○
野原委員 先般
東北地方をまわりました概況を御
報告申し上げます。
十二日に出発をいたしまして、青森、
秋田、岩手三縣をまわりまして、十九日に
調査を終わ
つたのでありますが、時間の
関係で詳細なことは
報告書に譲ることにいたしまして、概況だけ御
報告申し上げます。
まず
岩手縣におきましては、
最初縣庁に参りまして、
縣当局から
農林行政に関する種種な
事情を伺い、また
要望などを聽取いたしまして、現地の
視察に
参つたのでありますが、紫波郡煙山村に参りまして、そこの
國有林開放による
開拓地を
調査いたしました。なお
煙山苗圃、これは
盛岡営林署の管内の
苗圃でありますが、これを見て参りました。そうして同時に
山王海の
農業水利のダムの
工事を
調査いたしまして、第一日を終わ
つたのであります。この煙山の
國有林の
開放によるところの
開拓地を見、そしてまた
苗圃事業を見まして、
國有林の造林に対する現在の
施設の一端を見たわけでありますけれども、非常に厖大な
苗圃の
施設を計画的にや
つて、段々成果を上げており、また
國有林開放による
開拓も、非常によい結果を見ておるのであります。ここで紫波郡の矢櫃山と称する一帶の
國有林開放に対する
地元村長たちの熱心な
要望を受けたのでありますが、これらの問題は文書をも
つて御
報告申し上げるつもりであります。
なお
山王海の
農業水利のダムは、すでに昭和二十年度に着手をしてや
つておるわけでありますが、これは有名な
岩手縣における
穀倉地帶とも言うべき紫波郡一帶の
農業水利に対する、非常に大きな
仕事なのでありますが、從來からこの
地帶は水不足で、
水げんかの非常に有名なところでありまして、昨年もこれが映画化されたような
事情もありますが、この完成を非常に待
つております。ところが
工事の方は非常に計画的に進んでおりながら、
予算が非常に足りないというので、この
予算をぜひ増額してもらいたい。あるいはまたその増額ができないのならば、一時これに対しまして金融の
措置を講じてもらいたいという
要望が非常に強くあ
つたのであります。
第二日は
青森縣に参りまして、
青森縣庁で
縣当局から
農林行政一般についての
事情を聽取いたしました後、
青森縣営林局に参りまして、
國有林の
事情を聞いたのであります。
第三日は青森
営林局の
青森苗圃場において、
事業上の各地の
施設、なかんずく
木材利用に関する各種の
施設の現況を
調査いたしまして、次いで
青森縣当局の案内で、
青森縣下における
農業地帶の現況の
調査に終日費やしたのでありますが、時にその中で、
農林省の
園藝試験場東北支場、これは
西津軽郡水元村廻堰の
園藝試験場支場と水元村における
農業水利改良事業の現場を
調査いたしましたところが、
地元團体から非常な
陳情があ
つたのであります。ところでこの
農林省の
園藝試験場の支場は、今回
試験施設の
整理統合によ
つて一應廃止されまして、これが
岩手縣の調川の方に全部移るという計画にな
つておるのでありますが、
地元におきましては、
せつかく二十年間もかか
つて施設をしてようやく
園藝試験場としての新面目を発揮するような段階になつたときに、にわかにこれを持
つていかれることは非常に残念であるということで、これを悲しむ声が非常に強か
つたのであります。この
試験場は主として
りんごの
試験をや
つておるのでありまして、あらゆる品種にわた
つて栽培を研究しておるわけでありますが、ようやくここ一両年の間に幾らかの結実を見るような段階にな
つておるのでありまして、これは廃止しますと、今までの一切の努力が水泡に帰するという
事情も有りますので、この
試験場の問題に対しましては、これが調川の方に移つた場合におきまして、何らかの形で、今までの貴重な
試験結果をむだにしないような
措置を講ずる必要があろう、さように考えたのであります。なお
西津軽郡の水元村を中心とした
農業水利改良事業でありますが、これは
岩木川筋の約一万
町歩以上にわたる
農業水利のために絶対欠くことのできない廻堰の
工事の問題で、
地元の非常な
要望があ
つたので、その個所を見たのでありますが、その
調査いたしました結果によりますと、まさしくあの廻堰を完全に利用し、それに春水をため、
