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池田國務大臣 米を四十万石つぶすことは、
食糧不足のときにいかがか、いもその他でや
つてもいいではないかという問題と、家庭配給の問題がございましたから、私の
考えている
ところを
お話し申し上げます。
從來わが國におきましては、昭和十一、二年ごろまでは、清酒用として大体三百万石から多いときには四百万石つぶしてお
つたのであります。一昨々年はぐつと減りまして三十三万石、十分の一になりました。從いまして、全國津々浦々に密造の起
つていることは
井上先生も
御存じの
通りであります。これは米の豊作の
関係もありますし、また密造防止対策の
関係もございまして、
関係方面の了解を得まして、約十万石ふやして四十三万石にな
つたのであります。しかし
日本の実情から申しましてまだまだ足りませんが
お話の点もありますので、急速にふやし得なか
つた状態であります。
それからいもの問題でございますが、これも一昨年までは二千五、六百万貫をアルコールにいたしております。昨年はいもの豊作で七千万貫程度やりました。これからアルコールをとりまして、しようちゆうとか合成酒にいたしております。しかしお
考え願わなければならぬのは、いもを使
つて合成酒をつくり、しようちゆうにすればよいとおつしやいましても、この点、ここに石炭が一トンあ
つた場合——石炭も米と同じに大事であります。石炭一トンでいもを酒にした場合、
税金が十二万円しか上りません。石炭一トンで米を材料にすれば、前の
税率でございますが、六十万円上る。こういう
ところから
考えますると、やはりいもをある程度食べてもら
つて、米をつぶした方國家経済全体から言
つたならばいいんじやないか。またこれを合成酒にしますためには、琥珀酸とか乳酸とかいろいろな原材料が要りまして、かえ
つて合成酒より
日本酒の方が生産價格が安いという状態にあるのであります。いもでつくるという
方法も
考えておりますが、いもはあ
つても石炭がないというので制約を受けているのであります。しかし、やはり米はなるべく使わないようにという
関係方面の指導もありますので、いもでも
つてどんどんつくるようにいたしております
関係上、今年は相当増産いたしまして、一升六百五十円であ
つたしようちゆうを四百五十円に引下げる
ところまで行
つたのであります。しこうして家庭用の配給につきましては、先ほど申し上げましたように、三十三万石の米では一年に成年男女に二合二勺しか配給できません。一年に二合くらいの家庭配給ということはナンセンスである。ようやく四十三万石になりましても三合程度にしかならぬ。そのために家庭用配給というような看板をかけるのもいかがか。それよりも酒の値を下げて、安くて自由に買えるようにした方がより民主的にないかというので、原則として酒の家庭配給はナンセンスに属するからやめて、値段を安くして、いつでも買える、どこでも飲めるという
方法をと
つた方がいいと思
つてや
つたのであります。しかし全然
制度上家庭用配給をやめるということにいたしたわけではございません。なお最近におきましては、御承知の
通り切ぼしいもが相当ございますので、これをしようちゆうにすべく
努力いたしております。それによ
つてふえて來ますれば、正月ぐらいには酒の家庭用配給ができるのではないか。実はこういうような
関係でや
つておるのでありまして、決して
やみ酒を多くするとかなんとかいうのではなしに、国民
一般に安い酒を飲んでいただいて、そうして一方では税收を確保する。酒の値段は過去十数年ずつと上げて來たのを、今回酒の値段を下げて、そうして
收入を確保するような
方法をと
つた次第であります。御了承願います。