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石井委員 農地調整法の一部を
改正する等の
法律案につきまして、
日本社会党を代表して討論いたします。
日本の
農地改革が非常に画期的なものであり、そうして短日月の間に多くの
農地を開放いたしまして、今まで
小作人として拘束されてお
つた者を開放した功績というものは絶大なるものであり、この基本の
法律が
農地調整参法であり、あるいは
自作農創設措置法である。この
法律が
日本の民主化の線のために多大の功績をあげたことは、われわれはよく承知いたしておるのであります。その
農地改革というものが非常に大きなる効果をあげまして、ある一部におきましては、もはや
日本におけるところの
農地の
改革というものは、もうこれで十分である、あるいはもう
行き過ぎをしておるというふうな論をいたす者がありますけれども、しかしながらつぶさに
日本の
農村問題を
考え、
日本の
農地のことを考慮いたしますると、ここにおきまして重大なる決意を加え、新たなる構想のもとに、
日本の
農村の問題、あるいは
農地の問題に対して対処いたさなければならないということは、各議員の方はもちろんとして、あらゆる
農村に関心を持つ者がみなこれを了承いたしておることと存ずるのであります。かようなるときにおきまして、
日本における
農地改革の諸原則を、
極東委員会におきまして
マツカーサー司令部にあてて通報せられ、本日その要綱が
農林大臣によ
つて、本
委員会において述べられたということを
考えてみましても、まだ
日本におけるところの
農地改革の前途は、非常に大きなる問題を含んでおり、開放されたる
農地をまたいかにして維持すべきかということにも関連して非常に重大なるところの決意をいたさなければならないと
考えておるのであります。今度の
極東委員会が
マツカーサー司令部に対しての通達、これらが今後いかなる形において
日本の
農地改革の前進の上に具体化するかということは、これは別問題として、この開放されたるところの
農地改革の上に立ちまして、なお大きなる構想と多くの含みをもちまして、今後に善処する、こういうことが非常に重大なる問題であろうと思います。この構想のもとに、この
農地調整法の一部の
改正が進められたということにつきましてはわれわれとしまして、この
当局の
努力を賞讃するにやぶさかならざるものがあるのでありまするが、しかしながら
日本における一般の風潮、並びに過去三年余にわたる
農地改革のあらし、こういうような面を考慮いたしまして、ただちに今度の
改正が妥当であるか、あるいはその
改正をまたずして、今しばらく現在の
法律の前において、そうして一應の
農地委員会が今までの仕上げ等に
努力をいたしまして、そうして有終の美を保たせる方がいいかどうかということにつきまして、
相当に
研究をしなければなるまいと思うのであります。何かかれこれ申しましても、今度の
農地の開放等を通じまして、これほど深刻に打撃を受けた。——今まで村におけるところの有力者であ
つたところの
地主の層が没落をする、ある
意味におきましては大名あるいは殿樣というような地位の
地主の人が没落をしてしまう、あるいは村において最も貧しいところの
小作農の層というものが、村における有力者層に擡頭する、こういうような驚天動地の変化をもたらしたるこの
農地改革、これは非常に重大なる問題で、ある
意味においては
一つの大きな革命であるということができようと思うのであります。こういう大きな仕事をしたあとでありますから、
農地改革にあたりまして、
地主側の方の了解をも
つて問題を進めたり、あるいは
小作人にも十分の理解を持たして
農地の開放を進めましても、
農地の開放をさせられた者としましては、非常にこれについて不満を多く持
つておるという点が多かろうと思うのであります。たまたまこういうふうな状況にある、ある
意味におきましては、ある時代が來たならば、いつか開放されたるところの
農地も奪還ができるのではないか、あるいは現在保有しているところの
土地がまた取返えせるのではないか、今までの
終戰後のどさくさまぐれにうまくしてやられたんだ、ここで何とかひとつおちついたところで
自分たちの立場を回復いたそうではないかというような氣分が、
相当に濃厚にあるのではなかろうかと思われるのであります。そうして今までのいきさつからしまして、もし
農地の
調整法等が
改革をせられまして、
農地委員の
階層区分等が変更いたしたならば、今度は有利な大勢をつく
つて、
自分たちの今まで不利益を受けてお
つたところの立場を、今度は委員数を確保することによ
つてこれを回復をしようじやないかというふうな動きが、
相当に多く現われるであろうということは、
考えられるわけであります。そこでそういうふうな
農地改革におきまして、今まで委員の
構成というものを大きくかえまして、そうして
階層区分等をかえまして、新しく今回の
農地の開放あるいは