農業の灌漑に資すると同時に、あの夏及び秋にわたる洪水を調節する。それによ
つてあの岩木川一帶に
水害を排除するという、一石二鳥の効果の有る大
事業だと思うのでありますが、この
現状をみますと、はなはだ遺憾ながら手堀り掘
さく式によりまして、
スコツプで土をかき上げておるという
現状なのであります。今日や
つておるような
仕事の
状態では、おそらくあの仕上げるには、今後三十年くらいかかるだろうというようなことが予想されるのでありまして、それによ
つておそらく五万石くらいの増産は確実になし得ると予想されるような大きな
仕事に、わずか六百万や七百万で、しかも
スコツプで
手掘りでや
つておるというようなことは、どうも今日あまり想像できないようなことでありまして、
工事の
現状を見まして、はなはだ慨嘆にたえない氣持がしたのであります。
政府としましては特にこの点を考慮されて、至急三箇年計画なり五箇年計画をも
つて、必ずあの
水利事業を完遂するという根本的な、具体的な計画を立ててもらいたいということを、この機会に
要望しておくものであります。
次いで
青森縣弘前の
工業試験所を
調査いたしましたが、この
試験所は、特に
りんごの
加工等に関するいろいろな
試験を準備してお
つたのであります。なおこの日はいわゆる水田の
單作地帶の
岩木川筋一帶の
状況を見ると同時に、
青森縣特産の
りんごと米麦の
主食生産の調整の
問題等も、実地に見聞きする機会を得たわけであります。さらに
各種公團等の職員からいろいろな
陳情等を受けたのであります。
第四日には
秋田営林局管内の大館に参りまして、大館の
國有林の
事業、あるいはまた
秋田縣立の
林業指導所を
調査いたしました。次いで北
秋田郡上川沿村の
農業災害の
復旧状況を見に
参つたのであります。ここは一昨年の大
水害及び昨年の
水害と、二回の
水害を受けまして、徹底的に堤防が破壊され、田畑が流失した個所なのでありますが、その後
秋田縣及び政府当局の、
災害復旧に対するいろいろな
施設をや
つておるわけでありますが、附近の
町村長たちが多数あつまりまして、その
状況を詳しく見たわけでありまするけれども、はなはだ遺憾ながらどの
仕事もみな中途半端でございまして、一つも完成していない。もし万が一本年
水害があれは、今まで二箇年もやつた
仕事が、また完全に元も子もなくなるというきわめて危険な
状態であることを目撃できるのでありまして、非常に寒心にたえぬ次第であ
つたのであります。幸い本年は大きな水も出ずして、あの
程度の
工事でもどうやら相当の收穫を見たようでありまするけれども、これは何とかして、災害の復旧だけはしなければならぬという点を強く感じたのでありあます。特に
農業水利とかあるいはまた
農地改良に対する
政府の
補助金の
打ち切り等に対する、
地元の
農民の非常な不平、不滿の声を同時に聞いたのでありますが、これらの問題は、ああいう現地を見るにつけても、今後の
農林政策として
農民の眞の熱心な声を政策の中に取り入れて、
政府の施策としてこれを行う必要があろうということを痛感したのであります。
第五日は、
秋田営林局管内の
能代営林署及び七
座営林署の
國有林事業を
調査いたしまして
秋田に
参つたのでありますが、か
つて日本の三
大美林といわれた
秋田杉が、戰時中においての過伐、及び戰後においても相当
むりな伐採をしておるわけでありまして、これに対しまして、いかにして
山林の存続をはかるかという点において、
秋田の
営林局は非常に苦心を拂
つておるわけでありますが、今日の
國有林特別会計の
施設に、十二分の
予算を支出するわけに行かないという
現状に置かれておることを痛感して
参つたのであります。今日の日本の
木材事情等から行けば、何としてもやはりある
程度必要な
木材の伐採はやむを得ないと考えるものでありますが、それと同時に忘れてならぬことは跡地の更新であろうと思う。あとをどんどん植えさえすればある
程度過伐しても不安がないのでありますが、その造林の面において非常に消極的である。そうして伐採の方はあくまでもこれを強行するというようなことが繰り返されましては、
山林の資源というものはその均衡を失して遂には收拾のつかない
