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1949-04-26 第5回国会 衆議院 法務委員会 第11号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十四年四月二十六日(火曜日) 午後二時二十五分
開議
出席委員
委員長
花村
四郎
君
理事
北川 定務君
理事
小玉
治行
君
理事
高木 松吉君
理事
石川金次郎
君
理事
小野 孝君
理事
梨木作次郎
君
理事
吉田 安君 押谷 富三君 鍛冶 良作君 佐瀬 昌三君 田嶋 好文君 牧野
寛索
君 松木 弘君
眞鍋
勝君 武藤 嘉一君 上村 進君 大西 正男君
出席政府委員
法務政務次官
山口
好一君
法務廳事務官
(
調査意見
第一 局長)
岡咲
恕一君
法務行政長官
佐藤
藤佐
君
法務廳事務官
(
少年矯正局
長) 齋藤 三郎君
委員外
の
出席者
裁判所事務官
内藤
頼博
君
裁判所事務官
宇田川潤四郎
君 專 門 員 村 教三君 專 門 員 小木 貞一君
—————————————
四月二十五日
檢察廳法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第 一〇七号)
民法
の一部を
改正
する等の
法律案
(
内閣提出
第 一一四号)
会社等臨時措置法等
を
廃止
する
政令
の一部を改 正する
法律案
(
内閣提出
第一〇八号)(予)
公証人法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第一一五号)(予) の
審査
を本
委員会
に
付託
された。
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
出版法
及び
新聞紙法
を
廃止
する
法律案
(
内閣提
出第六五号)
少年法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第六 七号)
少年院法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第 六八号)
下級裁判所
の設立及び
管轄区域
に関する
法律
の 一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第七〇号)
刑法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第九六 号)
刑事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第九七号)
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第九八号)
司法試驗法案
(
内閣提出
第一〇〇号)
公判
前の
証人等
に対する
旅費
、
日当
、
宿泊料等
支給法案
(
内閣提出
第九四号)(予)
会社等臨時措置法等
を
廃止
する
政令
の一部を改 正する
法律案
(
内閣提出
第一〇八号)(予)
—————————————
花村四郎
1
○
花村
委員長
これより
会議
を開きます。 本日の
議題
に入ります前に、昨日
付託
になりました
法案
を御報告いたしておきます。
檢察廳法
の一部を
改正
する
法律案
、
民法
の一部を
改正
する
法律案
の二件と、
予備審査
のため、
会社等臨時措置法等
を
廃止
する
政令
の一部を
改正
する
法律案
及び
公証人法等
の一部を
改正
する
法律案
でございます。都合本
委員会
に現在
付託
されております議案は十六件でありますので、昨日
付託
になりました四件のうち、
会社等臨時措置法等
を
廃止
する
政令
の一部を
改正
する
法律案
は急ぎますので、これは本日行うこととし、このほかの三件は、しばらく
提案理由
の
説明
を聞くことを延ばすことにいたします。 本日はまず昨日いまだ
提案理由
の
説明
を聞いておりませんでした
刑法
の一部を
改正
する
法律案
、
刑事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
、
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
、
公判
前の
証人等
に対する
旅費
、
日当
、
宿泊料等支給法案
及び
会社等臨時措置法等
を
廃止
する
政令
の一部を
改正
する
法律案
について
提案理由
の
説明
を求め、続いて本日の日程を
議題
といたし、
質疑
に入り、
質疑
の終了したものがあれば採決に入りたいと存じます。まずこれより順次
提案理由
の
説明
を求めます。
—————————————
山口好一
2
○山口(好)
政府委員
私はただいま
上程
になりました各
法案
につきましての
提案理由
を御
説明
申し上げます。 まず
刑法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、
提案理由
を御
説明
申し上げます。このたび
刑法
の一部を
改正
して、第二十五の二という新しい
規定
を設けましたのは、近く本
國会
に提出いたすことに
なつ
ておりまする
犯罪者予防更生法案
が成立いたし、
法務
府の外局として
中央更生保護委員会
が置かれ、その
地方支部局
として
地方少年保護委員会
及び
地方成人保護委員会
が設けられ、その重要なる権限である
保護観察
の
制度
が実施せられましたあかつきには、
裁判所
が
懲役刑
または
禁錮刑
の
執行猶予
の
裁判
の
言い渡し
をする場合におきましても、
從來
のようにまつたく無
條件
に刑の
執行
を
猶予
しないで、
執行猶予
の
裁判
の
言い渡し
を受けた者の
改善
と、
更生
を助けますために、この者を
保護委員会
の
保護観察
に付して、これを補導、援護することが適当と認められる場合もあろうかと存ぜられます。それでかような場合には
猶予
の
期間
中遵守すべき
事項
を定めまして、刑の
執行猶予者
を
保護観察
に付することもできるように、このような新たな
規定
を設けた次第であります。この
改正
は
從來
のように、無
條件
に刑の
執行猶予
の
裁判
の
言い渡し
をすることを防げるものではありませんが、ただ
保護観察
に付する旨の
裁判
をした場合には、刑の
執行猶予
の言渡しに一種の
條件
を付することになりますので、一見
被告人
に対して不利益な
改正
のように思われますけれども、
從來
は
裁判所
が刑の
執行猶予
の
裁判
を言い渡すのに躊躇いたしたような場合には、
保護観察
に付するならば、刑の
執行
を
猶予
してもよいと考えて、
執行猶予
の
判決
をいたす場合もありますので、実際に
執行猶予
の
判決
が言い渡される場合がふえる結果にもなり、かえつて
被告人
には利益を與えることになろうかと存ぜられます。 次に第二十六條の
改正
は、第二十
五條
の二が新設されました結果、
保護観察
の
期間
中遵守すべき
事項
を遵守せず、しかもその情状が重いことを刑の
執行猶予取消
の
原因
に加えることといたし、これに伴う必要な
改正
をしたものでありまして、
保護観察
の
目的
である刑の
執行猶予者
の
改善
及び
更生
をはかりますためには、この
改正
を必要と考えたのであります。 第二十九條第一項第四号の
改正
は、
犯罪者予防更生法
が成立いたしましたときは、
從來
の仮
出獄取締規制
は廃止され、仮出獄中の者は同法によ
つて法定
の
遵守事項
のほか、
地方成人保護委員会
または
地方少年保護委員会
の定める
遵守事項
を守らなければならなくなりましたので、これに伴う
改正
を施したのであります。
最後
に
本法
は
犯罪者予防更生法施行
の日から施行いたしますが、刑の
執行猶予者
を
保護観察
に付し得る旨の
規定
は、
法律
不遡及の
原則
に從いまして、
本法施行
後に積を犯した者に限り、これを適用するというのがこの
法律
の
附則
の
趣旨
でございます。 以上がこの
法律案
を提出いたしました
理由
であります。何とぞ
愼重御審議
の上、すみやかに御可決くださいますようにお願いいたします。 次に引続きまして
刑事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
の
提案理由
を御
説明
申し上げます。
本案
は大体三点からなるものであります。 第一点は、
家庭裁判所
の開設に伴う
改正
であります。御承知のように
家庭裁判所
は本年の一月一日から発足し、
家庭
に関する
事件
の審判及び調停並びに
少年
の
保護事件
のほか、
一定種類
の成年の
刑事事件
の第一
審裁判
をも行うことに
なつ
ているのでありまして、この
刑事事件
の
裁判
については、当然
刑事訴訟法
が適用されることになるのであります。ところが
刑事訴訟法
は、
家庭裁判所
がこの
種刑事事件
を取り扱うことを予想して制定されていなか
つたの
で、
家庭裁判所
における
刑事裁判
の円滑なる運用をはかりますためには、
刑事訴訟法
に若干の
改正
を加える必要があるのであります。すなわち
家庭裁判所
の
裁判官
が忌避された場合の
裁判
に関する
規定
、
家庭裁判所
における
特別弁護人
の選任に関する
規定
、事実の
取調べ
、勾引、押收、捜索、
証人尋問
などの
嘱託
は、
地方裁判所
または
簡易裁判所
の
裁判官
のほか、
家庭裁判所
の
裁判官
に対してもすることができる旨の
規定
、
勾引状
または
勾留状
の
執行
の指揮は、急速を要する場合には、
地方裁判所
または
簡易裁判所
の
裁判官
のほか、
家庭裁判所
の
裁判官
もすることができる旨の
規定
、
執行猶予
の
言い渡し
の
取消
の
請求
は、
地方裁判所
または
簡易裁判所
のほか
家庭裁判所
に対してもすることができる旨の
規定
、
家庭裁判所
の第一
審判決
に対しては控訴することができる旨の
規定
並びに
家庭裁判所
の
裁判官
のした
裁判
の
取消
または変更の
請求
に対する
決定
は、
合議体
でしなければならない旨の
規定
などを整備することでありまして、いづれも
関係條文
に
家庭裁判所
という字句を加えることなどによりまして、
簡單
にその
目的
を達することができるものであります。 第二点は本
國会
に提出しております
刑法
の一部を
改正
する
法律案
に関連する
改正
でありまして、この
法案
によりますれば、
裁判所
は懲役または
禁錮刑
につきその
執行
を
猶予
する場合に、必要と認めたときは、その刑の
執行期間
中、
被告人
を
遵守事項
を定めて
保護観察
に付することができることといたし、かつ
保護観察
に付された者が
遵守事項
を守らなかつたときは、刑の
執行猶予
を
取消
し得ることにいたしておりますので、かかる
保護観察
に付する旨の
裁判
の言渡につき、また刑の
執行猶予
の
取消手続
につきまして必要な
規定
を
刑事訴訟法
中に加えたものであります。すなわち同法第三百三十三條を
改正
いたしまして、刑の
執行
を
猶予
し
被告人
を
保護観察
に付する場合には、その
裁判
は
判決
をもつて、刑の
執行猶予
の
判決
の
言い渡し
と同時に言い渡すべきものといたし、そのことを
規定
いたしました
條項
を同法第三百三十三條の第三項として新たに加えたのであります。次に第三百四十九條の
改正
は、
從來
刑の
執行猶予取消
の
原因
は
刑法
第二十六條に
規定
してありますように、新たに刑に処せられた場合または前に他の罪につき刑に処せられたことが発覚した場合等、比較的明瞭な
事項
でありますので、
裁判所
は
被告人
及び
檢事
の意見を聞いた上、
決定
でただちにその
取消
の
裁判
をいたしたのでありますが、このたび
刑法
の
改正
によりまして、先に申しましたように新たに
保護観察
の
期間
中遵守すべき
事項
を遵守しなかつたことを、
執行猶予取消
の
原因
といたしましたので、はたして
執行猶予
を受けた者が
遵守事項
を守らなかつたかどうかについては、
裁判所
は愼重に事実の
取調べ
をした上で判断をする必要がありますので、必ず公開の
法廷
で、
原則
として、
被告人
及び
檢事
の両当事者を出席せしめて事実の
取調べ
をなすことにいたし、かつ
被告人
はその場合
弁護人
を選任し得ることにいたしたのであります。また
從來
は
執行猶予
の
取消決定
に対しては、
即時抗告
をなし得るのでありますが、
即時抗告
の
期間
は三日と法定されているのでありまして、
前述
のごとく
從前
と異りまして、今回の
改正
によ
つて保護観察期間
中の
遵守事項
を守らなかつたことを
理由
として
取消決定
がなされるようになりますと、
被告人
が
取消決定
があつたことを知らず、
從つて被告人
の知らぬうちに
取消決定
が確定してしまうというような場合もあり得るのでありまして、これでは
被告人
に対し酷に失しますので、
取消決定
に対しては
普通抗告
をなし得るものとするとともに、その
期間
を控訴の
期間
と同
樣十四日
とし、かつ
期間
の計算は、
被告人
が
取消決定
のあつたことを知つたときから起算いたすことにいたしました次第であります。なお第三百五十條の
改正
は、第三百四十九條に第二項、第三項及び第四項が新たに加えられましたことに基きます
整理
のための
改正
であります。 第三点は、その他の
改正
でありまして、あるいは
解釈
を明らかにし、あるいは
不備
を補正し、あるいは不要の
規定
を削るものであります。このうちでまず御留意を願いたいのは、第二百十
八條
の
改正
であります。これは身体の拘束を受けている
被疑者
については、特別の令状がなくても、指紋の採取などをすることができることを明らかにしたものであります。
刑事訴訟法
上
被疑者
が身体の拘束を受ける場合としては、第百九十九條のいわゆる通常の
逮捕
、第二百十條のいわゆる
緊急逮捕
、第二百十三條のいわゆる
現行犯逮捕
、第二百七條のいわゆる起訴前の
勾留
が主なものであります。しかしてこれらの場合には、これら
逮捕行為
などの
付随処分
として、指紋の採取その他本
改正條文
に掲げてある程度の
処分
は、
被疑者
の
同一性
を識別するなどの
目的
のためには、当然なしうるものと解しえられるのでありますが、なお疑義の起きる余地のないように、この際明文をもつてこれを明らかにしておくのを相当と認めた次第であります。 次に第五十
五條
第三項の
改正
でありますが、同項の
規定
は、
期間
の末日が日曜日、一月一日、二日、四日、十二月二十九日、三十日、三十一日または
一般
の休日として指定された日にあたるときは、これを
期間
に算入しないことに
なつ
ているのでありまして、これは旧
刑事訴訟法
の
規定
をそのまま踏襲したものであります。そしてこの
規定
のうち一月一日、二日、四日と
なつ
ていますのは、
從前
は一月三日及び五日が
一般
の休日に
なつ
ておりましたので、四日を休日に準じて取扱うことは
意味
があ
つたの
でありますが、
國民
の
祝日
に関する
法律
が実施されました今日におきましては、一月三日及び五日はいずれも
國民
の
祝日
に
なつ
ておりませぬので、四日を特に掲記する
意味
がなくな
つたの
であります。しかし一月三日は、
國民
の
祝日
には指定されておりませぬが、
一般
官廳の
休暇日
に指定されており、
國民生活
の現実においても
正月三箇日
の一日として特別の
意味
をもつていますので、この際一月三日を休日に準じて取扱うことといたし、一月四日を一月三日にふりかえたのであります。 なお第九十七條第一項に「
勾留
の
期間
の更新」の
規定
、第四百二十九條第一項第二号に「保釈」の
規定
を加えたのは、本來かくあるべであつた
不備
を補正したものであります。また第四百六十
八條
第二項後段の「この場合には、第四百六十三
條但書
の
規定
を準用する」旨の
規定
を削
つたの
は、さきに第四百六十三
條但書
を削る
改正
をしたのに伴う
整理
に過ぎないのであります。 以上で大略でありますが、
提案理由
の御
説明
をいたしました。何とぞ
愼重御審議
の上、すみやかにこれの御可決くださいますことをお願いいたします。 次に引続きまして
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
の
提案理由
を御
説明
申し上げます。 この
法案
は、
裁判所法
と
裁判官
及びその他の
裁判所職員
の
分限
に関する
法律
の一部を
改正
せんとするものであります。
裁判所法
については、
裁判所書記
の
制度
、
司法修習生
の採用、
補充裁判官
の
員数
並びに
司法研修所教官
及び
裁判所調査官
の
任用
につきまして若干の
改正
を行い、
裁判官
及びその他の
裁判所職員
の
分限
に関する
法律
については、
裁判官
以外の
裁判所職員
の
分限
につき若干の
改正
を行おうとするものであります。以下この
法案
の要点を御
説明
いたします。 第一は
裁判所書記制度
の
改正
の点であります。
裁判所書記
は
現行法
では
裁判所事務官
の中から補せられることと
なつ
ておりますが、
裁判所事務官
は、本
來司法行政事務
をつかさどるものであるに反し、
裁判所書記
は
法廷
に立ち会い、
裁判所
の
事件
に関する記録その他の書類の作成及び保管その他
民事訴訟法
、
刑事訴訟法等
に定める
事務
をつかさどり、執務に際しては
職務
上の独立を認められているものでありまして、
司法行政事務
を担当する
裁判所事務官
の
職務内容
とはまつたく異
なつ
ているのでありますから、
裁判所事務官
を
裁判所書記
に補する
現行制度
は、
國家公務員法
が採用している
キヤリア
・システム(
閲歴制度
)と根本的に相いれないものがありますので、この点に関する
現行法
第六十條を
改正
して、
裁判所事務官
を
裁判所書記
に補する
制度
を廃止し、新たに
裁判所
に
裁判所書記官
及び
裁判所書記官補
を置くものとしました。
裁判所書記官
は現在の
裁判所書記
の
職務
をその
職務内容
とし、一應旧來の
敍級制度
に從い、一級、二級及び三級の三階級を定めました。
民刑
両
訴訟法
の
改正
により、
訴訟
は
民刑
とも
公判中心主義
と相なりました結果、
公判手続
の
複雜化
はひいて
裁判所書記
(
改正法
の
裁判所書記官
)の
事務
を質的に重要かつ困難ならしめ、また量的にも繁忙ならしめることとな
つたの
であります。そこで各
裁判所
を通じて一
定員数
の二級及び三級の
裁判所書記官補
を置いて、
裁判所書記官
の
事務
を補助させることといたしたのであります。第六十條の二の
規定
がこれであります。從いまして、この
裁判所書記官補
の新設は、
裁判所書記官
の
地位
を現在の
裁判所書記
のそれに比し一段高いものとしたのでありまして、
裁判所書記
として
相当年限
の職歴を有し、かつ成績優秀な者のみが一定の
任用試驗
を経て
裁判所書記官
に任ぜられるようにいたしたいのであります。
從つて
現在
裁判所書記たる者
がもし
本法
により任命されるとすれば、大
部分
はこの
裁判所書記官補
に任ぜられる建前になるのであります。
附則
第二項の
経過規定
は、この観点より立案されたのであります。以上の次第でありますから、
裁判所書記官
の充実は即時には期待できず、さしあたりは、若干の欠員が予想されますので、
本法施行
後
裁判所書記官
が充員せられ、
裁判所書記官
の
事務
が本格的にも軌道に乘るまで、
裁判所書記官
の
職務
の澁滯を避けるため、当分の
間裁判所書記官補
として
裁判所書記官
の
職務
を行わせることができる
措置
を
附則
第三項で
規定
したのであります。 次に第六十
五條
の
勤務裁判所
の指定に関する
改正規定
は、右申し述べました第六十條及び第六十條の二の
改正規定
に伴う当然の
改正
でありまして、御
説明
するまでもないと存じます。 第二は
司法修習生
の採用の点であります。
司法修習生
は、
現行法
では
高等試驗司法科試驗
に合格した者の中から
最高裁判所
が採用することと
なつ
ておりますが、
國家公務員法
の
改正
によりまして旧
高等試驗令
が廃止となり、
高等試驗司法科試驗
の
制度
は昨年末で消滅いたしましたので、これにかわる
試驗制度
を定める必要があります。そこで
