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安孫子政府委員 最初に
補正の問題をお答え申し上げたいと思います。
先ほどお話がございました、当初八百万石
程度府縣から要求があ
つたのに対して、三百万石
程度に
政府が
決定をした
理由いかんという
お尋ねでございますが、これは
お話の
通り、
還元米の
数字ではございませんので、昨年の秋におきまする二十三
年産米の
実収高に対しまする
補正の訂正の問題でございます。御指摘の
通り、
府縣から
補正数量として要求されたものを総合いたして見ますと、おおむね八百万石であ
つたのでありますが、
事前割当数量が二十三年事産米については六千三百万石弱であつたと思います。これに対しまして、
補正を八百万石にいたしますと、おおむね五千五、六百万石
程度の二十三
年産米の
実収という
数字になるわけであります。昨年の
作況をも
つていたしまして、そうした
数字は、私
たちといたしましては、また一般的に申しましても、これは
納得のできないものであろうと思います。しかしながらこの点については、
府縣当局もまことに真劔な主張をいたされましたので、実は
作況報告事務所あるいは
食糧事務所の
調査並びに
府縣の御
意見、またわれわれの方の
地方の、例の出張して
調査いたさせました点、各方面の
資料を総合勘案いたしまして、
補正を大体三百万石
程度に
決定いたした次第でございます。その後十二月におきまして
推定実収高が発表されたのでありますが、おおむねこの
推定実収高との間には、大きな狂いはなかつたと
考えております。
次に
轉落農家の
防止措置はどういうふうに
考えておるかという点でございます。これは非常に根本的な問題でございまして、
供出制度自体の
考え方から問題は発生して來るのであろうと
考えます。あらゆる
資料が完全に整備されまして、公正妥当なる
供出割当が実施されますならば、
轉落農家の問題というものは、理論的にはあり得ない問題であります。御
承知のように現在においては、
完全保有農家と
不完全保有農家の二つに
農家は
区分いたされておりまして、
完全保有農家については、
供出農家でありますがゆえに、その
農家に対します
食糧の
配給ということは
考え得られない。
不完全保有農家については、
保有数量がどれだけその
農家について持つか、その
維持日数の点が問題になるのであります。これが先ほど申しましたように、完全な
資料のもとに実施いたしますならば、
轉落農家の定義の問題でございますが、要するに
完全保有農家に対する
配給、あるいは
不完全保有農家に対しまする
維持日数の違いというようなものは、ひつくるめて
轉落農家の問題として論議されておるのでありますけれ
ども、そうした問題は理論的にはあり得ないのでありますが、実際問題としては非常に深刻な問題であるわけであります。一つの原因といたしましては、今の
供出制度が上から一應
数量が
農業計画としておろされております。それが縣に参り、あるいは
市町村に参る。その
農業計画のうち特に問題になるのは、
供出量でございます。これが
市町村において何万石あるいは何千石というふうにおりて参りますと、そこの
実収高が従来のいろいろの材料によりまして確定をいたしておらぬ、それに
供出数量が参りますために、ある村においては全体の
数量が非常に甘い、またある村においては非常に辛いというような
現象が、どうしても不可避的になるのであります。
生産量から
保有数量を引いたものが
供出数量になるわけでありますから、それが上からおりました
数字との食い違いによりまして、比較的甘い村と辛い村とが出て来ておるのであります。甘い村につきましては、各
農家とも
保有量のほかにプラス・
アルフア—を持ち得るという
状態の村もあります。ある村におきましては、きついために
保有量を食い込んで出さなければならぬ村が出て来る。またこれが村から各
農家に下
つて参ります際に、またそうした問題が惹起されておるのであります。その結果、
法律の建前は先ほど申し上げた
通り、そういうものが出ないはずのものであるにかかわらず、
現実におきましては
完全保有農家が
保有を食い込んで
供出をしておる
部面、あるいは一部
保有農家がある場合には
配給を受けておらぬという面が出て来ております。この問題を解決いたしますためには、
先ほどお話がございましたように、
管理台帳とか、あるいは
生産高の
把握、あるいは公正な
補正の
決定等、いろいろ客観的な
資料を整備して参りまして、またこれに
関係いたします者といたしましては、公正な
立場において
割当あるいは
補正を
決定して行くということが、どうしても必要であろうかと思います。その点についていろいろ
努力をいたしておるわけでありますが、しかし
現実の問題としては、どうしてもそうした
部面が残りますために、われわれといたしましては、
農繁期等において
轉落農家の
救済措置を、何とか
考えて参らなければならぬと存じております。この辺になりますと、各縣の
実情によりまして、その年の
農業生産に
支障のないように処置を講じて参るというようなことで、
目下努力をいたしておる次第であります。
轉落農家の
防止策につきましては、やはり今後とも客観的な各種の
資料を整備し、またこれに関與いたします者が、公正妥当な
結論を得ることに、相協力してや
つて行くということが最善のことであろうと
考えております。
なお
轉落農家の発生いたします
理由は、そのほかに
実収前に
補正が行われるということが一つ問題として残
つております。
補正をいたすのが大体十月末から十一月でありますが、
実収が確定いたしますのが十二月でございますので、その間
補正をした後におきます
作況の変化というものは、特に
関東以西においては惹起されまするので、この辺の動きが
轉落農家の問題に
関係があると存じております。この辺も予想いたして
補正いたす
部分もございますので、完全とは申せませんが、やはり十分の
補正を適正にや
つて行くということに
努力して、この事態を改善して行きたいと存じております。
それから
作報の問題でありますが、実は
作報の
調査は、ただいまの
統計技術面から申しますと、最も進んだ理論的の
根拠を持つ
調査でございますので、この
結論につきましては、私
どもといたしましても正しいものであると
考えております。ただこれを
行政面に使いますについて非常に困難をいたしております点は、要するにただいまの
作報の
面積の問題にしろ、あるいは
生産高の問題にしろ、縣べ
—スとしての
数字しか出ておらない。なわ延の点についてもある縣においては、なわ延が五千町歩あるということが、理論的なはじき方をして出たといたしましても、一体それがどこの村にあるかということがわからないのであります。ただ
縣全体としてどこかにそれがあるはずだということでありますので、この点がわれわれといたしまして、
行政面にあの
数字を活かして行く上に非常に困難をいたすのであります。また
実収高にいたしましても、
縣全体としての
実収高はこれこれであるということは言えるのでありますけれ
ども、何村、もつとこまかく申しますと、だれが幾らであるというところまで、この
統計は進んでおらぬ。実際に
行政上そうして参りますためには、少くとも
町村の段階まで、なわ延の
面積にいたしましても、
実収高にいたしましても、
作報の
数字というものがかたま
つて参らなければならぬと存じます。
從つて農林省といたしましては、
作報の機能をそこまで伸ばして参るという
方向で進んでおるのであります。それが確立いたしますまでにはやはり多少時日を要しまするので、その間の
状況につきましては、われわれとしては、縣の御主張なり、あるいは
食糧事務所の希望、その他
農業調整員の方々の御
意見を十分織りこ込みまして、その間、時間的な問題のあるところを、できるだけ公正に補填して参りたいとも存じておる次第であります。