状態に行くことは必死であります。もうすでにそういう段階に來ておるのでありますから、そう面においても、今後の
國有林行政に対する
政府の施策に関しましては、この面をも十分檢討していかなければならぬという点を痛感したのであります。
第六日目は、
秋田縣庁におきまして、
秋田縣当局から
農林行政の全般についてのいろいろな実情をお伺いいたしまして、それから南
秋田郡の
下井河村という八郎潟の湖畔にある
單作地帶の村を見たのでありますが、この村のごときは、
耕地面積約六百
町歩であるのに畑地がわずか二十五
町歩くらいきりない。
從つて野菜も自給ができないという極端な村であります。
山林もわずか百
町歩そこそこであるが、そのわずか百
町歩ばかりの
山林も、
開拓者が入
つて約半分以上を耕作しておるというような、もう極端な
單作地帶でありまして、こういう村の
現状、特に本年は
水害で悩まされ、昨年も一昨年も年々
水害のために悩まされるほかに、最近は窒素肥料、金肥のみによる米作の
関係上、随所に稻熱病が発生する等の
関係で、非常に
單作地帶の
農村というものは脆弱な
状態を呈しておるのでありますが、これらに対しては、いかなる手段、処置を取ればよいかという点に関しましては、今後
農林行政として、特に考えなけれがならぬ幾多の問題があろうかと思うのであります。そうい
つたような
状況を
調査いたしまして、その後、第六日の午後は
各地公團あるいはまた
農業協同組合関係の諸君、あるいはまた
林産縣秋田の
森林組合等の方からも各種の
陳情を受けたのであります。
以上第六日にわたりまして三縣の
状況をいろいろ見ましたのでありますが、この
調査におきまして、われわれは各縣の当局、あるいはまたわれわれが
視察に行きました現地、あるいはその附近の各
町村長の
方たち、あるいはまた
農民團体の諸君、
各種公團等、
農林関係の
方たちの非常に熱心な
陳情、
請願等をたくさん受けたのでありまして、一々これを具体的に申し上げる時間はないのでありますが、これらのものは、いずれあとから文書をも
つて一括御
報告申し上げるつもりであります。
この中で、特に考えていかなければならぬと思うような点について、二、三申し上げたいとおもうのでありますが、特に
岩手縣におきましては、この
山林縣岩手の面積は非常に厖大でありまして、その厖大な
岩手縣として、特に
山林が非常に多い約百万
町歩以上が
山林であります。その中に
國有林が四十万
町歩以上を占めておるという
関係上、
國有林の
開放等に関しましては非常に眞劍であります。今回
國有林の
開放に対しましては、從來の
放牧地、
採草地等が一應
開放されるという段階になつたことは、
國有林開放の端緒を得たものとして、
地元の
農民は非常に喜んでおるわけでありますが、なお
國有林に接壤しておる
地帶、
國有林の
開放によらずんば、とうてい健全な
農村をつくり得ないと考えるような
地帶の山村におきましては、引続き
國有林開放を非常に熱心に望んでおるのであります。あるいはまた
從來國有林はもちろんのこと
林産縣として、從來から林産物の
政府への
生産供出に対する責任を負わされておつたために、日本一の
木炭縣であるとか、
木材縣であるとかいうことで、大いに縣民は勇んで伐採した
関係上、ほとんど手近い
山林はまつたくないとい
つてよろしいような
現状にな
つたのであります。從いましていやが應でも奧地の未
利用資源地帶を
開発するという必要に非常に迫られておる。特にそのためには林道をつく
つて、この奧地の
開発にあたらなければならぬという声が非常強かつたわけであります。これらに関しまして今後の
治山治水の面から、あるいはまたその
森林資源の
開発という点から見まして、特にこれらの地点の諸君の
要望するような、
林道施設等を國家の
予算をも
つてやるというような点を、この際考えなければならぬと考えるものであります。
なお
從來馬産地帶として、軍馬の
生産は全國の約三十パーセントにも近いものを出してお
つたのでありますが、もう
馬産地帶から漸次
酪農、牛等にかわりつつある
現状でありまして、
酪農村におきましては
農村の
立体化、立体的、多角的な営農の方針をも
つて、乳牛の
導入等をはか