政府
は別に
司法試驗法案
を
國会
に提出いたしましたが、これに対應して
司法修習生
は、この
司法試驗
に合格した者の中から
最高裁判所
が採用することといたしたのであります。 第三は、
補充裁判官
の
員数
の増加の点であります。
合議体
の
裁判所
の長
期間
にわたる審理を円滑ならしめるために設けられました
補充裁判官
の
制度
は、
現行法
ではその
員数
を一人に限つておりますが、近時きわめて長
期間
の審理を予想される
事件
が出て参りまして、一人ではせつかく
補充裁判官
を置いた
趣旨
に沿わない場合も予想されますので、
員数
を一人以上にすることができるように改め、
合議体
の
員数
の範囲内に制限することにしたのであります。 第四は、
司法研修所教官
または
裁判所調査官
の
任用
の点であります。
司法研修所教官
または
裁判所調査官
は、その
職務
の性質上
裁判官
または
檢察官
の経驗のあるものをもつて充てることを必要と存ずるものでありますが、現在
裁判官
または
檢察官
から
司法研修所教官
または
裁判所調査官
への轉官がきわめて困難な実情にありますので、当分の間、特に必要がある場合に限り、
裁判官
または
檢察官
をしてその
地位
にありながら
司法研修所教官
に、また
裁判官
をしてその
地位
にありながら
裁判所調査官
に充てることができる道を開いたのであります。 第五は、
裁判官
以外の
裁判所職員
の
分限
に関する
改正
の点であります。
裁判官
及びその他の
裁判所職員
の
分限
に関する
法律
第十四條は、旧
官吏懲戒令
と相まつて
裁判官
以外の
裁判所職員
の
分限
及び
懲戒
に関し
規定
したものでありますが、
國家公務員法
の
改正
及び
官吏懲戒令
の廃止により
裁判官
及び
最高裁判所裁判官
の祕書官以外の
裁判所職員
は、
一般職
として同法が全面的に適用されることとなり、その
懲戒手続等
を特別に設けておく必要がなくなりましたので、これを削除することといたしたのであります。
從つて
この
法律
は、同條の削除によりその内容は、
裁判官
の
分限
に関する
規定
のみとなりますので、その題名を
裁判官分限法
と定めた次第であります。 第六は、
施行期日
の点でありますが、
裁判所書記
より
裁判所書記官
及び
裁判所書記官補
への移行には相当の
準備期間
を必要としますので、
裁判所書記制度
の
改正
に関する
部分
は、この
法律公布
の日から起算して三十日を経過した日から施行することといたし、その他の
部分
は、公布の日から施行することといたしたのであります。
最後
に、
附則
第四項で他の法令中
裁判所書記
とあるのはすべて
裁判所書記官
と読みかえるようにいたしまして、
裁判所書記官
の
職務
の
執行
に遺憾なきようにいたしたのであります。 以上をもつて
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
の大要の
説明
を申し上げました。なにとぞ
愼重御審議
の上、すみやかに可決さられんことをお願いいたします。 次に
上程
に
なつ
ておりまする
公判
前の
証人等
に対する
旅費
、
日当
、
宿泊料等支給法案
の
提案理由
について御
説明
いたします。
本案
は、
刑事訴訟法
の実施に伴い、旧
刑事事訴訟法
のもとにおいて制定されていた大正十三年
司法省令
第十一号
証人
、
鑑定人
、通事または
飜訳人
に
旅費
、
日当
、
止宿料給與
の件を
改正
し、かつ
國費支出
の根拠を明確にするため、これを
法律
にしようとするものであります。 この大正十三年の
司法省令
は、
刑事訴訟費用法
に
規定
している場合以外で
刑事手続
に関して
証人等
に
旅費等
を支給し得る場合を
規定
し、その額について
刑事訴訟費用法
の
相当規定
を準用しているのでありまして、その場合としては、旧
刑事訴訟法
第二百五十
五條
の
規定
により
檢事
の
請求
した強制の
処分
につき
裁判官
の召喚した
証人
、
鑑定人
、
通訳人
または
飜訳人
に対して支給する場合、
犯罪捜査
につき
檢事
の呼出しに應じて出頭した者に対して支給する場合等を
規定
しているのであります。
本案
第一條は、いわば右の前者の場合に相当するものでありまして、
本案
第
二條
は、右の後者の場合に相当するものであります。 新
刑事訴訟法
第百七十七條は、
被告人被疑者
または
弁護人
からの
請求
により、
証拠保全
のため
裁判官
が
証人尋問等
の
処分
をする場合を
規定
しておりまして、同法第二百二十六條及び第二百二十七條は、
檢察官
からの
請求
により、いわば
証拠保全
として
裁判官
が
証人尋問
をする場合を
規定
しておりまして、いずれも旧
刑事訴訟法
第二百五十
五條
の場合に類比すべきものであります。ただこれらの場合には、新
刑事訴訟法
の
解釈
といたしましては、これらの
規定
により喚問された
証人等
は、
旅費等
の
請求権
は、すでに
刑事訴訟法自体
により認められておりまして、ただその額が法定されていないものと解せられるのであります。それで
本案
第一條では、その額につき
刑事訴訟費用法
及び
訴訟費用等臨時措置法
の
相当規定
を準用することにいたし、かつ必要な読みかえ
規定
をおくにとどめた次第であります。 次に新
刑事訴訟法
第二百二十三條は、
檢察官
、
檢察事務官
または
司法警察職員
は、
犯罪
の捜査をするについて必要があるときは、
被疑者
以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、またはこれに
鑑定通訳
もしくは飜訳を
嘱託
することができる旨を
規定
しているのであります。
本案
第
二條
は、
前述
の
司法省令
の
規定
している後者の場合を新
刑事訴訟法
のこの新しい
條文
にあてはめて
規定
したものであります。ただ新
刑事訴訟法
では、
檢察官
のほか同じく
檢察廳
の
職員
である
檢察事務官
も廣く
捜査権限
を認められていますので、
檢察事務官
の
取調べ
または
嘱託
した者にも
旅費等
を支給することができるものとするとともに、
司法警察職員
の
取調べ
または
嘱託
した者については
予算的措置
その他なお研究すべき点がありまするので、
本案
としましては、
從前
通り別に
規定
を置かぬことにしたのであります。しかして
檢察官
または
檢察事務官
の
取調べ
または
嘱託
を受けた者は、
刑事訴訟法
上は
旅費等
の
請求権
を認められておりませんから、
本案
第
二條
によ
つて檢察官
の裁量により、かつその額については、
刑事訴訟費用法
及び
訴訟費用等臨時措置法
の
規定
するところに準じてこれを支給されることになるのでありまして、これらの点は
從前
と同樣であります。 以上
簡單
ながら
提案理由
の御
説明
を終ることにいたしますが、何とぞ
愼重御審議
の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。 次に
会社等臨時措置法等
を廃止する
政令
の一部を
改正
する
法律案
を提出しました
理由
を御
説明
申し上げます。
会社等臨時措置法
は、昨年十二月三十一日同
法施行令
とともに
連合國最高司令官
の覚書に基き、
政令
第四百二号をもつて廃止したのでありますが、その際その
附則
において、同法及び同
法施行令
中の若干の
規定
について本年四月三十日までなお効力を有するものといたしました。元來、同法は第一條の示すように戰時中の特例を定めた立法でありますが、同法
規定
の大
部分
は戰時中の窮迫した社会事情、たとえば交通通信の不便、物資の不足、戰爭による災害等に対処する
措置
を定めたものでありまして、同法が廃止された当時におきましても、なおこのような事情が完全に解消するに至つていないため、これらの
規定
の効力をなお存続させる必要がありましたのと、他面その一部の
規定
は、会社経営の実情に適するものとして、経済界からその恒久化が要望されておりますので、これを恒久法とすることの可否を檢討し、必要があれば商法の中に取入れる等の
措置
を講じなければならない関係上、そのときまでこれらの
規定
の効力を失わしめないでおくのが相当と考えられましたからであります。ところで今日なお
前述
の窮迫した社会事情は、なお完全に復旧しておらず、また恒久立法とすることの可否についても、なお檢討を要する状況にありまして、現に効力を有するこれらの
規定
につき、さらに本年十二月三十一日までその効力を存続させる必要がありますので、この点について
前述
の
政令
を
改正
するため、この
法律案
を提出いたしたのであります。 ここに有効
期間
を延長しようとする
規定
は、まず会社に関するものとしては、
会社等臨時措置法
第
二條
から第三條ノ二まで及び第
五條
並びにこれに関連する施行令の諸
規定
であり、会社以外の法人に関するものとしては、第
八條
及びこれに関連する施行令の
規定
であります。これらの
規定
について
簡單
に御
説明
いたします。
会社等臨時措置法
第
二條
の
規定
は、資本金二十万円未満の株式会社の公告の方法につき、商法第百六十六條第二項に定める公告方法によることを要しない、すなわち官報または時事に関する日刊新聞紙に掲載して公告することを要しないとするのでありまして、用紙欠乏による官報及び新聞紙の紙面不足に対処し、あわせて会社の経費の負担を軽減させるものでありますが、今日なお新聞紙の紙面不足等の事情は解消していない状況でありますので、この
規定
の効力を存続させることとしたのであります。 第三條の
規定
は、株主の数が千人を越える株式会社について株主総会の招集方法を簡易化し、かつ商法第三百四十三條の特別決議をするための総会の定足数を緩和するものでありますが、この
規定
を設ける根拠とされた、戰時中における交通通信の不便という事情は近時大いに
改善
されましたけれども、反面におきまして、交通費、通信費の著しき増大と株式民主化の趨勢に伴う株主数増加の傾向とによつて、今後商法の要求しているような総会招集の通知及び特別決議の定足数の出席がますます困難となることが予想されるのでありまして、この
規定
を今ただちに失効させることは会社経営に大きな支障を與えるおそれがあり、この点に関する商法の
規定
を再檢討する必要ありと考えられますので、本條もまたその効力を存続させようとするのであります。 第三條の二の
規定
は、戰災その他の災害により株主名簿を喪失し、記名株主の全部または一部の氏名または住所を確知することのできなく
なつ
て株式会社について、当該株主に対する総会招集の通知を省略し、その者を特別決議の定足数たる株主の数に算入しないこととし、戰災を受けた会社の運営に支障なからしめようとするのでありますが、戰災により株主名簿を喪失した会社で、今日なお記名株式の株主の氏名または住所を確知し得ないものが存在しますので、第三條と同樣この
規定
の効力を存続させることにいたしたのであります。 第
五條
は、日本興業銀行、日本勧業銀行その他
法務
総裁の指定する株式会社の社債登記に関し簡易な手続を認めるものであり、これらの会社は多くは特別の法令の定めにより、その社債発行額の限度が商法所定の限度よりも高いため、社債発行の額及び数が非常に大きく、その登記が煩瑣にたえないので、その手続を簡易化し、その手数及び費用を節約しようとするのでありますが、その社債発行の頻度数は減少しておらず、また社債に関する登記
事項
について商法の
規定
を檢討する必要もあるので、この
規定
もまたその効力を存続しようとするのであります。 第
八條
の
規定
は、会社以外の法人に関し、その発行する債券の発記について第
五條
におけると同樣な取扱いをするものであり、第
五條
と同樣の
理由
でこの
規定
の効力を存続しようとするのであります。以上述べましたところが
政令
附則
第
二條
の
改正
であります。なお叙上の
改正
に伴い、
政令
中の
経過規定
に所要の
改正
を加える必要がありますので、これを附加いたしました。
附則
第
五條
の
改正
がこれであります。 何とぞ
愼重御審議
の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
花村四郎
3
○
花村
委員長
これより
質疑
に入ります。本日の日程中、
下級裁判所
の設立及び
管轄区域
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
、
出版法
及び
新聞紙法
を
廃止
する
法律案
、
少年法
の一部を
改正
する
法律案
、
少年院法
の一部を
改正
する
法律案
を一括して
議題
に供します。右
法案
に対し北川定務君より
質疑
の通告がありますから、これを許します。
北川定務
4
○北川委員
出版法
及び
新聞紙法
を
廃止
する
法律案
につきまして、一、二点
質疑
をいたしたいと思います。
出版法
の存在することは憲法の
規定
に抵触いたしまするので、その
廃止
は当然のことと思いまするが、この
廃止
の後に、民間の出版界を手放しにしては悪いような結果を生ずるのではないでしようか。この点が
質疑
の第一点であります。次に今後
出版法
をつくられる予定がございますかどうか。第三点は著作権法との関係がどうなるか。この三点について
質疑
いたしたいと思います。
山口好一
5
○
山口
(好)
政府委員
北川委員の御
質疑
にお答えいたします。
出版法
及び
新聞紙法
を
廃止
しましても、民間業者に対しましては、今後においては大体行政面において指導をいたして行く考えであります。それによつて支障なき取扱いをいたすことはできると思うのであります。 それから今後これが
廃止
されて、また新たに
法律
の制定を考えておらないかという御質問でありましたが、これにつきましては、御承知のごとく新憲法下におきましては、
一般
的に言論及び出版の自由を制限するような
法律
は設けることができないことに
なつ
ておりますので、必要に應じまして、たとえば選挙法により、その他の別個の
法律
によつて、必要に應じて取締
規定
を設ける、こういうふうな考え方でおるのであります。 第三の著作権法との関係でありますが、御質問のような支障は、
政府
といたしましてはまずないと考えておる次第でございます。
花村四郎
6
○
花村
委員長
念のために申し上げておきます。ただいまの
出版法
及び
新聞紙法
を
廃止
する
法律案
について、文部省の
政府委員
の出席を求めておきましたが、さしつかえのため出席できぬということでありますから、また
質疑
のいかんによりまして出席を求めて、詳しい答弁をしていただくことにいたしたいと思います。
松木弘
7
○松木委員 今度予約
出版法
によることになるようでありますけれども、予約
出版法
第四條の、予約出版に対しては保証金として予約定價十円未満は五百円、予約定價十円以上は千円ということは、今日の事態に適しておらぬようですが、これは
改正
される意思はないのですか。
山口好一
8
○
山口
(好)
政府委員
所管が違いますが、知つております範囲でお答えをいたします。その点については御
質疑
のような点がたしかにございますが、今度目ざしておる
改正
では、ごく字句的な
簡單
なものにとどめまして、そのうちに
改正
されることになると思いますが、著作権法の
改正
に伴いまして、根本的な
改正
をいたすもくろみだそうでございます。
梨木作次郎
9
○梨木委員
少年院法
の一部
改正
のところで、昭和二十六年の三月三十一日までということに
なつ
ておるのであります。これはおそらく予算の関係などをによみ合せての
改正
なのだろうと思いますが、やはりこういう拘置監に特別の場所をこしらえて、そこへ
少年
を保護処遇するというようなことは、なるべく短
期間
にしてもらいたいと思うのでありますが、なぜ二十五年一ぱいにということにできなか
つたの
か、この点を伺いたいのであります。
佐藤藤佐
10
○佐藤(藤)
政府委員
御説のように、
少年
観護所は拘置監と全然異なるべき性質の施設でありまして、その中に收容する
少年
の処遇も、拘置監に收容する青
少年
の処遇とはまつたく別なものでありまするので、できれば拘置監と関係なく設立いたしたい考えでお
つたの
でありまするが、予算等の関係がありまして、とうてい今年中には整備する見込みが立ちませんので、さらに一年間延ばしまして、明年度の予算で完備いたしたい、かような考えのもとに、昭和二十六年三月三十一日まで暫定的な應急
措置
を講じようというのが、本
改正
案の
理由
でございます。
花村四郎
11
○
花村
委員長
最高裁判所
に対し、田嶋好文君より
質疑
の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
田嶋好文
12
○田嶋委員
委員長
のお許しを得まして、私は
最高裁判所
に対しまして一言御質問申し上げたいと思います。最近わが國におきまして、
少年
問題に対しましては相当重大なる関心を要する時期にな
つたの
であります。從いまして今回議院におきましても、
花村
委員長
以下二十七名提出の
少年
犯罪
防止に対する決議案が
上程
されました。これは各党一致をもちまして提出され、ここに採択をされることにな
つたの
であります。そういうような
意味
合いからいたしましても、相当今後の
少年法
の運営に対しましては、重大な関心を持つて臨まなければならぬと思うのでありますが、御存じの通り本年一月に
少年法
が実施されまして、今日まで三箇月余を経過いたしておるのであります。ところがわれわれがこの実施三箇月後の実績を調査いたしてみますのに、どうも名目のみであつてその実が伴わない。名前のみはできたのだが、どうも実際はまつたく遅々として進んでいないというのが現状ではないかと思います。まず第一に私がそれについて質問をいたしたいと思いますことは、この
少年法
の実施によりまして、当然設立されるべき
家庭裁判所
ですが、この
家庭裁判所
は、少くとも
少年法
の
趣旨
からいたしまして、
從來
の
裁判所
に併置とか、
從來
の
裁判所
を利用するとかしたものでなく、独立の廳舍をもちましてこれに充てなければならないとわれわれは考えておる次第でありますが、現在この廳舍建設というものはいかような状態にあるか、これについて詳しく御
説明
を願いたいというのが第一点であります。 第二点は、この廳舍と関連いたしまして、やはり人事の問題が起きて参ります。最近われわれの知る範囲では、ようやく
家庭裁判所
長の発令を見たように思われるのでありますが、いまだその
家庭裁判所
の中枢となるべき判事の充足というようなものも聞いておりません。ついてはこの
家庭裁判所
に対する人事の面は、どういうような進捗状況に
なつ
ておるのか、これを詳しく
最高裁判所
から承りたいと思います。以上二点について御質問いたします。
宇田川潤四郎
13
○宇田川
説明
員 田嶋委員の御質問に対して、
最高裁判所
の御回答を申し上げます。田嶋委員のおつしやる通り、
少年
犯罪
がますますふえて、
國会
の方では青
少年
犯協防止に関する決議をされまして、私ども
少年
問題に関係しております者として非常にありがたく存じておるような次第でありますが、昨年
少年法
が
改正
になりまして
家庭裁判所
ができ、また
少年
観護所、それから
少年
院というものが設置されることにな
つたの
でありますが、
家庭裁判所
のその後の進捗については、遺憾ながら予想通りに運んでおりません。現在
少年
関係の
家庭裁判所
として独立しているものは、わずかに大阪、熊本の二地方で、他の地方、すなわち他の四十七箇所においては、
少年
に関する独立の
裁判所
がまだ設立されてないような状況であります。
家庭裁判所
は、田嶋委員がおつしやる通り、
刑事裁判
所とか、また民事
裁判所
とはまつたく違つた、性格を持つた
裁判所
でありますので、どうしてもこれらと併設または利用するようなことは望ましいことではありませんので、何とかしてこれは新営、または借上げ等の方法によつて、独立したものをつくりたいと思つております。以上のように、現在では大阪、熊本の二地方においてやつております。ただ本年度新規予算において、これが設備に関する要求を大藏省にいたしたのでありますが、四十七箇所の
家庭裁判所
の新営の予算として、わずかに一億七千万円の割当しかされておりません。以上が
家庭裁判所
