○猪俣
委員 今の
檢務長官の答弁は私どもの聞いたことと違うのであります。それは
橋本檢事が、
自分が捜査
主任にあらざることを長官から聞かされて、君はこれから手を引いてくれと言われたのが三月八日、しかるに三月四日から
香取檢事は、今言
つたような長官室で、ひそかにその手記に示された人たちを呼んで
調べておるのでありまして、それがために非常に
橋本檢事が激昂したのであります。
橋本檢事は、当然
自分がその
木舟事件の
主任であるし、
木舟の
上申書に現われた事実について徹底的に
粛正すると、すでに本間及び横溝という
檢察事務官を使いまして、
相当の傍証固めをや
つてお
つた。しかるに
香取檢事は一切連絡をしないのであります。それから
香取檢事になぜ連絡をしないかというと、忙しくて会えなか
つたと言う。同じ廳内の同じ建物に存在しておりながら、忙しくて会えない道理はない。実際現在に至るまで
香取檢事は
橋本檢事に連絡しない。
香取檢事は
香取檢事の方針においてや
つておるかもしれませんが、かような次第で、はなはだ
檢事同一体の原則に反するし、どうもそこに
疑惑を生む原因がある。三月八日まで知らない、それがために例の
檢察事務官三人は、どうしてもこれは
橋本檢事によ
つて粛正しなければならぬというので、この本廳まで
上申書を出して來た。原因はそこにあるのでありまして、これは長官はそういう
説明を聞いていらつしやるかもしれませんけれども、事実は違うのであります。すでに
橋本檢事に引導を渡す前に、
香取檢事も大体や
つてお
つた。三月八日の長官からの言明以前、三月四日から
調べてお
つたということは明らかなる事実なのであります。そうして現在に至るまで
橋本檢事に何らの相談もしないということも事実であります。その辺、一方的なことのみならず、なお両方のお
調べを
願つて、將來そういう弊のないように、他から疑われるようなことのないような態度をと
つていただきたいのでありまして、今の長官のお説に対しましては、なお私どもは釈然としないのであります。何がゆえにさような異例の取扱いをや
つたか、結局長官が中に立
つて、
橋本檢事の
事務を
香取檢事に引継いでやるということが一般のルールにな
つておるのを、今回に限
つてま
つたくさような態度をと
つたために、この
橋本檢事に同情する
粛正派が立ち上
つたというのが、本件を起しました原因であ
つたのでありますから、今長官が言うように、何らわだかまりもなく
事務の引継ぎができたということは、われわれ想像することができないのであります。これはなお御
調査を願いたいと思います。
それからなお私が
調査に参りまして、はなはだ想像だもしないところの意外なことを実は聞いたのであります。これはもちろんただ聞いただけでありますけれども、その話をした人が現職
檢事でありまするがゆえに、デマだというわけには行かぬのです。
横浜地檢におきまして数々の不正がある。
檢事が、たとえば略式命令で一万五千円という求刑の評額を出してお
つたにかかわらず、それが
檢察事務官の手に移ると一万二千円にな
つてしま
つたという
事件があり、それからなお調書、いわゆる檢察の
取調べ調書を燒いてしま
つた事件があります。それから刑事の番号を甲の番号と乙の番号を故意に取違えてしま
つて、記録がわけがわからないようにしてしま
つた事件がある。かようなことで、どうも私どもは想像だもしないことが多々ある。そういうことを一体
檢察事務官が大胆にもやるという原因がどこにあるかというと、はなはだ聞き捨てならぬことが実はわれわれの耳に入る。私どもは的確なる証拠を持
つてあなた方に申し上げるのじやないのであるから、これは法務廳においてお
取調べ願いたいことであるが、それはこの
檢察事務官たちがかような不正なことをする前は、必ず
自分の上の
檢事の、いわゆる俗に言うしつぽをつかむ、それをまず第一にやる。しつぽをつかむというと惡いことを始める。そこで結局事がばれてもお互いに帳消しをやる。そういうことがここ三年來続いて來ておる。かようなことを、
粛正派の若い
檢察事務官は頬を赤らめて、われわれに激辞をも
つて訴えてお
つたのであります。それであるからして、この
木舟手記なるものは、書いたことは表面を見れば何でもないことのようであ
つて、これをいわゆる本式に捜査をするというと、必ず上層部の方へ重大問題としてこれは発展する。時限爆彈のようなものであるということを、ある
檢事は明言しているのであります。それがために廳内は、この
木舟事件の手記について、
橋本檢事が捜査を始めるということが傳わりまするというと、三日間というものは、ほとんど全部の
檢察事務官は
仕事が手につかなか
つた。それでわれわれをやるならば、
檢事に対してもわれわれは暴露戰術をとるからということを強硬に主張した。こういうことと、そこで
橋本檢事が、そういう無礼なことを言うならば、徹底的にや
つてやるからということを揚言をしたということと、それを長官は、どうも
感情問題にな
つておもしろくないから、
檢事をかえたんだとおつしやるのでありまするけれども、どうも
横浜地檢における両三年來のやり方というものは、臭いものに
ふたをするようなやり方をして來てお
つたのであ
つて、その
事件件数も明らかなものが六、七件あるにかかわらず、ようやく略式命令で起訴されたものは二件しかない。しかも起訴を免れた
事件も驚くべき綱紀紊乱の
事件である。かようなこととにらみ合せますると、この
橋本檢事を捜査の第一線からしりぞけて
香取檢事にかえたというところに、私がさつき申しましたように、廳内全部の
空氣から推察いたしまして、はなはだ不審な点が多々出て來るのであります。かように三日間も
檢察事務官が
仕事に手がつかなか
つたということは何を意味するのか。そうしてそれならば、
檢事の方に対してもわれわれは大いに暴露戰術をやると言うて脅迫した。これは一体何を意味するのであるか。いずれにせよ、これは最も硬骨をも
つて鳴
つておりますところの
橋本檢事にやらせることが、かような
疑惑を一掃する最高の手段であ
つたと私は思うのでありまするが、それを
香取檢事にかえたということに、どうも釈然たらざるものがあるのであります。長官はかような、今私が申しましたような綱紀紊乱の事実をお聞きに
なつたことがあるのであるかないのか。あるいはまた
調査したことがあるかないか。ここ三年來、この
横浜地檢におけるいわゆる
後藤つぎ事件などというものを中心とした数々の
事件が何件あり、それが不起訴処分にな
つたのが何件あるかというようなことを、
調査なされたことがあるかお伺いいたしたいと思います。