つて酪農をやりたいという声が非常に多いのでありますが、何分にも乳牛を入れるためには非常にたくさんの
予算を必要とする。しかるにどの
農村におきましても、乳牛を買うだけの金がない。自分の手持の資金をわずかずつ集めても、ほとんど思うような乳牛を買えないのであります。
酪農協同組合等も各地にできまして、着々なけなしの金をはたいて、乳牛を導入しておるわけでありますが、ここにわずかな資金さえあれば、きわめて容易に乳牛の導入が可能となるのであります。そういう点から考えまして、畜産の振興という問題に対しましては、乳牛の導入であるとか、そういつた
酪農に関する何らかの金融的
措置等をこの際特に
政府は考慮する必要があると思う。これはひとり岩手ばかりでなく、そういつた畜産の各
地帶におきましては、まつたく同様のことが繰り返しわれわれに
要望されてお
つたのであります。
なお
岩手縣は、
農村工業に対しましては非常に熱心に
縣当局は指導し、計画をしております。基幹工場が約十一設定されまして、それに三十五の
農業協同組合を助成して、それぞれの農協がいろいろな
農村工業をや
つておるのでありまして、非常に多角的にあらゆる部面にわた
つて農村工業が芽ばえておるのであります。しかるに
せつかく芽ばえました
農村工業も、最近の金属の
事情等よりまして、
せつかく芽が出たがしぼんでしま
つておるという
状態でありまして、これに肥料をや
つて芽ばえた
農村工業の芽を伸ばしてやらなければ、
せつかくの努力もまつたくこれまた水泡に帰するというきわどい段階にありますので、
農村工業に対しましては、今後
政府の積極的な施策を
要望するものであります。
さて薪炭郡として年間一千万表からの
木炭を
生産しておつた
岩手縣としまして、今回の特別会計による薪炭の
政府買上げの停止は、まさしく産地としては致命的な打撃であ
つたのであります。これに関しましては各方面からいろいろな
陳情等もあ
つたのでありますが、從來
政府の買上げによ
つて辛うじて
生産を行い得た奧地林
地帶が、今回の停止によ
つてまつたく採算が取れないという
状態になり、奧地の多数の
生産労働者が、失業者として追いやられるというような段階にな
つておるのであります。急速にこれらの点からも奧地林の
開発等に関しまして、林道とかあるいはまた
生産者に対する補助であるとか、
政府の強力な施策を必要とすると考えるものであります。なお最近統制の解除の氣構えに関しまして、各業界の、特に中央から卸賣業者等が、陸税として産地に現物を買いあさりに参
つております。はなはだしいものは一俵わずかに六十円で買つたという例さえあるのであります。最近
岩手縣に買いつけられた
木炭は約一億円に上るであろうといわれておりますが、これはもつぱら東京の薪炭の卸賣業者であるという点に、この際われわれは重大な関心を拂うべきであろうと思うのであります。聞くところによると、東京における薪炭の卸賣業者は、
政府に対して支拂うべき相当多額の債務を持
つておりまして、この返済は、遅々として進んでいないということが言われているにもかかわらず、一方においてどこからこの金を出したのか知らぬが、産地
岩手縣等に行
つてどんどん買い付けをしているというような事実、これは各産地の人たちのだれが來た、あれが來たという実例を上げての話でありますから、こういう事実があるということは、今後の薪炭特別会計を処理する上において、われわれは重大なる関心を持たなければならぬということを痛感いたしたのであります。
なお
青森縣におきましては、特産物の
りんごについて
縣当局においても非常に力を盡くしているわけでありますが、一箇年の
生産約七十億円が
農民のふところに入ると言われているきわめて大きな問題でありますので、これが消長は
青森縣といたしましてはまつたく最大の関心事であるというように言われておるのであります。ところが最近におきましては、國内における消費の方面においてもすでに行詰りの
状態を呈しておる。從
つて今後
りんごの加工によ
つて、これを海外に輸出貿易をするということを考えなければならぬというので、
青森縣ではこういつた方面に対する積極的な施策が
要望されるわけでありますが、縣におきましてもすでに縣立工業
試験場等におきまして、これらの対策をも着実に講じているようであります。特に