の物的方面における進捗の状況であります。人事の問題については、過般所長について東京、大阪、名古屋、廣島、福岡、仙台、札幌、高松、横浜、京都、神戸について專任所長の発令を見ましたが、いまだ爾余の箇所については、所長の発令を見ておりません。しかしこれについては、
最高裁判所
といたしましてはなるべく早く適当な詮議を行う意向であります。 〔
委員長
退席、北川
委員長
代理着席〕 なお判事、
少年
の保護司等の人事については、本年度の予算で
最高裁判所
といたしましては、判事について百三十一人必要でありますが、大藏省に要求いたしましたのは六十六名で、わずかに四十六名、それから判事補は六十五名が四十六名、それから
少年
保護司は八百三十二名が四百五名、かような状況であります。とうていこれでは
家庭裁判所
の
少年
審判
事件
はまかないにくいというような状況であります。しかし
家庭裁判所
の
職員
は、何とかこの程度においても所期の
目的
を達成したいと、現に精進しておる次第であります。なお本年度は、十八才未満の
少年
について
家庭裁判所
の方で処置する計画でありますが、來年度からは、
少年法
によりますと二十才未満ということになるのでありますが、かりに二十才未満の
少年
を來年度において処置しなくちやならないとするならば、とうてい
家庭裁判所
はこれを運用することができないのじやないかと心配しておる次第であります。以上
簡單
でございますが、お答えいたします。
田嶋好文
14
○田嶋委員 今の
説明
によりまして、
家庭裁判所
の廳舎建築費として一億七千万円計上せられたということですが、この一億七千万円によりまして、どの程度の
家庭裁判所
の廳舎が建設されましようか、これが一つ。それからなお第二といたしまして、今回の予算によりますと、確かに昨年度の予算よりもこうした方面に対する予算は増額をされておると思うのでありますが、この人事に対する予算の運営はどういうふうに見ているのか、この二点を承りたいと思います。
宇田川潤四郎
15
○宇田川
説明
員
家庭裁判所
の新営の予算のことについて、これをいかに処理するかについては経理局の所管でありますので、現在私、お答えする資料を持つておりませんけれども、何分一億七千万円でありますので、これをしろうと考えといたしましても数箇所、多くて十箇所以下の
家庭裁判所
しか新営できないものと見ております。なお人員の配置についても、現在
事務
総局の方で研究中でありますので、ここで詳しいお答えをすることはできませんが、非常に困難な状況にあるということだけをお答えしておきます。
田嶋好文
16
○田嶋委員 それでは人事の問題についてもう一度お尋ねいたしたいのであります。
裁判所
長が発令されたのは一部でありまして、まだ大
部分
の
裁判所
に対する所長も発令されてないように承りますが、この所長はただちに補充されるのか、それとも今のままで行く方針なのか承りたいと思います。
宇田川潤四郎
17
○宇田川
説明
員 所管が違つておりますし、また人事のことについては
裁判官
会議
の方できめることに
なつ
ておりますので、ここではお答えする自由を持ておりませんが、
家庭
局の考えといたしましては、すみやかにこれが專任所長の人選を希望しております。
田嶋好文
18
○田嶋委員 この問題は冐頭に申し上げましたように、われわれ議員といたしましても決議案を出した責任上もございまして、重大な関心を持つておるわけであります。ただいま
最高裁判所
の
説明
員の御
説明
でわかつたところは了承いたしますが、わからない点につきましては、それぞれ関係当局者におきまして、すみやかに
説明
をせられんことを希望いたしまして私の質問を終ることにいたします。
小玉治行
19
○小玉委員
下級裁判所
の管轄等に対する
法律案
について、一、二点お伺い申し上げたいと存じます。この
法案
によりまして六箇所簡易裁詞所が増設されることになりましたことは、まことに
國民
の喜びといたすところであります。それに関連しまして、第四
國会
におきまして岐阜縣関町、鳥取縣浦富町、栃木縣上都賀郡の栃木
簡易裁判所
、この三箇所に
簡易裁判所
を設置してもらいたいという請願並びに陳情等が出てお
つたの
でありますが、これはいかように処理されたかという点をまず第一にお聞きしたい。 それから今度の
法案
では全國に六箇所増設されることに
なつ
ておりますが、この六箇所以外にも請願、陳情等が出てお
つたの
ではないかと思います。
政府
としては、將來なおこの
簡易裁判所
を必要に應じて設置される計画等がおありであるかどうか、この二点について御
説明
願いたいと思います。
岡咲恕一
20
○
岡咲
政府委員
小玉委員の御質問に対してお答え申し上げます。このたび増設を見ました
簡易裁判所
は六箇所でございますが、そのうち関町の
簡易裁判所
、それから岡山縣の兒島市に設けます
簡易裁判所
、それから鳥取縣の浦富町に設けます
簡易裁判所
は、ただいまお述べになりましたように、衆議院において採択せられました請願もしくは陳情の御
趣旨
を主として取入れまして、新設することが適当であると私どもの方でも考えましたし、
最高裁判所
に御連絡申しまして、
最高裁判所
もその点について全幅の御同意をお與え願いましたので、設置いたすことにいたした次第であります。そのほか衆議院におきましては、京都府の竹野郡網野町に
簡易裁判所
を設けてもらいたいという
趣旨
の網野町長の請願がございまして、これは第三
國会
におきまして衆議院において採択せられておりますし、なお宮崎縣の高鍋町に
簡易裁判所
を設置してもらいたいという
趣旨
の請願がございまして、これは第一
國会
におきまして衆議院において採択に
なつ
ておりますが、この二箇所につきましてはいろいろ研究いたしましたところ、今ただちに
簡易裁判所
を設けることを必要と考えるわけに参りませんので、一應これは留保にいたした次第であります。現在
簡易裁判所
は、御承知のように五百五十九箇所設置されておりますが、
最高裁判所
におかれましては、もちろんこの程度では満足ができませんで、もし予算なり人事の関係が十分に参るならば、一千箇所に近程度の
裁判所
をも設置したいような御希望のように承つておる次第でございます。
法務
廳におきましても、このたびの六箇所の新設は必要やむを得ないもののみに限りまして、予算の関係もございますし、そのほか諸般の事情もございまして、やむを得ずこの程度の増設を
決定
いたした次第でありますが、將來予算なりあるいは営繕、そのほか人事諸般の事情が許しまするならば、もつと陳情なり請願、あるいは
國会
の御意向に沿うように、なるべく多数の
簡易裁判所
を設けたいと考えておる次第でございます。
小玉治行
21
○小玉委員
簡易裁判所
の設置に関して、これに付随しましてちよつとお伺いしたいのですが、この
簡易裁判所
設置の費用であります。この費用につきまして、
從來
地元の寄付を仰いで、その建築費の一部に充てておるという例を私は承つておるのでありますが、現在各地方におきましては、御承知のように納税その他で非常な金詰まり状態にあるのであります。寄付をされる場合には、たいていその地元の各町村に割当てて、半ば強制的に寄付をさして、それを設置の費用に充てるというような例があるように承つておるのであります。今度のこの六箇所の増設については、その予算関係はいかように考えておられるか。全部國庫負担ということでやられるお考えであるか、ないしはまた若干は寄付を募つてやられるお考えであるか、その点を伺いたい。
岡咲恕一
22
○
岡咲
政府委員
予算の問題でございますので、
最高裁判所
から御
説明
を願うのが適当かと思いますが、私の承知しております範囲でお答え申し上げたいと思います。 このたびの六箇所の新設につきましては、
裁判所
あるいは
法務
廳におきましても、その営繕の予算を大藏当局に要求したのでございますけれども、目下の財政状態におきまして、遺憾ながら承認を得ることができなかつた次第でございます。この六箇所の新設
裁判所
につきましては、地元からもずいぶん強い御要望がございまして、営繕の点は地元の方面においてこれを負担するから、ぜひ設立を考慮してもらいたいという
趣旨
の陳情がしばしばございまして、
裁判所
におかれましても、地元の方に御出張になり、いろいろ関係方面とも御連絡になりまして、
裁判所
を設置するのに適当な廳舎の手はずもできる見込みが立ちましたので、
裁判所
もこのたびの新設に同意をお與えに
なつ
た次第でございます。
一般
に
簡易裁判所
の設立につきましては、小玉委員から御指摘がありましたように、地元の寄付に仰いでいる点が多いように承
つたの
でありますが、現在の
國民
の状況におきまして、あまりにも大きな負担を
國民
にかけますことは、われわれとして非常に遺憾と考えます。できれば
裁判所
の営繕の費用あたりは、全部國庫においてこれをまかなうべきであると考える次第でありますが、いろいろな関係上、全部の営繕の費用を國費においてまかなえなかつた点はまことに遺憾に考えております。もつともごくわずかではございますが、國費をもつて新設された
裁判所
もございますので、この点は十分御了承を得たいと思います。 〔北川
委員長
代理退席、
委員長
着席〕
梨木作次郎
23
○梨木委員 今の御質問に関連してお伺いいたしたのでありますが、
裁判所
や
檢察廳
を新設する場合に、地元民の寄付に仰いでいるということ、これは実際は地元の金持や顏役が主としてこの寄付に應じている。そうしてその寄付のあつせんをしているのは
裁判所
の所長だとか、あるいその他の責任者がやつている。こういうような形で、
裁判所
なり
檢察廳
が建設されて行くというようなことを許しておくことは、これは
裁判
や檢察の権威と公正を絶対に保つことはできません。われわれはこれを在野法曹としても苦々しく思つております。これは機会があれば、私たちのこの
意見
を
政府
に向つて上申したいと思つてお
つたの
でありますが、今伺いますと、六箇所の
簡易裁判所
が予算が一銭もなくて、地元の寄付によつてやつておるということでは、
簡易裁判所
をこしらえても、決してそこの
一般
の人民の利益のためにはたして運営されるかどうかということを非常に疑わざるを得なくなるのであります。こういうことは、
最高裁判所
としては絶対にやるべきことじやないと思うのであります。特に最近経済統制違反、つまりやみ屋さんが金まわりがいい。だから金まわりのいいやみ屋さんへ寄付を頼みに行く。こういうことに
なつ
ておるのを人民はみな見ておるのであります。そうしてやみ屋さんがひつかかるような場合、それは公平な
裁判
をなしたとしても、公平な檢察的な処置をいたしましたとしても、人民は決してそれを公平だとは考えません。だからこういうことは今後絶対にやめてもらたいたと思うのであります。これは私の希望であります。 次に
少年院法
の一部
改正
の
法律
に関しての第二十
一條
でありますが、今年の
法務
廳の予算は昨年度より二十六億五千万円ふえておるのであります。それにもかかわらず、
少年
保護所のような保護的な施設のために経費がさかれることが少くて、
少年
保護所を拘置監の一部に設置するというようなことをやることは、これは非常に遺憾だと思う。このために東京においても、また二、三日前の新聞を見ますと、福島の方においても、
少年
保護所に收容されておつた
少年
が、集團的な脱走や放火をやつているということがしばしば起つておるのであります。当局はこの
原因
をもつと究明して、その根本的な対策を立てなければならぬと思います。從いまして私はここで
法務
廳に伺いたいのは、二十六億五千万円の、この昨年度よりも増額した予算を、こういう
少年
保護の保護的な施設の方へ——これは今年の予算からは、款項の流用が大藏大臣の承認を得ればできると聞いておるのでありますが、こちらの方にさく意思はないかどうか、これを伺いたいのであります。
齋藤三郎
24
○齋藤(三)
政府委員
お答え申し上げます。本年度の予算で、
少年
院、
少年
観護所についてある程度の予算はちようだいすることに
なつ
ております。さらにただいまお話のように、よその方からまわしていただくことも、今一生懸命努力いたしております。ただ実際問題といたしまして、本年の一月急速に新しい
少年法
が実施されまして、その結果昨年度に比較いたしまして、十八才未満の
少年
の起訴される率が、この二月末までの統計によりますと、昨年度の十分の一であります。しかも観護所に至りましては、さらに今度の法制で、
從來
拘置所に入つておつた者が、たとい
家庭裁判所
から
檢察廳
に逆送になりまして起訴されることに
なつ
ても、
家庭裁判所
に係属中は観護所に入れるということに
なつ
たわけであります。具体的に申し上げますと、先般事故を起してまことに申しわけないと存じておりますが、東京の
少年
観護所に実例をとつて申し上げますと、昨年度は一年間平均月に大体百七十人の子供が、東京多摩
少年
院出張所という形で收容されてお
つたの
でありますが、本年一月新
少年法
が施行になりまして、施設がございませんので、多摩の
少年
院の出張所を東京
少年
観護所にいたしまして、三月十二日でありましたか、それまでの実績をとりますと、昨年度は平均百七十人が、本年度は二百五十人ずつ入つておつた次第であります。しかも昨年度
家庭裁判所
と
保護観察
の役所として
少年
審判所が存続することになりまして、二つの役所にな
つたの
でありますが、その機構の変改に際しましては、
法務
廳といたしましては、この
少年
観護所をゼロにいたしまして、
家庭裁判所
から観護所に入る者を收容し始めたのでありますが、昨年度よりも、ただいま申し上げましたように非常にふえて参りましたので、非常に遺憾な事態が生じた次第であります。從いまして私どもとしては、できるだけこの面に予算をとることにいたしておりますが、何といたしましても新設するのには相当の日数を要するのでありまして、さらに日本全國の施設ということになりますと、どうしても急速に整備ができませんので、かような便法を用いて次第であります。
梨木作次郎
25
○梨木委員 私の伺いたいのは、この二十六億五千万円の今年度増額に
なつ
たものを、こういう
少年
保護所の増設の方へ予算を振向ける意思がないかどうかということを、私は聞いたのであります。この点お答えができますか。できたらお願いします。
齋藤三郎
26
○齋藤(三)
政府委員
一ぺんきまつた額よりも、ある程度ほかの方からまわすように大体話が進んでおりますが、私から責任をもつてお答え申し上げることはできません。
梨木作次郎
27
○梨木委員 それはまわすことができても、昭和二十六年三月三十一日まで、拘置監にこういう特別の
改正
を必要とするのであります。
齋藤三郎
28
○齋藤(三)
政府委員
東京に五百人の
少年
を收容するために、火をつけられても燒けないようなコンクリートあるいは煉瓦のものをつくりますと、約七、八千万円要するのであります。二十六億の半分以上の金が入りますればできるかもしれませんが、ちよつと今のところではできないような状況に
なつ
ております。
武藤嘉一
29
○武藤(嘉)委員 ただいま
議題
に出ております
下級裁判所
の設立及び
管轄区域
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
の中で、岐阜縣の
裁判所
を岐阜
裁判所
並びに関
裁判所
に変更増設の件でありますが、お尋ねしたいのは、岐阜縣では昔から関町と美濃町という二つが政治的にも経済的にもほとんど互格でありまして、本員はこの原案に賛成する者ではありまするが、美濃町とほとんど互格でありまする関係上、関町に置くことに対しましては、美濃町側の意向がはたしてこちらへどんなふうに傳わつておりまするか。美濃町側においては反対がありはしないかどうか。この辺をひとつお伺いしたいと思います。
岡咲恕一
30
○
岡咲
政府委員
お答え申し上げます。関町に
簡易裁判所
を設置いたします関係につきましては、武藤委員も十分御了承のことと考えまするが、これは参議院及び衆議院において採択されました請願が本設置案を取上げまするきつかけに
なつ
たと申し上げてもよろしいかと考えます。そういう関係で
法務
廳といたしましては、現地の
裁判所
長及び
檢事
正に十分照会をいたしまするし、あるいはその設置によりまして他の町村あるいは
裁判所
に及ぼす影響あたりも考慮いたして
決定
いたした次第でございまするが、ただいまお尋ねになりまする美濃町は、関町
裁判所
設立につきましてはもとより反対しておりませんし、現知の
裁判所
長及び
檢事
正その他の関係方面の意向を確めて見ましても、関町の設置につきましては大
部分
賛成でございまして、ただその
管轄区域
の点につきましては、多少
意見
もございましたようですが、
裁判所
の設置自体につきましては何らの反対もございませんので、
政府
といたしましては両院で採択された請願でもありますので、設置を
決定
いたしました次第でございます。
武藤嘉一
31
○武藤(嘉)委員 御
説明
を了承いたしまして賛成いたします。ことに関町は近く附近の町村を合併いたしまして、人口が増大いたしまして、ひいては近く市制をしくことに
なつ
ておる予定と聞いておりますので、原案に賛成いたしたいと思います。私の申し上げたのは、美濃町の側の反対がありはしないかということを特に考慮いたしましたためにお尋ねした次第であります。
花村四郎
32
○
花村
委員長
ほかに御
質疑
はありませんか。
梨木作次郎
33
○梨木委員 ちよつと
簡易裁判所
設置に関する
最高裁判所
の見解を伺いたいのでありますが、それはなるほど
簡易裁判所
がどんどんできることは、人民のために非常に利便をはかる点においていいのであります。ところがこの
簡易裁判所
で扱う
事件
が、
法律
專門家を必要としないようなごく
簡單
なものを扱うのだとすれば、非常にけつこうなのでありますが、やはりどうしても
法律
專門家の弁護士などを必要とする
事項
までも相当廣汎に扱うということになりますと、実際はどういう結果になるかと申しますと、その
簡易裁判所
の所在する所に一人か二人の弁護士だけが住んでおる。しかも他の近接した所からそこへ弁護士が出張する場合には非常に時間と費用を要するようなことがある。そうしますと、
裁判
やその他相手方に
なつ
た者が、実際
法律
專門家を頼まなければ自分の権利を擁護できない場合がある。ところが遠隔の地から弁護士を依頼するということは、費用的にもとうてい負担しきれないという場合がありまして、せつかく人民の利益のために、権利擁護のためにつくつた
簡易裁判所
が、そういうことのためにかえつて人権の保護に事を欠くようなことを、われわれしばしば
経驗
しておるのであります。こういう点について、
簡易裁判所
を設置されることと関連して
最高裁判所
の考え方を伺いたいのであります。
内藤頼博
34
○内藤
説明
員 梨木委員の御質問にお答えいたします。 まことにごもつともなことでございまして、
簡易裁判所
は各地に設けられまして、
國民
に十分の利用と申しますか、権利保護に役立ちますにはまことに御承知のようなことがあると存じます。おいおい
簡易裁判所
における手続なども研究されまして、簡易手続というようなものが法制化されて行くことが望ましいことではないか、その方面につきまして、今後
最高裁判所
としても十分研究を進めたいという考えでございます。
押谷富三
35
○押谷委員 この
簡易裁判所
設置の関係でありますが、大体この
簡易裁判所
はいずれも衆参議員の請願に基いて、これを基礎にしておつくりに
なつ
たようでありますが、その請願のうちに京都府竹野郡網野町における関係の請願がすでに採択されておりますが、これが漏れておるのは何か
理由
があるのでございましようか、この点お尋ねいたします。
岡咲恕一
36
○
岡咲
政府委員
網野町に
簡易裁判所
を設置してもらいたいという請願が採択になりましたのは、たしか第三
國会
であつたかと考えまするが、
法務
廳といたしまては、ただちに現地に照会をいたしまして、設置することの可否をただしたのでございます。ところが網野町は、御承知のようにすぐ附近に峰川
簡易裁判所
もありまする関係もございまして、現地の京都
地方裁判所
長並びに
檢事
正が、必ずしも網野町に今ただちに
簡易裁判所
を設けることにつきましては、積極的な御
意見
もないようでございまするし、
事件
数の関係を見ましても、今ただちに網野町に
簡易裁判所
