○
今野委員 ただいま
水谷理事並びに
千賀理事からお話がありましたが、私の記憶しておるところを申し上げて御
参考に供したいと思います。
当時この
請願の
採択については、
理事会を開きまして、
理事会の席で百幾つかの
請願が
審議されました。その席でたまたまこの
請願が問題にな
つたのであります。私の記憶違いでないとすば、その席には
原委員長もおられた。そうして
水谷理事が
委員長に
かわられて、
委員長において
採択した際には、ほとんど論議が行われなか
つたように思われます。もつともそれは私の記憶違いもありましようが、
理事会の速記録はありませんけれ
ども、
委員会の速記録はあるはずでございますから、それについて見られたいと考えております。
そこで、この
理事会においてどういうようなことが言われたかと申しますと、大体この問題について
千賀さんが今言われたように、若干の時期尚早ではあるまいかという
反対意見もありましだので——ほかの
請願に対してはほとんど論議なしにどんどんととるべきものはとり、捨てるべきものは捨て、また保留すべきものも保留いたしましたが、この
請願に限りましてはそうい
つた意見もありましたので、特に私が発言を求めまして、この
請願の趣旨を重ねて申し上げました。その趣旨をまた繰返して申し止げますると、第一にこのことは、
日本と朝鮮とは昔からずつと歴史始ま
つて以來切
つても切れない縁にあるし、お隣の國でもあるので、將來もずつと友好
関係を保
つて行かなければならない。不幸にして現在朝鮮はまだ十分に
日本と——
日本自身もそうでありますが、外交
関係を結び得るような
状態にな
つておらないけれ
ども、しかもなお近い將來にそういうことも考えられるのであります、
從つてこの親善
関係を
維持して行くために、このことについて特に考慮する必要がある。ことにその当時私も申しましたが、北朝鮮の平壌において、
日本人の子供がやはりあちらの國費をも
つて教育を受けておる、こういうような事情も訴えました。それでなお特にアメリカや何かにおいては、
日本人はアメリカの
学校に入
つておるというようなこともありますが、これは当然アメリカの市民権があり、アメリカの
國民でありますから、そういうことであるが、在日
朝鮮人の場合には、これはあくまで外國人である。そういうような見地に立
つて、子供を將來朝鮮の
國民としてや
つて行けるようにすべきだ、こう言うような見地から私は特にこのことを皆さんに訴えたのであります。それからなお現在在日
朝鮮人諸君が
教育の問題こそ非常に重要な問題であるとして取上げて、このことに熱心で、みずからの
費用をも
つて、今まで
学校を保
つて來たこと、教科書な
どもつく
つて來たこと、そういうことを申しまして、それが現在の経済
状態によ
つてたいへん行き詰まりを來しておる。だから
現実の問題としてこれを
処理していただきたい。こういうことをお願いして、その結果
理事会の空氣が非常に友好的な空氣のうちにこのことが決定され、そしてそれが
委員会において確認された、こういうような段階を踏んだのであります。
なお私、今まで申しました趣旨をまとめて明瞭にするために、ここで重ねて申し上げたいと存じますが、大体
日本の憲法の八十九條において、
私立学校の締切ができない、あるいはできないこともないとい
つたようないろいろな論議のある問題にな
つておりまするが、しかしながら、この
朝鮮人の場合には、ほかの税金あるいは刑罰というような点において暫定的に
日本の法律に
從つておるということ、これは当然であります。しかしながら
教育という問題につきましては、その仕事、
学校の授業というものは現在行われることでにありまするが、その
教育の効果と申しますものは將來において発生するものであり、
從つてこれについてはそういう適用についても相当われわれとしては加減して考えなければならないのではないか。こういうふうに考えるわけで、單に國内的な見地だけではなくして、そういうような國際的な考慮といいうものを考えて処置すべきである、こういうふうに考えるのであります。本日配布を受けましたこの
昭和二十三年五月の覚書並びに各都道
府縣知事に対する
通牒などにおきましても、特に
文部省の
学校教育局長からの
通牒において、こういうふうに言われております。「この際
朝鮮人の
教育並びに取扱いについては、善意と親切とを旨とし、両民族の將來の親善に寄與するよう取りはからわれたい。」——たいへんけつこうな趣旨で、非常にこの点は私たちとしまして、
日本國民の襟度というものを十分に示すべきである、ことに將來
日本は人にも非常に多いし、ことにお隣の國でありまするから、
日本人が朝鮮に
行つたり、あるいは中國に
行つたりすることも、
從來ほどではないにしても、やはり当然あり得ることと存じますが、そういう際にもやはり日人の子供たちが
日本人としての
教育を受けられるように十分考慮する必要もあるわけでありまするから、そういうような点も考えて、私としてはできるだけこの趣旨が貫徹できるようにお願いしたいと考えておる次第であります。
なおその後の
文部省の処置並びに各
地方の
状況につきましても私もいろいろと聞き及んでおります。しかしながらその際に
文部省から最近本年六月二十九日付で出されました地管第二十五号と称する
通牒でありまするが、この
通牒を読んでみますると、前の場合の善意と親切とを旨とし両民族の將來の親善に寄與するようという趣旨からはずれて、
私立学校であるから今度は
教育費を出すとは適当ではないという法律解釈的な紋切型の
通牒が出ております。これによ
つてその
地方議会の意思や何かが非常に左右されたというような事実も聞き及んでおりますが、もしもそういう事実があるならば、何とかそれを取除くようにしなければならないのではあるまいか。こういう点について、せつ
かく今までの交渉において友好
関係というものを考えてや
つて來ておるのに、ここでも
つて何かそれがつまずくようなことがあ
つてはならないというふうに考える次第であります。特に
文部省がいろいろと申しますが、当時の
森戸文部大臣と
朝鮮人教育対策
委員会の責任者との間に取りかわした覚書においても、
教育費の問題はそこには出ておりませんので、ただ
朝鮮人が
日本の
学校教育法並び
教育基本法に
從つて、
私立学校として自主的な
学校をつくることが認められて、それで認められた方でも、その趣旨を了として、
文部省に対して許可の申請を行い、その法の支配を更ける、こういうことを一應規定しておるのでありまして、これがもしも法の規定を受けるということを極端に廣げますれば、
日本の
学校と同じことを教わ
つて、それ以外のことを教えるわけにいかないわけでありまするが、この
通牒にもありますように、自主性がかなり認められておるわけであります。これに紋切型にこの法の支配を受けるということではなくして、
さきの両民族將來の親善に寄與するという見地から行われるわけであります。
從つて先ほ
ども申したような見地からい
つて、この
教育費の問題は、ここにはあげてありませんが、その問題について、ただ單にこうであるからとい
つて、法律を盾にと
つてやるのではなくして、相当考慮する必要があるのではないか、ことに最近の経済事情が悪化して、財政が非常に困難にな
つて來ておるということは、私も存じております。しかしこの財政の根本問題については、ここではあえて論議いたしませんが、しかしながら同時にそういうときであればこそ、
朝鮮人学校の父兄たちもその負担に耐えることができない。そういうようなせつ
かく始めたものが非常に経営の困難な
状態に立ち至
つておる。こういうような事情をひとつ御参酌くださ
つて、ぜひともこの件についてこの事情を促進して行くように、そしていやしくもそういうような
地方の動きを阻止することがないようにしなければいけないのではないか、こういうふうに考える次第であります。