青森縣の一番大きな問題は、
りんごと同様に、いやそれ以上に大きな
農村問題といたしましては、先ほども触れましたが、岩木川一帶の
農業水利、灌漑用水及び
水害防止、この両面の対策をいかにするかという問題に帰着するのであります。おそらく岩木川の筋くらい水の問題で悩まされて來た
地帶は日本でも多くなかろうと思いますが、いわゆる
岩木川筋の非常に豊饒な
地帶でありまして、ここがほんとうに
農業水利の心配なく、あるいはまた災害のおそれなしで行くならば、
青森縣の米收高は今日よりもおそらく二十万石いな五十万石も増すのではないかと思うのであります。またこういう問題が解決されれば、少なくとも一万
町歩以上の新規の開田が可能であるという点も合わせて考えるならば、この問題をなぜ今まであのような
状態で放
つておいたか、まことに了解に苦しむのであります。これは先ほど申しました廻堰の堰堤
工事を急速に行うと同時に、今日まで建設省が内務省当時からや
つて参りました岩木川の改修
工事がきわめて不徹底でありまして、実行してからすでに二十五年にもなりますが、二十五年もかか
つていまだにらちがあかないという
現状から、これを急速に処理する必要があると思います。あるいは十三湖の干拓の問題もこれまた
農業水利と合わせて考えていかなければならぬ問題であろうと思いますが、要はこの岩木川の全般に対する根本的な対策が統一されてないという点であろうと思います。岩木川上流
地帶には、從來から
縣当局等が、この岩木川の奧部にダムをつく
つてもらいたいということを、非常に強く
要望しておるようでありますが、これらの問題も同時にこれを考え、そしてまた廻堰の堤防によ
つて農業水利及び灌漑、又洪水調節等もはか
つて行く、それからまた
岩木川筋の改修
工事によ
つて悪水を排除するとか、あるいは塩水の流入を防ぐとか、あるいはまた機械力によ
つて、灌漑、排水を行うと言
つたような、各方面の対策を一緒にして行くならば、この
仕事は必ず成功できると思うのでありますが、各分野がそれぞればらばらなことをや
つておるという点が、今まで長い間日時を費やし、
予算を使いながら、なおかつ効果が何らあが
つていないという点に帰するのであります。その点を特にわれわれは痛感して参つたわけでありま
すが、大きく見れば
青森縣の問題は、
りんごに対する対策、そしてまた岩木川の水利全般の問題、この二つに帰すると私は断言できると思うのであります。
なお青森
営林局におきましても、いろいろと林業
関係の事柄に対しましての話も聞いたのでありますが、これらのものは一應省略をいたします。
秋田縣の方では、水田の
調査をやつた後、
單作地帶へ参りまして、いろいろと
事情を伺
つたのでありますが、先ほどすでに申し上げた通りでありまして、こうしたいわる
單作地帶と称せられるような
地帶が非常に多いのであります。
秋田縣の水田の全体の約八〇%以上がいわゆる
單作地帶として考えられるというようなことでありまして、
秋田縣はその意味においては、米が非常にとれて何か裕福な縣であるというふうに考えられておることは非常に残念で、
秋田縣は実は非常に経済的には脆弱であるということを
秋田縣知事はわれわれに対して強くこの点を強調しておられたのであります。われわれもまた同様に、あの
單作地帶の村を見たときに、これは容易ならざることであることを痛感してお
つたのでありますが、それにつきましても、何とかしてあの
單作地帶の
農村に対して活を入れたいということをわれわれは考えておるのであります。懸当局にしましても、その点をいろいろと考えて、苦心してや
つておるようでありますが、結局うまい方法がない。蓮池知事は農政においては相当の権威を持つた知事でありますが、蓮池知事も実はこの
單作地帶の全部を救う具体的な施策ありやと言われても、実はそれはないのだ、どうも困つた。この
單作地帶をある
程度畑作に切りかえて行くことによ
つて、この脆弱性を少しでも直したいと思う、從來から耕地整理などをやる場合において、
相当程度畑があつたと思われる
地帶さえも、耕地整理をして水田をふやしたい。水田にのみ依存する、水田だけを非常に重要視するというような一時の風潮が、こうした畑までもことごとくこれを水田にしたということのために、村でみそを煮ようと思