を設置いたしませんと、地元におかれて非常に不便だという事情も十分了承いたすことができませんし、そのほかいろいろ関係方面の調査をいたしましても、今ただちに網野町に
裁判所
を設ける必要に対して、十分の
理由
も発見することができませんので、この際は一應留保にいたしました次第でございます。從いまして將來相当研究いたしまして、設置する必要があるという確信を得まするならば、
最高裁判所
とも協議申し上げまして、そういう方向に進むことを決して機会のないことでないということだけを申し上げておきたいと思うのでございます。
—————————————
花村四郎
37
○
花村
委員長
ほかに御
質疑
はありませんか。——なければ次に
司法試驗法案
、
刑法
の一部を
改正
する
法律案
、
刑事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
、
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
を一括して
議題
といたします。御
質疑
がありましたならば、お願いいたします。
松木弘
38
○松木委員
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
につきまして伺いたい。今度
裁判所書記
を
裁判所書記官
に改める。現在の書記に任命されない者は
裁判所書記官補
であるということに
なつ
ております。書記官の
採用
制度
というのはどういうことに
なつ
ておりますか。それを伺いたい。
岡咲恕一
39
○
岡咲
政府委員
裁判所
の
事務
官から
裁判所書記官
を補するという関係に
なつ
ております。
裁判所
の
事務
官は
最高裁判所
において御
採用
に
なつ
ておるわけでありますから、
最高裁判所
から
任用
については御
説明
を煩わしたいと思います。
内藤頼博
40
○内藤
説明
員
裁判所書記官
の任命方法は、
最高裁判所
が任命するわけでございます。なお
最高裁判所
法の定めるところによりまして、各高等
裁判所
、
地方裁判所
においても任命することになるわけであります。
松木弘
41
○松木委員 私のお伺いいたしたいのは、現在の
裁判所書記
というものは、この
規定
を見ると、
裁判所書記官
には適当でないような感じを與えるので、それで伺
つたの
ですが、結局これは今の
裁判所書記
が書記官になるという予想をされておるのでありますか。
内藤頼博
42
○内藤
説明
員 今度の
改正
案に載つております
裁判所書記官
というものは、その任命の資格などにつきまして、
從來
の
裁判所書記
に補されました
裁判所事務官
よりは、ある程度高めて参りたいという考え方をしておるわけでございます。
從つて
從來
の
裁判所書記
の中からも、
裁判所書記官
として任命される者はありますけれども、その程度に達しない者は、
裁判所書記官補
ということになるわけであります。
牧野寛索
43
○牧野委員 この司法科試驗の問題についてちよつとお伺いしたいのですが、
從來
の高等試驗の場合によりますると、行政科、司法科、外交科とわかれておりまして、行政科に合格した者は、行政科の試驗がたしかある範囲内において免除されることに
なつ
ておると思うのですが、
從來
において行政科に合格した者が、司法科試驗の場合にどういう取扱いになるのであるか、つまり行政科の試驗に
刑法
、憲法のようなものに合格した者でも、さらに新たに全部についての試驗を受けなければならないのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
岡咲恕一
44
○
岡咲
政府委員
高等試驗、行政科試驗はすでに
廃止
せられまして、昨年ももちろん行われなかつた次第でございまするが、せつかく行政科試驗に合格しておりますので、あるいはこのたびの司法科試驗におきましては、その試驗に合格した科目については、受驗を免除することも一應案としては考えた次第でございまするけれども、すでに行政科試驗は
廃止
されて、昨年度は施行されておりませんし、最近憲法の施行に伴いまして、法制がほとんど全面的な
改正
を見ておるような関係もありまするし、このたびの司法科試驗というものは、
法律
の專門家として最も高い程度の学識及びその應用能力の有無をテストすべき試驗て考えましたので、多少お氣の毒な点もあろうかとは考えまするが、
從前
のような高等試驗、行政科試驗に合格した人につきまして、その合格した学科目については免除するという方針はとりませんで、ひとつあらためて山研究願い、御準備願つて、司法科試驗の全科目を試驗していただくというふうにいたした次第であります。
鍛冶良作
45
○鍛冶委員 そうしますと、司法科試驗で筆記が通つて口述で落ちた者はどうか。これもいかんのですか。
岡咲恕一
46
○
岡咲
政府委員
ちよつと今手元に
法案
がございませんので、ちよつとお待ち願いたいと思いますが……。
松木弘
47
○松木委員 第一次試驗というのは予備試驗のように考えましたけれども、
改正
案の
説明
によりますと、高等試驗予備試驗ごとく、その受驗資格者を制限しないことにするとともに、試驗科目の範囲を廣めるようにしたという
説明
に
なつ
ているのでありますが、第六條には、第二次試驗の科目がきまつている。選択科目もきまつている。第一次試驗の方は、大学卒業程度において
一般
教養科目について筆記の方法によつて行うということに
なつ
ているのでありまして、この方によると、むしろ非常に廣い範囲の科目についてかつてに試驗ができるというふうに
解釈
されないとも限らないように思うのでありますが、一体第一次試驗の試驗科目はだれがきめるのでありますか、どこからこれが出発して來るのであるか、それをお聞きしたい。
岡咲恕一
48
○
岡咲
政府委員
先ほどの鍛冶委員のお尋ねにまずお答え申し上げたいと思いますが、昨年度行われました
高等試驗司法科試驗
の筆記試驗に合格した者に対しましては、その願いによりまして、この試驗により行われまする司法科試驗の筆記試驗は免除するということにいたしております。 次に松木委員のお尋ねに対してお答え申し上げます。第一次試驗をいかような試驗にいたすかということにつきましては、
法務
廳のみならず、文部省あるいは大学基準協会、弁護士会の代表者の方にお集まりを願いましていろいろ研究いたしました結果、ただいま提案いたしておりますような
試驗制度
に一應いたした次第でございます。大学基準協会におかれましても、いろいろ大学における教養科目をいかように定め、いかように実施せしむるかということについて相当長い御研究を重ねたようでございますが、お手元に参考資料としてお配りいたしております大学基準協会採択の大学基準というものをごらんになりますと、大体教養科目につきましては、人文科学関係、社会科学関係、自然科学関係と、ずいぶん廣い範囲に教養の科目がわたつているわけです。從いまして、この中からいかなる科目を選んで試驗するのが適当であるかということが問題になるわけでございますが、この試驗につきましては、この
法律
によつて設置を予定されております
司法試驗
管理
委員会
においてさらに御研究を願いまして、管理
委員会
に御
決定
をゆだねることが適当ではないか、こういうふうに考えた次第です。私どもの一應了解しておりますところでは、第一次試驗は、
從前
の試驗においてしばしば行われましたように、ただその科目を頭からまる覚えに覚えて、とにかく試驗場に行けば、その覚えた科目をそのまま紙の上に表現するといつたような試驗でなくして、その人自身にその教養の科目が身についておるかどうかということをテストするような試驗にしたいというふうな意向が、
一般
に人事院あたりでは考えられておるようでございまするし、大学基準協会においても同樣な考えのように承つておりますので、この第一次試驗につきましては総合的な、その人の身に体得されておりまするところの教養全般を合理的に試驗できるような、そのような試驗が
採用
されるだろう、こういうふうに予想いたしております。一見きわめて廣い範囲において試驗をいたすように見えまして、一体わずかの
期間
にこの全科目をいわゆる学識として理解できるかどうかということは、ずいぶん困難のことのように思いまするが、教養としてのテストというようなことは、前の人事院におきまする公務員の
採用
におきましても
採用
されておるようでございまするので、あるいは合理的に、しかも簡潔な方法によつてその試驗ができるのではなかろうか、そういう点につきまして管理
委員会
の研究、御
決定
に大きな期待を置いておる次第でございます。
松木弘
49
○松木委員 今の御
説明
ですと、いわゆる学術的というよりも、常識的な教養というふうにも
解釈
されるのでありますが、しかし廣く教養だといつて試驗されることも受驗者にとつてはずいぶん苦痛だろうと思います。あらかじめこれは公示するというような方法にしなければ、受驗者は非常に迷うのではないかと思う。ある一つのものについて論文をつくらせるというのでなく、廣くいろいろなものを出すということに
なつ
たなら、いろいろそれが受驗者をおびえさせることになると思います。それも一つであるし、管理委員がきめるということは、
法律
になくつたつてきめ得るのでありますかどうか、この点どうお考えですか。
岡咲恕一
50
○
岡咲
政府委員
もつともなお尋ねと拜承いたした次第でありまするが、第一次試驗は、第二次試驗を受けるのに適当な教養があるかどうかということを判定いたすことを
目的
といたしまするので、筆記の方法によつて行われまするけれども、それは必ずしも昨年まで行われました高等試驗の予備試驗のように、論文というふうな形にはならないのではないだろうかと、実は予想いたしております。それからその試驗の方法でございまするが、それはこの
法律案
の第十
七條
にございまするように、
司法試驗
の施行に関するような細則は、
司法試驗
管理
委員会
規則によつてこれを定めるということに
なつ
ておりますので、
法律
の委任に基きまして、管理
委員会
が第一次試驗の施行に関する細則を定めることができる次第でございます。
松木弘
51
○松木委員 ただいまの質問はこれでよろしゆうございます。
押谷富三
52
○押谷委員 今の問題に関連してでありますが、
司法試驗
の管理の機構であります。これを管理するのは
法務
廳でありまして、
法務
総裁のもとに、
司法試驗
管理
委員会
などがあるというように
なつ
ておりますが、その
理由
はどこにあるのでありますか。
岡咲恕一
53
○
岡咲
政府委員
從來
裁判所法
におきまして、
高等試驗司法科試驗
に関する
事項
は
政令
をもつて定めるということに
なつ
ておりまして、
裁判所法
施行後におきましても、司法科試驗は
政府
においてこれを管理いたして参つた次第でございます。そういう関係もございまするし、試驗というものの性質になる次第でございまするが、これを司法系統の行政
事務
といたすべきか、それとも
一般
の行政権の範囲の
事項
といたすべきかということに相なるかと思いますが、やはりこれは國家に対しまして責任を持ちまするところの内閣において管理いたしまして、その試驗の施行に対する全面的責任を何人かが負うというようなことが、より合理的であるというふうに考えまして、一應試驗の管理は、内閣の一員であるところの
法務
総裁がいたすということにいたした次第でございます。この点につきましては、この試驗に合格した者の大多数は、司法研修所に司法研修生として
採用
されるわけであるから、むしろ司法研修所を管理しておるところの
最高裁判所
において管理するのがより適当じやないかというような御
意見
でありまして、もつともな御
意見
と承る次第でありますが、
最高裁判所
において試驗を管理いたしますると、これは國家に対しては何らの責任を負わない、無答責な
事項
となる次第でございますので、われわれといたしましては、やはり試驗といたしましては内閣の所管
事項
として、國家に対して責任を負うということにいたした方が適当ではないか、こういうふうに考えてこの
法案
をつくつた次第でございます。しかし試驗は性質上なるべく嚴正公平に行われなければならぬ関係上、
法務
総裁がじかに試驗をいたしますことは好ましくございませんし、この試驗に合格した人の大
部分
は、將來
裁判官
あるいは
檢察官
、あるいは弁護士になられる次第でありまして、この試驗を管理すべき別個の機関を置くのが適当ではないか、しかもその機関は
裁判官
、
檢察官
、弁護士の代表によつて組織される一つの
委員会
、そういうものによつて嚴正公平に試驗
事務
を管理しい行く、ただその管理
委員会
の予算とか、あるいはそのほかの
事務
をどこで取扱うかということが問題になるわけでございまするが、それを
法務
総裁の方でおせわをする、しかし試驗自体は今申しました
裁判官
、弁護士、
檢察官
、その代表によつて組織されておるところの管理
委員会
が、試驗の実施の全責任をとるというふうにいたすのが、合理的ではないかと考えまして、十
二條
に
規定
いたしましたように、試驗に関する
事項
を管理させるために、
法務
総裁の所轄のもとに
司法試驗
管理
委員会
を置くというふうに案を定めた次第でございます。
押谷富三
54
○押谷委員 ただいまの御
説明
で了承できまするように、
司法試驗
に合格した人は、おおむね二年間司法研修所に入所せしめられる、そういう性質の試驗でありますから、その試驗は一面資格試験でありますが、他面において入所試験のようにも見られるのであつて、入所試驗という性格が相当強く感ぜられるのです。入所試驗であるならば、その研修所をあずかる方面において入所試驗をせられて、その方でこれを管理せられる方が便利である。しかもその試験の衝に当られる
委員会
の委員の組織も、大体
裁判所
側の人たちが、多いということになれば、その面からも
最高裁判所
の方におまかせになる方が便利がよいのじやないかと考えられますが、それが資格試驗であるか入所試驗であるかというような性格から見て、
最高裁判所
におまかせになるというようなお考えはないか、その点をお尋ねする次第であります。
岡咲恕一
55
○
岡咲
政府委員
司法試驗
に合格しました大
部分
の人々は司法研修所に入りまして、將來
裁判官
、
檢察官
、あるいは弁護士となられるであろうということは十分に予想されるのでありますが、この
司法試驗
は第
一條
にもございますように、
裁判官
、弁護士あるいは
檢察官
となるのに必要な学識及びその應用能力を持つておるかどうかということを試驗いたすのが眼目でございますので、この試驗に合格いたしましても、必ずしもただちに
最高裁判所
におかれまして、
司法修習生
として
採用
せられるかどうかということは、また別の問題になるのではなかろうかと考えられます。たとえて申しますと、非常に健康が弱いとか、そのほか諸般の事情によりまして、確かに学問なりあるいは應用の能力があるけれども、どうも將來弁護士あるいは
檢察官
あるいは
裁判官
にするのに不適当であるならば、
最高裁判所
においては
採用
せられないであらうと考えられます。そういう関係で、必ずしもこの試驗はただちに司法研修所の
採用
試驗というふうには言いかねる面があろうかと思います。それと、これは数においてはごく少いと思いますが、現在も高等試驗の司法科試驗に合格いたしまして研修所に入りまして、あるいは副
檢事
になり、あるいは
法務
廰の
事務
官に
なつ
た例もございます。近く
國会
において御審議になることと考えておりますが、
改正
弁護士
法案
によりますと、司法科試驗に合格しておりまして、ある
一定
の職に從事いたしますならば、
一定
の年限を経ますと弁護士たる資格を與えられるというふうな
改正規定
もございますので、必ずしもこの試験はただちに司法研修所と完全に結びつくということも言いかねるかと考えられますので、やはり一つの学術及びその應用能力の試驗、言いかえれば
法律
專門家たるの資格試驗といたしまして、むしろ行政部が管理いたすのが適当であろうかと考えまして、この案を提出いたしたような次第でございます。
押谷富三
56
○押谷委員 これは資格試驗であることは、大体その
條文
から承知をいたしておりますが、今の御
説明
によると、
司法試驗
に合格をした者で研修所に入りたいという場合において、これを研修所に入れることを許すかどうかということは、さらに
最高裁判所
において適当にきめ得る、選択をし得る余地があるのか、そういうようにも受取れるのでありますが、私どもの聞いておる範囲では、
司法試驗
に合格した人で、健康等に格別の支障があればこれは別でありますが、今の
法律
の知識であるとか、應用の能力であるとかいうような関係で一應これに合格しておる人は、
原則
として全部無
條件
でとるというのが本則のように、研修所の方では承つておるのであります。今の御
説明
では、試驗に合格しながらさらにそこに入ることのできないような、またほかの問題があるようにも考えられるのでありますが、一体その関係はどういうことに
なつ
ておりますか。
岡咲恕一
57
○
岡咲
政府委員
司法試驗
に合格をいたしました人々の大多数がおそらく
採用
されるであろうということは言われますけれども、少くともこの試驗におきましては、その受驗者の健康の試驗というものは全然いたしませんので、少くとも健康の点から
最高裁判所
の
採用
試驗に不合格になるという人は、もちろんあり得るだろうということは予想されるのであります。 それから今日御審議を煩わしました
裁判所法
の六十六條の
改正規定
にも、
司法修習生
は
司法試驗
に合格した者の中から、
最高裁判所
はこれを命ずるということに
なつ
ておりまして、試驗に合格することと
最高裁判所
の
司法修習生
の
採用
ということは、一應別のことということに
なつ
ておる次第であります。それからこれは將來に対する臆測でございまして、多少恐縮に存ずる次第でございまするが、一應この
法律
学の修習を終えた者が、自分が
法律
專門家としての学力を有しておるかどうかということをテストするためにこの試驗を受けて、そうして試驗には合格したけれども、必ずしも研修所に入りませんで、あるいは実業界とか、そのほかの各方面に活躍をするということも、私はあり得るのではないかと考えます。そうしてそういう人たちが、会社なり銀行なりに就職の際に、
法律
の最高試驗に合格しておるということが、その人の職域におきましても一つの
意味
を持つということもあり得るのではないかと思いますので、必ずしもこの試驗は、そのまま
司法修習生
の
採用
試驗ということに結びつけなくてもよいのでないかと考える次第であります。
押谷富三
58
○押谷委員 この点について、まあ理論的にそういうようなことは一應考えられますが、実際の問題として扱います場合においては、研修所の方では、
司法試驗
に合格した人は健康さえよければすべての人を收容して、そうして
裁判官
、
檢察官
、あるいは弁護士に育てる。そういう希望を持ち、そういう理想を持つていらつしやる。これは間違いのないことだろうと思います。おそらく
法務
廰の方においてもそういう考え方であると思いますが、これを一つの研修所の入所試驗のごとく取扱いたいという希望を私は承つて参つておるのでありますが、その点についての
裁判所
側の御
意見
をひとつ承りたいと思います。
内藤頼博
59
○内藤
説明
員
司法試驗
の管理の問題につきましては、実は
最高裁判所
は
法務
廳とはまつたく考え方を異にしておるのでございまして、先ほど
岡咲
政府委員
からも
説明
いたしましたように、
最高裁判所
の方では、やはり司法研修所を所管するところの
最高裁判所
がこの試驗も主管するのが当然であると考えておるのであります。御承知のように
國家公務員法
によつて
從來
の官吏
制度
がまつたく轉換されたわけでありまして、
從來
の高等試驗の
制度
もまつたく
廃止
されたわけであります。
法務
廳の提出されました今度の案によりますと、何か
從來
の高等試驗の性格を引継いでおるようなにおいが残つておるのでありまして、私どもの考え、
最高裁判所
の考えといたしましては、
司法試驗
の性格がまつたく
從來
の高等試驗とは異なるものだというふうに考えております。この
法案
の第
一條
を見ましても、一種の國家試驗であることはわかりますが、
司法試驗
の性格がはなはだ明確を欠いておるように思うのであります。これはやはりその点に思想的なはつきりした
整理
が出ていないため、こうした明確を欠いた
規定
に
なつ
ていると思います。御承知のように、今後
裁判官
、