農地の交換分台、これに臨みますと、その間に非常に大きなる摩擦が生ずるのではなかろうかと
考えられるのであります。御承知の
通り農地の開放をさせられた者は、何らかの形によ
つて原状に回復したいという
氣持がある、これに対しまして
小作人側の方としましては、ある
意味において、
自分たちが安い價格において
農地の開放を受けたんだ、このことについてまた何らかの反撃がありはしないか、こういうふうに
考えるような部面がある。こういうふうな氣分をむき出しのままにおいて、そうして
農地委員の階層の変化等をいたしまするというと、せつかく仕上げて、ある
意味におきましては、もうこういうものであるとい
つてお互いにあきらめ、安定した多くの人々に大きな動揺を起し、一應安定した
農村にまた
一つの危機をもたらせるようなかつこうを発生するのではなかろうかと
考えれらるのであります。この点につきまして、一番われわれとして心配をいたすのでありまするが、つまり現在の
農村におきましては、
農地の開放は非常に進んでおる。今までの
小作人も
自作農にな
つておる、あるいは
地主も
自作農にな
つておる、こういうふうな形が非常に多く現れておるのであります。そうしてこれらの
農地改革等に携
つた人々は、
行き過ぎたものはこれを是正し、行き足らざるものはこれを直しまして、そうして
農村の
実情に即したところの仕上げをやりたい。こういうことは
農村の
実情に立ち入
つた人はだれしも
考えておるわけなのであります。つまり現在の
農地開放等に携わ
つた人々が、いろいろな
意味においてこの最後の仕上げをやる、そうしてこの
農地委員会を
農地開放の
委員会から、
農地管理委員会というような形に仕組みがえをいたしまして、
農村の
実情に即した——
農村恐慌等においても、
土地をなくしまして轉落し、あるいは
農村を去るような
農家を発生せしめないように
努力をいたしたいというような
考え方を、非常に持
つておるわけであります。つまりこの
法律で
規定するような
趣旨を
農民のみずからの
考えや、みずからの
努力によ
つて実現いたして行かなければ、
農村は保てない。こういうふうな
氣持を多く持
つておるのではなかろうかと
考える。いろいろの
意味において、
農地の
改革をまじめに扱
つたところの
農村の
農地委員会は、みなかような
氣持を持
つておる、また村の人々もかような
氣持を持
つておるわけであります。そこでそういうふうな立場にみなな
つておるのでありまして、そのときに今回のような
農地委員の
階層区分をかえまして、そうして
地主が二名、
小作農が二名、
自作農が五名というふうに大きな変化をいたさせるということになりますると、今回のこの
階層区分の変化によ
つて、
自分たちの推出の機会とか、あるいはまたこういう変化があるのではないか、この際におきましては何か
自分の立場を有利に展開いたしたい、
法律もさような
趣旨においてできたのではなかろうか、こういうふうに誤解をいたしまして、そうして今まで仕上げた
改革の線を逸脱するようなる
農地委員会ができるというおそれが多大にあると思うのであります。そこで実質上今までに
農地委員の
選挙人名簿等もできまして、ちやんとその
方針がきま
つておるのであります。
小作、
自作、
地主というふうに前の層によ
つてきま
つておるのでありまして、こういう立場からしまするというと、今までの数をそのまま利用いたしまして、そうして
農地の開放を受けた
小作人が
自作農にはな
つておりますけれども、一應
小作人というような立場において選舉されて來る、あるいはまた
農地の開放を受けて
自作農にな
つた地主も、また
地主というふうな層によ
つて選挙を受けて來る、そうして二、三、五、の前率によ
つて選挙されて來まするというと、互いにその間に選出せられる人々は、前の
農地開放等によ
つて苦労した人であり、非常に骨を折
つた人々等が
相当多く進出をいたしまして、最後の仕上げというものに邁進をいたし、さき申しましたように足らざるを補い、
行き過ぎたるはこれを是正いたしまして、そうして
農村に
農地開放についての最後の仕上げをいたし、またその上に
農地開放委員会より
農地管理委員会への進出を企図いたすようになろうかと
考えるのであります。われわれはこういう
意味において、つまり
農民がいろいろなる経驗を通じ、大いなる変動を通じまして体驗をいたしたところのこの経驗を、最後の仕上げに適用せしめなければいけない、これを活用せしめなければいけないと思うのであります。
農地調整法等がかわ
つたというふうになると、何か今までの空氣からしまして、非常に
地主の方に有利にな
つた、取られた
土地が取上げられるようにな
つた、
農地委員の数もうんとかわ
つて、今度はわれわれが有利に仕事ができるのではないか、こういうふうな
考え等をいたしまして、そうして要らざるところの波瀾を
農村に巻き起こすというような場面が非常に多かろうと
考えます。こういう
意味からしまして、われわれはもはや実質上においてかわ