つても豆もできない、野菜も買
つておるというような、非常にびつこな村にしてしまつたという点を強調されまして、今さらどうも水田を畑にすると言うと笑われるかもしれないけれども、ほんとうの正直な話をすれば、
秋田縣は
相当程度畑作に切りかえる以外には助かる道がないということを蓮池君は特に強調してお
つたのであります。私どももこの点に関しましては、事きわめて重大でありますので、今後これは大きな研究課題として慎重に考慮いたしたい。一まずそのお考えをお伺いして
参つたのわけでありまするが、これらの問題も今の
供出制度等に関連いたしまして、再檢討を要するのではないかということを、この機会に特に
報告しておく次第であります。
農村工業等に関しましても、
秋田は相当にや
つておりまするけれども、結局
單作地帶としてとれるものは稻のわらだけであるので、大した
農村工業のできるはずはない、結局わら工品を少々作るという
程度のこと以外には一歩も出られないという情ない
状態で、いろいろなことをやりたいけれども、結局できないということを痛感してお
つたのであります。
木材縣としても
秋田は相当な日本有数の
生産縣でありまするが、
林産縣と
單作地帶というようなものは、地理的には相錯綜していない、両方とも孤立しているような
状態である。これをうまく組合せて行くというふうなことが地理的にできないというような
状態を考慮するときに、宿命的に
單作地帶の問題は、今後大きな考慮を要する必要があろうというふうにわれわれは見るのでありまして、アイオン台風、カサリン台風によりまして、二箇年間大きな災害を受けた
秋田の
農村の
方たちが、二度の
水害にも屈せずに非常にがんば
つている、本年の
岩手縣も同様でありますが、岩手、
秋田、青森三縣とも非常に
水害を受けたにもかかわらず、
農民は非常な努力によ
つて、本年は三縣ともまれに見る豊饒を告げております。われわれが行つた当時に、すでにもう早場米の刈取りにいそしんでお
つたのでありまして、早場米
供出制度等の奨励金等は、どんなことがあ
つてもやはり
東北農村の実情からこれは続けてもらいたい。
供出制度の存在する限りは、早場米の奨励金を打切
つてもら
つては困るという率直な声も、われわれは同時に耳にしたのであります。その点から考えましても、早場米の
供出に対しまして、
政府のや
つている今日の
措置は、正直なところ画一的であ
つて、もう少し時期的に、
地元の
東北地方の現況を考慮してや
つてもらいたいという声も非常に強くあつたことを、この機会に
報告しておきます。あるいはまた
農村水利、あるいはまた耕地改良、あるいはまた災害の復旧等に対しまして、
農村の実情はどうしても
政府の全面的な努力を必要とするという点を、特にどの縣の
農村も強くこれを強調しておつたことを同時に
報告するものであります。
薪炭の特別会計等のことに関しましては、これは一括して書類で御
報告申し上げますが、各
生産地としましては、この輸送途中等においてなくなつたというふうな事態もいろいろあるようでありますが、各
木炭事務所においては、熱心にこれが整理に当
つておるのでありまして、この整理の中間
報告的なものをわれわれは聞いて
参つたのでありますが、当初予想したよりは、途中のそういつた赤字等はだんだん解消されて行
つているようであります。特に各
生産地帶において、受入れ調書によ
つて買入れをしたというようなものに対しては、現物を補填させるとか、あるいは賣りもどしをするという強硬な
措置をと
つているのでありまして、これらの点は各
生産者が責任を持
つて木炭事務所と折衝しておりますので、そういう問題としましては、ほとんど事実上の支障を來すような場合は非常に少ないということを、各
木炭事務所長は強調しておりましたので、われわれはいかなる場合があ
つても、まじめに特別会計の整理に当
つてもらう限りは、農林
委員会としてはできるだけ諸君の身分は保障するという申合せでや
つておりますから、安心してひとつまじめに整理に当
つてもらいたいということを強調して
参つたのであります。
いろいろと御
報告申し上げたい点もありますが、時間が参りましたので、以上簡單ながら
東北地方の概況を御
報告した次第であります。