檢察官
、弁護士となるためには、
司法修習生
として司法研修所において研修を受けなければならないことに
なつ
ております。そのために、
司法修習生
に
採用
する際に試驗を課する必要があるわけでありまして、そのために設けられた試驗がこの
司法試驗
でございます。要するにこれは
司法修習生
になるための試驗と観念さるべきものであると考えているのでありまして、先ほど
岡咲
政府委員
が御
説明
申し上げましたように、他の付随的な効果を生ずる場合はあります。この試驗を通ることによつてある資格が與えられる面はございます。しかしそれはどこまでも付随的な効果でありまして、その試驗の本來の性質としては、
司法修習生
になるための試驗であり、
司法修習生
は司法研修所において研修を受けることになるわけであります。
從つて
司法研修所を所轄する
最高裁判所
が試驗をも所管することによつて、その間の運用が最も合理的に働くように考えておるわけであります。
押谷富三
60
○押谷委員
裁判所
の大体の御
意見
を承
つたの
でありますが、
法務
廳の考え方と
最高裁判所
の方面の考え方とが、さように大きな食い違いがありまして、この管轄については共に希望しておられるが、見解は全然正反対の答えが出ておるのであります。修習生を研修所に入れ、その研修所は
最高裁判所
がこれを所管していらつしやることは間違いないのであります。また
司法試驗
に合格した人は、希望すれば
司法修習生
として研修所に入り得る資格があり、國家もまたでき得る限りこれを收容しなければならぬ。そうすると、その收容の能力であるとかいろいろな関係から、人員等も、研修所の方面、言いかえればそれを管理する
最高裁判所
の方面においても一つの希望を持ち、將來これに対する管理もせられるわけでありますが、それを試驗する方は
法務
廳であり、合格者に向つての修習関係は
最高裁判所
であるとするならば、この二つの連絡は一体どういうような方法でおとりになるのか。この関係をひとつ聞いておきたいと思います。
岡咲恕一
61
○
岡咲
政府委員
試驗の管理につきましては先ほども申し上げましたように、
司法試驗
管理
委員会
というものが設けられることに
なつ
ております。しかもこの管理
委員会
は
最高裁判所
の
事務
総長、それから弁護士を代表する者、
法務
廳の官房長、この三人によつて構成されるという関係に
なつ
ておりますので、たとえて申しますと、來年度は
司法修習生
として
裁判所
側では百人の人が必要である。
法務
廳といたしましては
檢事
として八十人が必要であるということになりますと、おそらく管理
委員会
にその希望を申し述べられるだろうと考えます。そうして管理
委員会
におきましてその数を調整いたしますと同時に、各年度にわたりまして試驗の
採用
の基準があまりに動くということは、試驗の公正あるいは永久性から考えまして問題でございましようから、その具体的な人事の方の要求を一方においては勘考しつつ、なお試験の
一定
のスタンダードというものを確立する見地から、管理
委員会
はやはり適当に試驗を管理して、適当に試驗の合格者を定めるということになるのであります。
押谷富三
62
○押谷委員 今の御
説明
によると、管理
委員会
において合格者の数をきめる等の場合においては、研修所の
意見
等をよく参酌して確定するというようなお話でありますが、こうなるとその試驗の性質は、まさに入所選拔試驗のようにも
なつ
て参りまして、まつたく資格試驗であるという性格を失うのであります。資格試験ならば、研修所の收容力、あるいは國家の希望する数とは関係なしに、
一定
の法学の力があり應用の能力があるかどうかだけをきめるのですから、あるいは少い場合もあり、あるいは非常に多い場合もあるわけでありまして、
一定
の資格さえあつたならばみんな合格するということになります。ところが今の御
説明
のように、やはり
裁判所
側の
意見
を相当この
委員会
において勘案してその人員等もきめる、こういうことになるならば、りくつは資格試驗ではございましようが、この実体はやはり入所選拔試驗であるという性質が濃厚になります。こういう関係にある
司法試驗
に対して、國家の最高の機関である
法務
廳と
最高裁判所
との間において、管轄爭いをするということもおもしろくないと思いますが、きれいさつぱりこれを
最高裁判所
の方におまかせに
なつ
たらどうなんですか。私はそういうようにして、面目維持も面子も考えずにさつぱりやつてもらつた方がいいと考えるのですが、その点だけ
最後
に聞いておきます。
岡咲恕一
63
○
岡咲
政府委員
ただいまの私のお答えが十分でございませんために、多少誤解をお招きしたかと考えるのでありまするが、試驗はあくまでも
一定
の基準に基いて公正に行われるだろうということを、十分予想しております。ただその試驗に合格した人の大
部分
はおそらく研修所にお入りになる。そうして研修所にお入りになる関係を考えますと、
法務
廳である程度の
檢事
が必要である。あるいは
最高裁判所
におかれましてある程度の判事を要求される。そういうことを多少勘案いたしまして、あるいは合格者の数が
決定
されることもあり得るであろうという限度で参りましたので、試驗はなるべく嚴正な基準を経持しつつ行われるであろうということを私は考えておりますが、これは私の一つの見通しでありますので、管理
委員会
がどういう方針でおきめになりますか、それは
委員会
が御
決定
になると思います。但しそのときの人事の必要だけで、ある年にはごくわずかとる、ある年には水増しをして、必ずしも質はよくないけれども多勢の者を合格せしめるということはなさないであろう。これは私はかたく信じておる次第であります。 なおこの試驗管理
委員会
をどこの所轄にするかという問題につきましては、先ほど申し上げましたように、やはり
國会
に対して責任を負う内閣の一員である
法務
総裁が管理することが適当ではないか。廣く申し上げますと、行政権に属する一機構であると考えられますので、なるべく國家に対して責任を負う内閣の所管のもとに立つ方が適当であろうと思つて、この案をつくつたわけでありますが、
最高裁判所
で御主張になる点もきわめてごもつともな点が多うございますので、私としてはこれは
國会
においてしかるべく御
決定
していただいてさしつかえないと考えておりまするが、
法務
廳の官房長も
政府委員
として出席いたしておりますので、その点につきましてはいずれ官房長からもお答え申し上げたいと思います。
上村進
64
○上村委員 この
司法試驗
の科目の問題ですが、私どもが
司法試驗
に対して希望するものは、
法律
の技術家を養成するのではなくして、國家の司法権、
裁判
、檢察、弁護というような、
法律
運用の重要な面を担当する日本の
司法試驗
なのであります。しかるにこの第
一條
を見ますると、「
司法試驗
は、
法律
專門家として必要な学識及びその應用能力を有するかどうかを判定することを
目的
とする國家試驗とする」と
なつ
ておるのですが、この
法律
專門家というのはどういう
意味
のものでありますか、どうもこれは
法律
技術家のように考えられる。
從つて
その結果として、ここに現われたところの科目を見ますと、第六條に、憲法、
民法
、
刑法
、
民事訴訟法
、
刑事訴訟法
というのが必須科目に
なつ
ておる。それから六項において、第一次選択科目として商法、行政法。七項において、第二次選択科目として商法、行政法、破産法、労働法、國際私法、刑事政策、こういうふうにありますが、これはまつたく
法律
技術家を養成し、試驗するにはこれでむろんいいと思うし、それから
裁判官
、
檢事
、弁護士を養成するにもこれは必要でございますが、
裁判官
や
檢事
、弁護士に必要なものは、
法律
の技術ではなくて、その
裁判
の社会化、あるいは民主化、公正化という点にあるのでありまするから、どうしても必須科目の中に、そういう
裁判
をするについて必要な
法律
以外の学問、すなわち現在で言うならば、経済学、あるいは社会学、あるいは國家学、あるいは心理学、倫理というようなものが最も重要な
部分
を占めるようにして、そうして人材の登用をしなければならぬ。今までの日本の司法官が非難を受けたのは、
法律
は知つておるけれども非常識で、化石化した
裁判
をして、社会とかけ離れた
解釈
をしたり、
法律
一点張りの
解釈
をしたりして、
裁判
の威信というものが
國民
から離れて行つたということを、われわれは過去の浅い
経驗
において知つておるのであります。ことに日本の憲法が三権分立になりまして、日本の司法官は政治を監督する——
法律
を擁護し憲法を擁護するという重大な使命を持つところの
裁判官
、
檢察官
、弁護士というものに
なつ
て來ておる以上は、なおさらその試驗科目として、
法律
の木の葉をかむような、甘みも何もないような試驗科目で人材を試驗するということは、非常に間違つておるのではないかと私は思う。どうしても
裁判官
、
檢察官
、弁護士として、そのときどきの社会に、死した
法律
を、枯れた
法律
を生き生きと非常に情味あらしむべき
解釈
をするには、その
檢事
、その
裁判官
、その弁護士に、豊富なる社会的、思想的あるいは人情的なものを持つていなければならないと思うのであります。そういう
意味
におきまして、どうしてそういう科目をこの必須科目の中に入れなかつたかということを私はここで質問すると同時に、希望をしておきますが、少くとも経済学、社会学というものは、いわゆる國家の高等官になり、國家の重要な一面を担当するこの人材登用の試驗には入れなければならないと思うのです。この点において、原案は旧態依然たるものがある。そしてこれによつて試驗される人は、どんなにその試驗官が何しようとも、その人の頭はまことに空疎な、片ちんばな学問で試驗されて、
裁判官
、
檢事
、弁護士に
なつ
て行く。その結果というものは推して知るべき
法律
運用が現われて來る、こういうことになろうと思うのであります。その中に入れなかつた
理由
がほかにあればよろしい。私は
法律
だけでは人間は完全なものではないと思う。特に日本の複雜な、ことに世界情勢がこういうふうに
なつ
て來ておる。こういうときの日本の
法律
——たくさんのいろいろな
法律
が出ておりますが、その
法律
を
解釈
するということもなかなか困難だから、
法律
学の要求も当然でありますが、それだけではとうてい日本の將來の國家、
國民
を指導することはできないと思う。その
意味
におきまして、司法科であるから
法律
だけでいいということは間違つた考えで、どうしてもこの際、試驗科目の中に必須科目として、少くとも経済学、社会学、こういうものを入れ、選択科目の中にも、きわめて必要な社会の要求しておる学問、こういうものを入れるべきであろうと思うのですが、それ以外に
理由
があつてや
つたの
であるか、その点をお伺いしたいと思います。
岡咲恕一
65
○
岡咲
政府委員
上村委員のお尋ねは、きわめてごもつともと拜承いたしたのでございます。上村委員のようなお考えになりまして、おそらく元の高等試驗、司法科試驗の学科目が選ばれていたかと考えるのでありますが、必ずしも元の高等試驗の実績を見ますというと、御期待に沿うような結果も生れていなか
つたの
ではないかと思います。御存じのように元の高等試驗におきましては、非常に必須科目が少くございまして、経済学はもとよりのこと、社会政策とか、あるいは宗教学、倫理学、哲学、心理学、あるいはたしか漢文もあつたと思いますが、非常に廣い範囲において選択科目は選ばれるというような仕組みに
なつ
てお
つたの
ですが、それを実際に行つて参りますと、必ずしも上村委員の御期待に
なつ
たような結果は生れて参らなか
つたの
ではないかと考えております。この度の試驗法を考えるにつきましては、
從來
のそういう点の
経驗
も十分しんしやくいたしまして、まず第一次試驗といたしまして、今上村委員から御指摘になりました純粹の
法律
学の試驗をいたしますのに適当な
一般
的な学力、あるいは教養を備えておるかどうかという点を、第一次試驗でテストをいたすわけでございまして、この第一次試驗は、大学基準協会の基準によりますと人文科学関係、社会科学関係のみならず、さらに自然科学関係につきましても、非常に廣い範囲における学科目が選ばれておるわけでありまして、これを必ずしも学問的な見地でテストはいたさないと思いますけれども、いやしくも社会人として、あるいは政治家として、あるいは
法律
家として社会に活動するのに少くとも必要とされる基本的な学問というものを、身につけるということを前提要件と考えておる次第でございます。
從つて
この第一次試驗に合格した者の中からさらに試驗いたすとすると、やはりこれは経済学あるいは社会政策、あるいは國家学というものを選ばせますよりも、すでにここに選んでおる科目だけでも受驗生にとつては非常に負担が重くはないかと考えておる次第でございますが、むしろ純粹的に
法律
的な研究という方に限定した方がよろしいのではないかと考える次第です。 その第二点といたしましては、なるほど
從來
の
法律
学は、主として
解釈
的な学問に片寄り過ぎていたのではないかと考えまするが、これからの
法律
は、たとえば憲法にいたしましても、
刑法
にいたしましても、あるいは
民法
にいたしましても、ただ單に
法律
の
條文
をただ
説明
する、あるいは
解釈
するというのでは足りませんで、その根底にまでさかのぼりますと、必ずその社会的な関係、あるいは政治的な関係、あるいは歴史、そういうものなども深くきわめませんと、
民法
の一つの
條文
、たとえばわれわれは生れながらにして権利能力を有するのだという一つの
條文
すら、眞実の
意味
を理解することは困難ではないかと思うのであります。いわんや憲法の各條章を徹底的に理解いたしますためには、ただ單に
從來
のように
法律
の
解釈
だけをやつてお
つたの
では足りませんで、人間の歴史の根底にまでさかのぼつて深く研鑽を積みませんと、ほんとうの正しい憲法の
解釈
はできないのではないかと思います。こういうふうに、
法律
学そのもののつかみ方をかえて見ますれば、私はこの
法律
だけでも人間としての識見とか、歴史とか、政治とか、社会とか、経済とかに対する理解というものを、十分テストし得るのではないかと考えております。それが第一。 もう一点は、なるほどこの試驗では、ただ單に
法律
学の学問的な試驗しかできないと、かりに仮定いたしましても、弁護士あるいは
裁判官
、
檢察官
になりますためには、司法研修所へ入りまして、研修を受けるということが必須の要件に
なつ
ている次第でございます。私は研修所の教育というものに非常に大きな期待を、ことに將來にはつないでおる次第でございまして、この研修所において徹底的に、今上村委員の御指摘になりました方面についても、研修生の目を開いて行く、あるいは研究の基礎をつくつてやるということをいたしますならば、上村委員の御心配になるような点は、將來は絶対に起り得ないだろう、こういうふうに考えております。
上村進
66
○上村委員
趣旨
はよくわかりました。
趣旨
はわかりましたが、
民法
、
刑法
、
刑事訴訟法
、
民事訴訟法
、憲法というものを数えただけでは、これはどんなにあなたが
説明
しましても、経済学はやはりわからぬのです。今日われわれにほんとうに必要なのは、社会生活をしておる以上社会学だと思う。この
原則
もこの科目ではよくわからないのです。ですからそれは出てから勉強すればいいじやないかと言えば、それはそうですけれども、やわりわれわれも
経驗
しておりますが、試驗を通つてしまえばあとは勉強しない。ですからやはり試驗をするときに勉強するように要求しておけば、学生なり研修生なりがうんと勉強する。それが基礎に
なつ
てだんだん勉強するのですが、この試驗科目では、御
説明
の
趣旨
はわかりますけれども、経済学の理論は出て來ない。社会学の理論もいいかげんなものであるというふうに考えますから、今の御答弁はせつかくでありますが、それだけでは納得できませんので、やはり試驗をする以上は、経済学、社会学というようなものは、司法官になるには必ずいるというふうに、本試驗の中には入れた方がいいのではないかと思うのです。 それから口述試驗の点ですが、この
法案
によりますと、これも二重に
なつ
ているわけです。筆記試驗について合格した者に、憲法、
民法
、
刑法
、
民事訴訟法
、
刑事訴訟法等
、二重のことをやつておるわけです。これはあまり
意味
をなさぬのでありまして、この口述試驗について何か人間的な、社会的な、そういつた科目でもあればいいのですが、必須科目とまつたく重複しているのです。筆記試驗でやつたことをまた口述試驗でやる。この点で何か調節できると思う。私も試驗では苦労して、よく知つておりますが、ただ高等試驗で知識だけを試驗して、人格の試驗というものは実際できないのです。この人間がどんな特性を持つておるか、どういう度胸を持つておるかということは、この筆記試驗と口述試驗と二度通つても、やはり
法律
の試驗しかできない。この知識だけが人材でもないし、人物でもないのでありますから、これらの点について何か適当な方法を講ずるというお考えはないでしようか、それをお伺いしたいと思います。
岡咲恕一
67
○
岡咲
政府委員
試驗科目の経済学を選ばないと、経済学の根本的な理論というものを学生はなかなか理解しないだろう、のみならず、よき
法律
家になるためには、経済学の基本理念というものについても、
法律
と同樣によく通じるべきであるというような御
意見
は、一應ごもつともと考えるのでありまするが、重ねて申し上げて恐縮でございまするが、経済学あるいは政治学、心理学、教育学、歴史学といつたようなものは、
一般
教養科目の中に掲げられておりまして、その点につきましては、第一次試驗において一應テストされるという建前をとつておりますので、この上さらに
法律
の專門家となるための特別な経済的理論を試驗に課さなければならないというようには、むしろ考えませんで、あるいはこの点は、結局において上村委員と見解を異にしたと言わなければならないかもしれませんが、試驗科目の中には
採用
いたさなかつた次第でございます。 それから、なるほど経済学そのものの基本的理論というものは、直接の試驗はないかと考えるのでありますけれども、あるいは憲法、
民法
、
刑法
、商法というふうな学科は、必ず経済あるいは社会というものに対する、相当高度の理解がなければ、この試驗に通ることはできないだろう、私はこういうふうに考えますので、一應試驗の科目はここに書いてありますような、純粹な
法律
学に限定いたしてもさしつかえないのではないかと考えた次第でございます。 その次にこの口述試驗は、大体筆記試驗と重複いたすような関係でございまするが、筆記試驗によるテストだけでは、やはり不十分な点がございますので、口述試驗を加えた次第でございます。また受驗生の方からいたしますと、筆記試驗に必ずしも十分の成績を收め得なくても、また口述の機会がありまして、さらに不十分な点を補つて、完全なものにいたすことできるわけでございますから、重ねた方が、試驗の適正、正確をはかる上において好ましいのではないかと考えた次第であります。 その次の人物試驗についてのお尋ねでございまするが、これはどうも試驗の性質上、嚴格な人物試驗というものは、ただ一回の面談ということでは、なかなかできがたいもののように考えまするし、この試驗はそこまでを要求いたしておりませんで、一應專門の学識と應用能力があるかどうかという点だけを判定いたす試驗と、こういうふうにこの試驗は御了解願いたいと考えます。その人物が將來司法官として適当でないかどうかというような点につきましては、
最高裁判所
が研修所に研修生として
採用
せられるときの試驗において、十分テストなさるであろうと思いまするから、その
採用
試驗と、二年間の研修
期間
というものによりまして、理想的な司法官、あるいは弁護士たるべき素質をそこで練磨して、完全なものに教育していただくという方向が正しいのではないか、この試驗におきまして人物試驗というようなものを行うことは、むしろ好ましくないのではないか、かように考える次第であります。
鍛冶良作
68
○鍛冶委員 試驗の
事務
取扱いについて、
法務
廳と
最高裁判所
と
意見
が違いますが、私はそれについて、根本的にわれわれの考えなければならぬ問題があると思います。一体この
司法試驗
というものは、今上村委員が言われた通り、
法律
家としての高等常識を備えておるかどうかということの試驗が根本だと思います。してみれば、
裁判官