つたところの
小作人、あるいは内容上かわ
つたところの
地主を多く含んでおる現にできておる
選挙人名簿ではありまするが、最後の仕上げを、今まで
努力した人の層を多く出させまして一
小作人から選ばれるのでありますけれども、その実は
自作農でありましよう。こういうふうな、前に苦労したところの経驗者を実際に多く選出をせしめまして、
農地開放の最後の仕上げをする。この仕事は非常に複雜でありまして、二年の短期をも
つてしましては、新しく入りまして、この
農地開放の仕上げ並びに
農地管理委員会への轉向等をせしむるということは、新しく入
つて來た人等によ
つては、非常に困難を含むのでありまして、前の
階層区分、前の
選挙人名簿を利用いたしますれば、経驗のある人々が多数選出せられ、そうしてお互いの氣分も、
農地開放に対する最後の仕上げをし、救うべきは救い、正すべきは正して、そうして
農村に新しい行き方を示して行く、かような
考え方をその間に助長するのではなかろうかと
考えるのであります。たしかにこの
農林省のねらうところの、
農地関係に対する
改正の法案は、今後の
農村の行き方、
農地の管理のあり方、特に
土地改良法とまちまして、
農地の
交換分合等をねらいまして、非常に大きな進歩性を持
つておるのでありまするが、
農林省が多くの進歩性を持
つていると一緒に、
農地解放に携わ
つたところの
農民も、これを通じて現在の
農村の経済機構その他とにらみ合せまして、
農村の進歩のことにつきましては考慮いたしておる。そういうふうな人人の層をまた最後の仕上げに使う。こうして有終の美は保たれる。いたずらに
農地調整法等の
改正が、昔に帰るというふうな夢を持たせて、
農地委員会等を撹乱せしめるというふうなことを、発生せしめないことが必要ではなかろうかと思うのであります。由来、
法律をなるべく早くつくりまして、
農民あるいは各
方面に迷惑をかけない、なるべく
農林省が率先して
法律をつく
つて、指導して行きたいというこの
努力、この熱意に対しましては、われわれとしましては大いにこれを多としなければならないのではありまするが、実際におきましては、
農民の創意、
農民の工夫のみが、経済恐慌等をにらみ合せて、幸いに
農地開放を受けたので、
自分たちの独自な立場から、
小作人として
土地取上げ等の不安も抱かず、今後の
農地をどうすべきかというようなことに対する
考えが、芽生えつつあるわけですから、やはりそれからの経驗を生かしまして進めて行く。この
規定にあるようなことは、
農林省がいろいろと次官通牒等をもちまして指導して行きますれば、それによ
つて実現する。そうしてある
意味におきましては大革命であり、
農村に多くの波瀾を生んだところの
農地開放の仕上げ等をここ一、二年の間に仕上げまして、その後において全
農村において
階層区分を除くと、さつき
農政局長も
言つておりました
通り、全部が一国となりました
選挙に移行するというふうな立場を取ることが、実際上の最大の効果を得るわけではなかろうかと
考えるわけであります。われわれはかような
考えからしまして、この
法律については、非常にその進歩性を認め、その
努力を多とするところであります。現在におきまして、
農地調整法の
改革等が、今度は、今まで開放された
土地の取返しができるのではなかろうか、民自党が天下を取
つたらば、今まで開放された
土地も
自分のものになるのではなかろうかというような
氣持を、
相当大きく
農村の
地主層に抱かしている。そういうふうな
考えがあるときに、
農地調整法の内容も吟味せずに、漫然と
農村に爭いを激化するような
選挙の結果等が発生することになりましたならば、最後の仕上げにおいて汚点を残し、並びにアメリカ等において、
極東委員会において、今後の
農地開放も
小作地は解消するという線において進むべきである。かようなる連合國の
指令等に基く
農地問題に対する働きとも抵触等を生じまして、せつかくの企図を無にするようになるのではなかろうかと思う。さような
意味からしまして、ここしばらくこれらの問題につきましては、
改正を一應保留いたして、現在の
農地委員のままにおいて再
選挙をして、それらの人々のいろいろな経驗を活用させまして、これらの
法律の意図するところを実現するところに向う、かようにいたしますれば有終の美を保たせるようになろうと思います。われわれとしましては、いろいろま客観情勢並びにまた
極東委員会の
指令等も、いろいろと現われてくると思われる点もあり、それらのいろいろの点も参酌して、今回この
農地調整法等の一部を
改正する
法律案において、
農地委員の選出
方法を
小作人の非常に不利な立場において
改正することは、適当でないと
考えるわけであります。むしろ
農民の創意とくふうと、今まで
農地開放に
努力した人々の
努力を活かすように、前の
選挙区分等を中心として改選をいたして、その創意くふうの上にあとの仕上げをさせるのが正しいという見地において、反対の意を表するものであります。