○平田(敬)
政府委員 農業所得に関する課税の問題についていろいろ御
意見がございましたが、一番最初にお話になりました、
農業の経営に、
農業所帯主と申しますか、経営主以外の家族が多数從事しておる場合がある。そういう場合におきまして適当な控除をすべきであるという御
意見でありますが、この点につきましては、私どもも相当理由があると
考えまして、先般の税制改正案をつくる場合におきましても、
考慮の一点に入れていたのであります。ただ一般の雇い労働と同じように、その人の労賃に相当する額を控除することは理論的に妥当ではないと
考えております。ただ現在は何らの控除をいたしておりませんので、少くとも家族控除くらい以上の控除、そういう控除をする必要があるのではないか、でき得れば基礎控除並みの控除をするということは、
一つの有力なる
考え方でありますが、他方所得税の全体の歳入の用途がございますので、そういう点も併せ
考えまして、
將來の税制改正の際には、何らかの
方法によりまして、実現方をはかりたいと
考えております。
それから第二点は超過供出に対する課税の問題でございます。この問題につきましては、実は昨年以來農林当局ともたびたび打合わせをいたしましたし、それから
日本政府部内におきまして、ある程度の
意見をまとめまして、
関係方面ともしばしばこの折衝を重ねたのでありますが、その結論は、先般
予算委員会におきましても申し上げましたように、結局かようにおちついたのであります。基本的には
食糧の供出が大事であるということは、私どももちろん否認するわけではありません。と同時に、現在御承知の通り非常に一般的に税が重くな
つておる。
從つて所得税としましては、やはりいやしくも所得があればそれ應分の
負担はしてもらう。この原則はなかなかなかはずせないのであります。
一つくずしますと、石炭の場合におきましても生産奨励金は免税すべきだ。工場の場合におきましても超過労働の対價に対しましては免税すべきだ。いろいろ議論が波及して参りまして、所得税のシステムをこわして行く、相当大きくこわしても、なおかつ歳入があが
つて、何とか
國家財政がまかな
つて行けるときでありますれば、これはある程度大きく所得税のシステムをくずして行くというのも、
一つのポリシーだと思いますけれども、現存の
段階では、御承知の通り勤労所得税も非常に高い税金を天引きされておりますし、商工業者も決して軽くない、非常に重いという非難がございますので、各
方面とも相当重い所得税の
負担をしんぼうしていただかなければならぬような
現状であります。これは私どもは、できるだけ財政需要を圧縮いたしまして、所得税の控除その他を大幅に上げまして、所得税をなるべく少
いものにしたいという
考えを持
つておりますが、財政の
現状はなかなかさようなところに参
つておりません。そういう
状態でありますので、所得がある場合に税金を納めなくてもよいというところには、なかなか行きがたい点をまず御了承願いたいと思います。そういうことを
考えます。しかしそれとは言うものの、超過供出をやる場合におきまして、いろいろ特別な
関係もあるから、何とか
考えたいというので、昨年も
農林省当局と相談しまして、案をつく
つてみましたが、結局におきましてはかようなところにおちついたのであります。それは超過供出をするような農家は、肥料その他相当生産費に、普通の場合にくらべて余計な
費用を注ぎこんでいるというようなことが多いだろう。これは個別的な事実につきましても相当多いのでありまして、おしなべて推測いたしましても、さような点が多いようだ。
從つて所得税の所得の計算上当然見るべき
経費ですけれども、ややともすると見そこなう場合もございます。そういう
経費につきましては、この際実情に應じまして、極力十分に見るように、そして見た上でなお所得があるという場合におきましては、これはこういう際でございますので、所得税を納めていただくのはいたし方ない。かような結論におちついたのであります。その
経費を見る場合におきまして、実は
一つの案として、なかなか個々の農家について見るのはむずかしいから、中央が一律に何割か控除する案をつく
つて見たこともあるのでおりますが、これはやはり理論的でないというので実はなくな
つたのであります。結局個々の農家につきまして、まず第一に各農家が申告していただきまして、申告によ
つて、
ほんとうに
経費がかか
つた方は申告してもらう。一方税務署が調べまして、この申告は少し行き過ぎだという場合はしんしやくする場合もあるけれども、とにかく超過供出のために要した
費用につきましては実情に應じて十分に見る。それを中央から一定の控除率等を示すということも研究してみたのですが、それはどうも非常にロジカルでない。結局個々の農家につきまして申告して、税務署がよく調べて、実情に應じた課税をする、こういうことに相な