だけをつかさどつておる
最高裁判所
、その中の一つだけ、
檢察官
だけをつかさとつておる
法務
廳、いずれにいたしても私は不適当ではないかと思う。弁護士というものがある。ことにわれわれは法曹一元の理論から言いますと、すべて一應弁護士にして、それから適当な者を
裁判官
なり
檢察官
なりに
採用
するのがよろしいと私は考えておる。またこの
委員会
において一昨年以來、その議論はもう私は結論に達しておつたと思うのです。さように考えてみますと、現在これを
法務
廳でやらなければならぬの、
最高裁判所
でやらなければならぬのということが、すでにわれわれの考えと違うように思うのであります。これについて
法務
廳の
意見
をあらためて承りたいと思います。
佐藤藤佐
69
○佐藤(藤)
政府委員
ただいま御質問の御
趣旨
はまことにごもつともに存ずるのであります。將來
裁判官
となる者、また將來
檢察官
となる者、また將來弁護士になる者、それらの者が大
部分
でありまして、そのほかにも先ほど申し上げましたように、副
檢事
となる資格も得られるのでありますが、そういう
法律
專門家としての資格を得る試驗でありますから、それを一
裁判所
、一
法務
廳で取扱うということは、いかにも大きすぎるような感じがいたすのであります。しからばどこでそれを管理するかということになりますと、どうしてもこの資格試驗に合格した者の大
部分
が將來の志望を持つておる
裁判官
、検驗官それから弁護士、そういう三者の代表者が試驗を管理するというのが一番適当であろう、こういう考えから私どもはこの案において、試驗管理
委員会
というものを組織しまして、この管理
委員会
で試驗の行政をつかさどる。ただその試驗の行政について、最高の責任者として行政のおせわをするのはどこにしようかということについて、
最高裁判所
と
法務
廳との間に
意見
の食い違いができたのであります。私どもとしましては、かような行政についての責任を負うものは、どこまでも國務大臣が議会に対して責任を負うという仕組みの方が一番適当ではないか。いかに試驗であつても、その試驗が公正に行われるということは予想されますけれども、その試驗は純然たる行政であります。その行政について何ら責任を負わない
裁判所
が、そういう行政について最高の責任任と
なつ
て管理するということは適当でないのではないか。こういう考えを持つておるのであります。行政のおせわをするのは
政府
で、その試驗は試驗管理
委員会
、
裁判所
、
法務
廳及び弁護士会の代表者からなる試驗管理
委員会
で試驗を行う、こういう仕組みを考えたのであります。
鍛冶良作
70
○鍛冶委員 ただいまの御
説明
でお考えはわかりましたし、一應うなずかれるのですが、それと同時に考えなければならぬのは、管理
委員会
は三者でありましたが、司法修習をするところを
最高裁判所
に置かなければならぬという
理由
は成立ちましようか。この点に対する
法務
廳の御見解をお伺いしたい。
佐藤藤佐
71
○佐藤(藤)
政府委員
司法試驗
に合格した者の中から、
最高裁判所
が適当な者を適当な人員だけ司法研修所に入所せしめまして、すなわち
採用
して、
司法修習生
として二年間の指導訓練を施しておるのでありまするが、この
司法修習生
の中には、お説のように將來
裁判官
または
檢察官
、または弁護士等となる志望の三者が、司法研修所の一堂に会して教育を受けるのであります。この司法研修所を、しからばどこでさような行政を管理する方が適当かという問題は、先般憲法の
改正
に伴つてすべての
制度
が改革せられました当時、司法行政審議会というものができまして、その審議会において相当論ぜられたのであります。司法研修所は
裁判所
の管理にすべきか、あるいは司法省の管理にすべきかというようなことが非常に爭われたのでありまして、このときも相当議論が対立しておりました。結局多数決によつて
最高裁判所
の管轄ということに相な
つたの
であります。かような現状ではありまするけれども、その研修所に入所しておる者は、
裁判官
になる者に限らない。將來
檢察官
になる者も含まれており、また弁護士になろうという人も含まれておるのでありまして、この三者を研修せしむるのに司法研修所という施設があります。その機関はどこで管理するかということは、また別個に考えなければならぬ問題であると思うのであります。現在その三者を包括して研修所を管理する適当な機関が別にありませんので、今のところは
最高裁判所
にゆだねておるのでありまするが、その研修所の管理を
裁判所
にゆだねておるから、それに関連する試驗もゆだねる。あるいは試驗を受けるのに学校教育を受けた者でなければならぬからといつて、学校教育までも負わせる。そういうような関連性で、すべての行政をだんだん
裁判所
の管掌に移すということは、私は將來の
裁判所
の行き方としてあまり好ましくないのじやないか。
裁判所
はどこまでも司法権をつかさどる所として、なるべく純粹に司法部面に立つべきものであつて、その司法権を適正に行うために、必要な最小限度の行政がゆだねらるべきものである。その行政については、もちろん
國会
に対して責任はないのでありますから、あまりに行政
事務
の範囲を廣げるべきものではない。かような考えを持つておりまするので、將來もし司法研修所をつかさどるのに、
裁判所
以外に適当な組織が考えられるならば、さような組織にやはり研修所の管理もゆだねる方が適当ではないかというような考えを持つております。
鍛冶良作
72
○鍛冶委員 今日の議論と過去の議論というものを聞いておりますと、現在研修所が
裁判所
にある。そうすると研修所でいろいろなことをやるから、その試驗の管理は
裁判所
でよろしい、やらせればいいじやないかという議論であります。ところがそれに対して重大な疑問を持つておる。一体研修所は
裁判所
に置くのが本則なのか。いいのか。これをあなた方に聞きたい。これは何べんも私くどく申し上げたが、もつと言つてみると、
法務
廳において眞に法曹一元を実現しようとする熱意があるかということに
なつ
て來るのであります。われわれはほんとうに法曹一元を実現しようとするならば、
司法修習生
は修習を終えたら、ただ單なる
法律
家とすべきものであつて、修習を終えると同時に、これは
裁判官
、これは
檢察官
とするという色をつけて行くべきものではない。
法律
家としてこれを見るべきものである。そうして見るならば、だれも
法律
家のプールである弁護士会に入れておいて、
一定
の年限修習させた結果、これは
裁判官
に適当、これは
檢察官
に適当、そうするのでなかつたら、十年とか五年とかいう制限は私は無
意味
なものだと思つております。その見解からいたしまして、研修所を
裁判所
に置くことは私は不條理だと思いますが、これに対する
法務
廳の御見解を承りたい。これは去年からもうすでにここで
決定
して、鈴木
法務
総裁はこれに向つてどこまでもやるという言質を與えておられるのですが、今日現実しておられなんで、そうしてこの枝葉の試驗の問題で爭つておることは、まことに私は不可解だと思いますから、まず私は
法務
廳のこれに対する御見解を承りたいと思います。
佐藤藤佐
73
○佐藤(藤)
政府委員
現在の
裁判所法
並びに今度の
國会
に提出せらるべき弁護士法の
改正
等は、いずれも法曹一元を目ざしておるものと私どもは考えておるのでありまして、
法務
廳といたしましても、もちろん法曹一元を目ざしておる。その現われとして、ここに
司法修習生
という
制度
を設けたのであります。將來
裁判官
、
檢察官
、弁護士になる者が一堂に会して研修し、二年間の研修を終えてからのちに、それぞれの希望の分野に進んで行く、こういう組織にいたしたのでありますが、お説のように二年間の修習を終えた者が、ただちに
檢察官
、あるいは判事補とならないで、全部
一定
の
期間
弁護士となり、
法律
を研究し、また識見を高める、その上で
檢察官
なりあるいは
裁判官
になるような
制度
を考えたらどうかという仰せでありますが、私はさようなお説に対してまつたく賛同を表したいのであります。
法務
廳全体の
意見
としてはまだまとまつておりませんけれども、前鈴木
法務
総裁の時代にも
國会
において申し述べましたように、さような
裁判官
となる資格について、また
制度
についてさらに檢討して、新しい
裁判官
または
檢察官
の資格を定め、新しい
制度
を打立てるために、
法務
廳並びに
最高裁判所
、
檢察廳
、弁護士会の代表者等が寄り集まりまして、ここに新しい司法
制度
を樹立すべく研究をしようということを、鈴木総裁がお約束なされたのでありますが、その後
最高裁判所
が主宰になりまして、
法務
総裁、
檢事
総長、それから弁護士会の代表者等が寄り寄り集まりまして、たびたび懇談をいたしておるのでありまするが、まだその新しい
制度
について具体案ができておらないので、ここに申し上げる程度には進んでおりませんけれども、みんなの考え方が新憲法に伴つてこの新しい
裁判所法
、
檢察廳法
が施行されておるけれども、さらにこの実績にかんがみて、
裁判官
、
檢察官
の資格を定めると同時に、新しい司法
制度
を考えようじやないかという氣持には一致いたしておるのであります。いずれ何らかの具体的な成案が出ることを期待いたしておる次第でございます。
鍛冶良作
74
○鍛冶委員
法務
廳の御見解としてはその程度でやむを得ないかもしれませんが、これはいい機会ですから、
裁判所
からもおいでに
なつ
ておりますから伺いたいが、先ほどの私の質問はお聞きの通りと思います。これに対する
裁判所
の御見解をお願いしたいと思います。もう一ぺん要約はて申しますると、法曹一元ということに御賛成なのかどうか、その前提として、司法研修所が
裁判所
にあるのは適当とお考えに
なつ
ておるか、それとも何かやろうとお考えになるか、その点伺いたいと思います。
内藤頼博
75
○内藤
説明
員 鍛冶委員の御質問に対してお答えを申し上げます。
最高裁判所
といたしましては、
裁判官
、
檢察官
、弁護士たる人を養成するための修習は、これはやはり最も基礎になるものは弁護士たる資格という点におかれておると存じます。從いましてその研修機関は弁護士会、いわば日本弁護士連合会というようなところでその研修を主管されることが最も好ましいことと存じます。しかしながら現在まだ弁護士法の
改正
がその途中にございまして、そういつたものを主管するまで連合体の方もできておりませんので、現在の法制のもとにおきましては、
最高裁判所
が所管いたしますことが最も適当だというふうに考えております。法曹一元につきましては、私もまつたく先ほどの佐藤
政府委員
のお答えと御同樣に感じております。
鍛冶良作
76
○鍛冶委員 それはまことにわれわれも、多年の主張に御同感であることを喜ぶのであります。弁護士法も遠からず通過するものと確信いたしております。そうすればこの通過の際に、ぜひともこれは三者の
意見
の一致なんですからやつてもらわなければならぬ。あるいは弁護士会の今の状態ではいかぬではないかという御議論もあると思いますが、いかぬのならいくようにやつてもらえばよいので、弁護士会連合会もできまして、どうあつてもそれをやつてもらはなくては眞の法曹一元化はできない。さように考えてみますと、現在の司法修習ということは、これは過渡期の一時的方法だと思います。そうしてみると、どうもどこでやろうとそれほどここで筋ばつて言うほどのものじやないと思う。願わくばそんなことよりか、一時でも早く眞に法曹一元の
制度
を確立するように、修習は弁護士会でやる、そうして修習したものは皆弁護士にしておく。弁護士として、高尚なる
法律
家としての眞の修養を積んで、その上で五年たつたら
檢事
になり、十年たつたら
裁判官
になる。これへ進んでやつてもらいたいと思うのです。ところがどうも過去の実情を見ますると、そうはおつしやるが、これははなはだ失礼な臆測かもしれませんが、どうも
裁判所
は
裁判官
の養成所、
法務
廳は
檢察官
の養成所、そうしてできるものなら成績のいい者を
裁判官
、その次を
檢察官
にして、残りを弁護士にしよう。われわれにはこういうにおいがしてなりません。これではどれだけたつても法曹一元の実は上らぬだけでない。法曹一元などということはどうでもいいが、わが日本の司法というものの全体の向上は望めませんと私は断言いたします。そうでないかどうか、これははなはだ失礼かもしれませんが、ついでだから承つておきたい。そうでないのなら、こんなことなんかいらない問題である。一日も早く根本へさかのぼつてやつてもらいたいということをお聞きしたいのですが、いかがでしようか、
裁判所
に一つ聞きたいのです。
内藤頼博
77
○内藤
説明
員 ごもつともな御見解と存じます。今の法制のままでも
裁判官
、あるいは
檢察官
に弁護士の方がおなりになる道は十分開けておるわけであります。ただそれが実現しないのは、実はいろいろな事情があることと存じます。
裁判官
、
檢察官
の
職務
の性格もございましよう。また経済的な問題もございましよう。そういつた障害がおいおい除かれて、ただいま鍛冶委員のおつしやつたような法曹一元という理想がおいおい実現されて行くものと考えております。私どもまたその方向に向つてできるだけの努力をいたしたいと考えております。
鍛冶良作
78
○鍛冶委員 おいおいじやないのです。今のように試驗をして、そうしてその中から
裁判官
をとる、
檢察官
をとる、残りを弁護士にする。これだからできないのです。全部弁護士にしておいて、その中からとつてごらんなさい。問題はないのです。これは何十年來言うことだが、どうしてもおやりにならぬ。私はこの憲法の
改正
せられたるとき、今新しい弁護士法の通ろうとするとき、このときに改革しなかつたら改革するときはないと思うから私は申し上げるのです。だからやるお氣持があるならばこの際やらなければならぬと思うが、それでも相かわらず、このような今の
制度
で
裁判官
をとつて行く、
檢察官
をとつて行く、残りを弁護士にする。こういう御見解はわれわれとは根本的に違うから、伺つておきたい。今の
制度
ではできないのはあたりまえです。だから根本においてそういうお氣持があるのかどうかをお聞きしたい。
裁判所
に伺う機会がなかつたから、ただいまお聞きするのです。
内藤頼博
79
○内藤
説明
員 根本において鍛冶委員の仰せの通りと存じます。ただ何と申しまするか、
司法修習生
なら司法修習を、二回試驗が終りましたときに、現在の法制のもとにやはり必要な人数だけの
裁判官
、必要な人数の
檢察官
を
採用
するということはあるわけであります。その際に弁護士を志望している人をむりに
裁判官
に任命する、
檢察官
に任命するということはあり得ないわけでございまして、結局現在弁護士でおられる方が
裁判官
になり、あるいは
檢察官
になる志望の方が多くなれば、
裁判官
、
檢察官
はそれによつて補充されて行くし、また試驗に合格したものが多く弁護士を志望するということによつて、ただいまお話のような
裁判官
をまずとる、あるいは
檢察官
をとるというような状態がなく
なつ
て來るものと存じます。これは今後の
裁判官
、
檢察官
というもののあり方、あるいは弁護士のあり方というものによつておのずから解決されて行くものだと思います。さように考えております。
小玉治行
80
○小玉委員 この
司法試驗法案
によりますると、試驗の管理は
法務
廳でやられる。しかし試驗は試驗管理委員によつてやられるとありますがどうですか。こまかいことのようでありますが、試驗に合格した合格証書は
法務
総裁の名義でお出しになるお考えですか。あるいはその管理
委員会
の
委員長
と申しますか、その名前でお出しになる考えですか、ちよつと承りたいと思います。
岡咲恕一
81
○
岡咲
政府委員
小玉委員のお尋ねにお答えいたします。試驗の管理は試驗管理
委員会
がいたしまするが、最高の責任者は
法務
総裁であります関係上、試驗証書は
法務
総裁の名義によつて発行されるものと考えております。
小玉治行
82
○小玉委員 そういたしますると、私はこの試驗の管理を
法務
廳がつかさどられるという点については、いろいろ考えてみなければならぬ点があるのではないかと思います。將來
裁判官
になられる第一の出発点の合格証書というものが、
法務
総裁の名をもつてやられるというのは、將來司法の独立という点から考えまして、すでに出発点のときから形式的にもさしさわりがあるのではないか。將來
裁判官
になるその第一歩において、やはり
檢察廳
の親玉でありますところの
法務
総裁から、いわゆるお墨付をもらつておるということは、將來いろいろな点で司法の不覊独立という点について、はなはだ感情的にも、また政治的にもさしさわりがあるのではないか。何とかそこは不覊独立の見地から、合格証書を出されるというふうにお考えに
なつ
てはいかがでありますか。かように思つておりますが、その点についてお見解を承りたい。
鍛冶良作
83
○鍛冶委員 ちよつと関連してお考えを願いたいと思いますが、過去において試驗は全部司法省でやられておるが、試驗
委員長
はほかから出たと思います。これはよほどお考えに
なつ
ておやりにならないといかぬ。
法務
廳でやるから
法務
総裁でなければならぬというものではなかろうと思います。
小玉治行
84
○小玉委員 今鍛冶委員の仰せられたように、以前は内閣の法制局長官でございますが、試驗
委員長
になられまして、それからわれわれはもらつた。そうなりまするとさらに根本に立入りまして、この試驗の管理を元の内閣と申しまするか、今では総理廳と
なつ
ておりますが、この総理廳あたりの所管にするということがあるいは一番所を得るのじやないかと考えております。総理廳がいかなる機構であるかということを私はつまびらかにしておりませんが、もしさようなことができますると、試驗の合格証書は総理廳あたりから出すということにすることが最も無難ではなかろうか。これを
最高裁判所
長官が出されることも、また
檢察廳
においていろいろお考えもあるでしようし、また
法務
総裁から出されることもさしさわりがあるだろう。また管理
委員長
は何も行政的の責任は持たないので、そこから出すことも感心すべきことではないと思います。総理廳あたりに試驗を管理さして、そこからしかるべき
委員長
が出て、合格証書をやるというふうに案の御構想を練られていただくことがいいと思うのでございます。その点についても重ねてひとつ御
説明
を願いたいと思います。
岡咲恕一
85
○
岡咲
政府委員
ただいま試驗証書の名義につきましてお答え申し上げましたのでありますが、
法務
総裁の名前による試驗証書ではなくて、この
條文
をしさいに檢討いたしますと、むしろ
司法試驗
管理
委員長
の名義による証書が発行せられて行くのではないかと
解釈
する方が適当ではないかと考えるのであります。その点まことに恐縮でございますが、訂正いたしたいと思います。それから小玉委員のお尋ねでございますが、やはり内閣における
法務
は、
法務
総裁が統轄いたしておりますので、今後試驗管理
委員会
をかりに内閣の大臣のもとに置くといたしますると、やはり内閣総理大臣よりも
法務
を統轄いたしまする
法務
総裁の所管にいたした方が適当かと考えております。
小玉治行
86
○小玉委員 これは
法務
というよりも、むしろ純粹の行政
事務
だと思つております。以前も内閣で所管しておつた関係もありますし、
法務
と申しましても、多分に
裁判
事務
に関係した部面が、試驗の本質において、また將來の発展においてもさように相なるわけでありますから、
法務
というよりもむしろ内閣の一行政
事務
というふうに、この本質を考えるのが適当ではないかと考えておるわけであります。ただそれだけ申し上げたいと思います。 なお関連しまして、今度の
司法試驗
というものは
從來
の國家高等試驗とまつたく趣を異にして、
從來
は司法大臣のもとに
裁判
権も檢察権も属しておつた。その当時の試驗でありますと、司法省の所管でよろしかつた。また管理をどこに置くかという問題も解決してお
つたの
でありますが、今度はまつたく新たな構想に
なつ
てしま
つたの
であります。かような際に
司法試驗
の所管をどこにするかという点については、先ほど
岡咲
政府委員
のお話では、これは
最高裁判所
の方からもいろいろ
意見
があるから、
法務
委員会
その他
國会
の方で適当にお考えを願いたいというお話もありました。それにつきましては、外國の立法例、ことに英米の立法例はどういうふうに相
なつ
ておるか。もし御調査に
なつ
