○木内
政府委員 松木
委員の先般の御質問中、松島
事件関係の
証拠品紛失の問題につきましては、答弁を留保してお
つたのでありますが、主任檢事が出張先からもど
つて参りましたので、事情を聞いてみますると、東京地方
檢察廳では、この
事件について
証拠品を紛失したということはない。本件の
証拠品として正式に受入れられたものは、松澤病院任意提出にかかる松島謙三、佐々木正一両名の病床日誌二册であ
つて、この
証拠品は
檢察廳で不起訴拠分に付したので、告訴人側から
刑事訴訟法二百六十
二條により東京地方
裁判所に審判の請求があつたから、その
証拠品として記録とともに
裁判所へ送つたということであります。なお告訴人から当時の主任檢事である中西檢事あてに提出された上申書が二通あるそうでありますが、これは同檢事の手元に保管されておるのであります。この上申書が一件記録に添付されていなかつたことは、
事案の処理について何らの支障を認めなかつたが、記録に添付されていないので、あるいに間違えてこの上申書を
証拠品と考えて、
証拠品を紛失したと誤解しておるのではないかということでありました。万一別に何か
証拠品がありまして、これが紛失したということでありまするならば、あらためて具体的にお話を願えればさらに調べる、こういうことでございました。
次に大津
事件について御答弁申し上げます。大津地方
檢察廳からの
報告によりますると、大津地方
裁判所の雇い人岩本博文という者があつたそうでありまするが、これは本年二月十八日附依願免官とな人ておるのであります。その依願免官と
なつた原因は、同人が
昭和二十四年二月十三日日曜日午後零時三十分ごろ、大津地方
裁判所宿直室にいた際に、窃盜
被疑者の清水清子、当十九年が大津地方
檢察廳の細野檢察
事務官の、十二日に出頭せられたしとの呼出状を間違えた、十三日の日曜日に出頭して來たのであります。それで当時
裁判所の宿直室におつた岩本が、この清子という女の子を、
檢察廳で執務していた当直の会計係北脇檢察
事務官のもとに案内したところ、北脇檢察
事務官は、主任の捜査係である細野檢察
事務官が日曜日で不在であるから、明日出直するようにと告げて帰宅方を促して席をはずしたところ、岩本が同人に対する
少年審判記録が一月上旬、京都
少年審判所より大津
家庭裁判所に送付されていたのを思い出して、清子を
家庭裁判所少年部に連れて行
つて、同日午後三時ごろまで事情を聽取したことが、取調べの結果明白いたしましたが、清水清子は、取調べの間に身体檢査をすると
言つて、二、三回乳房にさわられたと述べておりまするが、岩本はさような事実はないと否認しており、この点に関する確証はないのであります。しかし清水清子自身も、この問題につきましては告訴の意思がないので、この点については不起訴
処分にいたし、
裁判所側ではいずれにせよ岩本の
行為が妥当でないというので、依願免官にしたということであります。
これに関連しまして、御質問の、岩本博文及びその父である岩本兵吉護係の
事件について申し上げます。滋賀新報社記者の菊地三太郎は、岩本博文の、前申し上げました悲違の眞相の摘発ということで、再三滋賀縣栗太郡治田村澁川の岩本兵吉方を訪れましたが、面会できず、結局二月二十二日の午前七時ごろ、兵吉方を訪れて面会を強要したので、兵吉は非常に腹を立てて、右博文の加勢を得て、菊地をなわで縛り、同日午後八時駒までそのまま自宅に監禁し、さらに翌二十三日、栗太郡瀬田町菊地三太郎方附近において滋賀新報社山本均に対し、同人が菊地同樣、面会を強要したことをなじ
つて、殴打暴行を加えたというのであります。これによ
つて岩本兵吉を、本年三月十一日大津地方
裁判所に、菊地三太郎に対する不法逮捕、不法監禁及び山本均に対する暴行の事実によ
つて起訴いたしたのであります。岩本博文の方は、
昭和二十四年三月十一日、清水清子に対する強制わいせつ
行為が
親告罪であるが、被害者が先ほど申しました
通り、告訴の意思がないということを表明したので、不起訴
処分に付しておるわけであります。それから菊地三太郎に対する不法監禁、不法逮捕及び山本均に対する暴行の点は、起訴猶予にしてあります。その
理由は、父の兵吉が本件の主犯者であり、父の命のままに荷担したものであ
つて、かつ親子二人を起訴することが、少し苛酷に失するものがあると考えたので、
檢察廳においては、この博文に対して起訴猶予にしたということであります。
この
事案の状況及びこの
報告等によりましても、岩本博文の方を起訴猶予にしたというものは、御質問のように
裁判所の職員であるから、特に犯罪を隠蔽せんとしてこれを不起訴
処分として、そして罪を親の方に負わしたというような事実はないのでありまして、これを私
どもから見ましても、この
事件の処理は妥当である、かように考える次第であります。