つたのでございます。しかし個々の農家全部についてできませんから、申告をできるだけ尊重して、同時に各地区ごとに状況が類似する場合が相当多いと思いますから、各税務署等におきまして、実情に應じた課税をする、こういうことに昨年いろいろ研究いたしました結論は相な
つたのでございます。それに対しまして今お話の源泉課税だけや
つて、
あとはほうりつぱなしだ、これも
一つの案で、そういうことも実はいろいろ研究してみたのでありますが、その案によると、さつき申しました所得税の鉄則と申しますか、原則にはずれることになります。御承知の通り所得税は家族が多ければ
負担が非常に軽くなるわけでありまして、基礎控除等もございます。零細農家等の場合は非常に
負担が軽いが、源泉課税になると一率になる。あるいは多額の経営をしておる農家の場合は相当の
負担になると思いますが、そういう場合に軽くな
つて、零細農家には重くなる。それを非常に高いところにきめますとむりになり、非常に低いところにきめますと、先ほど申しましたような原則に相反するというので、今の預金の課税は、無記名預金は御承知の通り六〇%の課税にな
つておるが、こんなむちやなことはもちろん農家の場合できませんし、いろいろ研究いたしておるのでございますが、どうもなかなかいい結論を得ませんけれども、さつき申しましたような趣旨で、この際としては行くよりはかなかろう、大体かような結論に現在のところな
つております。もつともこれに対しましては、
農林省からさらに研究案を出しておられますので、なお研究をいたしてみたいと思いますが、昨年度のたびたびの共同研究並びに
関係方面との折衝の経緯にかんがみまして、先ほど申し上げました結論から、相当飛躍したさらに案を実現するということは、今の見通しといたしましてはなかなかむずかしいじやなかろうか、かように
考えておる次第でございます。
それから
農業所得の課税の問題につきまして御
意見がございました。これは実際御指摘の通りなかなか正確な所得を計算することはむずかしゆうございまして、昨年は御指摘になりました、
農業所得の算出要領というパンフレットをつくりまして、税務当局に流すとともに、民間の團体等に流しまして、極力お互にわかり合
つて納税していただくということで、
標準率のサンプルを出しております。これはもちろん
一つのサンプルにすぎませんので、そういう
方法によりまして、できる限り各地の実情に即して申告していただいて、それを参考にして、各納税者の
自分の個別的
事情によることは、十分
考えてもら
つて納めてもらうように、かような指導をしておるのでございます。その申告が思うように行かなか
つた場合には、税務署の見るところによ
つて決定する、かようなことをや
つたのでありますが、北海道
方面はその結果非常にうまく行きまして、大体九十パーセント程度は申告だけで済んでおりまして、一割くらい更正決定にな
つておるようでございます。それから東北、北陸地方も相当税務署によりましては團体等への協力の呼びかけ方がよか
つたのでありましようか、相当御協力を得まして、更正決定が非常に少く済んでおるところもございます。しかしどうも西部、九州
方面におきましても、必ずしもいい成績を上げていないようであります。そこで本年度といたしましては、さらに
標準率のつくり方につきまして、実情に即するように、一層研究させたいと思います。
それともう
一つは、
標準の適用のし方につきまして、実は私どもなるべく一律に行かないように、同じ村内におきましても、納税者の状況が違うから、なるべく差異をつけて所得を決定するようにということを、やかましく申しております。これにつきましては、遺憾ながら税務署も十分の人手がありませんので、私どもはまじめな團体並びに町村長のできるだけの協力を求めまして、それによ
つて円滑にして適正な課税が期待できるように極力運動に努めたいと
考えております。その
標準率のつくり方、あるいは算定要領のこまかい問題につきましては、別途の機会に係官等をさらに差向けてもよろしうございますから、よく御
意見を承りまして、できる限り適正なものをつく
つて指導させたい、かように行えている次第でございます。
なお最後に、先ほど供出は税金だと言われたのでありますが、この点はどうも見解がやや異なりまして、供出の
價格はあくまでも適正
價格で行かなくちやいけないので、その
價格がいいかどうかは問題だと思いますが、その
價格によ
つて出すものは、やはり出すものであ
つて、税金だと言うほどまで観念するのはどうも行き過ぎではなかろうかと、かように
考えておるのであります。極力私どもといたしましては、各納税者の実際の所得を捕捉いたしまして、適正な課税をし、税率その他全体の問題として、税制改正の問題がございますが、私どもといたしましては、財政の許す限り、軽減して行く方向に持
つて行きたい、かように
考えておりますことを最後につけ加えておきます。