ておりましたら承りたい。まだそれがありませんでしたら、將來その点を御調査の上お聞かせ願いたいと思います。
岡咲恕一
87
○
岡咲
政府委員
小玉委員のお尋ねに対して重ねてお答え申し上げたいと思います。
從前
高等試驗を管理いたしておりましたのは、仰せのように内閣でございまするが、現実に
委員長
をいたしておりましたのは法制局長官でございまして、その法制局長官は現在、形をかえたと申しますか、むしろ
法務
総裁の所管に入りまして、法制局長官として
法務
総裁を補佐いたしておるわけでございまして、
法務
総裁は
法務
を統轄するという面と同時に
法務
に関する行政をつかさどつておりますので、仮に
政府
が試驗管理
委員会
を所轄いたしますると、やはり内閣総理大臣よりも
法務
総裁の方がより適当であると考えております。 それから試驗の管理の関係が、外國ではどういうふうに
なつ
ておるかというお尋ねでございまするが、御存じのように、アメリカあるいはイギリスにおきましては、完全な司法一元と申しますか、弁護士から
裁判官
及び
檢察官
が任命もしくは選挙されておるのが実情でございまして、弁護士会が、試驗あるいは
裁判官
、弁護士の秩序維持に関して非常に強い
権限
を持つておりますことは、御承知の通りでございます。アメリカにおきましては、
裁判所
の立場を尊重いたすと申しますか、弁護士は
裁判所
の一つのオフイサーと考えられておりますので、弁護士の現実の試驗は、私の見ましたところでは、弁護士会が管理いたしておるのが非常に多いように考えます。弁護士会で管理いたすと申しても、弁護士会がじかに管理いたしておりませんで、やはり一つのボードと申しますか、
委員会
を設けておりまして、そこで管理いたしているように承知いたしております。イギリスにおきましては、これは弁護士の教育なり試驗は、全部弁護士会が管理いたしておる次第でございます。將來法曹一元を徹底いたします建前をもし貫いて参りまするならば、先刻鍛冶委員が仰せになりましたように、日本におきましても弁護士の教育とその試驗、あるいはその管理、秩序の保持といつたようなものまでも、全部弁護士会が所轄いたすのが最も好ましいと考えます。そうしてむしろ弁護士会の中から選ばれ、衆目の一致する適任の人が
檢察官
になり、あるいは
裁判官
になるというふうな
制度
が実現されることが好ましいように考えております。個人のことを申して恐縮でございますが、なるべくそういう方向に
制度
を進めて参るように、ただちに研究をいたしたいと考えております。
小玉治行
88
○小玉委員 この研修所をどこで管理するかという問題についても、これは
裁判所
並びに
法務
廳におかれても、將來は弁護士会が適当ではないかというように仰せられたように私は承つた。今外國の立法例を承りますと、多く
司法試驗
についても、すでに弁護士会が所管をなさつているということを伺いましたが、われわれはまつたく大陸法系を去つて、英米法系の基礎に立つて弁護、檢察、
裁判
全般をやらなければならぬ立場に
なつ
ておるのでありますから、この際、弁護士
法案
もおそらく通過するという形勢に立至つておると思うのであります。その見通しのもとにそれとにらみ合せて
司法試驗
の管理という問題、また研修所をどこに管理せしむるかという問題も考えまして、結局法曹一元という大理想から、これは弁護士会で
司法試驗
の管理もし、なお研修生も弁護士会で管理するのだというふうに、この際
法案
を練り直すということは、
法務
廳あるいは
裁判所
等においてお考えはないかどうか。そういう点について重ねてお伺いしたいと思います。
岡咲恕一
89
○
岡咲
政府委員
司法試驗
の実施は、実は目前に迫つている次第でございまして、なるべく早い機会に、小玉委員の御提案のような方向に進みたいとは考えまするが、とりあえず本年度の試驗をとり行わなければなりませんし、受驗生もしばしば
最高裁判所
なりあるいは
法務
廳に、試驗の施行について問い合せて参つているような次第でございまして、とりあえずの
措置
といたしましても、このたびの試驗については何らかの
措置
を確定いたさなければなりませんので、
政府
といたしましては、なるべくこの原案で参りたいと思いますし、万やむを得なければ、
最高裁判所
の御希望のように、あるいは
最高裁判所
においてこの試驗管理
委員会
を所轄するというようなことにいたしましてもよろしゆうございますが、試驗実施の問題が差迫つております関係上、小玉委員の御提案のように切りかえてするということは、ちよつと困難かと思います。申し落しましたが、弁護士会が試驗を管理する、あるいはその
委員会
において管理をいたすというのがアメリカの実情でございまするが、
裁判所
みずからが試驗を管理するという例は、私の調べたところでは、きわめてまれではないかと考えております。
小玉治行
90
○小玉委員 それでは本
法案
は、弁護士会で試驗の管理をし、また研修生も弁護士会でやるという理想途上における暫定的なものだということに了承いたしてよろしゆうございますか。
岡咲恕一
91
○
岡咲
政府委員
將來
改正
弁護士法が実施せられまして、弁護士会の連合会が強力な機関になりましたならば、
政府
といたしましては、弁護士会が試驗を管理せられるという方向に進むことにつきましては、全然同感であります。
花村四郎
92
○
花村
委員長
委員長
より関連質問をいたしたいと思います。本
制度
の根本問題につきましては大いに研究すべきものがありまするので、今日はとりあえず本
法案
を基礎として
政府委員
に質問をいたしたいと思います。先ほど
岡咲
政府委員
の本
法案
を出すに至りました根本の
理由
について、
法務
廳で扱う場合においては、その試驗の結果について國家が責任を負うのである。しかしながら
最高裁判所
においては責任を負わぬ、こういう御答弁でありましたが、試驗の結果について國家が責任を負うというようなことは、これは常識の上からいつても、また
法律
論の点から考えても考えられぬ。
最高裁判所
は何らの責任を負わぬというようなことはなかろうと思うのですが、國家でとる責任というのは一体どういう責任ですか。
岡咲恕一
93
○
岡咲
政府委員
私は國家が責任を負うというふうなことは申し上げなかつたつもりでございまするが、あるいは言い間違いをしたかもしれません。内閣が行政権の行使として
國会
に対して責任を負うということを申し上げましたので、もしも言い方が悪くて、
委員長
の誤解を招いておりましたならば、もう一度訂正いたしまして、そこは明らかにいたしたいと思います。行政権の行使といたしまして内閣が
國会
に対して責任を負うのだ、むしろそういたした方が好ましいのではないか、やはり試驗も一つの廣い
意味
におきましては行政権に属すると考えられますので、これを無答責の
事項
にいたしますより、内閣の一員である
法務
総裁が責任を負う。結局においては、内閣全体が
國会
に対して連帶して責任を負うということにいたすのが好ましいではないかということを申し上げたのであります。
最高裁判所
の所管にいたしますと、
最高裁判所
は、
裁判
につきましてはもとより、司法行政につきましても、
國会
に対して責任を負うという関係には置かれておりませんので、
最高裁判所
がもしこの試驗を管理せられるならば、試驗管理
委員会
のこの試驗管理の実施そのほかにつきまして、結局
最高裁判所
は
國会
に対しては責任を負わないという関係に置かれることは、
最高裁判所
のためにも必ずしも好ましいことではない、
最高裁判所
は本來の
裁判
事務
、それと深い関係のある
司法行政事務
に專念する方が、
最高裁判所
のために好ましいではないかという
趣旨
のことを申し上げたと思います。
内藤頼博
94
○内藤
説明
員 ただいま
岡咲
政府委員
から、
最高裁判所
は
國会
に対して責任を負わないという仰せでございましたが、これはおそらく
政府
のような形においては責任を負わないという
趣旨
だと存じます。憲法におきましては、彈劾
裁判所
を
國会
に設けるという
規定
があります。
最高裁判所
がまつたく無答責だというような御表現でありましたけれども、それは
政府
のような形において責任を負わないという
意味
と考えるのでありまして、憲法は決して
裁判所
の責任を一切問わないという
趣旨
には
規定
していないと存じます。なお
裁判所
はあくまでも純司法機関であるべきだとお考えのようでございまするが、旧憲法におきます
最高裁判所
と、新憲法の
裁判所
とは憲法の現定上その性格が異
なつ
ておるのでありまして、御承知のように
訴訟
手続については、もちろん司法
事務
処理についても、あるいは内閣手続についても、弁護士に関しても規則を制定する
権限
を與えております。
下級裁判所
の
裁判官
の任免につきましては、その罷免の
権限
を
最高裁判所
が與えられております。新しい憲法のもとにおける
裁判所
の性格は、そういう旧憲法時代の
裁判所
とは著しく性格を異にしております。
從つて
彈劾の
制度
も憲法に
規定
した
國民
審査
の
制度
で、そういう方面から当然
規定
されて行くものと存じます。
花村四郎
95
○
花村
委員長
そうしますと、
法務
総裁が責任を負うのであるから、
從つて
政府
が負うのである。本
法案
の試驗に関する責任は、
法務
総裁が負うことになる。
從つて
法務
総裁が負うから、時の
政府
がその責任をすべて負うのである。こういうことにお聞きしていいのですか。
岡咲恕一
96
○
岡咲
政府委員
そうです。
花村四郎
97
○
花村
委員長
そうすると重ねてお尋ねしますが、試驗については、試驗そのもの自体の
事項
と、そうしてその試験を行う
事務
的な、すなわち試験を行うについて必要な予算を伴う
事務
的の
事項
、こう二つにわけられるのですが、その双方とも
政府
が責任を負う、こういうことになりますか。
岡咲恕一
98
○
岡咲
政府委員
委員長
の仰せのように、
司法試驗
を行うことに関しまする
事務
的な予算、あるいは人事と申しますか、そういう問題につきましては、もとより純粋の行政
事務
として
法務
総裁が最高の責任を負うわけでございます。 次にこの試驗自体の管理につきましては、一應この管理
委員会
が全責任を負うわけでございまするが、これは運用の実際上、試驗管理
委員会
が独立して
事務
を行うのでありまして、もしその試驗の管理自体につきましても、何か非違があるとか、あるいは落度がありまして、行政の
執行
として責任を負わなければならないような事態が発生いたしますならば、それは
法務
総裁が責任を負わなければならないだろう。かように考えております。
花村四郎
99
○
花村
委員長
そうすると試驗の管理というのは、要するに試驗を行うに必要なる
事務
的行為ということになろうと思いますが、試驗そのもの、あるいは試驗の課題が誤つておつたとか、この
法律
に
規定
してあらざる試驗科目にわたつたとか、試驗の採点について不当があつたとか、そういう試驗そのものについての責任も、やはり内閣が最終的には負うということになるのですか。
岡咲恕一
100
○
岡咲
政府委員
司法試驗
そのものは、この
法案
の十
五條
にございますように、試驗管理
委員会
の推薦に基きまして、
法務
総裁が司法試験考査委員を任命いたしまして、その
司法試驗
考査委員が
司法試驗
のことは行うわけでありまして、ただいまお尋ねのような試驗問題、あるいは
法律
で定めているわく外の試驗問題を出したといつたような問題、あるいはその試驗の採点につきまして、不公正な取扱いがあつたということにつきましては、
司法試驗
考査委員がまず責任を負うわけでございますが、この委員の任命は
法務
総裁がいたすのでございまするし、実際は試驗の公正のために、考査委員が独立して自己の良心に
從つて
正しく試驗を実施せられるわけでございますが、その結果において、もし不当なことがありますならば、やはり建前といたしましては、最終の責任者として
法務
総裁がその責めに任じなければならないであろうと考えております。
花村四郎
101
○
花村
委員長
そうすると
法務
総裁がその責めに任ずるのは、そういう不当な考査委員を選んだという選任の責任になるわけですか。あるいは試驗そのものについての責任もあわせて負うというのですか。試驗そのものについては考査委員が責任を負うということで、その考査委員の選考については
法務
総裁が責任を負う。こういう二段の責任になるのであるか。あるいは試驗そのものについても、あるいは選考の当、不当についても一切の責任を
法務
総裁が負うというのですか。
岡咲恕一
102
○
岡咲
政府委員
法制の建前といたしましては、試驗考査委員というものは、
裁判官
のごとく独立してその
事務
を行うのだというふうな建前に
なつ
ておりませんが、実際は独立して
事務
を行うと考えまするので、第一次の責任は、不当な試驗をいたしました考査委員が負うのでございますが、その不当な考査委員の試驗
執行
自体については、やはり
法務
総裁は終局の責任者として、責任を負わなければならないのではないかと考えます。
花村四郎
103
○
花村
委員長
そうすると、
法務
総裁に関する責任はよくわかりましたが、その
法務
総裁の責任は、内閣全員が負うということになるわけですか。
政府
全般が負うことになるわけですか。
岡咲恕一
104
○
岡咲
政府委員
この点は憲法にも
規定
がございまするし、また内閣法にもたしかあると考えます。「内閣は、行政権の行使について、
國会
に対し連帶して責任を負う。」という
規定
が適用になるのではないかと考えます。
花村四郎
105
○
花村
委員長
そうすると、さらにお尋ねしますが、
最高裁判所
がその試驗を実施するという場合に、その責任は試驗管理に関する行政的
事務
並びにそれに牽連する予算等に関する責任並びに先ほど申し上げたような試驗そのものに関する責任、こういう責任は何人も負うものがないわけですか。
岡咲恕一
106
○
岡咲
政府委員
最高裁判所
が試驗を所轄いたされることになりますと、内閣が
國会
に対して責任を負いまするような、そういう責任はもとより
裁判所
として負うことはできないと考えます。ただ事実問題といたしましては、たとえば予算につきましても、
政府
が予算を提出いたすわけでございまするけれども、
裁判所
は独自の予算要求を
國会
に対して御要求になることもできますので、その関係におきまして、
最高裁判所
は
國会
に
説明
員としてお出ましになりまして御
説明
になる、あるいは
最高裁判所
の行政なり、あるいは試驗の管理につきまして不適当なことがありましたならば、事実上
國会
からその点について
説明
をお求めになることもございましようし、その限度におきまして、
最高裁判所
が実際はこういう責任を負われるということもあることと考えまするが、法制の建前といたしまして、
最高裁判所
が
國会
に対して責任を負う、あるいは
國民
に対して
法律
上当然の責任を負われるというようなことはあり得ないのではないかと考えます。先ほど内藤
説明
員は、
裁判所
の行為は必ずしも無答責ではない、
裁判官
彈劾法もあつて彈劾せられることもあるという御
説明
でございまするが、
裁判官
彈劾法は、特に
裁判官
が
職務
上の義務に著しく違反した、あるいははなはだしくその
職務
を怠つた場合とか、あるいは
職務
の内外を問わず、
裁判官
としての威信を著しく失うべき非行があつたというふうに、ごく限定された場合に彈劾をお受けになるのでございまして、廣く行政権の行使自体について責任を負われるというふうなことは、
裁判所
に対してはあり得ないと、かように考えております。
花村四郎
107
○
花村
委員長
そうしますると、さらにお尋ねしますが、
最高裁判所
の予算に関する責任はどうなりましようか。これもないのですが、あるいは責任があるのですか。
岡咲恕一
108
○
岡咲
政府委員
裁判所
予算につきましては、これは
政府
が予算案を提出いたします関係上、
政府
に責任があると申さなければならないかと考えます。今つまびらかにいたしておりませんが、大藏当局と
裁判所
との間におきまして、予算上もし
意見
の一致を見ないような場合には、この予算の案には
裁判所
の案を附記いたしまして、
國会
に提出されるようなことに
なつ
ておつたかと思いまするが、それは
裁判所
の行政の独立を保障いたします
意味
において、
裁判所
に関することはなるべく
裁判所
の自立的な働きにまつ方が、司法権の独立を保障するためには好ましいという建前で、財政の上にもそういうふうな便宜の
措置
がとられているかと考えまするが、
政府
との間に
意見
の一致を見なかつた点につきまして、
裁判所
が責任をお負いになるかどうかという問題ですが、これはむしろ
裁判所
の責任ではありませんで、結局
國会
において
裁判所
の主張が正しいか、それとも
政府
提案の原案が正しいかということを御判断になりまして、これで御
決定
になればよろしいのではないかと思います。予算の面について
裁判所
が責任を
國会
に対して負われることはあり得ないと考えます。
花村四郎
109
○
花村
委員長
御答弁がよくわかりませんが、少くとも
最高裁判所
の予算
措置
に対しましては、
政府
に責任ありと言われるのですか、ないと言われるのですか。國家予算を使うのですから、
最高裁判所
は議会へ予算案を出して、司法行政に関しまするすべての費用を要求して、その金を使つているのですが、この予算的の
措置
に対しても責任がないと言われるのですか、あるいはあると言われるのか、ありとすれば何人が責任を負うのですか。
岡咲恕一
110
○
岡咲
政府委員
裁判所
の予算につきましては、先ほど申しましたように、予算案は内閣がこれを
國会
に提出いたします関係上、その提出いたしました限度におきましては、内閣がもとより責任を負わなければならないと考えます。
花村四郎
111
○
花村
委員長
そうしますと、
裁判所
の予算については内閣が責任を負う。それはもちろん内閣が負う
意味
でありましよう。そうすると、もし
最高裁判所
がこの
法案
のような試驗を実施するということに相なりまして、その試驗に要すと予算をもしとつたとしますならば、この試驗の管理に要するすべての費用は
最高裁判所
の経費の中に盛られることは当然です。そういうことになりますと、
最高裁判所
のその予算に関する責任、
最高裁判所
は予算を使つたことに対して責任というものはあるのですか、ないのですか、責任がある場合には何人に対してあるのか、
政府
に対してあるのか、議会に対してあるのか、
國民
に対してあるのか、その責任の対象は何人であるか、これをお尋ねするわけであります。
岡咲恕一
112
○
岡咲
政府委員
國会
において御
決定
を得ました予算の使途につきましては、もちろん
最高裁判所
は会計檢査院の檢査に服されるわけでございまして、もしその予算の使い方において不当なことがありますならば、もちろん責任を負われなければならないと思いますが、
國会
に対して
裁判所
が責任を負われるというふうなことはないのではないかと考えております。
花村四郎
113
○
花村
委員長
それではどこで負われるのですか、責任を全然負わないのですか、不当な支出をしようが何をしようが、
最高裁判所
は治外法権で、どこにも責任を負わぬというのですか。
岡咲恕一
114
○
岡咲
政府委員
どうも財政関係を十分研究いたしておりませんので、まことに不十分なお答えしかできないで恐縮でございまするが、会計檢査院の檢査に服するという点で、
法律
上の責任はあるかと思いますが、
國会
あるいは
國民
に対し、あるいは
政府
に対して、
法律
上直接の責任を負うということはないのではないかと考えます。やはり
最高裁判所
のそういう経費の基礎につきまして、もし不公正なことがありますならば、
裁判官
彈劾法とか、あるいは
國民
審査
法によつて
國民
から指彈を受けるという以外には、直接
法律
上の責任は起きないのではないかと考えまするが、あまり予算関係について十分の研究をいたしておりませんので、本日はこの程度で御了承得たいと思います。
花村四郎
115
○
花村
委員長
予算も決算も衆議院に出して、そしてその当否をきめているのですから、いかなる金をどういうぐあいに使おうとも、あるいは款項目を乱して使おうとも、何らの責任はないということはなかろうと思うが、どうも
裁判所
が無人の境を行くような、そんな大きな
権限
を持つておるものではない。國家機関の一つであり、しかも予算も
法務
