
第四は、
司法研修所教官または
裁判所調査官の任用の点であります。
司法研修所教官または
裁判所調査官は、その職務の性質上
裁判官または
檢察官の経驗のあるものをもつて充てることを必要と存ずるものでありますが、現在
裁判官または
檢察官から
司法研修所教官または
裁判所調査官への轉官がきわめて困難な実情にありますので、当分の間、特に必要がある場合に限り、
裁判官または
檢察官をしてその地位にありながら
司法研修所教官に、また
裁判官をしてその地位にありながら
裁判所調査官に充てることができる道を開いたのであります。
第五は、
裁判官以外の
裁判所職員の分限に関する
改正の点であります。
裁判官及びその他の
裁判所職員の分限に関する法律第十四條は、旧
官吏懲戒令と相まつて
裁判官以外の
裁判所職員の分限及び懲戒に関し
規定したものでありますが、
國家公務員法の
改正及び
官吏懲戒令の廃止により
裁判官及び
最高裁判所裁判官の祕書官以外の
裁判所職員は、
一般職として同法が全面的に適用されることとなり、その
懲戒手続等を特別に設けておく必要がなくなりましたので、これを削除することといたしたのであります。
從つてこの法律は、同條の削除によりその内容は、
裁判官の分限に関する
規定のみとなりますので、その題名を
裁判官分限法と定めた次第であります。
第六は、
施行期日の点でありますが、
裁判所書記より
裁判所書記官及び
裁判所書記官補への移行には相当の
準備期間を必要としますので、
裁判所書記制度の
改正に関する部分は、この
法律公布の日から起算して三十日を経過した日から施行することといたし、その他の部分は、公布の日から施行することといたしたのであります。
最後に、附則第四項で他の法令中
裁判所書記とあるのはすべて
裁判所書記官と読みかえるようにいたしまして、
裁判所書記官の職務の執行に遺憾なきようにいたしたのであります。
以上をもつて
裁判所法等の一部を
改正する
法律案の大要の説明を申し上げました。なにとぞ
愼重御審議の上、すみやかに可決さられんことをお願いいたします。
次に上程になつておりまする公判前の
証人等に対する旅費、日当、
宿泊料等支給法案の
提案理由について御説明いたします。
本案は、
刑事訴訟法の実施に伴い、旧
刑事事訴訟法のもとにおいて制定されていた大正十三年
司法省令第十一号証人、
鑑定人、通事または
飜訳人に旅費、日当、
止宿料給與の件を
改正し、かつ
國費支出の根拠を明確にするため、これを法律にしようとするものであります。
この大正十三年の
司法省令は、
刑事訴訟費用法に
規定している場合以外で
刑事手続に関して
証人等に
旅費等を支給し得る場合を
規定し、その額について
刑事訴訟費用法の
相当規定を準用しているのでありまして、その場合としては、旧
刑事訴訟法第二百五十五條の
規定により檢事の請求した強制の処分につき
裁判官の召喚した証人、
鑑定人、
通訳人または
飜訳人に対して支給する場合、
犯罪捜査につき檢事の呼出しに應じて出頭した者に対して支給する場合等を
規定しているのであります。本案第一條は、いわば右の前者の場合に相当するものでありまして、本案第二條は、右の後者の場合に相当するものであります。
新
刑事訴訟法第百七十七條は、
被告人被疑者または
弁護人からの請求により、
証拠保全のため
裁判官が
証人尋問等の処分をする場合を
規定しておりまして、同法第二百二十六條及び第二百二十七條は、
檢察官からの請求により、いわば
証拠保全として
裁判官が
証人尋問をする場合を
規定しておりまして、いずれも旧
刑事訴訟法第二百五十五條の場合に類比すべきものであります。ただこれらの場合には、新
刑事訴訟法の解釈といたしましては、これらの
規定により喚問された
証人等は、
旅費等の
請求権は、すでに
刑事訴訟法自体により認められておりまして、ただその額が法定されていないものと解せられるのであります。それで本案第一條では、その額につき
刑事訴訟費用法及び
訴訟費用等臨時措置法の
相当規定を準用することにいたし、かつ必要な読みかえ
規定をおくにとどめた次第であります。
次に新
刑事訴訟法第二百二十三條は、
檢察官、
檢察事務官または
司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、
被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、またはこれに
鑑定通訳もしくは飜訳を嘱託することができる旨を
規定しているのであります。本案第二條は、前述の
司法省令の
規定している後者の場合を新
刑事訴訟法のこの新しい條文にあてはめて
規定したものであります。ただ新
刑事訴訟法では、
檢察官のほか同じく
檢察廳の職員である
檢察事務官も廣く
捜査権限を認められていますので、
檢察事務官の
取調べまたは嘱託した者にも
旅費等を支給することができるものとするとともに、
司法警察職員の
取調べまたは嘱託した者については
予算的措置その他なお研究すべき点がありまするので、本案としましては、從前通り別に
規定を置かぬことにしたのであります。しかして
檢察官または
檢察事務官の
取調べまたは嘱託を受けた者は、
刑事訴訟法上は
旅費等の
請求権を認められておりませんから、本案第二條によ
つて檢察官の裁量により、かつその額については、
刑事訴訟費用法及び