廳から
政府
へ出して、
政府
から衆議院に出し、決算もまた
政府
から衆議院に出しているのじやないですか——それでは佐藤
政府委員
の
意見
を承りましよう。
佐藤藤佐
116
○佐藤(藤)
政府委員
私も予算関係の責任、ことに
法律
上の責任が政治上の責任かということを明確に答弁できないのをはなはだ遺憾に存じますが、これまで私どもの考えておつたところによりますと、予算は
最高裁判所
が大藏省の手を経て、内閣の承認を得て
國会
に提出されるのでありまして、
法務
廳は全然関係はしておらないのであります。それでありますから予算提出についての責任は、
政府
が責任を負うのであつて、
最高裁判所
には何ら責任はないのではないかと思います。一旦
國会
において議決されたその予算の使途についての責任でありまするが、これは先ほど
岡咲
政府委員
より申されたように、会計檢査院の檢査にも服しなければなりませんので、そういう点から、いかにも
政府
に対して
最高裁判所
が予算の使途に関する責任を負うのではないかというふうに考えられまするが、しからばどんな責任を負うかということになりますれば、私にはそこが明瞭でないのでありまして、結局
法律
上の責任はない、ただ政治上の責任を負うのであつて、その政治上の責任が、やがて
國民
審査
あるいは彈劾
裁判
発動の一つの遠因になるというに過ぎないのではないかと考えております。
花村四郎
117
○
花村
委員長
それは司法
事務
に関する関係においては、彈劾
裁判所
とかいうような関係が生じて來るのでしようが、
予算的措置
に関することは、これはまた彈劾
裁判所
とも何ら関係もないことなので、しかもその予算は議会に出して議決せられて、
最高裁判所
において支出し得るのである。しかもその支出に対しても衆議院において制約を加えることもできれば、あるいはこの予算を変更することもできる
権限
を持つており、しかもその使つた決算については、これまた議会に出て議会の協賛を経るということに
なつ
ていることは、
法務
廳といささかもかわりがない。もし
最高裁判所
にその使途に関する責任なしとするならば、
法務
廳にもなしというりくつで行かなければならぬ。
法務
廳にあるとするならば、
最高裁判所
にもあらねばならぬと思うのでありますが、この点はなお一つ御研究を願いたいと思います。 それではこの問題については、後に御研究の上で答弁をしていただくことにして、次の質問を一点だけいたしておきたいと思います。先ほど
岡咲
政府委員
は、
司法試驗
と
司法修習生
とは別個の観念で扱つてもよろしい、こういう御説であ
つたの
ですが、もちろんこれは
裁判所法
も
改正
せられねばいけないでしようが、しかし
裁判所法
の十四條によりますると「(司法研修所)
裁判官
その他の
裁判所
の
職員
の研究及び修養並びに
司法修習生
の修習に関する
事務
を取り扱わせるため、
最高裁判所
に司法研修所を置く。」こういう
規定
がありまするし、さらにまた
裁判所法
の六十六條には、「(
採用
)
司法修習生
は、
高等試驗司法科試驗
に合格した者の中から、
最高裁判所
がこれを命ずる。」こうある。その六十
八條
には「(罷免)
最高裁判所
は、
司法修習生
の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他
司法修習生
について
最高裁判所
の定める事由があると認めるときは、その
司法修習生
を罷免することができる。」こうあるので、結局この
司法修習生
というのは、高等試驗を受けたものでなければいかぬという一連のつながりがあり、しかも高等試驗を受けて
司法修習生
に
なつ
た者の任免権は
最高裁判所
が持つている、こういうことに
なつ
ておるのですから、これは深い牽運があるばかりではない。これは不分離の関係にあると申してもいいと思うのですが、これに対して
岡咲
政府委員
からもう一應御
説明
を願いたい。
岡咲恕一
118
○
岡咲
政府委員
司法試驗
と
司法修習生
の
採用
とは深い関係にあるということ、言いかえれば、試驗に合格した者のうちから
最高裁判所
が
司法修習生
を命ぜられるということは、
委員長
の仰せの通りでございまするし、一旦
司法修習生
になれば、
最高裁判所
が管理しておる司法研修所において
司法修習生
の教育と申しますか、修習に関する
事務
を取扱わせる。そうして
司法修習生
の行状がはなはだしく品位をはずかしめるとか、あるいはそのほかの事由があります場合に、
最高裁判所
が
司法修習生
を罷免するということは、
委員長
の御指摘の通りでございますが、この
司法試驗
に合格した者が、ただちにそのまま
最高裁判所
の任命によつて
司法修習生
になるわけではございませんで、これは先ほどもたびたび申し上げましたように、あるいは健康の点とか、あるいはその人の人格の点とか、そのほか諸般の事情を
審査
して、將來
裁判官
、
檢察官
、弁護士となるのにふさわしいような資格のある者を選びまして、
司法修習生
に命ぜられるということになりますので、必ずしも試驗に合格することがただちに
司法修習生
の
採用
ということにはならないと考えます。
從つて
非常に深い関連はございますけれども、この
司法試驗
はあくまでも
法律案
としての学識と應用能力があるかどうかを檢定するということの試驗という性質は失わないのではなかと考えます。この試驗に合格いたしますと、その学識とか應用能力の点においては、將來
裁判官
あるいは
檢察官
あるいは弁護士というものになる一應の資格があると認められますけれども、また他の点から、必ずしも試驗合格者をただちに修習生には
採用
なさらないのであろうと考えますので、十分の関連はありますけれども、
採用
そのものと同一視していいというふうな関係にはないと考えております。
花村四郎
119
○
花村
委員長
それは試驗が受からなかつたら入れないでしよう。受かつた者の中から入れるのでしようから、受かつたことが前提です。ことに今
岡咲
政府委員
の
説明
によれば、
最高裁判所
で罷免権も持つており、また入所に対する拒否権も持つておるようにうかがわれるのですが、そういうことになれば、
法務
廳の方で試驗に合格して
採用
した者を、
最高裁判所
の方で入所を拒み得るというような関係にありますがゆえに、これは常識上から言うてはあり得ないが、りくつの上から言えば入れないでもいい。こういうことにもりましようから、これは最も深い関係がある。しかも
法務
廳において、たとえば五百人の合格者を出したという場合において、二百人しか收容ができぬという場合には、もちろん拒むこともできましようし、收容できなくなるというような観点から見て、これはやはり別個の機関によつて扱わしむることが便宜であるかどうであるか。あるいは同一人にやらせる方が便利であるかどうであるか、そういう便宜上の見地に立つて考えてみた場合に、どうお考えになりますか。
岡咲恕一
120
○
岡咲
政府委員
その点につきましては先ほども御答弁申し上げたと存じますが、試驗管理
委員会
が試驗の
事務
を管理いたしますので、しかもその試驗管理
委員会
は
法務
総裁官房長と、
最高裁判所
事務
総長、それから弁護士会の推薦された弁護士、この三人によつて
委員会
を構成いたすのでありまして、一方においては試驗の基準を嚴守しつつも、司法研修所における收容能力、あるいは
裁判所
、あるいは
法務
廳における要員を勘考いたしまして、合格者の範囲を
決定
いたされるのであろうと考えますので、実際の運用上において、
委員長
の御指摘のようにはなはだ食い違つたことが生ずることはないのではなかろうか、かように考えております。
花村四郎
121
○
花村
委員長
まあないとは思いますが、しかしあり得ることも考えられるので、これはりくつでなくて、便宜上どう扱うのが便宜か、同じ人が試驗の方もやり、そうしてその試驗に合格した者を收容するのも同じ人でやる方がいいか、あるいは試驗の方は別にして、そういういろいろの問題が起きんとも限らない、起きる場合もあり得るということを考えて、別個の人にやらせる方が便宜であるか、そのどちらが便宜かという便宜論を、あなたの常識の上からお話し願えればいいと思います。
岡咲恕一
122
○
岡咲
政府委員
ただその管理
委員会
を
法務
総裁の所轄のもとにおくか、あるいは
最高裁判所
に改めるかという問題だけでありまして、便宜の問題は、結局この管理
委員会
が試驗を管理いたすのですから、そう大して違いはないと思います。また便宜の問題から考えましても、
最高裁判所
が直接に試驗を管理せられるよりも——かりに
最高裁判所
が所轄をされるといたしましても、やはり管理
委員会
を設けて、その管理
委員会
に試驗を管理せしめた方が便宜ではないか。
最高裁判所
におかれましても、
委員会
を設ける点については異論はないように承つておりまして、ただその
委員会
を
法務
総裁のもとにおくか、それとも
最高裁判所
のもとにおくかという問題だけが、
意見
の一致を見ない点でございますので、その便宜問題については
委員長
の御心配のような点はないわけでございます。
花村四郎
123
○
花村
委員長
私の見ようでは、この研修所の方面から見て、研修所へ入れて養成する、その人の試驗を研修所の方の
事務
を扱つておられる筋の人がやられる方が便宜なのか、あるいはそれを切り離して両方でやるのが便宜なのか、こういうことをお聞きしている。それだけお答えになればいいのです。
佐藤藤佐
124
○佐藤(藤)
政府委員
委員長
のおつしやるように、便宜論からだけ申しますれば、司法研修所は
裁判所
でやつておるから、
裁判所
ですべて試驗をやつた方が便利だ、こういう結論におそらくなるのだろうと思いますが、それではどうも私は適正を期しがたいと思うのであります。便宜は便宜であつても、試驗は適正に行わなければなりませんので、そこで行政の管理と、試驗を行う機関を全然わけて考えまして、そうして実際にたとえば答案を見て点数をつけるのは、方々の学者なり、あるいは
経驗
者なりにおまかせしなければならないのですが、その行政管理は
裁判所
と
法務
廳と弁護士会とその三者が集まつた管理
委員会
の組織で行政管理をする。その
委員会
をどこの所轄に置くかということだけがわかれ目なのでありまして、この
制度
のもとにおきましては、その所轄を
裁判所
にしようと、あるいは
法務
廳にしようと、
委員長
の御心配に
なつ
ておるような便宜論は結局同一なのでありまして、もしさらに便利なようにしようとすれば、
委員会
の
制度
を設けないで、むしろ
裁判所
の手だけで試験を行うことが、一番便利かもいれませんが、それでは学力の試驗をするのに、行政管理をする人がそのまま試驗を行うということは、どうも適正じやないのじやないかという考え方から、試験の管理
委員会
で、しかもそれが三者集まつて
委員会
で管理をする、こういう組織にいたしたのであります。おそらくこの管理
委員会
を設けて試験を管理するという構想については、
裁判所
の方も何ら異存はないのでありまして、ただ管理
委員会
をどこの所轄に置くかということだけが違うのであります。どこの所轄に置いても管理
委員会
の運営は同じことだ。三者から
なつ
ておりますし、司法研修所の現在の運営状態はどうであるか、あるいは本年の收容能力はどのくらいであるかということは、
裁判所
を代表して來られる
事務
総長の方から
意見
を反映しましようし、また弁護士会の方から來られる委員の方では、弁護士は今多すぎるからなるべく少くしたいとか、あるいはもつと多くしたいというような希望がそこに反映するだろうと思うのであります。御心配のような便宜論は、どつちの所轄にしても同じじやないかと私は考えております。
花村四郎
125
○
花村
委員長
私の質問は終りました。ほかに御質問はありませんか。
田嶋好文
126
○田嶋委員 私の質問は、きようただちに御答弁を求めるというのではないのでありますが、今の
委員長
の質問に関連いたしまして……。当
委員会
といたしましても、この試驗そのものは、
委員長
の申されておりますように、便宜的にこれを考えますと、
裁判所
に属しました方がいいように考えられるのであります。そこで
裁判所
に御研究を願いたいと思うのでありますが、内閣なり
裁判所
なりが一つの行為をする場合に、憲法の
規定
に
從つて
行動しなければならぬことは明らかであります。して見れば憲法に内閣の職責、司法の職責として、はつきりきめられておる。
裁判所
はその試験を行うのに、憲法の何の
規定
にこれがあてはまるものとして行わんとしておるものでありますか。この点
裁判所
に御研究願つて、この次に御答弁願いたいと思います。
上村進
127
○上村委員 ちよつとここで念のためにお聞きしておきますが、女も男もこの
司法試驗
を受けることはできないわけですね。この法文を見ると、その点がはつきりしていない。むろん憲法を見ると、女も受けられるんでしようが、第
一條
からずつと見ましても、その性別の点はないから当然のこととして書かなか
つたの
でしようが、そこに何かありましようか。
岡咲恕一
128
○
岡咲
政府委員
もちろん女の人も試驗を受けられます。この試驗法の建前は、受驗資格につきましては何らの制限を設けてありません。
上村進
129
○上村委員 そこでちよつと質問と希望がありますが、司法民主化におきましてはやはり婦人の
裁判官
、
檢事
——弁護士はもちろん必要だと思いますが、今のこういう一本建の試驗が出まして、はたして女が
裁判官
、
檢察官
の方に食い込んで行くだけの実績があがるかどうかということを非常に疑問に思うのですが、男女の司法官試驗というようなものを——これはずつと女が発展して來れば別ですが、今のところこの試驗一本建で女を司法部に、少くとも
裁判官
、
檢察官
に入れるということになると、一本の試驗では困難ではないか。それは
司法試驗
ということは一つでいいですが、女子の
司法試驗
とかあるいは研修所のですね、これが一本建に
なつ
ているから、わけて試驗を行うというようなお考えはないでしよか。御案内の通り、議会においても女の代議士が出まして、堂々と女の立場からいろいろなことを論じ、また男のやることでも、女子の代議士がやつている。ひとり日本の
裁判所
はいわゆる女禁制のような形に
なつ
ている。女子はひとしく役人になれるということに
なつ
ておつても、この試驗ではなかなか司法官に入つて行かない。そういう点で國家の根本的な司法民主化、
裁判
の民主化、檢察の民主化ということに対して、女子を入れる必要があるとすれば、この
試驗制度
の
改正
の際に十分考慮を賜わるべきではないかと私は思う。その点一本建にしてしまつて、それは平等だから、そこで女も受ければいいではないかと言えばそれまでですが、そういう女子の点に対して特別の考慮を拂う必要があると思うが、このままで行くのかどうか。
岡咲恕一
130
○
岡咲
政府委員
司法の方面につきましても、婦人の方が大いに進出していただきたい希望を持つております点につきましては、上村委員と全然同感でございますか、そのために女子につきましては別の
試驗制度
をとつた方が好ましいとは実は考えておりません。性別による差別を認めませんで、やはり一樣の試驗を與えますことが、かえつて婦人の
地位
を向上させるゆえんではないかと考えております。
上村進
131
○上村委員 別の試驗を行えと言うのじやない。同じこの
司法試驗
でいいんですが、わけて募集するというか、施行するというような方法をしないと、いかに試驗の上において女は平等だし、女が欲しいといつても、実際面において女が司法部に入つて來ないということです。それをどういうふうに考えているか。この際女の
司法試驗
というものをわけて行つたら、女を相当数とることができる。これでは女は入つて來いというだけであつて、実際は女を閉鎖しておる。だからして日本の
裁判所
において、いつに
なつ
たら女の
裁判官
や
檢察官
が堂々と
法廷
に立つことがあるか。すでにソビエトなんか御案内の通り、三千人くらいの女の
檢察官
がおります。そうしてしかも檢察
事務
でもうまくやつておるというようなことがある。婦人を司法部へ入れるということが、一抹の情味を
裁判
あるいは檢察の上において與え得る。これだけでは入つて來ないのです。それをどうするかということでありまして、試驗を別にしろというのではなくて、入りやすいような
採用
方法、試驗を考えたらどうかということなんです。
岡咲恕一
132
○
岡咲
政府委員
上村委員の御
意見
はごもつともと思いまするが、やはり試驗は女だけの試驗をやるというようなことは好ましくないのではないかと思います。やはり婦人といえども現に
法律
学を修めまして、修習生になり、近く判事補あるいは
檢事
になり人もおりますし、現に高等試驗に合格しておる人も数名おりますので、將來は婦人に対する法学教授が進んで参りますと、非常に多勢の婦人が弁護士、
檢察官
あるいは
裁判官
になり得るだろうと思います。そのために特に別の試驗をするならばより入りやすいであろうというふうなことは、私としてはちよつと考えられないのではないかと考えております。
上村進
133
○上村委員 別の試驗というのではないのです。女の試驗を施行するのを希望するというのです。
花村四郎
134
○
花村
委員長
石川金次郎
君より発言を求めておりますから、これを許します。
石川金次郎
135
○石川委員 実は
法務
廳の予算と
裁判所
の予算につきまして
内容
を詳細に承り、
法務
廳の仕事、
裁判所
の仕事がどのように行けるのかということを見て知つておきたいと思いますので、
委員長
が
法務
廳と
裁判所
の予算を
説明
する会をお催しくださることをおとりはからい願いたいと思いますので、この希望を申し上げます。
花村四郎
136
○
花村
委員長
石川君の御発言、了承いたしました。
—————————————
花村四郎
137
○
花村
委員長
この際ちよつとお諮りいたしますが、
法案
が山積いたしておりますので、
簡單
な議案より逐次あげに行きたいと存じます。つきましては
下級裁判所
の設立及び
管轄区域
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
について、他に異
質疑
がなければ討論採決に入りたいと存じますがいかがいたしましようか。
梨木作次郎
138
○梨木委員 私先ほど
簡易裁判所
の設置の問題について、予算が一銭もないのに、地元の寄付によつて建設するというようなことは今後やめてもらいたいということを希望したのですが、ここで討論採決に入るに先だちまして、今後
最高裁判所
は、
簡易裁判所
その他の
裁判所
の設置にあたりまして、地元の寄付によつて建設するというような
意見
が今後もあるのかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
花村四郎
139
○
花村
委員長
討論採決について今お諮りしておるのですが討論採決に入ることに反対だとおつしやるのですか。質問ですか。
梨木作次郎
140
○梨木委員 討論採決に入る前に、一應その点を伺つておいて、私の方は討論したいと思うのです。そういう
趣旨
なんです。
花村四郎
141
○
花村
委員長
御異議ありませんか。——御異議ありませんか。——御異議なければさようにはからいたいと思います。討論はいかがいたしましようか。
梨木作次郎
142
○梨木委員 今の点について
最高裁判所
の御答弁を伺いたいと思います。これは非常に重要なことでありまして、今全國的に
檢察廳
、
裁判所
が、特に八王子なんかはやみ屋さんから寄付をもらつて
檢察廳
を建てておる。こういうことを今後行われたんでは
裁判
の公正は保たれません。この点は私は非常に重要だと思うので、この際御答弁を伺いたいと思います。
花村四郎
143
○
花村
委員長
ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
花村四郎
144
○
花村
委員長
それでは速記をはじめてください。 〔「討論省略」と呼ぶ者あり〕
花村四郎
145
○
花村
委員長
それでは討論を省略いたしまして、これより
本案
について採決に入ります。
本案
に賛成の方の起立をお願いいたします。 〔賛成者起立〕
花村四郎
146
○
花村
委員長
起立総員、よつて
本案
は原案の通り可決いたしました。 なお報告書の作成については
委員長
に御一任願います。 本日はこの程度で散会いたします。 午後六時五十六分散会