訴訟費用等臨時措置法の
規定するところに準じてこれを支給されることになるのでありまして、これらの点は從前と同樣であります。
以上簡單ながら
提案理由の御説明を終ることにいたしますが、何とぞ
愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
次に
会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を
改正する
法律案を提出しました理由を御説明申し上げます。
会社等臨時措置法は、昨年十二月三十一日同
法施行令とともに
連合國最高司令官の覚書に基き、政令第四百二号をもつて廃止したのでありますが、その際その附則において、同法及び同
法施行令中の若干の規定について本年四月三十日までなお効力を有するものといたしました。元來、同法は第一條の示すように戰時中の特例を定めた立法でありますが、同法規定の大部分は戰時中の窮迫した社会事情、たとえば交通通信の不便、物資の不足、戰爭による災害等に対処する措置を定めたものでありまして、同法が廃止された当時におきましても、なおこのような事情が完全に解消するに至つていないため、これらの規定の効力をなお存続させる必要がありましたのと、他面その一部の規定は、会社経営の実情に適するものとして、経済界からその恒久化が要望されておりますので、これを恒久法とすることの可否を檢討し、必要があれば商法の中に取入れる等の措置を講じなければならない関係上、そのときまでこれらの規定の効力を失わしめないでおくのが相当と考えられましたからであります。ところで今日なお前述の窮迫した社会事情は、なお完全に復旧しておらず、また恒久立法とすることの可否についても、なお檢討を要する状況にありまして、現に効力を有するこれらの
規定につき、さらに本年十二月三十一日までその効力を存続させる必要がありますので、この点について前述の政令を
改正するため、この
法律案を提出いたしたのであります。
ここに有効期間を延長しようとする
規定は、まず会社に関するものとしては、
会社等臨時措置法第二條から第三條ノ二まで及び第五條並びにこれに関連する施行令の諸規定であり、会社以外の法人に関するものとしては、第八條及びこれに関連する施行令の規定であります。これらの
規定について簡單に御説明いたします。
会社等臨時措置法第二條の規定は、資本金二十万円未満の株式会社の公告の方法につき、商法第百六十六條第二項に定める公告方法によることを要しない、すなわち官報または時事に関する日刊新聞紙に掲載して公告することを要しないとするのでありまして、用紙欠乏による官報及び新聞紙の紙面不足に対処し、あわせて会社の経費の負担を軽減させるものでありますが、今日なお新聞紙の紙面不足等の事情は解消していない状況でありますので、この規定の効力を存続させることとしたのであります。
第三條の規定は、株主の数が千人を越える株式会社について株主総会の招集方法を簡易化し、かつ商法第三百四十三條の特別決議をするための総会の定足数を緩和するものでありますが、この規定を設ける根拠とされた、戰時中における交通通信の不便という事情は近時大いに改善されましたけれども、反面におきまして、交通費、通信費の著しき増大と株式民主化の趨勢に伴う株主数増加の傾向とによつて、今後商法の要求しているような総会招集の通知及び特別決議の定足数の出席がますます困難となることが予想されるのでありまして、この規定を今ただちに失効させることは会社経営に大きな支障を與えるおそれがあり、この点に関する商法の規定を再檢討する必要ありと考えられますので、本條もまたその効力を存続させようとするのであります。
第三條の二の規定は、戰災その他の災害により株主名簿を喪失し、記名株主の全部または一部の氏名または住所を確知することのできなくなつて株式会社について、当該株主に対する総会招集の通知を省略し、その者を特別決議の定足数たる株主の数に算入しないこととし、戰災を受けた会社の運営に支障なからしめようとするのでありますが、戰災により株主名簿を喪失した会社で、今日なお記名株式の株主の氏名または住所を確知し得ないものが存在しますので、第三條と同樣この規定の効力を存続させることにいたしたのであります。
第五條は、日本興業銀行、日本勧業銀行その他法務総裁の指定する株式会社の社債登記に関し簡易な手続を認めるものであり、これらの会社は多くは特別の法令の定めにより、その社債発行額の限度が商法所定の限度よりも高いため、社債発行の額及び数が非常に大きく、その登記が煩瑣にたえないので、その手続を簡易化し、その手数及び費用を節約しようとするのでありますが、その社債発行の頻度数は減少しておらず、また社債に関する登記事項について商法の規定を檢討する必要もあるので、この規定もまたその効力を存続しようとするのであります。
第八條の規定は、会社以外の法人に関し、その発行する債券の発記について第五條におけると同樣な取扱いをするものであり、第五條と同樣の理由でこの
規定の効力を存続しようとするのであります。以上述べましたところが政令附則第二條の
改正であります。なお叙上の
改正に伴い、政令中の
経過規定に所要の
改正を加える必要がありますので、これを附加いたしました。附則第五條の
改正がこれであります。
何とぞ
愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。